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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2017年11月21日

『正論』2017年11月号『日米朝 開戦の時/政界・開戦の時』―ファイティングポーズは取ったが防衛の細部の詰めを怠っている日本


正論2017年11月号正論2017年11月号

日本工業新聞社 2017-09-30

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 以前の記事「『天皇陛下「譲位の御意向」に思う/憲法改正の秋、他(『正論』2016年9月号)』―日本の安保法制は穴だらけ、他」、「『北朝鮮”炎上”/日本国憲法施行70年/憲法、このままなら、どうなる?(『正論』2017年6月号)』―日本はアメリカへの過度の依存を改める時期に来ている」、「『愚神礼讃ワイドショー/DEAD or ALIVE/中曽根康弘 憲法改正へ白寿の確信(『正論』2017年7月号)』―日本は冷戦の遺産と対峙できるか?」で、アメリカは北朝鮮がアメリカ本土に届く核兵器(ICBM)を完成させるのを待っている、北朝鮮が核兵器を完成させれば、かつてアメリカが旧ソ連と行ったのと同様に核軍縮に向けた対話が始まると書いたが、これは実に甘い見通しだったと反省している。

 冷戦時代にアメリカと旧ソ連、NATOと旧ソ連の間で核軍縮に向けた対話が実現したのは、双方が核に関する条件を出すという交渉の対称性があったからである。同じ土俵の上で対話を行っているため、相手が譲歩すればこちらも譲歩する、あるいはこちらが譲歩すれば相手も譲歩することが期待できた。ところが、現在の米朝間の問題は、これとは性質が異なる。アメリカは北朝鮮に対し核兵器の放棄を要求する。一方の北朝鮮は、在韓米軍の撤退を要求するに違いない。つまり、交渉が非対称である。そして、双方の立場を比べると、明らかに北朝鮮の方が有利である。仮にアメリカが北朝鮮の要求を呑んだ場合、北朝鮮は通常兵器でやすやすと韓国を併合するだろう(左傾化している韓国も、北朝鮮に併合されることを望んでいるかもしれない)。

 だから、非常に危険な賭けではあるが、交渉の対称性を取り戻すためには、韓国に核兵器を持たせるという選択肢もあり得るのではないだろうか?南北双方が核兵器を保有することで、交渉を米朝間から南北間へと移行させる。そして、冷戦時代の交渉と同様に、徐々に核軍縮を進めていき、最終的には朝鮮半島から核を取り除く。この場合、米韓同盟は保たれ、在韓米軍もそのままであるから、北朝鮮は韓国に手出しをすることができない。朝鮮半島は現状維持のままで非核化されるわけだから、アメリカ、中国、日本にとっても最高のシナリオとなる。

 さて、以前の記事「『躍進トランプと嫌われるメディア(『正論』2016年7月号)』―ファイティングポーズを見せながら平和主義を守った安倍総理という策士、他」では、安保法制によって、日本はいざとなれば自国を守る意思があるというポーズを安倍首相が示したと書いたが、このポーズは空元気であって、実際には以前の記事「『天皇陛下「譲位の御意向」に思う/憲法改正の秋、他(『正論』2016年9月号)』―日本の安保法制は穴だらけ、他」で書いたように、国防の細部が詰められていない。本号でも、現在の日本に存在する穴がいくつか指摘されていた。

 ・米韓両国は最悪の事態には実力で北朝鮮の核やミサイルを防ぎ、破壊する能力を有している。ところが、日本は北朝鮮がミサイルを発射するたびに、「断じて容認できない」と繰り返し、アメリカや韓国、加えて中国やロシア、さらには国連と連携して対処することばかりを強調している。つまり、日本独自の措置が出てこない(古森義久「戦えない国家日本でいいのか」)。

 ・韓国には3万8千人の日本人が在住しており、いざという時には彼らをどのようにして避難・脱出させるのかを想定しておく必要がある。国民の中には、「安保法制が整備されたのだから、現地の日本人は自衛隊が救い出せるのではないか?」と考える人もいるが、実は自衛隊による邦人救出は相手国の同意がなければ実行することができない(薗浦健太郎「インタビュー 北朝鮮に核を放棄させる安倍官邸の国家戦略」)。それにもかかわらず、いわゆる駆けつけ警護は安保法制で可能になっている。日本人よりも外国人の生命を先に守ろうというのだから、日本も随分とお人好しな国だと思う。ちなみに、北朝鮮の拉致問題が一向に解決しないのは、法律上、自衛隊が北朝鮮の邦人救出をすることができないことも一因である。

 ・第1次安倍政権の2004年6月14日に有事法制諸法が成立したが、それ以前は外国の武力攻撃があっても国土交通省、総務省などが所管する法令が自衛隊に厳格に適用され、その行動に大きな制約をかけていた。例えば、敵の攻撃で狙われやすい空港を守ろうと、自衛隊が管理下に置きたくても、法律の壁があって実現不可能であった。では、有事法制の成立によって自衛隊が空港を自由に使えるようになったかと言うと、全くそんなことはない。

 日本には軍民共用の空港が多い。無論、海外にも軍民共用の空港はあるものの、多くは輸送機などを装備する兵站基地であり、領空侵犯対処と防空の第一線にある飛行場を軍民共用にしている例は滅多にない。その軍民共用空港で危機が高まった場合、空港にいる民間人を退去させ、土産店やレストランなどを閉鎖させ、航空会社にも民間航空機の乗り入れを自粛(場合によっては禁止)させなければならない。乗客を的確に避難させ、駐機している航空機を撤去させる場合もある。命令に従わない者の身柄拘束も想定しておかなければならない。だが、こうした手順や法的権限を整理・明記したものはない(樋口恒晴「これでは日本は守れない」)。

 ・北朝鮮が何らかのミサイルを日本に向けて発射した場合、果たして本当に迎撃できるのかどうかが問題となる。大気圏外で迎撃するイージス艦からのSM3ミサイルは1発20億円で、その数には限りがある。北朝鮮が大量のミサイルを撃ち込んだ場合には、SM3ミサイルでは撃ち漏らしが生じる可能性がある。その場合は、地上から迎撃するPAC3ミサイルがあるが、迎撃に成功してもミサイルの破片が落下して被害が出る。破片の大きさは数十キロから百キロに達する可能性がある。(麻生幾「麻生幾が語る 日本が核武装する日」)。

 SM3/PAC3ミサイルによる迎撃については、古是三春「北朝鮮の核とミサイル 徹底検証」でより具体的なシミュレーションがなされていた。やや長くなるが、要点は以下の通りである。

 ・地下サイロからなる弾道ミサイル発射用固定基地は、米韓軍がその正確な位置を把握しているため、衝突が始まれば精密誘導爆撃でたちどころに破壊される。問題は、自走発射台から発射されるミサイルである。米軍の推定では、50基の自走発射台が運用下にある場合、ローテーションを考慮するならば、1日に最大40発程度が発射される。この40発は、半分が朝鮮半島の米韓軍拠点に、残り半分が日本で最大の米軍兵站基地である横田基地に打ち込まれる。

 日本海に展開する6隻の海自イージス艦のうち、2隻はローテーション運用のために待機しているため、迎撃にあたるイージス艦は4隻となる。各イージス艦はSM3ミサイルを8発ずつ搭載しており、弾道ミサイルを8発×4隻=32発で迎撃する。1発の目標ミサイルに対して2発の迎撃ミサイルで対処するので、全て命中すれば16発の弾道ミサイルを大気圏外で破壊できる。残る4発は、PAC3ミサイルが高度10キロ、有効射程20キロで捕捉を図る。同様に1ミサイルに対し2発のミサイルを差し向けたとして、8発を要する。現在、PAC3ミサイルは二個高射群が運用しており、これらは有事が想定されれば、重要施設にそれぞれ配置される。横田基地周辺に配置されるのは一個高射群にとどまるはずで、それが持つ迎撃ミサイルは32発である。

 問題は2日目以降である。1日目と同様、20発が横田基地に差し向けられた場合、洋上では前日にSM3ミサイルを撃ち尽くしたイージス艦4隻に代わって、待機中だった2隻が計16発のSM3ミサイルで迎撃を図る。これらが撃墜できる弾道ミサイルの最大数は8発である。残り12発に対して、横田基地付近に配備された高射特科群が前日に使わずに残した24発を差し向ける。幸運ならこれで飛来した弾道ミサイルを全て破壊できるが、翌日から使用できるPAC3ミサイルはない。洋上の6隻のイージス艦でもSM3ミサイルは枯渇している。そうなると、攻撃3日目からは、北朝鮮の弾道ミサイルは何ら迎撃されずに日本に着弾することになる。

 安倍首相は安保法制でファイティングポーズを見せたまではよかったが、それ以来、上記の穴を放置したままにしている。北朝鮮がICBMを完成させるまでに残された時間は少ない。山積する諸問題を早期に解決する政治的決断が必要とされている。同時に、国民の生命を守るために最大限の措置を講ずることも不可欠である。その際に参考となるのが、永世中立国・スイスである。スイス政府は『民間防衛』という冊子をまとめており、その中に次のような記述がある。

民間防衛ーあらゆる危険から身をまもる民間防衛ーあらゆる危険から身をまもる
原書房編集部

原書房 2003-07-07

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 深く考えてみると、今日のこの世界は、何人の安全も保障していない。戦争は数多く発生しているし、暴力行為はあとを絶たない。われわれに危険がないと、あえて断言できる人がいるだろうか。
 最小限度言い得ることは、世界がわれわれの望むようには少しもうまく行っていない、ということである。危機は潜在している。恐怖の上に保たれている均衡は、十分に安全を保障してはいない。それに向かって進んでいると示してくれるものはない。こうして出てくる結論は、我が国の安全保障は、われわれ軍民の国防努力いかんによって左右される。
 日本国憲法の前文に「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあるのとは対照的である。現在の日本の周囲には、「平和を愛する諸国民」がどれだけいるだろうか?この点、スイスは徹底的なリアリズムを貫いている。

 同書の中には、有事に備えて家庭で備蓄しておくものとして、家族1人につき米、麺類、砂糖各2キロ、食用脂肪1キロ、食用油1リットル、他にスープ、ミルク、果物、肉、魚などの缶詰、石鹸や洗剤、冬の燃料などが挙げられている。また、スイスの核シェルターは有名で、1970年代の後半、10万人を収容可能な核シェルターが工事中で話題になったことがある。200~800人程度を収容する一般シェルターなら公共の設備として至るところに設けられている。内部には医療設備、調理室や食堂、子どものための遊び場や通信施設なども用意され、万一貯水池に毒物を混入された場合は地下水をくみ上げて利用するために削岩機やコンプレッサまで備えている。

 北朝鮮の弾道ミサイル発射によってJアラートが発動した時、「地下に隠れてくださいと言われてもそんな地下はない」という声が各地から聞かれた。日本の技術力をもってすれば、政治的決断さえあればわずか2年で核弾頭つきの弾道・巡航ミサイルを配備できるそうだ(麻生幾「麻生幾が語る 日本が核武装する日」)。だが、日本では核武装に対して世論の壁が大きく立ちはだかるのは間違いない。それならば、同じ政治的決断力をもって、せめて国民を守るための地下シェルターを急ピッチで整備することが重要ではないかと思う(公共工事にあたるため、景気対策としても有効である)。そうすれば、Jアラートに対して「朝からうるさい」とか「戦争への恐怖を煽り立てる」とか文句を言うくせに、本当に北朝鮮のミサイルが日本に着弾したら「政府は何もしなかった」と批判するに違いない理不尽な国民を黙らせることができるであろう。

 《参考》占部賢志「連載・第52回 日本の教育を取り戻す 比較検証・スイスと日本 平和をいかに守るのか」(『致知』2017年11月号)

致知2017年11月号一剣を持して起つ 致知2017年11月号

致知出版社 2017-11


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2017年11月14日

DHBR2017年11月号『「出る杭」を伸ばす組織』―社員の能力・価値観を出発点とする戦略立案アプローチの必要性


ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 11 月号 [雑誌] (「出る杭」を伸ばす組織)ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 11 月号 [雑誌] (「出る杭」を伸ばす組織)

ダイヤモンド社 2017-10-10

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 事業戦略から人事戦略へと落とし込む一般的なアプローチは次の通りである。

 ①自社の外部環境を分析し、自社にとって魅力的な事業機会を抽出する。
 ②その事業における市場・顧客と競合他社を分析し、自社のポジショニングを決定する。
 ③中長期的な戦略目標(売上高、利益額、利益率、市場シェアなど)を設定する。
 ④③を達成するためのCSF(Critical Success Factor:重要成功要因)を特定する。
 ⑤CSFを織り込んだビジネスモデル、ビジネスプロセスを設計する。
 ⑥⑤のビジネスプロセスを実現するために必要な社員の数と能力を明らかにする。
 ⑦⑥の人材要件と現状の社員の実力とのギャップを分析し、ギャップを埋めるための施策(教育、配置転換、採用など)を立案する。

 ①~⑤については、以前の記事「【戦略的思考】SWOT分析のやり方についての私見」をご参照いただきたい。⑥⑦がいわゆる人事戦略に相当するものである。①~⑦は、企業の外部環境を検討の出発点としているから、「外部環境アプローチ」と呼ぶことができる。ただし、このアプローチの問題点は、企業側の都合に社員を合わせているという点にある。企業と社員の方向性がぴったり重なっていれば問題ないのだが、多くの場合はそうではない。そして、両者のベクトルが異なる時、悲劇が起こる。本号では、特に、優秀で将来を有望視されたリーダーが凡庸な社員に成り下がってしまうケースが報告されている。
 企業が優秀な人材の獲得合戦を繰り広げている時代に、人によっては、有能さを認められることが呪縛になると認識するのは難しい。ところが、それは現実なのだ。リーダー志願者は、他者の期待に応えようと一生懸命に仕事に励む。すると、彼らをもともと際立たせていた資質―他者より優れ、仕事に熱心に取り組んでいると感じさせた能力―は埋もれる傾向にある。みんなと同じように振る舞うようになり、エネルギーと野心が削がれていく。職場で単に仕事をするふりを始めたり、(中略)逃げ出すきっかけを探し始めたりするかもしれない。
(ジェニファー・ペトリグリエリ、ジャンピエロ・ペトリグリエリ「『理想化』と『同一化』の葛藤を乗り越えられるか 逸材を襲う組織人の呪縛」)
 本号の特集テーマは「『出る杭』を伸ばす組織」である。言い換えれば、どうすれば社員の尖った能力を企業の戦略に活かすことができるか、ということである。冒頭の「外部環境アプローチ」に対して、社員を出発点とする戦略立案は「内部環境アプローチ」と呼ぶことができるだろう。

 私はしばしば本ブログで、下の階層の者が上の階層の者に対して、「もっとこうすればあなた(=上司)は高い成果を上げられるのではないか、企業全体がよくなるのではないか、顧客のためになるのではないか」と提案する「下剋上」(山本七平からの借用)の重要性を説いてきた。内部環境アプローチとは、言い換えれば、この下剋上が活性化された状態である。ただ、以前の記事「『一橋ビジネスレビュー』2017年AUT.65巻2号『健康・医療戦略のパラダイムシフト』―抜本的改革ではなく「できるところから」着手するBCGの病院改革に共感した、他」でも告白したように、私は外部環境アプローチに関してはいくつかのフレームワークを持っているものの、内部環境アプローチについてはこれといった方法論をまだ持ち合わせていない。人材育成が専門だと公言している者としては、誠に恥ずかしい限りである。

 そこで、大まかだが、内部環境アプローチの手順について考えてみた。

 ①社員の職歴、人生を振り返って、大切にしている価値観や習得した能力を棚卸しする。
 ②社員の価値観や能力を下地として、社員がやりたいと思っていることを構想する。
 ③社員のやりたいことを集約して、企業としての方向性を打ち出す。
 ④社員の価値観を総合して、社員が従うべき共有価値観を構築する。
 ⑤それぞれの社員の価値観や能力をどのように組み合わせれば③の方向性を実現できるのかを検討し、ビジネスプロセスを設計する。

 ①②はキャリアデザインのことである。①②は本来、社員の能力を知り尽くしているはずの人事部が行うのがふさわしい。だが、人事部は従来型の外部環境アプローチに慣れ親しんでいるため、いきなり①②を行うのは難しいかもしれない。また、社員としても、仕事の話が中心だった人事部との面談で、パーソナルな面を打ち明けるのはためらわれるかもしれない。そこで、キャリアコンサルタントという第三者の力を借りることとなる。2016年4月に「改正職業能力開発促進法」が施行され、企業は社員に対し、「キャリアコンサルティングの機会の確保その他の援助を行うこと」(第10条の3第1項)が義務化された。キャリアコンサルティングとは、「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと」(第2条第5項)と定義されている。

 平たく言えば、企業が社員のキャリア形成を支援することが法的に要請されており、キャリアコンサルタントに大きな期待が寄せられているということである。一般的に、キャリアコンサルティングと言うと、社員が上司や人事部には直接言いづらい仕事上、あるいは私生活上の悩みを相談したり、職場で起きている問題点を指摘したりする場だと考えられている。もちろんこれはこれで重要な側面であり、キャリアコンサルタントは被面談者の話を受けて、個人情報保護の観点から個人が特定できないように情報を編集し、組織全体の課題と対応策をまとめて人事部や経営陣に報告する組織開発的な役割が求められている。加えて私は、戦略立案の内部環境アプローチという観点からは、自社の社員のキャリア性向を踏まえて、企業としてどういう方向に向かうとよいのかを積極的に提案する戦略コンサルタントのような役割が上乗せされると考える。

 キャリアコンサルティングを通じて社員個々の能力や価値観を活かすと言っても、個人がてんでバラバラに動くようでは組織としての体をなさない。そこで、④にある共有価値観を定める必要がある。これはその企業で働く社員として、最低限守らなければならないルール集のようなものである。どのくらいの数のルールを設ければよいのかは難しい問題であるが、社員に大幅な権限移譲をしているリッツカールトン(例えば、社員は上司の決裁を仰がずに、2,000ドルまでを顧客のために自由に使うことができる)では、300もの決まりが定められているそうだ(フランチェスカ・ジーノ「同調圧力が生産性を低下させる 『建設的な不調和』で企業も社員も活性化する」)。意外とルールの数は多いのだという印象を受けた。

 共有価値観に関しては、海外の軍隊の考え方が参考になる。軍隊は、戦闘現場で状況に応じて柔軟な対応が求められる。そこで、「絶対にやってはいけないこと」だけを定めて、それ以外のことは現場の自由にやらせるという考え方を取っている。これを「ネガティブリスト方式」と呼ぶ。逆に、日本の自衛隊の場合は、法律で「やってよいこと」を列挙しており、「ポジティブリスト方式」と呼ばれる(この方式は制約が多く、現場では葛藤が生じていると聞く)。共有価値観、すなわち、「我が社の社員は○○しなければならない」というルールは、裏返しに読めば、「我が社の社員は○○してはならない」というルールになる。そして、そのルールに抵触しない限りは自由に振る舞うことを社員に許可することが重要である。日本の場合、共有価値観に従っていさえすればよいと考えて、ルールの枠内に収まろうとする傾向がある。この傾向を打破しなければならない。

 ⑤は、「仕事に人を割り当てる」のではなく、「人に仕事を割り当てる」、「人に合わせて仕事をデザインする」という意味であり、従来の発想からの転換が要求される。ピーター・ドラッカーは常々、「仕事に人を割り当てる」ことの重要性を強調していたが、実は大昔にIBMが深刻な業績不振に陥った際、時の社長であったトーマス・ワトソン・Jrが、社内で手持無沙汰にしている社員のために仕事を創り出した(つまり、社員を解雇しなかった)という逸話を好んで使っていた。「人に仕事を割り当てる」ことは、やり方次第で十分に可能なのである。

 ①~⑤は大まかな段階を示したにすぎない。私の喫緊の課題は、①~⑤に資するフレームワークやツールを作成することである。さらに言えば、上記の「内部環境アプローチ」は、自分で書いておきながらこんなことを言うのもおかしな話だが、1つ重大な欠陥を抱えている。それは、既存の社員の能力や価値観にしか注目していないということである。非社員、つまり労働市場にいる潜在的な労働力(女性やシニアなど)、さらには、まだ労働市場に出てきていない潜在的な労働力(障害者など)に着目して戦略を練るにはどうすればよいか、という難題が待ち受けている。彼ら・彼女らの能力や価値観を事前に把握し、戦略に反映させることは可能なのだろうか?

 だが、これができなければ、本当の意味での「ダイバーシティ・マネジメント」は実現しないと思う。本号では、「ニューロ・ダイバースな人材」(自閉症、統合運動障害、失読症、ADHD、社会不安障害など)を活用した経営についての論文があった(ロバート・D・オースティン、ゲイリー・P・ピサノ「自閉症、ADHD・・・人材を活かす7つの施策 ニューロダイバーシティ:『脳の多様性』が競争力を生む」)。SAPやヒューレット・パッカード・エンタープライズなどは、ニューロ・ダイバースな人材の採用に積極的であるそうだ。よく知られているように、例えば自閉症の人は、コミュニケーションに多少難があるものの、アーティスティックな仕事で高いパフォーマンスを上げることができる。彼ら・彼女らの能力を活用できれば、企業の戦略に豊かな幅が生まれるに違いない。

 最後になるが、「外部環境アプローチ」と「内部環境アプローチ」は、戦略立案プロセスの両極である。実務面で本当に有益な戦略論を構築するならば、両者のアプローチを統合しなければならない。つまり、「中庸」を取らなければならない。これが私にとって最大の難問である。
2017年11月07日

『致知』2017年11月号『一剣を持して起つ』―米朝対話が成立するとはアメリカが韓国を捨てることを意味する(ことを左派は解っていない)、他


致知2017年11月号一剣を持して起つ 致知2017年11月号

致知出版社 2017-11


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 近藤:中国の場合、国内にコピー選手をつくるんです。つまり福原愛なら福原愛のコピー、平野美宇なら平野美宇のコピーといった具合に、同じような戦い方をする選手をつくった上でその対策を練ってくる。
 国分:それはすごいな。
 近藤:なんせ中国には指導者と選手のプロが3万人はいますから、そういったことも可能なんです。日本には30人くらいしかプロはいませんから土台からして違う。
(国分秀男、近藤欽司「かくて日本一へと導いてきた」)
 中国と言うと模倣品のイメージがどうしてもつきまとう。そして、それはスポーツの世界でも同じようである。ただ、同記事で紹介されていたが、中国には「人無我有」、「人有我磨」、「人有我創」という諺があるそうだ。最初は自分だけが技術を持っている段階である。しかし、時間が経てば相手が自分の技術を真似してくる。そうしたら、相手に負けないように技術に磨きをかける。さらにそれだけでは飽き足らず、今度は相手に真似されないよう、新しい技術を創ってしまう。

 中国人にはこういうメンタリティがあることを忘れてはならない。私は、中国が21世紀のイノベーション大国になり得る十分なポテンシャルを持っていると思う。そして、日本は、かつて中国から技術や社会制度を学んだように、中国のイノベーションを輸入し、日本流にアレンジすることで生き延びていくのではないかと予想している。非常に格好悪いと思われるかもしれないが、これが小国・日本の一種の宿命である(以前の記事「『視座を高める(『致知』2016年5月号)』―日本は中国がイノベーション大国になることをアシストし、彼らから学べるか?」を参照)。

 さて、米朝関係が膠着状態に陥っている。北朝鮮は体制を維持するために核開発に邁進していると言われることが多いが、体制維持が目的であればアメリカに喧嘩を売る必要はなく、大人しくしていればよいだけの話である。アメリカに喧嘩を売ってでも核兵器の開発を急いでいるのは、体制維持以上の目的があると考えるのが自然である。
 北朝鮮が既に持ってしまった核ミサイルを自ら放棄することはないでしょう。そして、その力の誇示によってアメリカに国交を結ばせ、米軍を撤退させて韓国を併合する。この目標こそ、金日成、金正日、金正恩とその血筋によって継承された、まさに金王朝の究極の目的なのです。
(中西輝政「時流を読む(第2回) 歴史という大きな絵の中に事象を置けば、対処法が見えてくる。北朝鮮問題は日本と日本人に、国として、また人として、いかにあるべきかを問うているのだ」)
 もちろん、アメリカは北朝鮮の非核化を諦めてはいない。アメリカにとって、朝鮮半島での第一目標は北朝鮮の非核化であり、第二目標は南北分裂の現状を維持することである。南北が分裂していることによって、アメリカと中国・ロシアという大国同士の対立、冷戦構造の遺産を、朝鮮半島内の小国同士の対立に代理させることができる。

 以前の記事「『正論』2017年10月号『日本は北朝鮮と戦わないのか/傲る中国』―朝鮮半島の北が資本主義国家、南が社会主義国家になる可能性?」で、朝鮮半島のシナリオの1つを示してみたが、ここで改めて、朝鮮半島で起こりうるシナリオを私なりに整理してみたいと思う。

 ①北朝鮮への経済制裁が一定の効果を上げる場合
 中国、ロシアが経済制裁に協力することが前提であるが、制裁が効果を上げれば、北朝鮮はこれ以上の核開発を断念するかもしれない。ただし、北朝鮮が既に保有している核を放棄することにはつながらない。それに、経済制裁から数年が経ってほとぼりが冷めた頃に、中国とロシアが制裁の隙間を縫って北朝鮮を再び支援する可能性がある。

 ②金正恩斬首計画を実行する場合
 金体制を打倒すれば北朝鮮は核開発を止めるだろうとの予測の下に、金正恩の斬首が計画されたことがある。アルカイーダのウサーマ・ビン・ラーディンはパキスタンで暗殺された。ただ、ビン・ラーディンの場合は、彼の行動をアメリカ側がある程度トレースすることが可能になっており、かつ、ビン・ラーディンの側近にスパイがいて、彼の居場所をアメリカにリークしていたと言われる。これに対して、金正恩の場合は居場所を突き止めるのが困難である。何せ、北朝鮮には地下施設が何千と存在するからだ。また、金正恩を裏切ってアメリカに位置情報をリークするような人物も現れていない。よって、この斬首作戦は実現可能性が低いと言わざるを得ない。

 ③アメリカと北朝鮮が武力衝突する場合
 韓国は米韓同盟に基づいてアメリカと一緒に北朝鮮を攻撃するはずである。「はずである」と書いたのは、最近の韓国は左傾化が激しく、アメリカ側につくという確証がないからである。文在寅大統領も、経済制裁が行われている間に北朝鮮に人道支援を行うぐらいの親北派である。
 ⅰ)韓国がアメリカを裏切らなかった場合
 韓国・アメリカ(・日本)VS北朝鮮・中国・ロシアという構図になる。これはまさに朝鮮戦争と同じであり、アメリカが勝つ可能性は五分といったところであろう。アメリカが勝利すれば北朝鮮の非核化に成功し、北朝鮮は韓国に併合されて単一の資本主義国となる。一方、アメリカが敗れた場合は米朝間で和平条約が締結され、アメリカは北朝鮮の核兵器を認めるとともに、韓国から米軍を撤退させることになる。上手くいけば南北の分裂は維持されるが、韓国から米軍の脅威が消えたのを見た北朝鮮は、南北統一に乗り出すかもしれない。その場合、韓国の資金が北朝鮮の核に投入され、朝鮮半島に凶悪な核保有国家が誕生することになる。
 ⅱ)韓国がアメリカを裏切った場合
 アメリカ・日本VS北朝鮮・韓国・中国・ロシアという構図になる。これはアメリカにとってかなり不利な状況となる。仮にアメリカが勝利すれば、以前の記事「『正論』2017年10月号『日本は北朝鮮と戦わないのか/傲る中国』―朝鮮半島の北が資本主義国家、南が社会主義国家になる可能性?」で書いたようになる。ただ、これは可能性の低いシナリオを仰々しく書いてしまったと反省している。ⅱ)ではアメリカが敗れる可能性の方が高く、その場合は、ⅰ)よりも速いスピードで南北統一が進み、朝鮮半島に凶悪な核保有国家が誕生する。

 ④アメリカが北朝鮮と対話する場合
 ⅰ)アメリカが北朝鮮の核兵器を認めて国交を樹立する場合
 北朝鮮がこれだけの核兵器を保有してしまった以上、アメリカは北朝鮮の核を認め、平和条約を締結して国交を結ぶべきだという意見が、主にアメリカの民主党内から出始めているようである。だが、アメリカが北朝鮮と国交を結ぶというのは、かつてアメリカが中国と国交を結んで台湾を捨てたのと同様に、韓国を捨てることを意味する。もっとも、捨てられた韓国は喜んで北朝鮮と一緒になるかもしれない。すると、朝鮮半島に凶悪な核保有国家が誕生する。

 ⅱ)アメリカが北朝鮮の核兵器放棄を迫る場合
 これは非常に難しい交渉になる。核兵器の放棄を迫られた北朝鮮は、間違いなくアメリカに対して在韓米軍の撤退を要求してくる。北朝鮮が韓国を併合するためである。アメリカとしては、これは到底呑める条件ではない。だが、アメリカの第一目標は北朝鮮の非核化であり、左傾化した韓国を見て、第二目標である南北分裂の現状維持を犠牲にしてでも、在韓米軍の撤退を実現させるかもしれない。この場合、朝鮮半島には、非核化された社会主義国家が誕生する。仮にこの交渉が長引くと、その間に北朝鮮は核兵器(アメリカ本土に届くICBM)を完成させてしまう。そうなると米朝の武力衝突のリスクが高まり、そのシナリオは③で示した通りとなる。

 このように見てくると、アメリカが第一目標、第二目標をともに達成できるのは、韓国が裏切らず、アメリカが北朝鮮との戦争に100%勝てる自信がある場合に限られることが解る。逆に、下手にアメリカが動こうものなら、朝鮮半島が社会主義国家として統一されることを誘発する恐れがある。最悪のシナリオは、韓国の資金が北朝鮮の核に注入されることである。だから、アメリカとしては経済制裁以上に動きようがないというのが正直なところだろう。左派はよく、「解決策は対話しかない」などと言うが(『世界』2017年11月号の特集タイトルは「北朝鮮危機―解決策は対話しかない」であった)、アメリカが北朝鮮と対話を成立させるということは、上記で見たように韓国を捨てることを意味する。この点を左派は理解していないように思える。

 中国は北朝鮮問題で手を焼いていると言われる。だが、実はこれも怪しい面がある。中国はずっと、金正男をかくまっていた。北朝鮮に対して、「いつでも金正男を中心とした政権を北朝鮮内に打ち立てることができる」というメッセージを送るためである。いわば、金正男は中国が握っている「玉」であった。だが、金正男が暗殺されたということは、中国がその玉を放棄したということである。つまり、中国は金正恩政権と上手くやっていく道を選択したと言えなくもないのだ。

 日本にとって最悪なシナリオは、アメリカが北朝鮮の非核化に失敗して朝鮮半島に凶悪な核保有国家の出現を許した挙句、中国の一帯一路構想にトランプ大統領がビジネス的な視点で安易に乗っかってしまうことである。アメリカが中国と手を結べば、日米同盟の意義は希薄化し、日本の周りをアメリカ、中国、朝鮮国家という3つの巨大核保有国が取り囲むことになる。さらに言えば、中国が提唱する一帯一路構想は南シナ海を通っているため、アメリカが一帯一路構想に賛同するということは、南シナ海の諸問題をアメリカが黙殺することにつながる。こうなると、日本は太平洋上のシーレーンを確保できなくなる。となれば、残る選択肢はロシアと同盟を結ぶことしかない。ロシアが注力している北極圏ルートの開発に日本が協力するのである。

4大国の特徴(これまで)

 従来、私が考える現代の4大国、すなわちアメリカ、ドイツ、ロシア、中国は、上図のような関係にあった(詳細は以前の記事「マイケル・ピルズベリー『China 2049』―アメリカはわざと敵を作る天才かもしれない」を参照)。基本的には、アメリカ・ドイツという資本主義国と、ロシア・中国という旧共産圏の国が対立している。ただ、アメリカ・ドイツ、ロシア・中国は必ずしも一枚岩ではなく、しばしば対立する。一方で、表向きは対立しているアメリカと中国、ドイツとロシアが協力する局面もある。アメリカと中国の間、ドイツとロシアの間では貿易が盛んであり、経済的な結びつきが強い。このように、4大国はやや複雑な関係にある。

4大国の特徴(これから)

 ところが、アメリカが中国に接近することで、この構図が変わる可能性がある。まずはアメリカ・中国とドイツ・ロシアが対立するのである。ただ、細部を見れば、アメリカと中国の間、ドイツとロシアの間で対立を抱える一方、アメリカとドイツ、中国とロシアが協力するという関係がある。日本はロシア・ドイツ側につくことになる。日本はロシアの北極圏ルートを通じてドイツとつながり、さらにはEUとの関係を深化させる。こういうシナリオが現実味を帯びてくるかもしれない。

 ただ、日本はアメリカ・中国との関係を完全に断ち切ることはできないだろう。基本スタンスはロシア・ドイツに寄りながら、アメリカ・中国のよいところは引き続き吸収し続ける。これが大国に挟まれた小国の生きる知恵であり、私は「ちゃんぽん戦略」と呼んでいる(以前の記事「『巨頭たちの謀事/朴槿恵政権崩壊(『正論』2017年2月号)』―ますます可能性が高まった「朝鮮半島統一」に対してどう対処すべきか?」を参照。同記事は米中に挟まれた日本のちゃんぽん戦略を想定しているが、米中・露独に挟まれた場合も同様である)。

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