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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
所属組織など
◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

資格スクエア資格スクエア
(2016年7月から「ITパスポート」、8月から「情報セキュリティマネジメント」、11月から「経営学検定(初級)」の講師を務めています。谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2016年12月05日

『豊洲の地下空騒ぎ/大統領はどちらがマシだった?(『正論』2016年12月号)』―現代アメリカの虚像

正論2016年12月号正論2016年12月号

日本工業新聞社 2016-11-01

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 クリントン氏もロシアを警戒しているでしょうが、驚くべき事実もあります。全米で読まれており、漫画にもなっている『クリントンキャッシュ』という本があります。私はこれを木村太郎氏に見せてもらったのですが、同書にヒラリー氏が国務長官時代に、ビル氏がモスクワで講演して50万ドル、5000万円の講演料を受け取ったことが書かれています。
(櫻井よしこ「いずれにしろ、もう米国頼りはだめだから」)
 以前の記事「アメリカの「二項対立」的発想に関する整理(試論)」で、アメリカは二項対立的な発想によって中国と対立しながらも、アメリカ国内でも親中派と反中派の二項対立が見られることが事態を複雑にしていると書いた。表面的には反中派が中国を攻撃するのだが、裏では親中派が中国を支援することで、中国が倒れることなく、むしろ中国が力をつけてアメリカと互角に渡り合えるようにする。『China 2049』の著者であるマイケル・ピルズベリーは、中国の100年戦略を知らずに、親中派を自負して中国を支援したことを後悔していた。だが、本当は、当初の狙い通り中国が強大になったことを喜んでいるのではないかというのが私の見立てである。米中の対立が先鋭化すれば、アメリカの軍需産業が潤い、その恩恵がアメリカ経済全般に及ぶ。

 以前の記事は、冷戦時代のアメリカと旧ソ連の間にも、似たような二項対立関係が見られたのではないかという仮説で止まっている。ここで、冒頭の引用文を読むと、現在の米ロ関係においては、表面的にはアメリカとロシアが引き続き対立しながらも、裏では親ロ派がロシアを支援している可能性があることを感じさせる。ということは、冷戦時代にも似たような支援関係があったと予測しても、あながち間違いではないように思える。
 米国にも一応、「市民が毎年、特定の政治家や政党に献金できる最大額は2700ドル」という規制がある。しかしこの政治資金規正法は、最高裁の「個人が特定の政治家や政党を支援するため、大量の私財を政治活動と広報活動に使っても、その行為は憲法で保障されている『表現の自由』にあたるから、法律で規制することはできない」という憲法解釈によって、有名無実化している。その結果、数兆円の資産を持つヘッジ・ファンド業者、企業乗っ取り業者、ラスベガスのカジノ業者の中には、1人で1年に百億円の資金をばら撒いている者がいる。
(伊藤貫「トランプを生んだアメリカの衰退」)
 アメリカは民主主義を理想とする国である。民主主義とは、どんな金持ちであっても、どんな貧乏人であっても、同じ1票を行使することができるから、結果的に弱者のニーズをより効果的に政治に反映させることのできる仕組みである。ところが、現在のアメリカは、政治家に多くの献金をした者が政治を動かしている。ウォール・ストリートや製薬業界、軍需産業からの献金は凄まじいようで、彼らの力で金融業界の各種規制は骨抜きにされ、患者の治癒など二の次で製薬会社の利益しか考えない新薬が大量にばらまかれ、世界各地で戦争が推進されている。アメリカは民主主義を普遍的価値として世界に普及してきたが、今その足元がぐらついている。

 アメリカの最高裁裁判官は、大統領によって指名され、上院の承認を経て就任する。任期は終身で、基本的には死亡ないし本人が引退表明しない限り、その座に就くことができる。定年が70歳と定められている日本の最高裁裁判官とはこの点で大きく異なる。現在、アメリカの最高裁裁判官は定員が9名であるが、1名の欠員があり、保守対リベラルが4:4の関係にある。ここで、もしヒラリー氏が大統領に当選していたら、次のような事態になっていたかもしれない。
 ヒラリー氏が大統領に当選し、進歩派の裁判官を就任させることに成功すれば、銃規制に関する憲法判断はくつがえることになろう。州や自治体レベルで、個人の銃保有をめぐる進歩、保守両派のせめぎ合いが活発化するはずである。ヒラリー氏が仮に1期4年限りの大統領に終わっても、80歳前後の最高裁判事がさらに3人(進歩派が2人、保守寄り中間派が1人)いることから、2~3人を50歳前後の進歩派と入れ換えられれば、最高裁はその後数十年にわたって進歩派支配が続くこととなる。
(島田洋一「徹底分析 ヒラリーVSトランプ」)
 実際にはトランプ氏が次期大統領となったため、最高裁判事が進歩派で固められる可能性はなくなった。しかし、逆にトランプ氏が最高裁判事を保守(トランプ氏の「保守」は一体何が保守なのかよく解らないが)で固めることは十分にあり得る。

 最高裁判所は立法や行政から独立した第三の権力である。その独立した権力に、大統領の息がかかった人物を送り込めるというのは、非常に危険な話だ。もちろん、日本の最高裁裁判官も、内閣が指名し天皇が任命するから、内閣寄りの人物を送り込むことは不可能ではない。だが、前述の通り日本の最高裁裁判官には定年制があり、また、人数が15人と多く、裁判官が一斉に入れ替わることが考えにくいから、内閣が最高裁に対して影響力を及ぼすことは難しい(もっとも、日本でも政治的圧力があったのではないかと疑われる判決があることは否定できない)。これに対して、アメリカの場合は、定員が9名と少ないため、引用文のような事態が起こりうる。ここでもまた、法の支配を普遍的価値とするアメリカは揺らいでいる。
 左翼主義が、政治の次元にあって慣習体系への固執としての(現実主義を標榜する)右翼主義にしばしば逆転することも予め知っておかなければならない。つまり、自由(そして平等、友愛、合理)の過剰が放縦(そして画一、偽善、システミズムつまり体系主義)をもたらしてしまうと、フロイド心理学でいういわゆるリアクション・フォーメーション(反動形成)として、抑圧(そして差別、酷薄、熱狂)に逆転していく。アメリカにおける「トランプ現象」がその見本例だ。
(西部邁「世界大戦の足音を聞きながらナチ・ファッショを夢想する(続)」)
 現在、アメリカだけでなく、ヨーロッパでも極右と極左が激しく対立している。極右は移民など、自らと異なるカテゴリの人々を排斥する。一方、極左は自由、平等の名の下に、あらゆる多様性を認めようとする。私の考えでは、極右と極左は同根異種である。つまり、「人間は絶対性・完全性を備えた神が創造した合理的な人間である」という考えを出発点としている。近代において啓蒙主義を経験した欧米は、宗教を世俗から切り離すことに成功したと思っているかもしれない。ところが、神は全く死んでいない。それどころか、宗教は世俗と完全に同期している。

 唯一絶対の神に似せて創られた人間は、それぞれの人間が1人の個体であると同時に、神=全体・無限に等しい存在である。自己と他者の間には境界線がない。つまり、全体主義である。全体主義においては、自己と異なる他者を想定することはできない。仮に、自己と異なる他者が現れた場合、その他者は神が創造した世界とは矛盾する存在と見なされる。だから、その他者は絶対的に排除されなければならない。したがって、極右は暴力的に異質を攻撃する。ヨーロッパで極右政党がやっていることと、ISが中東でやっていることは、実は同じである。

 人間は唯一絶対の神に似せて創られたはずだが、現実には個体差がある。ここで人間が取りうるもう1つの選択肢は、全ての差異を神が認めた解であると認定し、平等に扱うことである。だから、男女はともに社会に参画できなければならないし、LGBTの結婚は法的に認められなければならないし、マイノリティにも機会が開かれていなければならない。極左の主張のポイントはここにある。こうした強制的な平等化の波は日本にも迫っている。日本の小学校の中には、男女が同じ部屋で着替えをし、運動会では全員が手をつないで横並びでゴールをし、演劇発表会では全員が主人公を演じているところがあると聞く。

 オバマ政権の8年間で、白人以外の民族(特にメキシコからの移民)の受け入れが急速に進み、全米で同性婚が合法化された。これは民主党の中でも特に極左的な反応であると言えよう。そして、ここからが重要なポイントだが、極左的な運動が進めば進むほど、同根異種としての極右勢力が刺激されるのである。だから、トランプのような人物が現れて、メキシコとの国境線上に壁を作ると言ってみたりする。トランプが目指しているのは、白人中心の全体主義である。

 極右と極左の衝突を緩和するには、彼らの立脚する前提を崩すしかない。ただし、「神が唯一絶対である」という点は、彼らも絶対に譲れないだろう。一神教を信じる彼らにとって、その否定は耐え難い苦痛という表現では足りないほどの苦痛をもたらす。だとすれば、残された道は、「人間は不完全で非合理的な存在である」と認めることしかない。いい加減な言い方をすれば、「ちゃらんぽらんに生きる」ということである。自分が弱く不完全なことを受け入れる。同時に、他者もまた弱く不完全であると認めてあげる。ここに、本当の意味での寛容が成立する余地が生じる。
2016年12月02日

【森・濱田松本法律事務所】インド合弁パートナー間の紛争/合弁契約上の権利行使―合弁当事者間の仲裁事例を踏まえて(セミナーメモ書き)

株価

 ドコモ・タタ紛争についての解説。2009年、株式会社NTTドコモはTata Sons Limited(タタ)より、Tata Teleservices Limited(TTL)の株式約2,523億円を取得した。その際、ドコモ、タタ、およびTTLの間の株主間協定において、ドコモは次のようなプット・オプション(売る権利)を設定していた。それは、「TTLが2014年3月期の会計年度において、所定の業績指標を達成できなかった場合は、ドコモはその保有するTTL株式を、取得価格の50%または公正価格のいずれか高い方でタタに売却できる」というオプションであった(※)。

 TTLは2014年3月期の会計年度において、所定の業績指標を達成できなかった。そのため、ドコモは2014年7月に、保有していたプット・オプションを行使した。業績不振に陥っていたTTLの株価は低迷していたことから、公正価格よりも取得価格の50%の方が高いとドコモは判断した。ところが、タタは取得価格の50%に相当する金額をドコモに支払わなかった。そこで、ドコモは2015年1月に入り、タタを相手方とする仲裁をロンドン仲裁裁判所(London Court of International Arbitration)に申し立てた。

 2015年2月、インド準備銀行(RBI)は、タタがドコモ保有のTTL株式を取得価格の50%にて取得することは外資規制に反すると判断した。インドには、株式の譲渡価格規制(Pricing Guideline)が存在する。具体的には、
 ・インド居住者から非居住者に株式を売却する際は基準価格”以上”
 ・インド非居住者から居住者に株式を売却する際は基準価格”以下”
でなければならない、というものである。つまり、インド居住者に有利な規制となっている。これ以外にも、インドには、インドから国外に資金が流出するのを防ぐような規制がいくつかある(ブログ別館の記事「小山洋平『インド企業法務 実践の手引』」を参照)。TTLは非上場企業であるから、非上場企業の基準価格がいくらになるのかが争点となるわけが、インドでは「Chartered Accountant(インドの公認会計士)またはSEBI Registered Merchant Bankerが国際的に受け入れられた算定方法により算定した公正な株式評価額であると証明する価格」とされている。

 2016年6月、ロンドン国際仲裁裁判所は、タタに株主間協定上の義務の不履行があったとのドコモの主張を認め、タタに対しドコモの保有するTTL全株式と引き換えに、ドコモの請求額全額にあたる約1,172百万ドル(約1,300億円)の損害賠償を命じた。これでドコモも一安心かと思いきや、翌月に入ってRBIはロンドン国際仲裁裁判所の決定に基づくタタによる支払いを認めないとの判断を下した。そこでドコモは同月、仲裁決定の執行をインドのデリー高等裁判所およびイギリスのLondon Commercial Courtに申し立てた。

 ドコモが最初にロンドン仲裁裁判所に仲裁を求めたのは、インドの裁判は非常に時間がかかるためである。1審で3~5年かかるのは当たり前で、最高裁まで行くと平気で15年ぐらいかかる。これでは話にならないため、通常は日本で裁判を起こすという選択肢が浮上する。ところが、インドの場合は、相互主義を採用している地域である旨を政府通達で宣言した国の裁判所の判決に限り、インド国内で判決を執行することを認めている。インドが相互主義を認めているのは、イギリス、カナダ、バングラデシュなどであり、実は日本とアメリカが入っていない。そのため、ドコモは日本で裁判を起こせず、ロンドン国際仲裁裁判所に仲裁を申し立てたというわけだ。

 では、外国で得られた仲裁裁判の執行は担保されるのかが次の問題となるが、商業的な法律関係に起因する紛争に関する、ニューヨーク条約またはジュネーブ条約の締結国における仲裁判断は、インド国内で執行することが認められている。ただし、外国で得られた仲裁判断であっても、インドの公序良俗に反すると認められるものについては、執行されない(この点は相互主義が認められた外国の裁判所で得られた判決に関しても同様である。外国の裁判所で得られた判決であっても、インドの公序良俗に反すると認められるものについては、執行されない)。この点で恣意性が入る余地があり、タタ・ドコモ問題においても、ドコモが保有するTTL株式を取得価格の50%でタタに売却することが公序良俗に反するかどうかが争点となる。

 ドコモ・タタ紛争を防ぐ方法としては、3つ考えられる。1つ目は、タタから対価の支払いを受ける企業をインド非居住者であるドコモにするのではなく、ドコモがインド国内に保有する別企業にするというものである。つまり、インド国内で取引を完結させるということだ。2つ目は逆に、インド国外で取引を完結させるというパターンである。具体的には、タタがインド国外に保有する企業から、ドコモに対して対価を支払うようにする。そして3つ目は、株式の売却という形ではなく、損害賠償という形で解決するという方法である。

 (※)そもそもRBIは、非居住者である投資家に対して、イグジットの方法とリターンを保証するプット・オプションは、株式などの証券に対して負債と類似した性質を付与するものであり、FDIポリシーに適合した出資としての適格性を欠き、むしろECB規制(External Commercial Borrowing:対外商業借入)に従うという見解を示していた。そのため、エクイティ出資を行う非居住者がプット・オプションを保有することについては疑義が残っていた。

 ところが、2014年1月のRBI通達により、一定の条件の下にインド非居住者がプット・オプションを取得することが認められた。
 ①非居住者に一定のリターンを保証する合意は禁止する。
 ②非居住者は権利取得日から1年間は権利を保有する必要がある(ロックイン期間)。
 ③非居住者が権利行使をして会社の株式を売却する場合、売却価格の上限規制がある。非上場株式の場合、前述の基準価格と同じである(Chartered Accountant(インドの公認会計士)またはSEBI Registered Merchant Bankerが国際的に受け入れられた算定方法により算定した公正な株式評価額であると証明する価格)。
2016年12月01日

アメリカの「二項対立」的発想に関する整理(試論)

米中関係

 本ブログでは、大国、特にアメリカ、ドイツ、ロシア、中国は二項対立的な発想をすると何度か書いてきた。今回の記事では、アメリカの二項対立について、少し掘り下げてみたいと思う。

 どうやらアメリカという国は、二項対立によって常に敵と味方を作っておかないと気が済まない国のようである。それは、対立によって様々なお金が動き、経済成長につながることを知っているからである(その究極形が戦争である)。アメリカの二項対立にはいくつかパターンがある。1つ目は、他の大国と正面から対立するというものである。アメリカとロシアは冷戦を戦ったし、現在は中国と新しい関係に突入しようとしている。大国同士が対立する場合は、次のような形をとる。冒頭で触れた通り、アメリカに限らず、他の3つの大国も二項対立的な発想をする。大国は国外で対立を扇動すると同時に、国内においても二項対立を発生させる。

 アメリカと中国の関係を見てみると、アメリカ国内には反中派と親中派がいる。同様に、中国にも反米派と親米派がいる。米中対立は、表面的には反中派と反米派の対立である。ところが、我々の目につかないところで、アメリカの親中派が中国を支援している。これによって、中国国内では反米派と親米派の対立が大きくなり、そのエネルギーが今度はアメリカへと向かってくる。つまり、アメリカの親中派が中国を支援することで、米中間の対立を大きくすることができる。

 マイケル・ピルズベリーの『China 2049』によると、これまで中国は、自分が弱い国であるかのように見せかけて、アメリカの親中派からありとあらゆる支援を獲得してきた。しかしそれは、中国が共産党設立100周年にあたる2049年に世界の覇権を握るという目標を達成するためであったという。ピルズベリーは、中国の意図を知らずに自ら親中派を名乗って中国をサポートしたことを後悔しているかのように書いていたが、本当のところはアメリカの思惑通り中国が強くなって自分に刃向うようになってくれたことを内心喜んでいるのではないかとさえ感じる。

 中国についても、国内の親米派がアメリカを裏で支援していると思われる。それによってアメリカ国内の対立を先鋭化させ、ひいては米中の緊張をさらに高めようとしている可能性がある。これはあくまでも仮説であるから、今後の検証が必要である。また、米ソ冷戦についても、単にアメリカとソ連が対立したという関係ではなく、アメリカの親ソ派がソ連を、ソ連の親米派がアメリカを秘密裏に支援したのではという仮説が成り立つ。この点もこれから追求しなければならない。

 アメリカとドイツの関係はどうであろうか?アメリカとドイツは第2次世界大戦で戦った。経営学者であるピーター・ドラッカーは、『産業人の未来』の中で、第2次世界大戦はアメリカの自由をドイツのファシズムから守るための戦いだと述べたが、どうやら米独の関係はそんなに簡単なものではなかったようだ。かつてドイツには、IGファーベンという、ドイツ化学製薬関連企業のカルテルが存在した。ナチス政権が誕生すると、爆薬や合成ガソリンを100%製造する工場となった。さらには、強制収容所で新薬を用いた人体実験を行った。強制収容所では毒ガスが用いられたという話をよく聞くが、この毒ガスの特許はIGファーベンのものだった。

 そして、このIGファーベンに多額の資金援助を行っていたのが、アメリカのロックフェラー財閥であった。ロックフェラー財閥は、ロスチャイルド財閥のモルガングループの協力を得て、IGファーベンの最大の資金供給者となった。さらに、IGファーベンとロックフェラー財閥傘下のスタンダード・オイルは、お互いの株式を持ち合っていた。結局のところアメリカは、戦争でアメリカが勝とうとドイツが勝とうと、必ず自分が儲かるようなスキームを作っていたわけである。

 対立している双方の国に賭けることで、どちらが勝ってもアメリカが得をするようなモデルにするというのが、アメリカの二項対立の2つ目のパターンである。これは、アメリカが世界中で小国同士の対立を創造することによって達成される。このやり方は、かつてのフランスの植民地支配を模倣しているのかもしれない。フランスの植民地経営の特徴は、その植民地における部族・民族間の対立を利用することであった。フランスは、敢えて部族・民族の間を断ち切るような政策をとった。この一見リスキーな方法により、フランスは、対立する双方の部族・民族から庇護を求められるようになり、宗主国としての権威を高めることに成功した。

 あるいは、イギリスの三枚舌外交を真似しているのかもしれない。イギリスはフサイン=マクマホン協定(1915年)によって、オスマン帝国の支配下にあったアラブ地域の独立と、アラブ人のパレスチナでの居住を認めた。一方で、サイクス・ピコ協定(1916年)により、第1次世界大戦後のオスマン帝国をイギリス、フランス、ロシアの間で分割する秘密協定を結んだ。さらに、バルフォア宣言(1917年)では、パレスチナにおけるユダヤ人の居住地の建設に賛意を示した。これにより、中東ではアラブ人とユダヤ人が対立するようになり、現在でも混乱は続いている。

 アメリカは、イスラエルにとって最大の支援者である。ところがその一方で、アメリカは中東の盟主であるサウジアラビアを重視している。つまり、ユダヤ人とアラブ人の双方に賭けている。同じことは、イスラエルとエジプトとの関係についても言える。アメリカはエジプトに対し、表面的には「イスラエルに手を出すな」と警告するものの、本当はエジプトがほどよくイスラエルを刺激してくれることを望んでいるはずである(イスラエルからエジプトに対しても同様のことが言える)。

 アメリカにとっての敵がいない時にはどうするか?アメリカは、自分の味方を過度に支援することで、アメリカからの過剰な支援に反発する反対派を作り出すという高度なテクニックを用いる。これが3つ目のパターンである。アメリカは、1970年代からイランのパーレビ体制を支えてペルシャ湾の秩序を維持していた。ところが、1979年にホメイニ師が率いるイスラム原理主義革命によってパーレビ体制は崩壊した。そこでアメリカは、隣国イラクのサダム・フセインを支持して、1980年9月から8年間にわたるイラン・イラク戦争に側面強力した。だが、1990年には増長したサダム・フセインがクウェートに侵攻して湾岸戦争に至り、ついには自らが育てたモンスターというべきサダムを処断することになったという展開が、9.11後のイラク戦争であった。

 ソ連が1979年にアフガニスタンンに侵攻した際、アメリカはこれに対抗するために、神の戦士を養成して戦わせる戦略を立てた。隣国のパキスタンはアメリカと密接な関係を持っていたため、パキスタンとアメリカが協力してイスラーム神学校(マドラサ)で学んでいた血気盛んな若者たちを神の戦士に仕立て上げた。これがタリバンの原型である。ソ連が撤退した後、1990年代後半に入ると、アフガニスタンでは軍閥系の私兵が戦利品の略奪から始まって、民衆からの略奪、強姦、殺人など、暴虐の限りを尽くした。そこで、タリバンは、厳格なイスラーム法による統治を浸透させることで、アフガニスタンに秩序を取り戻すことを目論見た。

 しかし、タリバンと言っても、たかだか神学校を出た若者たちが中心である。現地には、彼らよりも知識に長けたイスラーム法学者がたくさんいた。出来のよいタリバンが行った村ではまっとうな統治ができたが、多くの村にはイスラーム法学に未熟な出来の悪いタリバンが赴いて、生半可な知識で、つまりしばしばイスラーム法から逸脱した処罰などを実施してしまった。これが、ブッシュ政権から「タリバンの冷酷と暴虐の支配」だと目の敵にされたわけである。そのタリバンからアルカーイダやウサーマ・ビン・ラーディンが生まれ、9.11が起きたことは周知の事実である。

 最近、アメリカはISとの戦いを進めている。だが、元をたどると、原因の一部は、アメリカがサウジアラビアに輸出した武器にあると言われる。サウジアラビアへ輸出した武器は、同国内のイスラム原理主義組織の手に渡り、それがシリアに流れてISを助長させたというわけである。アメリカはおそらくその事実を知っていたに違いない。ところが、アメリカはサウジアラビアへの武器輸出を止めなかった。アメリカに立ち向かう勢力が生まれてくれれば、軍需産業が潤い、それがアメリカ全体の経済成長をもたらすという、軍産複合体らしい発想が見え隠れする。
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