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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

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(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

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(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2012年05月02日

【ドラッカー書評(再)】記事一覧(随時追加予定)

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 20代前半に背伸びして読んだドラッカーの数々の著書を、30代に入った今、改めて読み直してみようということで、2012年3月から始めた個人的な企画。基本的に、1ヶ月に1冊ずつ書評を書く予定。現在までにアップ済みの記事を一覧化しておく。

《2012年3月》
ドラッカー名著集1 経営者の条件ドラッカー名著集1 経営者の条件
P.F.ドラッカー

ダイヤモンド社 2006-11-10

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 『経営者の条件』―「マネジメント」を万人に開いた1冊
 『経営者の条件』―「強みに集中せよ」と言っても、エグゼクティブに求められる能力は広く深い(1)
 『経営者の条件』―「強みに集中せよ」と言っても、エグゼクティブに求められる能力は広く深い(2)
 『経営者の条件』―組織を、世界を変えていく能動的なエグゼクティブ像にはあまり触れられずとの印象

《2012年4月》
創造する経営者 (ドラッカー名著集 6)創造する経営者 (ドラッカー名著集 6)
ピーター・F・ドラッカー 上田 惇生

ダイヤモンド社 2007-05-18

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 『創造する経営者』―「戦略」以外にも「コア・コンピタンス」「ABC(活動基準原価)」などの先駆けとなった著作
 『創造する経営者』―ドラッカーの「戦略」を紐解く(1)~事業の「暫定的な診断」の概要
 『創造する経営者』―ドラッカーの「戦略」を紐解く(2)~「暫定的な診断」への個人的疑問
 『創造する経営者』―ドラッカーの「戦略」を紐解く(3)~一般的な戦略策定プロセスに沿って整理
 『創造する経営者』―ドラッカーの「戦略」を紐解く(4)~外部環境/内部環境アプローチの両方を包含する戦略論
 『創造する経営者』―ドラッカーの「戦略」を紐解く(5)~イノベーションの7つの機会の原点
 『創造する経営者』―事業を製品別ではなく、顧客別に分析する方法を提案したい(1)
 『創造する経営者』―事業を製品別ではなく、顧客別に分析する方法を提案したい(2)

《2013年1月》
ドラッカー名著集2 現代の経営[上]ドラッカー名著集2 現代の経営[上]
P.F.ドラッカー

ダイヤモンド社 2006-11-10

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 『現代の経営(上)』―戦略立案の客観的アプローチと主観的アプローチ(1)
 『現代の経営(上)』―戦略立案の客観的アプローチと主観的アプローチ(2)
 『現代の経営(上)』―実はフラット化していなかった日本企業

《2013年2月》
ドラッカー名著集3 現代の経営[下]ドラッカー名著集3 現代の経営[下]
P.F.ドラッカー

ダイヤモンド社 2006-11-10

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 『現代の経営(下)』―既存の人材マネジメントに対するドラッカーの不満が爆発している
 『現代の経営(下)』―「雇用の維持」は企業の社会的責任か?
 『現代の経営(下)』―フレデリック・テイラー「科学的管理法」に対するドラッカー評

《2013年4月》
「新訳」乱気流時代の経営 (ドラッカー選書)「新訳」乱気流時代の経営 (ドラッカー選書)
P・F. ドラッカー Peter F. Drucker 上田 惇生

ダイヤモンド社 1996-06

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 『乱気流時代の経営』―高齢社会に必要な新しい戦略的思考
 『乱気流時代の経営』―ドラッカーとポーターの「企業の社会的責任」をめぐる考え方の違い
 『乱気流時代の経営』―サステナビリティの観点から見た子育てと人事制度の関係
 『乱気流時代の経営』―(無謀な予測だが)2020年までに開花しそうな7つの技術(前半)
 『乱気流時代の経営』―(無謀な予測だが)2020年までに開花しそうな7つの技術(後半)
 『乱気流時代の経営』―経営思想は1世紀の間に近代政治思想の歴史を駆け抜けている


2012年05月01日

【ドラッカー書評(再)】『創造する経営者』―ドラッカーの「戦略」を紐解く(5)~イノベーションの7つの機会の原点

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創造する経営者 (ドラッカー名著集 6)創造する経営者 (ドラッカー名著集 6)
ピーター・F・ドラッカー 上田 惇生

ダイヤモンド社 2007-05-18

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 これまで4回にわたってドラッカーの「戦略」を私なりに紐解いてきたけれども、ドラッカーの戦略論はさらにイノベーションへの広がりをも見せる。後の著書『イノベーションと企業家精神』でドラッカーが提唱した、イノベーションの「7つの機会」の原点を、本書の第11章に見ることができるのである(もちろん、【ドラッカー再訪】企画で『イノベーションと企業家精神』についても取り上げる予定。ただし、半年ぐらい先になるかも(汗))。

イノベーションと企業家精神 (ドラッカー名著集)イノベーションと企業家精神 (ドラッカー名著集)
P.F.ドラッカー 上田 淳生

ダイヤモンド社 2007-03-09

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 ドラッカーのイノベーション論は、これまでの記事に私が手書きの図で掲載した「戦略策定プロセス」の冒頭にある、外部環境/内部環境分析の時間軸と範囲を大幅に拡張し、創造力を働かせることで導かれる。とりわけ、外部環境の中長期的な変化の兆候に着目しており、「すでに起こった未来」を利用して変化に適応するか、「すでに起こった未来」に乗じて自ら変化を創り出すことによって、イノベーションを引き起こすことが可能となる。そして、これこそが「企業家」の役割であるとドラッカーは主張する。
 今日の行動の基礎に、未来に発生する事象の予測を据えても無駄である。せいぜい望みうることは、すでに発生してしまった事象の未来における影響を見通すことだけである。(中略)試みうることは、適切なリスクを探し、時にはつくり出し、不確実性を利用することだけである。未来を築くための仕事の目的は、明日何をすべきかを決定することではなく、明日をつくるために、今日何をすべきかを決定することである。
 ドラッカーが『イノベーションと企業家精神』の中で体系化したイノベーションの7つの機会を以下に列記しておく(随分昔の記事になるが、「ドラッカーによるイノベーションの「7つの機会」」も参照)。ドラッカーによれば、(1)から(7)に行くにしたがって、イノベーションの難易度が上がるという。
(1)予期せぬことの生起。予期せぬ成功、予期せぬ失敗、予期せぬ出来事。
(2)ギャップの存在。現実にあるものと、かくあるべきものとのギャップ。
 a.業績ギャップ=製品やサービスに対する需要が順調に伸びているにもかかわらず業績が芳しくない場合。
 b.認識ギャップ=ある産業の内部にいる人たちがものごとを見誤り、現実について誤った認識を持っている場合。
 c.価値観ギャップ=生産者や供給者が提供していると思っている価値と、顧客が真に必要としている価値との間に違いが存在する場合。
 d.プロセス・ギャップ=何か1つの作業を行う一連のプロセスの中で、不安に感じたり困ったりする部分がある場合。

(3)ニーズの存在。
 a.プロセス・ニーズ=プロセス・ギャップから生じるニーズ。
 b.労働力ニーズ=労働力不足の懸念から生じるニーズ。製造業においてロボットが半熟練労働に取って代わるようになったのは、労働力ニーズの圧力があったためである。
 c.知識ニーズ=新しい知識を必要とする場合。それらの新しい知識は開発研究によって生み出される。

(4)産業構造の変化。
(5)人口構造の変化。
(6)認識の変化、すなわち、ものの見方、感じ方、考え方の変化。
(7)新しい知識の出現。
 このうち、『創造する経営者』ですでに見られるイノベーションの機会の事例を順番に紹介してみたい。

(2)ギャップの存在。現実にあるものと、かくあるべきものとのギャップ。
 「b.認識ギャップ」と「d.プロセス・ギャップ」の両方にまたがる事例。
 製紙の工程は、原木の4分の1しか利用していない。原木の半分は、森に残してしまう。4分の1は、樹皮、葉、小枝、不純物として捨てている。しかし製紙メーカーが代価を払っているのは、原木そのものに対してである。その結果、製紙の原材料であるパルプは、例えば、石油精製の副産物として、事実上コストのかかっていないプラスチックの原料と比べ、高いコストがかかっている。もし、製紙の工程が、今日捨てている原木の4分の3を製品にすることを可能にするならば、紙のコストは大幅に安くなる。しかし、もしこれができなければ、多目的な材料としての紙も、やがてわずかな用途に限定されてしまうことになる。
 これと似たような例として、ドラッカーは戦後の製鉄業の製造プロセスにおける非効率性を挙げている(当然のことながら、これらはもう半世紀も前の話だから、今とは状況が全く違うであろう[この後に紹介する事例も同じ]。現在でも製紙業は衰えていないし、プラスチックは原油価格の高騰のあおりを受けてむしろ割高になっている)。ドラッカーは、組織内部、あるいは産業全体の構造的な弱みや制約にこそ、大きなイノベーションの機会が眠っていると主張する。

 そのような構造的な弱みについて、組織の関係者は、改善のために多大な努力をしてきたにも関わらず克服不可能だと口を揃えて言う(つまり、認識ギャップが存在する)。ところが、イノベーター(たいていは業界の外部から現れる)はそこに目をつけて、弱みをひっくり返す新たな事業を構想する。それと同じことを、組織内部の人間もしなければならない、いや組織内部の人間にもできるはずだ、とドラッカーは力説している。

(4)産業構造の変化。
 わずか一世代前には、あらゆる原料の流れが、その始点から終点に至るまで、それぞれ完全に別のものになっていた。例えば、木が原料となるのは紙だった。逆に、紙は木だけからつくられていた。同じことが、アルミ、石油、鉄鋼、亜鉛など、他の原材料にも言えた。それらの原材料からつくられる製品は、特定の一義的な最終用途をもっていた。しかし今日、原料の流れは、始点も終点も多様化している。例えば、木は紙だけではなく、多様な最終製品となっている。逆に、紙と同じ機能をもつものは、木だけでなく、多様な物質からつくることができる。(中略)

 こうしていまや、あらゆる素材産業が事業の変化を実感している。すでに多くの企業が、この変化に対し、対策を講じている。例えば、アメリカのある大手缶メーカーは、ガラス、紙、プラスチックの容器メーカーを買収している。
 産業構造の変化は、競争のルールを変え、業界のバリューチェーンにおけるバリューポジション(=利益が存在するプロセス)を移動させる。その変化にいち早く乗じ、競争のルールが自社に有利に働くように仕掛け、バリューポジションを自社に取り込むよう積極的に動いた企業が、新たな勝者となれる。

(5)人口構造の変化。
 人口構造の変化は、『イノベーションと企業家精神』では、3番目に難しいイノベーションの機会として位置づけられているが、本書では「まず第一に調べるべき領域」とされている。「人口の変化は、労働力、市場、社会的圧力、経済的機会の変化にとって最も基本的である」という。ドラッカーは、70年代後半にはアメリカの人口の過半数が35歳以下の若い人で占められるようになることに触れて、次のように述べている。
 彼らは、前例のない高い学歴をもつようになる。彼らの家庭の半分は、夫か妻のいずれかが大卒となる。ということは、労働人口における中心的な階層の考えが、今日とは違うものになるということである。例えば、電子機器メーカーに勤める若い技術者の家庭は、現在の所得に基づいて消費はしない。将来の所得と社会的地位に基づいて消費する。すなわち現在の所得は、消費の決定要因ではなく、制約要因となるにすぎない。
(6)認識の変化、すなわち、ものの見方、感じ方、考え方の変化。
 これは(2)ギャップの存在のc.価値観ギャップと表現上は似ているものの、価値観ギャップが供給者と顧客の間のギャップを指しているのに対し、(6)認識の変化はもっと社会的な価値観の変化を意味する。
 かなり大胆でなければ、アメリカ社会において、いつ黒人が完全に平等な地位を得るかを予測することはできない。しかし、1962年と63年に起こったこと(※公民権運動の盛り上がりのこと)の結果として、アメリカでは、黒人のみならず、白人の側にも、人種問題についての新しい意識が生まれている。特に、少なくとも若者に関する限り、服従する黒人が過去のものとなったことは、すでに起こった事実である。
(7)新しい知識の出現。
 新しい知識の活用は、『イノベーションと企業家精神』では最も難易度が高いとされる。しかし、本書では新しい知識は「すでに起こった未来を探すべき第2の領域」に挙げられている。この辺りについては、本書を書いてから『イノベーションと企業家精神』を発表するまでの間に、ドラッカーの中で体系化と再整理が進んだのであろう。すなわち、「発見しやすい機会、誰にでも見つかる機会」と「利用しやすい機会、イノベーションにつなげやすい機会」は別物だということである。
 知識の領域における大きな変化であるにもかかわらず、ほとんどの企業が、まだ直接関係があるとは考えていないものの例として、行動科学の進歩がある。特に心理学の学習理論は、この30年の間に大きな発展を見せている。今日、企業活動には関係がないように見えるかもしれないが、そこにおいて得られた知識は、教育の形態だけでなく、教育と学習の機材、学校の設計と設備、さらには、企業内における研究活動の組織とマネジメントに対しても、大きな影響を与える。
 これまで見てきたように、ドラッカーのイノベーション論は、外部環境の中長期的な変化の兆しを捉える点に特徴がある。ただし、ここで1つの疑問が生じる。それは「変化を自ら創り出す」ことの重要性が強調されていながらも、実際には外部環境の変化そのものが、イノベーションの大半を規定しているのではないか?ということである。もちろん、外部環境の変化を企業家がどのように”解釈”するかによって、イノベーションはいかようにもなる可能性を秘めているのであろうが、外部環境が基点となっている点で、”半”決定論的なイノベーションであり、企業家自身の”内発的なアプローチ”によるイノベーションの構想が軽視されている気がする。

 事実、ドラッカーは次のように述べて、”内発的なアプローチ”に否定的な立場を取っているようだ。
 構想は、企業家的なものでなければならない。すなわち、事業上の行為と行動を通じて実現すべき構想でなければならない。それは、富を生む機会や能力についての構想でなければならない。それは、「未来の社会はどのようなものになるべきか」という社会改革家や、革命家や、哲学者の問いからは出てこない。未来をつくる企業家的な構想の基礎となるものは、「経済、市場、知識におけるいかなる変化が、わが社の望む事業を可能とし、最大の経済的成果を得る経営を可能にするか」という問いでなければならない。
 では、社会的な認識の変化をもたらし、イノベーションの機会の1つを提供した「公民権運動」は、果たして外部環境の変化を利用したものだったのだろうか?また、前述の引用文では紹介しなかったが、ドラッカーは、「偉大な企業家的イノベーションは、理論上の仮定を現実の事業に転換することで実現される」とも述べており、その一つとして、フランスの社会哲学者サン・シモンが構想した銀行の理論を、弟子であるペレール兄弟が実現させた例を挙げているけれども、サン・シモンの銀行の理論は、外部環境の変化に基づくものであったのだろうか?

 もちろん、当時の社会的な状況が、キング牧師やサン・シモンの構想に影響したのは事実であろう。だが、そこには彼らの内面的な探究、すなわち「アメリカ社会の望ましい姿とは何なのか?」、「資本主義を機能させるには、どのような金融システムが存在すべきか?」といった問いが発せられていたのではないだろうか?個人的には、ドラッカーのイノベーション論はこの点が弱い印象を受けた。後の『イノベーションと企業家精神』でこの辺りがどのように論じられているのか注目したい。

 >>シリーズ【ドラッカー書評(再)】記事一覧へ
2012年04月27日

【ドラッカー書評(再)】『創造する経営者』―ドラッカーの「戦略」を紐解く(4)~外部環境/内部環境アプローチの両方を包含する戦略論

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創造する経営者 (ドラッカー名著集 6)創造する経営者 (ドラッカー名著集 6)
ピーター・F・ドラッカー 上田 惇生

ダイヤモンド社 2007-05-18

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 (《再掲》一般的な戦略策定プロセス)
戦略策定プロセス

 上図で、「外部環境分析」と「内部環境分析」の両方から矢印が出て「戦略コンセプトの決定」につながっているのには意味がある。戦略論の歴史に関する文献を読んでいると、戦略論の一方にはM・ポーターの競争戦略論に代表される「外部環境からのアプローチ」があり、もう一方にはJ・B・バーニーの資源ベース論に代表される「内部環境からのアプローチ」があると説明されることがよくあるのだが、実務的には両者を組合せて戦略を練ることが多いし、本書におけるドラッカーの戦略論も両方を包含したものになっている。すなわち、「(3)マーケティング分析」から戦略を導く方法と、「(4)知識分析」から戦略を導く方法の両方が説明されている。この点で、ドラッカーの戦略論はバランスが取れている。

 「(3)マーケティング分析」から戦略を導いた一例
 ウェルナー・フォン・ジーメンスは、発電機を発明した結果として、電車を開発したわけではない。彼は、市内交通としての電車という産業を構想し、そのための動力源として発電機を開発した。同じようにトーマス・エジソンも、実用電球を発明した結果、発電所や変電所や配電システムを完成したのではない。総合的な電力供給という産業を構想し、そこに欠落していた電球を開発した。(中略)

 彼らは単なる新しい機械や設計ではなく、新しい産業を生み出していた。彼らは、電気のいかなる応用に、産業としての最大の成功と利益の機会があるかを問うことによって、経済的な機会を最大のものとした。
 よく誤解されるけれども、新しい技術そのものはイノベーションではない。だから、イノベーションを「技術革新」と訳すのは、私は間違っていると考えている。技術が新しい産業や市場を生み出す時、それはイノベーションとなる。ジーメンスやエジソンは、電気が日常生活でどのように利用される可能性があるのか、そのパターンをいくつか洞察し、その中から最もニーズや実現可能性が高いと思うシナリオを選択したのであろう。技術動向に市場分析を加えて戦略を導き出したケースと言える(マーケティング分析において答えるべき問いについては、以前の記事「ドラッカー流マネジメントにみるソクラテス的な「問いかけ」の手法」を参照)。

 「(4)知識分析」から戦略を導いた一例
 短期間にロスチャイルド家を成功に導いたのは、同家の最大の資産、すなわちその人的資源の最大利用にあった。ロスチャイルド家では4人の子供、ネイサン、ヤーコブ、アムシェル、サロモンが最大の資源だった。彼らの父親、あるいは母親が、この4人のそれぞれに対し、それぞれの才能や性格に最も適した機会、すなわちそれぞれが最大の貢献を行える機会を与えた。
 やや特殊な例だけど興味深かったので引用。ロスチャイルド家は、4人の子どもの特性をうまく活かせば、ヨーロッパ主要都市の金融を押さえることができると考えたのだろう。「無骨で横柄に見える」ネイサンは、「作法など意に介さない攻撃的な金融家」があふれる「世界最大の競争的な金融中心地」であるロンドンに送り込まれた。「早くから策に長けており、政治的な戦略家」だったヤーコブは、「ヨーロッパ大陸最大の資本市場」でありながら、「革命、テロ、ナポレオンによる専制、王政の復古」と政変が頻繁に起こり、「最も策略に満ちた」パリを担当した。

 2人とは対照的に「礼儀正しく、尊大なまでに威厳があり、かつ極めて忍耐強かった」サロモンは、ウィーンに行かされた。ウィーンでの仕事とは、「ハプスブルク家との取引」であった。そのハプスブルク家は「遅疑逡巡、優柔不断、儀礼と自尊」が特徴であり、サロモンにしか取引が務まらなかった。そして、「もともと金融の管理的な分野」を好み、「勤勉で誠実」だったアムシェルは、ロスチャイルド家の総支配人として、ロスチャイルド家の本拠地であるフランクフルトが割り当てられた。

 さらに重要なことは、5人目の子どもであるカルマンに何の仕事も与えなかったことだ、とドラッカーは述べている。ヨーロッパにはまだハンブルクやアムステルダムなどの金融都市があり、アメリカも有望な成長市場だった。ところが、「少なくともロスチャイルド家の基準からは、カルマンには、必要とされる能力も勤勉さもなかった」という。

 ドラッカーの戦略論はバランスがよいと感じるのは、これだけではない。戦略の基本は、外部の「機会」と内部の「強み」を調和させることである(ドラッカーも本書で頻繁に主張している)。その応用としてしばしば、SWOT分析のフレームワークを引き合いに出し、「脅威を機会に変える」、「弱みを強みに変える」ことの重要性が強調される。ただし、これは言葉で言うほど簡単ではなく、その具体的な方法を記載した戦略本はそれほど多くないように思える。その点、ドラッカーはこれについてもちゃんと事例を交えて説明を行っており、厚みのある戦略論となっている(第9~10章)。

 脅威を機会に変える
 アメリカのデパートの多くは、初めのうち、ディスカウント店を不健全なものとして攻撃した。しかし、戦いに勝てないことが明らかになるや、自ら次々にディスカウント店を開いた。しかし結果は、そのほとんどがお粗末だった。デパートは、ディスカウント店の経営を知らなかった。ある大手のデパートチェーンだけは、まったく違う路線をとった。ディスカウント店を開きはしなかった。逆に、高級化した。あらゆる都市の店を大衆のための高級店に変えた。
 第2次世界大戦後、豊かになった大衆は、保険契約数こそ減らさなかったが、貯蓄のうち生保に回す割合を減らし始めた。この変化に重大な脅威を感じた生命保険会社の多くは、株式投資などの投資手段の危険性を警告する広報活動を展開した。だが、ある保険会社が、そこに機会を見いだした。この会社は、自ら投資信託会社を買収し、その投資信託と生命保険と一緒に売り出した。すなわち、顧客にバランスの取れた投資手段、セット物のマネープランを提供した。
 アメリカのある大手清涼飲料メーカーは、長年の間、低カロリー飲料は流行にすぎないと主張していた。しかし、実際には、マネジメントは、その種の飲料が自社のかなり高カロリーのブランド製品にとって、大きな脅威であると感じていた。ところが、ボトラーたちが低カロリー飲料をより多く扱うようになるにつれ、同社の清涼飲料も、ますます売れるようになっていた。すなわち、低カロリーのダイエット飲料は、市場を侵食するのではなく、昔からの清涼飲料のための市場もつくり出してくれていた。今日では、このメーカー自身が、低カロリー飲料を生産し、販促し、販売している。
 3つの事例から言えることは、脅威を機会に変えるには、(1)棲み分ける(デパートの例)(※1)、(2)選択肢に加える(生保の例)、(3)補完財にする(清涼飲料メーカーの例)という3つの方法があるということである。(2)と(3)は脅威を自社に吸収するという点では共通しており、その違いが微妙であるが、(2)は脅威となる製品と既存製品の間にトレードオフの関係があり、顧客は好きな方を選択するのに対し、(3)は脅威となる製品が売れると、既存の製品もセットで売れるという関係がある。ドラッカーは、低カロリー製品が売れると高カロリー製品が売れる理由までは踏み込んで記述していないけれども、消費者には「カロリーは気になる。でも時々は高カロリーだが自分の口に合った飲物を飲みたい。ただ、それを飲んだ後は、カロリーを調整するために低カロリーの飲料を飲みたい」という心理がはたらいているのかもしれない(※2)。

 弱みを強みに変える
 (アメリカのある中小自動車メーカーが設立したクレジット会社について、)顧客に自動車ローンを提供するためには、大都市すべてに支店を置かなければならない。しかし、中小自動車メーカーとしては、地方支店の管理費を賄えるほどのローンの仕事はない。高度に専門化したクレジット事業の管理に必要なコストを賄うためには、規模があまりに小さすぎた。そこでこのメーカーがとった問題の解決策が、ほかの中小の耐久消費財メーカーのクレジット業務を引き受けることだった。
 加工食品とホテルとケイタリングを事業とするある企業がある。この企業は、ホテルやレストランのための洗濯、加工食品の配送のためのトラック輸送など、いくつかの補助的活動を抱えている。それらの活動は、それぞれ高い水準で運営しなければならない。しかも、かなりの投資を必要とする。おまけに、ピーク時を賄えるようにしておかなければならない。しかしこの企業は、簡単な原則で問題を解決した。本業並みの知識や能力を必要とする洗濯やトラック輸送は、社外の顧客にもサービスを提供する独立した事業にした。
 この2つの事例に共通するのは、本来の製品やサービスに付随するサービスの提供のために、過剰な経営資源を抱えていたという点である。アンバランスな経営資源は通常、弱みとして扱われる。選択と集中をよしとする戦略家であれば、収益性が低い付随業務のアウトソーシングを経営陣に提案したであろう。すなわち、自動車ローンのクレジット業務は大手自動車メーカーに委託し、洗濯やトラック輸送は洗濯や物流の専門業者に委託してしまえばよいというわけである。

 ところが、弱みを強みに変える戦略では、過剰な経営資源を有効活用する方法を模索する。実は、安易なアウトソーシングには落とし穴がある。以前の記事「受賞論文からお気に入りをピックアップ(2009~2006年)-『マッキンゼー賞 経営の半世紀(DHBR2010年9月号)』」や「「よかれと思ってやったのに・・・」というマネジメントのパラドクス集(その1~3)」でも書いたように、一見ノンコアに見えるプロセスに継続的な改善を施すと、たとえそれがプロセス・イノベーションにもならないプロセス・インプルーブメントに過ぎないとしても、そこからプロダクト・イノベーションのアイデアが生まれることがあるのである。

 今回の記事はだいぶ長くなってしまったが、前々回まで紹介してきた事業の「暫定的な診断」に比べると、ドラッカーが提唱する「戦略」の中身はかなり骨太であり、かつホログラフィックである(整理して理解するのに苦労したが、汗)。しかも、ドラッカーの戦略論はこれで終わりではない。まだ一度も触れていない第11章では、後の著書『イノベーションと起業家精神』につながるイノベーションの思想的原点が見て取れる。次回はこの点について述べてみたいと思う。

 >>シリーズ【ドラッカー書評(再)】記事一覧へ


(※1)脅威との棲み分けには一定のリスクがある。脅威が破壊的イノベーションである場合、脅威と棲み分ける、すなわちハイエンド市場へ移動すると、破壊的イノベーションを勢いづける格好の材料となってしまう。また、脅威が破壊的イノベーションでなくても、高級路線へのシフトはいくつかのリスクを負うことになる。つまり、所得水準も高いが要求水準も高い顧客を相手に、購買頻度が低い製品を販売しなければならないため、販売スタッフのサービス水準の向上や顧客リレーション管理、製品の在庫管理に相当の労力を割く必要が出てくる(以前の記事「【第2回】高級志向の顧客を狙う―ビジネスモデル変革のパターン」を参照)。

(※2)余談だが、マクドナルドがここ数年「プレミアムローストコーヒー」を積極的に販売しているのは、てっきりスターバックスなどの脅威に対する対抗策だと思っていた。ところが、原田CEOによると、「コーヒーが売れれば、ビックマックが売れる」という関係があるそうだ。ビックマックは、特別な広告を打たなくても売れる「金のなる木」だという。その金のなる木にもっと金を実らせるために、コーヒーに注力しているわけである。これは脅威を自社に取り込んで、補完財にした例と言えるのではないだろうか?

勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論
原田泳幸

朝日新聞出版 2011-12-07

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