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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2012年04月23日

【ドラッカー書評(再)】『創造する経営者』―ドラッカーの「戦略」を紐解く(1)~事業の「暫定的な診断」の概要

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創造する経営者 (ドラッカー名著集 6)創造する経営者 (ドラッカー名著集 6)
ピーター・F・ドラッカー 上田 惇生

ダイヤモンド社 2007-05-18

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 DHBR2012年5月号のレビュー記事(「「幸福感」と「モチベーション」の違いがよく解らない印象を受けた―『幸福の戦略(DHBR2012年5月号)』」など)を挟んだので約1週間ぶりの【ドラッカー再訪】記事となったが、前回の「「戦略」以外にも「コア・コンピタンス」「ABC(活動基準原価)」などの先駆けとなった著作―『創造する経営者』」に続いて今回は、ドラッカーが唱える「戦略」の中身を紐解いていきたいと思う。

 ただし、ドラッカーが本書を「事業戦略と呼ばれているものについての世界で最初の本」と呼ぶ割には、実は戦略の明確な定義はなされておらず、またM・ポーターの競争戦略論に出てくる「5 Forces Model」や、資源ベース論で知られるJ・B・バーニーの「VRIOフレームワーク」のように、解りやすい戦略の枠組みも存在しない(安易な単純化を嫌うドラッカーらしいところではあるが)。そういう意味で、改めて読み返してみても内容を理解するのに結構苦労したわけなのだが、私なりに次のように整理してみた。なお、目次と絡めながら説明を進めたいので、目次を掲載しておく。

第1部◆ 事業の何たるかを理解する
 第1章 企業の現実
 第2章 業績をもたらす領域
 第3章 利益と資源、その見通し
 第4章 製品とライフサイクル
 第5章 コストセンターとコスト構造
 第6章 顧客が事業である
 第7章 知識が事業である
 第8章 これがわが社の事業である

第2部◆ 機会に焦点を合わせる
 第9章 強みを基礎とする
 第10章 事業機会の発見
 第11章 未来を今日築く

第3部◆ 事業の業績をあげる
 第12章 意思決定
 第13章 事業戦略と経営計画
 第14章 業績をあげる
 終章 コミットメント

 ドラッカーは本書の中で、自社の事業を理解し、方向性を決定するための分析手法として、(1)業績をもたらす領域、利益、資源についての分析、(2)コストセンターとコスト構造についての分析、(3)マーケティング分析、(4)知識分析という4つの方法を提案している。(1)は第2~4章、(2)は第5章、(3)は第6章、(4)は第7章で解説されている。このうち、(1)と(2)は事業そのものに関するミクロな視点での「暫定的な診断」であり、その診断結果は、よりマクロな視点からの外部環境分析である(3)と、内部環境分析に相当する(4)によって再点検する必要がある。こうした一連の作業を通じて、「これがわが社の事業である」(第8章)と自信を持って言えるもの、つまり戦略が固められていくというわけである。

 「(1)業績をもたらす領域、利益、資源についての分析」は、簡単に言えば製品別の利益分析と製品のカテゴライズである。ドラッカーの著書としては極めて珍しく、本書にはユニバーサル・プロダクツ社(※実在する企業を基にドラッカーが作成したケース。もちろん、ファッションブランドのユニバーサル・プロダクツとは別物)の分析結果が詳細な表とともに登場する。そして、どうでもいい小ネタだが、ドラッカーの著書に表が登場するのはおそらくこの本だけである。というのも、図や表を書いてそれをさらに文章で説明するのはバカバカしい、というのがドラッカーの信条だからだ。ただ、本書に限っては、その表がなければさすがに分析手法の説明ができないと考えたのか、信条に反する形で(?)表が掲載されている。

 製品別の利益を計算する際には、従来のコスト会計の欠点を指摘し、後のABC会計(Activity Based Costing:活動基準原価計算)につながる考え方でコストを計算している(前回の記事「「戦略」以外にも「コア・コンピタンス」「ABC(活動基準原価)」などの先駆けとなった著作―『創造する経営者』」を参照)。ABC会計に従うと、営業・販売活動やバックヤード業務に要する人件費のような間接費を各製品の売上比率に応じて按分する従来のコスト会計では解らなかった事実が判明する。つまり、ある製品は一見稼ぎ頭のようだけれども、実は社員の手間ばかりがかかるため、実質的には利益を食いつぶしていたとか、逆にそれほど利幅が大きいとは思っていなかった製品が、実は回転率がよく社員の作業量も少ないから、非常に高い利益率を上げていた、といった具合である。

 製品のカテゴライズに関しては、製品の優先順位に応じて製品を11に分類することをドラッカーは勧めている。しかしながら、個人的に11はちょっと多すぎる気もする。ドラッカーの意図するところを汲み取れば、「今日の主力製品」、「昨日の主力製品」、「明日の主力製品」の3つで十分だろう。残りの類型は、「今日の主力製品/昨日の主力製品/明日の主力製品に”なりかけている”製品」と解釈することができる。ドラッカーは、「明日の主力製品」に、自社で最高の人材と知識を投入しなければならないと繰り返し強調する。

 多くの企業は、「今日の主力製品」に最高の人材と知識をあてがい、「明日の主力製品」を真の主力製品に育て上げる努力を自ら放棄している、とドラッカーは警告する。もっとひどい企業だと、既に市場での役目を終えつつある「昨日の主力製品」の問題解決に最高級の資源を投入してしまっているという。これは例えば、市場に残っているごく少数の特殊な顧客のニーズやクレームへの対応、あるいはもうほとんど向上の余地がない昨日の主力製品の売上や利益を上げるための方策の検討と実施などに貴重なリソースを突っ込んでいる、ということだろう。

 「(1)業績をもたらす領域、利益、資源についての分析」では製品別のコストを計算したが、「(2)コストセンターとコスト構造についての分析」では、改めて別の視点からコスト分析が行われている。このコスト分析の目的は、許容できるコストと削減すべきコストを明らかにすることである。ユニバーサル・プロダクツ社の事例では、コスト構造を別の視点から分析した結果、輸送費と小規模チャネルの維持費にコストがかかっていることが判明したという。この結果を踏まえて、倉庫の構成を再構築するとともに、小規模チャネルへの営業活動や売掛金管理業務を変更したそうだ。

 以上が事業の「暫定的な診断」の概要である。ただ、この診断には個人的に疑問に感じるところがいくつかある。次回はそれについて述べてみたい。

 (続く)

 >>シリーズ【ドラッカー書評(再)】記事一覧へ
2012年04月13日

【ドラッカー書評(再)】『創造する経営者』―「戦略」以外にも「コア・コンピタンス」「ABC(活動基準原価)」などの先駆けとなった著作

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創造する経営者 (ドラッカー名著集 6)創造する経営者 (ドラッカー名著集 6)
ピーター・F・ドラッカー 上田 惇生

ダイヤモンド社 2007-05-18

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 「ドラッカー再訪」企画2冊目は『創造する経営者』(原題は"Managing for Results"、1964年出版)。この本は、ドラッカーが初めて「事業戦略」を体系化した本として知られる。ちなみに、「戦略」という言葉を経営学に持ち込んだのはドラッカーとアンゾフのどちらなのか?という議論があり(アンゾフが"Corporate Strategy"という本を発表したのが1965年。まぁ、こんなのはほとんど雑学レベルのどうでもいい話・・・(苦笑))、ドラッカーは本書を「今日、事業戦略と呼ばれているものについての世界で最初の本である」(「はじめに」より)と主張し、後の論文集『マネジメント・フロンティア』に所収されているインタビューでは、
ドラッカー:私が(インタビューが行われた1985年から数えて)30年前に書いた『現代の経営』によって、読者は経営管理の仕方を学んだ。それまでは、とくに才能のある者だけが行なうことができ、他の者には真似のできなかったことを学べるようになった。私がそれを一つの体系にまとめた。今度のあの本(『イノベーションと企業家精神』)は、イノベーションと企業家精神について、同じことをしようとしたものだ。
インタビュアー:しかし、その内容はあなたが考えだしたものではない。
ドラッカー:いや、かなりの部分が私の考えだしたものだ。
インタビュアー:戦略の部分はあなたが考えたものではない。あなたが書く前から、あったことだ。
ドラッカー:いや、違う。
といった具合に、インタビュアーと押し問答(?)を繰り広げている。

 また、多くの書籍でドラッカーの紹介文が「東西冷戦の終結、転換期の到来、社会の高齢化をいち早く知らせるとともに、『分権化』『目標管理』『経営戦略』『民営化』『顧客第一』『情報化』『知識労働者』『ABC会計』『ベンチマーキング』『コア・コンピタンス』など、おもなマネジメントの理念と手法を生み、発展させた」(『企業とは何か―その社会的な使命』より)などとされ、ドラッカーが生み出したマネジメント用語の中には「戦略」が含まれている。

 一方で、アンゾフも「企業戦略の父」と呼ばれており(※1)、結局どっちなのかは私にもよく解らない(汗)。ただ、私の個人的な感触としては、ドラッカーは戦略に限らずマネジメントを幅広く体系化した「現代経営の父」というイメージであり、戦略に限って言えば、アンゾフの「成長マトリクス」のような、解りやすくかつ現在でもよく使われるフレームワークがドラッカーにはなく(ドラッカーはそういうフレームワークを作るのが嫌いだったという側面もあるが)、『創造する経営者』もアンゾフの著書に比べると実は結構込み入った内容になっていることから、やはりアンゾフの方が戦略に特化した先駆者という感じがする。

アンゾフ 戦略経営論 新訳アンゾフ 戦略経営論 新訳
H.イゴール アンゾフ 中村 元一

中央経済社 2007-07

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 余談はそのくらいにしておいて、本書は事業戦略以外にも、後の戦略論や管理会計学で登場するコンセプトの原型が見られ、ドラッカーの先見の明を改めて思い知らされる1冊だ。例えば、「事業とは、市場において、知識という資源を経済価値に転換するプロセスである」という定義は、知的資源を中心に置いた経営という点で、ゲイリー・ハメルとC・K・プラハラードの『コア・コンピタンス経営』を想起させる。

 実際、ドラッカーが事業に必要な知識の要件として指摘していることは、ハメルとプラハラードがコア・コンピタンスの要件として挙げた3つ、すなわち(1)顧客価値があること、(2)競合に模倣されにくいこと、(3)様々な製品に展開できること、とほぼ一致する。
 事業が成功するためには、知識が、顧客の満足と価値において、意味あるものでなければならない。知識のための知識は、事業にとって、あるいは事業以外のものにとっても、無用である。知識は、事業の外部、すなわち顧客、市場、最終用途に貢献して、初めて有効となる。
 ほかの者と同じ能力をもつだけでは、十分ではない。そのような能力では、事業の成否に不可欠な市場におけるリーダーの地位を手に入れることはできない。卓越性だけが、利益をもたらす。純粋の利益は、革新者の利益だけである。経済的な業績は、差別化の結果である。
 企業は、製品や市場や最終用途において多角化し、基礎的な知識において高度に集中化しなければならない。あるいは、知識において多角化し、製品や市場や最終用途において高度に集中しなければならない。この中間では、満足すべき成果はあげられない。

コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略 (日経ビジネス人文庫)コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略 (日経ビジネス人文庫)
ゲイリー ハメル Gary Hamel C.K. プラハラード C.K. Prahalad 一條 和生

日本経済新聞社 2001-01

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 また、ドラッカーは、原材料の調達から最終製品の生産に至る一連のプロセスを「経済連鎖」と捉え、一企業のコストだけでなく、経済連鎖全体のコストを最適化すべきだと述べている。これは、後のSCM(Supply Chain Management:サプライチェーン・マネジメント)につながる原則である。
 コスト分析は、企業を外部から見るマーケティング分析によるチェックがなければ、信頼できる意味あるものとはならない。コスト分析だけでは、部分的な分析でしかない。事実、最も成功している企業のなかには、外部コストの管理を成功の鍵にしているところがある。

 そのよい例として、流通において成功を収めているイギリスのマークス&スペンサーと、アメリカのシアーズ・ローバックがある。いずれも、その成功は、優れたメーカーを見つけ、それらメーカーのために製品と生産工程を開発し、かつ製品のコストを指定したことである。いずれも、その法的な枠組みの範囲を超え、コスト、製品、工程について、積極的な責任を負っている。
 管理会計に関しては、従来のコスト会計を否定し、後のABC(Activity Based Costing:活動基準原価)分析につながる考え方を示している。
 コスト会計では、1セントの支出も記帳しなければならない。したがって、あるコストがどの製品の生産のために支出されたかを明らかにできないとき、それらのコストは全製品に配分して計算される。しかし、そのような配分計算は、間接費はすべて直接費あるいは売上高に比例して発生するという前提があって初めて行いうる。そして配分される額が、総コストのわずか1、2割であるかぎりは、問題はない。50年前がそうだった。

 しかし今日、総コストの極めて多くの部分が、直接費ではない。(中略)いわゆる直接労務費でさえ、今日では、生産高に比例して変動はしない。工場で何を生産しようと、直接労務費はほとんど変化しない。ほとんどの製造業、およびすべてのサービス業において、労務費は、生産高ではなく、時間にかかわるコストである。つまるところ、今日では、生産高とともに変動する直接費として扱えるものは、原材料費を除けば、総コストの4分の1以下である。
 つまり、多くの企業でコストの大半を占めているのは人件費であり、さらにこれを製品別売上高などに応じて配分するのは間違いであるというわけだ。代わりに、「コストは作業量に比例し、そのほとんどは、ごくわずかの利益しか生まないおそらく90%という膨大な作業量から生じる」という前提から出発すべきだという。

 非常に単純化した例で言うと、ここに10万円の案件と1,000万円の案件があり、請求書の処理にかかる事務作業量はそれほど変わらないとする。この2案件の請求処理のために、月給20万円の事務員を雇っているケースを想定してみる(もちろん、実際にはこんなことはあり得ないが)。コスト会計に従って、案件の売上高に応じて人件費を配賦する方法をとると、10万円の案件に配賦されるコストは、20万円×10万円÷(10万円+1,000万円)=約1,980円であり、この案件からもたらされる利益は約9万8,020円となる(ひとまず、原材料費やその他のコストは無視する)。かたや、1,000万円の案件に配賦されるコストは、残りの人件費の約19万8,020円であり、この案件からもたらされる利益は約980万1,980円となる。

 ところが、ABC分析の場合、作業量に応じてコストが配賦されるので、10万円の案件と1,000万円の案件にかかる事務作業量が同じならば、コストも同じとなる。従って、両案件とも人件費を半分ずつ負担する。すると、10万円の案件は、人件費だけで10万円のコストがかかってしまい、実は利益がゼロになる。

 また、この事務員が、5万円、5万円、1,000万円という3つの案件の請求書処理を行っているとする。従来のコスト会計に従って利益を計算すると、それぞれ約4万9,010円、約4万9,010円、約980万1,980円となる。しかし、ABC分析では、3つの案件にかかるコストは同じとみなされ、いずれの案件も20万円の人件費を3等分した金額を負担することになる。すると、2つの5万円の案件は赤字になってしまうのである。

 これは非常に極端な例であるものの、作業量に応じてコストを配賦する方法で利益を計算してみると、それほど手間をかけずに利益を上げられている製品・サービスと、手間の割に実は儲からない製品・サービスとが明らかになる。これは、従来のコスト会計では見えないことである。その例をドラッカーが本書の中でいくつか挙げているけれども、マッキンゼーの調査結果として紹介しているものが一番解りやすい気がするので、それを引用しておく。
 食品店は、他の小売店と同じように、利益幅からコストの平均値を差し引いて利益を計算している。したがって、利益幅の最も大きな商品が最も利益をあげていると考える。しかし、マッキンゼーの分析は、コストが、それぞれの商品に要する作業量によって異なり、品目ごとのコスト負担には大きな差のあることを明らかにした。

 例えば、シリアル一箱の利益幅と缶入りスープ一箱の利益幅とは、1.26ドルと1.21ドルでほとんど同じだった。したがって食品店は、これら2つの食品がほとんど同じ利益をあげていると考えていた。しかし、作業量による分析の結果、シリアル一箱の純利益は25セント、缶入りスープは71セントであることがわかった。さらに、ベビーフードの利益についても作業量による分析を行ったところ、利幅が大きく、回転率が高かったにもかかわらず、あまりにも手間がかかるため、実際には赤字になっていることがわかった。
 今回の記事は教科書的な紹介のみで終わってしまったが、次回からはもう少し踏み込んだ内容を書いてみたいと思う。

 (続く)

 >>シリーズ【ドラッカー書評(再)】記事一覧へ


(※1)「イゴール・アンゾフ 企業戦略の父」(DIAMONDオンライン、2008年9月3日)
(※2)ちなみに、最近この本を読んだのだが、この本のベースになっているのは『創造する経営者』だと思われる。この本で紹介されているドラッカーのマーケティングの原則などは、『創造する経営者』の中でドラッカーが提起したものと大体同じだった。

ドラッカーが教えてくれた経営戦略作成シートドラッカーが教えてくれた経営戦略作成シート
浅沼 宏和

中経出版 2011-08-05

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2012年03月09日

【ドラッカー書評(再)】『経営者の条件』―組織を、世界を変えていく能動的なエグゼクティブ像にはあまり触れられずとの印象

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ドラッカー名著集1 経営者の条件ドラッカー名著集1 経営者の条件
P.F.ドラッカー

ダイヤモンド社 2006-11-10

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 『経営者の条件』に関する記事は今回で最後。本書は、エグゼクティブ個人が成果を上げるための能力・習慣を述べたものであるが、所々に企業・組織の視点から見た職務設計の原則も登場する。
 職務は客観的に構築しなければならない。人間の個性ではなく、なすべき仕事によって決定しなければならない。組織の中の職務について、その範囲や構造や位置づけを修正すれば、必ず、組織全体に連鎖反応が及ぶ。組織において、職務はお互いに依存関係にあり、連動している。1人の人間を1つの職務につけるために、あらゆる人たちの職務や責任を変えることはできない。
 業績は、貢献や成果という客観基準によって評価しなければならない。しかしそれは、職務を非属人的に定義し、構築して初めて可能となる。さもなければ、「何が正しいか」ではなく、「だれが正しいか」を重視するようになってしまう。そして人事も、「秀でた仕事をする可能性が最も大きな人間はだれか」ではなく、「自分が好きな人間はだれか」「みなに受け入れられるのはだれか」によって決定するようになってしまう。個人に合わせて職務を構築するならば、組織は確実に、情実となれないに向かう。
 ドラッカーの職務設計の原則を簡単にまとめてみるとこんな感じだろうか?まず、企業の外部に存在する顧客が、企業全体の成果を規定する。次に、企業全体の成果を、部門単位の成果にブレイクダウンする。さらに、部門ごとの成果を論理的に分解することで、各社員(≒エグゼクティブ)の成果を定める。その成果によって、それぞれのエグゼクティブの職務範囲が決まる。しかも、エグゼクティブの成果は、相互に依存関係にあり、協業を通じて初めて達成されるものである。こうした考え方は、後のMBO(Management by Objectives:目標管理制度)にも反映されているだろう。

 だが、この職務設計は2つの前提に基づいている。1つは「顧客の要求は合理的である」という前提である。実際、ドラッカーはしばしば、「顧客の要求を非合理だと受け取る企業もあるが、顧客の要求は常に合理的である」といった趣旨の発言を他の著書でも繰り返している。もう1つの前提は、組織構造や組織の慣例が、企業や部門の成果を適切な演繹的プロセスで各社員の成果に落とし込むことができる、というものである。

 しかし、前者の前提については、顧客の要求が常に合理的かどうかは、特に最近は怪しいところがある。社会通念的に見ると、どう考えても非合理的としか言えないような要求をしてくる顧客の存在も否定できないのではないだろうか?(※1)また、後者の前提に関しても、そこまで完璧に設計された組織や慣例はそうそうない。確かに、ある時期はそれでうまくいったのかもしれないが、時とともに変化する企業の外部・内部環境に適合できなくなっている可能性もある。

 こういう状況では、「顧客の要求は本来はこうあるべきだ」、「顧客にとって本当に望ましいのはこういうことだ」と企業側から逆提案を行うこと、さらに、本来の理想的な顧客の要求から出発して旧来的な組織構造やルールを破壊し、各エグゼクティブの職務を再定義することが要求される(※2)。これこそがリーダーシップである。ドラッカーはリーダーシップについても数多くの原理原則を残したが、本書に限って言えば、このリーダーシップの要素がやや弱いという印象がある。

 もちろん、部分的にはエグゼクティブがリーダーシップを発揮した事例が紹介されている。
 アメリカのある大手商業銀行では、証券代行部は、安定した利益はあげるが、単調な仕事と考えられていた。この部門は、手数料ベースで事業会社の株式の名義書き換えを代行していた。株主名簿の管理や、配当の小切手郵送など、雑多な事務手続きを行っていた。

 ある日、この部門を担当することになった副頭取が、「証券代行部はどのような貢献ができるか」と自問するまでは、そのような部門だった。しかし彼は、証券代行の業務が、事業会社の財務担当役員は、預金、貸し付け、投資、年金管理など、あらゆる銀行サービスに対する買い手として、意思決定を行う立場にあった。そこには、銀行のあらゆるサービスについての一大営業部隊となりうる可能性があった。
 株式が電子化された今では証券代行部など存在しないから、事例の古さは否定できないものの、要は副頭取が顧客である事業会社が自部門に明確に期待していることだけから出発せず、帰納的な思考を用いて、「事業会社は本当はこういうことを望んでいるのではないか?」という点から出発し、証券代行部の職務をガラリと変えてしまったところがポイントである。
 企業、政府機関、病院に働くエグゼクティブの多くは、自分にさせてもらえないことについてはよく知っている。彼らは、上司がさせてくれないことや、企業の方針がさせてくれないことや、政府がさせてくれないことについて、気にしすぎる。

 成果をあげるエグゼクティブも、自らに対する制約条件は気にしている。しかし彼らは、してよいことであって、しかも、する値打ちのあることを簡単に探してしまう。させてもらえないことに不満をいう代わりに、してよいことを次から次へと行う。しかもその結果、同僚たちには重くのしかかっている制約そのものが、彼らの場合は消えてしまう。
 これは、組織の慣行によって不適切に定義されているとエグゼクティブが感じている成果を自ら再定義し、新しい成果を追求するというリーダーシップの例である。こうしたエグゼクティブがあらゆる階層に存在すると、企業全体として変化に適応する能力が高まる。

 ただし、本書ではそこまでのエグゼクティブ像には踏み込んでいないような気がする。これは、エグゼクティブはまずは自分をマネジメントするのが先決であって、マネジメントができない人間にリーダーシップなど発揮できない、ということをドラッカーが暗示しているからなのかもしれない。

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(※1)「勝つことが最大のファンサービスだ」と公言して、8年間勝利の追求に徹した中日の落合前監督は、まさに顧客=ファンの要求を書き換えた例だろう。それまでのプロ野球ファンは、選手やチームに対して「面白い野球」や「ファンサービス」を期待していた。しかし、落合氏はそうした余分な要求を全て取り払い、勝利のみをチームの目的とした。そして、勝つために個々の選手がどのような仕事をしなければならないかを考え、その仕事を1年間全うできるようなスキルとスタミナを身につけさせるための猛練習を選手に課したわけである。

《2012年5月6日追記》
(※2)「顧客の要求が非合理的であるかもしれない」ことに加えて、「顧客は自分が何を望んでいるのか解らない」というのも現実である。岩崎邦彦著『小が大を超えるマーケティングの法則』によると、「あなたの現在の生活で足りないと思う商品を1つ挙げてください」という質問に対し、消費者調査では1000人中668人が「特にない」と答えたという。だから、従来型の市場調査から何か斬新な製品やサービスを導くことは難しい。

 もし、「現在の企業に足りていないものを1つ挙げてください」と問われれば、顧客に対して「今まで考えたこともなかったけれど、言われてみればそういうモノやサービスがあったら嬉しい」と思わせるような新しい価値を解りやすく提案していくイノベーターの創造力と答えるだろう。


小が大を超えるマーケティングの法則小が大を超えるマーケティングの法則
岩崎 邦彦

日本経済新聞出版社 2012-02-25

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