プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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【シリーズ】2018年反省会 (26)


2019年05月08日

平成30年度補正ものづくり補助金の申請のご相談について【東京23区】


経営分析

 平成30年度補正ものづくり補助金の第2次締切が2019年5月8日(水)〔消印有効〕となっています。当事務所でも申請のご支援をさせていただきます。認定支援機関として、特定非営利活動法人エヌピーオービジネスサポート(一社)板橋中小企業診断士協会(一社)荒川区中小企業経営協会などをご利用いただけます。

 《ご相談の条件》
 ・締切まで残り約1か月半という期間を鑑みて、2社に限定させていただきます。
 ・東京23区の中小企業様限定です。当事務所が事業活動の拠点としている城北エリア(板橋・荒川・練馬・北・台東)の中小企業様を優先してご支援いたします。
 ・成功報酬には対応しておりません。公募書類の提出が完了した時点で、事前に合意した金額をご請求いたします(認定支援機関の確認書作成に要する費用も含みます)。
 ・ご相談内容によっては、申請を見送るという選択肢をご提示することがあります。

 お問い合わせは下記ページよりお願いいたします。

お問い合わせ

 《【重要】申し訳ございませんが、以下の中小企業様のご相談はご遠慮ください》
 ①申請書作成の代行を依頼する、作成を丸投げする。
 最高1,000万円の資金調達の一括請負は当事務所のポリシーに反します。第三者から相当額のお金をいただきたい場合、相手は必ずお金の使い道や相手にとってのメリットを聞きます。もし資金調達に本気であれば、その説明を他人任せにしないはずです。申請書の作成は中小企業様にお願いいたします。当事務所では主にビジネスモデルの妥当性や競争優位性、将来収支の試算に関して助言を行い、必要に応じて追加資料を作成します。

 ②平成28年度補正ものづくり補助金以前に複数回のものづくり補助金の交付を受けているが、事業化段階が「3:製品・サービスなどが1つ以上販売されている」以下である。
 過去の補助事業を事業化することが先です。

 ③本業が赤字であるが、補助金を活用して新規事業に進出する。
 本業の黒字化が先です。本業に黒字化の見込みがなく新規事業に進出する場合には、なぜこれ以上の黒字化の試みが難しいのか、新規事業であれば過去の累積赤字をカバーできるだけの利益を確保することが可能なのかについて、相応の説明が必要となります。

 ④下請企業が親会社からの要請に従って設備投資を行う。
 「設備投資をしたら発注量を増やす」という主たる親会社の言葉は確実なものではありません。親会社が約束を反故にすれば、借入金と使えない設備だけが残ります(親会社が口約束だけして、後から「やっぱり海外の工場に委託する」と言うのはよくある話です)。主たる親会社以外にも通用する製品を開発し、新規営業の体制を構築することが不可欠です。

 ⑤つなぎ資金として用意する自己資金が財務諸表上の現金・預金とほぼ同額である。
 補助事業を行うことで資金ショートする恐れがあり、最悪の場合倒産します。

 ⑥つなぎ資金として金融機関から調達する借入金(補助事業終了後、補助金によって返済可能な分以外の借入金)が財務諸表上の借入金残高とほぼ同額である。
 単純に考えて、主たる返済原資である経常利益を2倍にする事業計画でなければ、将来にわたって安定的に借入金を返済することができません(なお、ものづくり補助金で要求されるのは、「3~5年の事業計画で、経常利益年率1%以上の増加」です)。

 ⑦補助金交付申請額が500万円未満である。
 税金を使用する以上、国は投資対効果を重視します。交付申請額が極端に少ない場合、投資対効果が小さいと見なされて不採択の可能性が高くなります。

 ⑧社会保険料未納、社会保険未加入、時間外手当不支給など法令違反がある。
 違法企業に対して国民の税金を交付するわけにはいきません。

 《【補助金入門】補助金が初めてという中小企業様に読んでいただきたい記事》
 【第1回】補助金は事後精算であって、採択後すぐにお金がもらえるわけではない
 【第2回】補助金の会計処理は、通常の会計処理よりはるかに厳しい
 【第3回】補助金=益金であり、法人税の課税対象となる
 【第4回】《収益納付》補助金を使って利益が出たら、補助金を返納する必要がある

 《申請書の書き方》
 (※昨年の記事ですが、今回の申請書の書き方もほぼ同じです)
 ものづくり補助金申請書の書き方(1)
 ものづくり補助金申請書の書き方(2)
2019年05月02日

平成30年度補正ものづくり補助金申請書の書き方例(2)(※注意点つき)


事業計画書・マーケティング

 ※補助金を初めて受ける企業に読んでいただきたい記事
 【シリーズ】補助金の現実
 【シリーズ】「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)
 (「平成30年度補正ものづくり補助金申請書の書き方例(1)(※注意点つき)」の続き)

 その2:将来の展望
 (本事業の成果の事業化に向けて想定している内容及び期待される効果)
 ◆市場規模
 ○図2(再掲):成人の週1回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移
成人の週1回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移

 図2に基づいて、成人の週1回以上運動・スポーツをする者、週3回以上運動・スポーツをする者の割合が線形的に増加すると仮定する。ただし、平成27年度の調査では前回からパーセンテージが落ち込んでいることを踏まえ、平成33年、平成36年における、成人の週1回以上、または週3回以上運動・スポーツをする者の割合は、平成27年度以前のデータから導かれる近似曲線を持ちいて算出される値を80%に減じた(図7)。

 ○図7:成人の週1回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移(将来予測を含む)
20190319_①市場規模予測

 ○表1:市場規模と当社シェアおよび売上高の推移予測
20190319_②売上高予測

 平成30年度、34年度の推定値から、平成30年~平成34年の5年間における、成人の週1回以上、または週3回以上運動・スポーツをする者の割合を計算すると、表1の①②となる。これに、総務省統計局が公表している日本の将来人口の予測値(③:20歳以上の人口のデータが得られず、便宜的に15歳以上の人口を成人とした)をかけると、成人の週1回以上運動・スポーツをする者、週3回以上運動・スポーツをする者の人数(千人)は④⑤となる。⑤から④を引くと、成人の週1~2回運動・スポーツをする者の人数(千人)が得られる(⑥)。

 センシング繊維活用アンダーウェアは、まず成人の週3回以上運動・スポーツをする者が先行して購入すると予想され、平成30年~平成34年の普及率を1%⇒2%⇒3%⇒4%⇒5%と仮定した(⑧)。一方、成人の週1~2回運動・スポーツをする者の普及率はそれよりも低く、0.2%⇒0.5%⇒1.0%⇒1.5%⇒2%と仮定した(⑦)(ウェアラブル端末が平成25年の実績で約457万台〔普及率約0.4%〕、平成32年の見込みで1,160万台〔普及率約9.7%〕あるという、総務省『平成28年版 情報通信白書』のデータを参考にしている)。

 成人の週1~2回運動・スポーツをする者でアンダーウェアを購入する人は1人1着購入すると仮定し、成人の週1~2回運動・スポーツをする者(⑥)に普及率(⑦)をかけると、購入枚数が出る(⑨)。成人の週3回以上運動・スポーツをする者でアンダーウェアを購入する人は1人3着購入すると仮定し、成人の週3回以上運動・スポーツをする者(⑤)に普及率(⑧)をかけ、それを3倍すると、購入枚数が出る(⑩)。⑨+⑩=⑪が枚数ベースの市場規模となる。

 想定競合他社数は、平成30年時点で3社(後述)であるのに対し、平成31年以降は新規参入が相次ぎ、10社⇒20社⇒25社⇒30社と増加すると予測する(⑫)。当社の市場シェアは、平成30年は販売開始前であるため0%だが、平成31年には3%を目指す。その後、4%⇒5%とシェアを拡大するものの、平成34年には競合他社の増加による競争激化でシェアが4.5%に下がると見込んでいる(⑬)。通常のアンダーウェアは2,000円~10,000円程度と幅がある。しかし、当社のアンダーウェアは付加価値を加味して小売希望価格を図1(※前回の記事を参照)の通り14,980円とする。顧客であるスポーツウェアメーカーへの納品価格は、約2割の2,980円とする。市場規模(⑪)と市場シェア(⑬)に単価をかけると、当社の毎年の売上高は⑮となる(なお、この試算では消費者の買い替えサイクルは考慮していない)。
 【POINT】開発しようとしている製品・サービスの市場が確かに存在し、自社の事業として成立するだけの市場シェアを獲得できる見込みがあることを示す。前回の記事で、事業計画の導入部に総務省の将来予測を掲載した。大まかな市場の傾向を説明する際にはそれでもよいが、自社の新規事業のフィージビリティにかかわる試算にこのデータをそのまま使うのはあまり適切でない。

 政府や行政の見込みは外れることが多い。まして、民間の市場調査会社のデータはもっと外れやすい。というのも、「市場があまり伸びない」というレポートでは売れないため、市場調査会社は「市場は成長する」と強気に予測せざるを得ないからだ。第三者のデータをそのまま引用しただけでは、頭を使ったことにならない。将来予測をベースとしつつも、身近な潜在顧客や取引先などの関係者から直接聞いた話を総合し、自社で独自に仮説を立てながら予測する方が、当たり外れはあるにせよ、頭を使って考えたよい事業計画であるとの印象を受ける。

 市場シェアの目標を設定する際には、将来の競合他社の数も考慮しなければならない。将来的に成長が見込まれる市場であれば、どの企業も狙ってくる。意外とこの点は忘れられている。現在の競合他社に対する優位性があることを示すことはもちろんのこと、競合他社が増えても自社の付加価値、競争力を維持できることを訴求する必要がある。時折、市場シェアを20%も30%も獲得したいという事業計画書を見かけるが、本当に妥当かよく検証するべきである。

 審査項目の「【事業化面】②事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か」とも関連。
 ◆競合他社および競合他社に対する優位性
 現時点で直接の競合となるのは、ウェアラブル端末である。だが、ウェアラブル端末は心拍数や体温といった基礎的なデータしか取得できない、水に濡らすことができないなどのデメリットがある。センシング繊維は、心拍数や体温に加えて、心電図や加速度など様々な身体情報を取得することができるため、より多面的に最終消費者の健康をモニタリングすることができる。また、ウェアラブル端末と異なり、センシング繊維は洗濯が可能である。

 現時点で、当社のセンシング繊維と類似の製品を開発している競合他社は次の3社である。3社とも当社より企業規模が大きいが、技術面、生産量の面では当社が競争優位に立っているため、前述の通り平成31年には市場シェア3%を達成したい。

 【A社】
 大手アパレルメーカーとのコラボ高機能繊維などで自社ブランド力をアップし、事業の収益源としている。導電性繊維を活用し、ウェアラブル装置を装着できるウェアを発表した。近年新製品開発に苦戦しており、この分野に力を居入れてくる可能性が高い。
 ⇒【A社に対する当社の優位性】
 当社は自社生産設備が整っており、生産量の制約が少ない。

 【B社】
 スポーツ衣料向け繊維が強く、ユニフォームなどが好調である。ただし、原材料費の高騰の影響を受けて、収益は厳しい状況が続いている。近年は海外市場向けの特化製品に注力している。また、ウェアラブルウェアへの参入を発表した。
 ⇒【B社に対する当社の優位性】
 B社に比べ、高機能繊維技術に関する特許が多い。

 【C社】
 炭素繊維が好調であるが成長が鈍化している。高機能繊維強化のためにベンチャー企業を買収した。これを機に高機能繊維にも注力してくる見込みである。その際、海外市場への製品投入を先行させると予想される。
 ⇒【C社に対する当社の優位性】
 導電性繊維、フィルムなどの高機能製品ラインナップが多い。
 【POINT】競合他社は誰か、その競合他社に対して自社はどのような点で優位に立つのかを明らかにする。往々にして、中小企業は自社の競合他社を十分に把握していない。だが、市場で戦うためには競合他社の戦略を分析・理解し、相手の出方を予測することが重要である。上記の例では示していないが、自社製品と競合他社製品の価格、機能、性能を一覧で比較できる表を作成するのが最も望ましい。

 審査項目の「【事業化面】③補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か」とも関連。
 ◆ビジネスモデルと事業化に向けたスケジュール
 今回の新規事業のビジネスモデルは図8の通りである。主たる顧客(スポーツウェアメーカー)としては、X社、Y社、Z社を検討している。X社は業界内での影響力が強く、X社に当社のセンシング繊維が採用されれば、他のスポーツウェアメーカーにも採用されることが期待できる。Y社はP社、Q社、R社といった小売店とのつながりが強く、採用されると一定の売上高が見込める。Z社は当社と長年のつき合いがあるメーカーであり、業界内での地位はそれほど高くないものの、他のメーカーと明確に差別化した製品の開発を検討している。よって、当社のセンシング繊維を活用してオリジナリティの高いアンダーウェアを開発してくれる可能性が高い。

 スマートフォンのアプリケーション開発に関しては、L社を検討している。当社は今までL社と取引したことがないが、L社は既にウェアラブル端末用のアプリケーションを開発した実績がある(アプリ名:「aaa」、「bbb」、「ccc」など)。また、将来的に当社のセンシング繊維を採用するスポーツウェアメーカーが増えて、各社が独自のアプリを希望したとしても、それに応えられるだけの十分な開発・運用・保守体制を有している(社員数○○名)。L社の開発には、当社がスポーツウェアメーカーとともに積極的に関与し、アプリの品質をモニタリングする予定である。

 ○図8:今回の新規事業のビジネスモデル
ビジネスモデル

 補助事業終了後の事業化に向けたスケジュールは図9の通りである。平成30年内に、スポーツウェアメーカーに向けて集中的に営業活動を行う。また、10月に幕張で開催される衣料・繊維業界向けの展示会「XXX展示会」に出展する。平成30年の終盤から平成31年の中旬にかけてスマホアプリを開発する。それと並行して、スポーツウェアメーカーにはセンシング繊維活用アンダーウェアを開発してもらう。平成31年の中旬から最終消費者に向けて販売を開始する予定である。それに先駆けて、平成31年から製造ラインの正社員を3名、営業・マーケティング担当の正社員を2名採用する。販売量が増える平成33年には、さらに製造ラインの正社員を5名、営業・マーケティング担当の正社員を3名採用する。

 ○図9:補助事業終了後の事業化スケジュール
補助事業終了後の事業化スケジュール
 【POINT】新製品・サービスを開発して終わりではなく、補助事業終了後に事業化につながる道筋がついていることを示すことが重要である。技術的課題その他の残課題がある場合には、それらをいつまでにどのようにして解決するのかを記述する。事業化に向けては、特にマーケティング・営業の方法を具体的に記述することがポイントとなる。新製品・サービスを購入してくれる可能性が高い有力な顧客名がいくつか挙がっていると、計画の実現可能性が高いと映る。

 ただし、「親会社からの要請に従って最新設備を導入する。設備を導入すれば親会社から発注量を増やすという話をいただいている」という計画は感心しない。経営としては非常に受け身であるし、何よりも親会社の約束など所詮は口約束にすぎず、簡単に反故にされる。親会社は発注量を増やすと約束したのに、後から「やっぱり海外の工場を使うことにした」などと言い出すのはよくある話である。親会社以外の潜在顧客にも通用するような競争力のある製品・サービスを開発し、新規顧客を能動的に開拓する計画を立てることが肝要である。

 審査項目の「【事業化面】③補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か」とも関連。
 ◆会社全体の事業計画
 既存事業、本補助事業を含む新規事業、ならびに両者を合算した会社全体の損益計算書は表2の通りである。

 ○表2:既存事業、新規事業、会社全体の損益計算書
20190319_③事業計画

 試算にあたっては以下の前提を置いている。

 <既存事業>
 ・売上高は国内市場の縮小に伴い、前年比マイナス3%で計算。
 ・売上原価については、売上高の減少に伴い変動費が減少するが、固定費は減少しないため、前年比マイナス2%で計算。
 ・販管費はコスト削減のために前年比マイナス5%で計算。
 ・減価償却費は一定とする。

 <新規事業>
 ・売上高は表1(※前回の記事を参照)の金額を使用。
 ・材料費(変動費)については、既存製品に比べて付加価値の高い製品を開発するため、売上高の60%と、既存製品の材料費率よりも低く設定。
 ・外注加工費(変動費)は売上高の5%と仮定。
 ・物流費(変動費)は売上高の3%と仮定。
 ・製造ラインで正社員を平成31年に3名、平成33年に5名採用する計画であり、それに伴って売上原価の労務費(固定費)が増加する。平均給与は500万円(法定福利費を含む)とする。また、各社員の給与は毎年2%ずつ上昇する。
 ・減価償却費(固定費)は、本補助事業で導入する生産設備(3,000万円)の分である。平成30年の後半に導入し、5年間で償却する。試算上、圧縮記帳は想定していない。
 ・営業・マーケティング担当の正社員を平成31年に2名、平成33年に3名採用する計画であり、それに伴って販管費が増加する。平均給与は500万円(法定福利費を含む)とする。また、各社員の給与は毎年2%ずつ上昇する。
 ・研究開発費については、平成30年に本補助事業の経費として、センサ・回路繊維開発費用(400万円)+電池部分繊維開発費用(200万円)を計上する。平成31年には一旦研究開発費が減少するが、以降も継続的に研究開発を進め、徐々に拡張していく。
 ・広告宣伝費については、平成30年に展示会の出展費用(400万円)を計上する。平成31年以降は100万円ずつ計上する。
 【POINT】申請書には会社全体の表のフォームしか用意されていないが、丁寧に試算するならば、既存事業の損益計算書、本補助事業を含む新規事業の損益計算書を別々に作成し、その上で両者を合算した会社全体の損益計算書を作成するのが望ましい。今回からは、試算の根拠・前提を明記することが求められている。

 既存事業が頭打ちであるから、補助金を利用して新製品・サービスを開発したり、新規事業への進出を検討したりするのが一般的であろう。よって、既存事業の将来の業績は徐々に下がっていくか、よくて横ばいになっている方が自然である。新規事業に関しては、立ち上げ当初は初期投資が重くのしかかるため、どうしても赤字になりやすい。最初から黒字になる計画はかえって怪しい。

 最後に、既存事業のみを継続した場合の向こう5年間の経常利益(累積)と、新規事業に進出した場合の会社全体の5年間の経常利益(累積)を比較する。ごく稀に、後者が前者よりも小さくなることがある。新規事業の初期投資が大きすぎると、既存事業の経常利益を大幅に食い尽くしてしまうためだ。これでは既存事業を継続した方がマシになってしまい、何のために新規事業に進出するのか解らなくなる。

 なお、通常の損益計算書とは異なり、経常利益を「営業利益-営業外費用」で計算する点に注意する。これは、中小企業の場合、営業赤字を営業外収益(「雑収入」という、実態が不明の収入)で賄って経常利益を捻出しているケースが見られるので、本来の儲ける力をより明確に可視化するための措置である。

 審査項目の「【技術面】①【革新的サービス】においては、中小サービス事業者の生産性向上ガイドラインで示された方法で行うサービスの創出であるか。また3~5年計画で「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成する取組みであるか/【ものづくり技術】においては、特定ものづくり技術分野の高度化に資する取組みであるか。また3~5年計画で「付加価値額」「経常利益」の増大を達成する取組みであるか」、「【事業化面】④補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して想定される売上・収益の規模、その実現性等)が高いか」とも関連。
2019年05月01日

平成30年度補正ものづくり補助金申請書の書き方例(1)(※注意点つき)


事業計画書・マーケティング

 ※補助金を初めて受ける企業に読んでいただきたい記事
 【シリーズ】補助金の現実
 【シリーズ】「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)
 平成30年度補正ものづくり補助金の第2次締切は2019年5月8日(水)〔消印有効〕である。今回の記事は、「ものづくり補助金(平成29年度補正予算)申請書の書き方(1)(2)」の焼き直しである。記述例の作成にあたっては、高橋透『技術マーケティング戦略』(中央経済社、2016年)に記載されている架空の事例を私が編集した。以下のサンプルは1万字程度だが、過去の採択事業者から話を聞くと、A4で15ページ前後の申請書を作成しているところが大半であった。今回は公募要領の中で、様式1と様式2を合わせて15ページ以内、文字サイズは10.5ポイントと指定されている。ルールに反した場合は、それだけで形式要件違反と見なされ、不採択となる可能性がある。様式1は全社共通の表紙であり、様式2の冒頭2ページは会社情報を記載するため、実際に事業計画を書くことができるのは12ページ程度と考えた方がよい。

技術マーケティング戦略技術マーケティング戦略
高橋 透

中央経済社 2016-09-22


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 【事業計画名】
 導電性繊維技術を利用した、ウェアラブル装置に代わるセンシング繊維の開発

 その1:革新的な試作品開発・生産プロセスの改善の具体的な取組内容
 ◆当社の概要
 当社は1950年に創業した繊維企業である。創業当時から蓄積してきた紡績・織布/編成・染色加工・縫製における独自の技術を活かし、コットンやウール、麻など天然繊維をベースにした高機能・高感度の繊維製品を製造・販売している。近年は導電性繊維(※)フィルム、炭素繊維を開発し、多様な要素技術を有するのが強みである。また、産官学でのオープンイノベーションにも積極的に取り組んでおり、他からの技術支援を受けられる体制が整っている。

 (※)導電性繊維=通常、繊維を形成する高分子化合物は絶縁体であるが、特に導電性を持たせた繊維を導電性繊維と言う。近年、石油化学工場における静電気による火災の防止、医薬品工業,精密電子工業におけるほこりの付着や放電の防止のために、優れた制電性を有する被服材料が要求されている。現在開発されている導電性繊維には,①合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させたもの、②ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、③有機物繊維の表面を金属で被覆したもの、④有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆したもの、などがある(「世界大百科事典 第2版」より)。

 ○主な取扱製品
 ①一般・カジュアル衣料品=シワ形状コントロール素材で、ビジネスカジュアルからヴィンテージまで幅広いファッションに対応できるテキスタイル素材。
 ②ユニフォーム関連=防炎性の優れたアクリル系繊維プロテックスと、製造段階でできた落綿を含むコットンを混紡。防炎機能とエコロジーを兼ね備えたテキスタイル素材。
 ③一般衣料品・生活雑貨・インテリアホームテキスタイル=糸の内部に空隙を持つ、軽くて膨らみ感のあるソフトな風合い、優れた吸水性を持つ特殊紡績糸素材。
 ④抗菌・抗ウイルス機能繊維=繊維上のウイルスの数を減少させ、細菌、真菌などの増殖を抑制。高機能と高い安全性、洗濯耐久性を実現。
 【POINT】審査員は公募企業のことを知らないことが大半であるため、最初に簡単に会社の概要を説明するとよい。特に、強みに触れるとベター。ただし、ページ数が限られていることから、できるだけ簡潔に記述する。
 ◆開発の背景
 当社を取り巻く事業環境をPEST分析した結果、図1のようになった。

 ○図1:PEST分析の結果
PEST分析の結果

 ○図2:成人の週1回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移
成人の週1回以上運動・スポーツを行う者の割合の推移

 我が国は高齢化の進行に伴って社会保障費が毎年1兆円ずつ増加する見込みであり、社会保障費の抑制が喫緊の課題になっている。そのためには、国民が健康を維持することが重要である。幸い、健康に対する意識の高まりとともにスポーツ人口(特に女性)は中長期的に見ると増加傾向にあり(図2)、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催もスポーツ関連需要の拡大を後押ししている。文部科学省も「できるかぎり早期に、成人の週1回以上のスポーツ実施率が3人に2人(65%程度)、週3回以上のスポーツ実施率が3人に1人(30%程度)となることを目標」とする「スポーツ基本計画」を掲げている。

 ところで、近年の注目すべき技術としてセンシング技術が挙げられる。ウェアラブル端末に代表されるように、体内の各種データを随時取得してモニタリングしたいというニーズが消費者の間で高まっている。そこで、当社は強みである導電性繊維とセンシング技術を組み合わせて、健康意識の高いスポーツ愛好者をターゲットに、ウェアラブル端末よりも多様なデータを取得することが可能な、センシング繊維を開発することとした。
 【POINT】開発する製品・サービスをいきなり説明するのではなく、開発の背景にも触れる。その際、客観的な分析結果があると説得力が増す。なお、この後の記述にも共通することだが、図表は別添資料とせず、本文に入れ込むべきである。審査員の中には、別添資料を読まない人がいる。特に今回は、ページ数が15ページと限定されていることから、添付資料が多いと心象が悪くなる。
 ◆開発する製品
 今回開発するのは、図3のようなセンシング繊維である。ウェアラブル端末で取得可能な心拍数、体温に加えて、センシング繊維では心電波形、加速度も取得できる。当社が製造したセンシング繊維を活用して、顧客であるスポーツウェアメーカーはアンダーウェアを製作する。アンダーウェアを購入した最終消費者はまず、モニタリング・解析用のアプリケーションをスマートフォンにインストールし、会員登録する。次に、アンダーウェアに記載されているQRコードを読み取り、会員情報と紐づける。最終消費者が複数のアンダーウェアを購入・使用する場合でも、同一IDの下に身体情報を蓄積・管理することが可能である。アンダーウェアが取得した情報は、Bluetoothを通じてスマートフォンのアプリケーションに転送される(図4。なお、アプリケーションはスポーツウェアメーカーがスマートフォンアプリ開発会社に開発委託することを想定している)。

 ○図3:センシング繊維の概要
センシング繊維

 ○図4:センシング繊維活用アンダーウェアからスマートフォンへのデータ転送イメージ
ウェアラブル端末からスマートフォンへの転送

 (※適当な画像がなかったため、こちらから拝借した。本当は、アンダーウェアとスマートフォンの連携の図を記載する)
 【POINT】審査員は、必ずしも応募企業の技術に詳しいとは限らない(むしろ詳しくないと考えた方がよい)。審査員に製品・サービスのイメージが湧くよう、ビジュアルを多用して表現するのが望ましい。

 開発する製品・サービスは「革新的」でなければならない。自社も他社も全く手がけていない製品・サービスは真の意味で革新的である。しかし、そこまで革新的な製品・サービスはなかなか思いつかない。ものづくり補助金における「革新的」とは、「競合製品・サービスは存在するが、自社にとって初となる取り組みであり、競合他社の提供価値を凌駕するもの」を意味すると考えればよい。

 今回のものづくり補助金の正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」である。「生産性向上」であって「業務効率化」ではない。現行の工程は手作業が多く、設備も老朽化しているから最新の設備に入れ替えたい、熟練工の退職を控え、ノウハウを守るために設備を導入したい、あるいは一部の外注工程を自社に取り込むために設備を新設したいというのではまるで話にならない。

 今回の補助金では、「先端設備等導入計画」の認定を受けている、あるいは申請中である場合、審査結果に加点される。個人的にはこの計画には懐疑的である。先端設備を導入すれば中小企業の競争力が上がるのであれば、国が補助金を出して全ての中小企業に先端設備の導入を義務づければよい。そういう流れにならないのは、企業のプロセスや強み、その源泉となる経営資源には特殊性があり、最新設備が必ずしもその企業にフィットするとは限らないからである。昔、Googleが急成長を遂げていた時、世界中からのトラフィック増に対応する必要があった。Googleは最新スペックのサーバを導入せずに、かき集めた旧式サーバを改良して巨大なネットワークを形成し、最新サーバよりもはるかに高い処理能力を達成した。

 審査項目の「【技術面】①新製品・新技術・新サービス(既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン・アイディアの活用等を含む))の革新的な開発となっているか」とも関連。
 ◆技術的な課題と解決策
 センシング繊維を開発するにあたっての技術的な課題と解決策は以下の通りである。課題の達成度合いは下記の指標にて判断する。
 【要素技術開発】
 ①導電性繊維・フィルムの導電性アップ⇒素材、組合せの見直しによる効率アップ(目標効率=○○%アップ)。
 ②発電繊維による発電量の確保⇒ナノファイバーを利用し、摩擦発電と圧電効果による発電のハイブリッド構造により実現(目標発電量=○○μA)。
 ③電気回路の設置⇒印刷方式の回路を生地にプリントする方式を採用(目標品質=○○)。

 【設計技術開発】
 ①生地の伸縮性、肌との密着度、データ精度と着心地のバランス⇒既存スポーツ向け繊維に発電用の炭素繊維を織り込むことで伸縮性を確保しつつ、圧着による皮膚接触圧を確保、デー測定の安定を図る(目標データ精度=医療用との相関r=0.7)。
 ②洗濯耐久性⇒特に課題となる、回路やセンサ部分を繊維、印刷加工にすること、フィルムコーティングすることで洗濯耐久性を確保(目標品質=○○)。

 【生産技術開発】
 ①発電、二次電池用炭素繊維の生産方法⇒溶融紡糸生産方式を用い、カーボンナノファイバー化することにより実現(目標生産量=○○)。
 ②生産キャパシティ、フレキシブルな生産⇒新規生産設備の導入(協力メーカーとの一部共同開発)(目標生産量=○○)。
 【POINT】技術的な課題は3~5個程度記述する。私が繊維業界に詳しくないため上記の例では文章でしか記述していないが、この部分も図面やポンチ絵などを用いてビジュアルで訴求したい。技術的な課題と解決策は審査の重要ポイントであるため、2ページほど記述がほしい。解決策を提示するだけではなく、本補助事業における「達成度の考え方」=ゴールを明確に設定することが欠かせない。上記の例では、「目標データ精度=医療用との相関r=0.7」などがそれにあたる。

 審査項目の「【技術面】②サービス・試作品等の開発における課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか、③課題の解決方法が明確かつ妥当であり、優位性が見込まれるか」とも関連。
 ◆開発体制およびスケジュール
 開発体制および開発スケジュールは図5・6の通りである。回路の生地プリントについては、長年の協力企業である○○紡績株式会社からの支援を受ける。また、発電繊維に関する技術については、○○大学○○研究室と共同で研究を進める。

 ○図5:開発体制
開発体制

 ○図6:開発スケジュール
開発スケジュール

 <各タスクの説明>
 【要素技術開発】
 ①導電性繊維・フィルムの導電性アップ=森(フィルム技術)が中心となり、山口(炭素繊維技術)の支援を受けながら、○○シミュレーション方式、△△シミュレーション方式を用いて、素材u、v、wなど7種類の素材の中から最適な組み合わせを特定する。
 ②発電繊維による発電量の確保=・・・。
 ③電気回路の設置=・・・。

 【設計技術開発】
 ①生地の伸縮性、肌との密着度、データ精度と着心地のバランス=・・・。
 ②洗濯耐久性=・・・。

 【生産技術開発】
 ①発電、二次電池用炭素繊維の生産方法=・・・。
 ②生産キャパシティ、フレキシブルな生産=・・・。

 【試作品の生産・品質検証】=・・・。
 【POINT】開発体制を図で表し、責任者と担当者を明確にする。連携している協力会社や大学などがあればそれも記載する。「外注先」、「提携大学」などではなく、固有名詞を書く。自社に足りないリソースは外部から調達できる目途が立っていることを審査員にアピールする。開発スケジュールはガントチャートで表した上で、それぞれのタスクの詳細(誰が、何を、どのように行うのか)を説明する。

 補助事業期間中に補助事業が完了するように留意する。今回は、「一般型」の場合は2019年12月27日(金)まで、「小規模型」の場合は2019年11月29日(金)までとなっている。2次締切に応募した場合、採択結果が出るのはおそらく6月前半である。それから交付申請を行い、交付決定が下りてからようやく補助事業を開始することができる。早ければ6月中に交付決定が下りるだろうが、交付申請に手間取ると事業開始が7月にずれ込む。完了期限までの時間は意外と短い。

 設備投資の場合、機械の選定や仕様の打ち合わせに数か月を費やし、最後の1~2か月で納入、検収、支払を行って事業完了とする計画がたまに見られる。支払いが終われば補助事業完了ではない。前述の「達成度の考え方」がどの程度達成されたのかを検証して初めて補助事業は完了となる。よって、一定の試作品を製作し、品質などをチェックする時間もスケジュールに盛り込んでおかなければならない。検証作業が不十分だと、補助事業終了後に事務局に提出すべき「完了報告書」を作成することができず、補助金の支払いを受けられないこともあり得る。

 また、機械の納入を補助事業完了期限ギリギリにすると、完了期限間際に機械メーカーの製造が集中し、納品が遅れることがある。補助事業期間内に機械が納品されなかった場合、代金を支払わないという契約になっていればよいのかもしれないが、機械メーカーが中小企業側の要求に応じないことも考え得る。仮に代金の支払いを回避できたとしても、公募のために一生懸命作成した事業計画が実行できなくなるのだから、中小企業にとっては痛手である。こうした事態を避けるためにも、スケジュールには余裕を持たせるべきである。

 審査では、「補助事業の実施体制」と「事務処理能力」の両方が見られる。上記の例では十分に書くことができなかったが、「事務処理能力」の有無も実は重要である。冒頭で示した「【シリーズ】補助金の現実」の記事にもあるように、補助金を受けるには事務局と大量の書類をやり取りしなければならない。よいか悪いかは別として、「ものづくり補助金は書類づくり補助金である」と揶揄される。

 事業面の計画と実績、費用面の計画と実績を正確に書類に落とし込むことができる人材が必要となる。事務局は1円単位の間違いでも絶対に見逃してくれない。少人数の中小企業では、社長または経理担当者が両方の書類作りをしなければならないだろう。しかし、社長は費用面のことを、経理は事業面のことを理解していないことが往々にしてある。よって、個人的な理想を言えば、社長と経理の2人で事務処理にあたることを明記するのが望ましいと考える。

 審査項目の「【技術面】④補助事業実施のための体制及び技術的能力が備わっているか」、「【事業化面】①事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか」とも関連。
 (「平成30年度補正ものづくり補助金申請書の書き方例(2)(※注意点つき)」へ続く)



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