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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2013年02月12日

『リーダーは未来をつくる(DHBR2012年11月号)』―共有価値観で結ばれた利害関係者の生態系


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 11月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 11月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2012-10-10

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 やや古い調査だが、『日経ビジネス』1995年8月号によれば、日本企業の過去20年間の営業利益の伸び率を見てみると、経営ビジョンを有している企業は7.8倍であるのに対し、経営ビジョンを持たない企業は3.6倍にとどまっているという(※1)。

 また、中小企業製造業に限定された調査ではあるが、「活力ある中小企業」(直近10年間で売上高経常利益率がおおむね6%以上の中小企業製造業)と「赤字基調にある企業」(直近10年間で売上高経常利益率がおおむね0ないし赤字基調の中小企業製造業)の経営ビジョンについて調べた報告書がある。経営ビジョンを明確化しているか?という問いに対しては、「活力ある中小企業」が87.4%、「赤字基調にある企業」が75.4%と回答しており、あまり差はない。ところが、経営ビジョンは実際の経営判断においてどの程度実践できているか?という問いに対しては、「活力ある中小企業」が90.0%が「ほぼ実践できている」、「ある程度実践できている」と回答しているのに比べ、「赤字基調にある企業」は56.5%にとどまる(※2)。

 経営ビジョンが社内で共有され、実践されている企業は、そうでない企業に比べると競争力が高い。これをさらに拡張すると、経営ビジョンが顧客、仕入先、株主・金融機関、行政、地域社会といったステークホルダーと共有され、ステークホルダーを巻き込む意思決定の場面で実際に活用されている企業は、より強い競争力を有するはずである。旧ブログでは、自社の共有価値観がステークホルダーと固く共有されている状態を、競争戦略論で有名なマイケル・ポーターの「価値連鎖(Value Chain)」という言葉を借りて、「価値観連鎖(Values Chain)」と呼んだ(※3)。

 価値観連鎖と利益の関係を調べた調査を私はまだ見たことがないのだが、『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2012年11月号を読むと、先進的な企業は価値観連鎖の形成と維持・強化に余念がないように思える。今回の記事では、同号から、スタンダードチャータード(アメリカの金融機関)とユニリーバの事例をまとめてみたい。

(1)顧客
<スタンダードチャータード>
 2010年3月、スタンダードチャータードは「ヒア・フォー・グッド("Here for good")」というブランド理念を発表した。「顧客にとって大切なことをする」と「長期展望を持つ」という二重の意味を持つこの理念は、経済的価値と社会的価値の両方を創出しようとする同行の願いを表している。

 同行は顧客に対しても、経済的価値だけでなく社会的価値を生み出すように要請している。同行は危険な業務が多い鉱業、林業、船舶解体業などの業界の顧客との取引の場合、労働安全と環境保全に関する要件を盛り込んでいる(ナサニエル・フット他「経済的価値と社会的価値を両立させる 優れたリーダーは業績だけで満足しない」より)。

<ユニリーバ>
 ウィリアム・ヘスケス・リーバ(後のリーバヒューム卿)が19世紀にユニリーバを創業した時、イギリスには重大な衛生上の問題があった。ビクトリア朝時代には、赤ん坊の2人に1人が1歳までに死んでいた。そこで彼は固形石けんを発明したのだが、金儲けのためではなかった。

 この創業時のエピソードから、経済的価値だけではなく、社会的価値に貢献するという同社の価値観が築き上げられた。現在、同社は「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」を掲げ、持続可能な社会の実現に大きく貢献しようと野心的な目標を設定した。プランの実行過程で、同社は消費者を巻き込んだコミュニケーションを図る機会を望んでいる。

 同社のブランドの製品を利用する消費者は、毎日20億人以上に上る。以前なら、消費者はこう言ったかもしれない。「持続可能なリプトンのティー・バッグを使っているけれど、それで何が変わるというのだ。隣の人はそうでないし、大きなSUVを乗り回している」。しかし、今は「それで何かが変わる」と示すことができる。20億人が紅茶を飲んでいるのだから、持続可能な形で調達されたものを買い求めることで、消費者もよいことを実行する一員になれる、と同社は考えている(ポール・ポールマン「世界の企業の手本となれるか 未来をつくるリーダーシップ」より)。

(2)仕入先
<ユニリーバ>
 同社では、原材料調達から廃棄まで、ライフサイクル全体を対象に、サプライチェーン全体を通じて約50の目標を設定している。総合的な環境負荷を削減し、持続可能な形で農業資源を調達し、10億人が十分な栄養を摂取して健康で安心な生活を実現できるようにしようとしている。

 同社のブランドは全て社会的使命、経済的使命、製品としての使命を持っている。この使命を全てR&Dプログラムに組み込んでいる。調達から工場、消費者へ至るサプライチェーン全体の活動が生む影響を測定することに、膨大な時間を費やしている。同社はデータを重視し、計画を遂行する上での責任の所在を明らかにしている(ポール・ポールマン「世界の企業の手本となれるか 未来をつくるリーダーシップ」より)。

(3)株主
<ユニリーバ>
 同社は、株主利益を生み出すことだけが企業の責務ではないとしている。他の全てを犠牲にして株主価値を高めるような近視眼的なビジョンでは、長続きする企業にはなれない。それを踏まえた上で、会社の戦略を支持してくださる株主基盤を惹きつける必要があると考えている。同社は、自社の長期戦略を理解してくれる株主を積極的に探している。

 一方で、ヘッジ・ファンドや短期投機家には次のように言っている。「皆さんは当社とは相容れません。株式会社を少々お買いになったからといって、当社の戦略を台無しにする権利が得られるわけではありません」。ポール・ポールマンCEOは、「ヘッジ・ファンド・マネジャーは金になるためなら自分の祖母でも売り飛ばすだろう」と言ったとも報じられた。

 ポールマンCEOは、CEO就任初日に四半期報告を廃止した。これによって株主が取り残されるどころか、そのおかげで業務が減り、十分すぎるほどの時間を割いて、株主に事業の状況を説明し、より長期的な戦略について話し合うことが可能になったという(ポール・ポールマン「世界の企業の手本となれるか 未来をつくるリーダーシップ」より)。

(4)行政
<スタンダードチャータード>
 同行はグローバル展開にあたり、現地法人のCEOに対して、現地の重要ステークホルダーと直接交渉し、現地の資本市場で直接取引を行う権限が与えられた。このような取引では、大手インターナショナル・バンクは現地の規制の曖昧さにつけ込むのが常だが、同行は正道を歩むことにした。つまり、「信頼されているインサイダー」になることを目指したのである。

 それには現地政府から建設的な勢力とみなされなければならなかった。そこで、現地法人のCEOは現地の法律の許容範囲を無理やり広げようとするのではなく、正しく機能する市場を築くためのパートナーとして現地の規制当局を扱うことが求められた(※4)(ナサニエル・フット他「経済的価値と社会的価値を両立させる 優れたリーダーは業績だけで満足しない」より)。


 (※1)佐々木直『企業発展の礎となる経営理念の研究』(産能大出版部、1999年)

企業発展の礎となる経営理念の研究企業発展の礎となる経営理念の研究
佐々木 直

産能大出版部 1999-07-12

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 (※2)関東経済産業局 「平成21年度地域中小企業活性化政策委託事業 中小企業経営のあるべき姿に関する調査 報告書」(2010年3月)

 (※3)旧ブログの記事「【水曜どうでしょう論(3/6)】外部のパートナーを巻き込んで「価値観連鎖(バリューズ・チェーン)」を形成する」、「自社のビジョンに利害関係者も巻き込む「価値観連鎖(Values Chain)」の再発見―『絆の経営(DHBR2012年4月号)』」を参照。

 (※4)具体的に同行が現地の規制当局とどんなパートナーシップを構築しているのか?同行のビジョンを実現するために、現地の規制をうまく活用した事例は何かあるか?逆に、同行のビジョンと規制当局の考えが合わないという理由で、現地事業を諦めた事例はあるか?などにも触れられているとよかったのだが、残念ながら同論文はそこまで踏み込んでいなかった。
2013年02月10日

【ベンチャー失敗の教訓(第4回)】何にでも手を出して、結局何もモノにできない社長


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 Z社のC社長は非常に移り気の激しい人で、戦略コンサルティング以外にも様々な分野に手を出そうとしていた。本業の戦略コンサルティングが軌道に乗っていれば、多角化する意義もまだ理解できるというものだが、私が入社した頃は、C社長が個人的にやっていた投資事業(「【ベンチャー失敗の教訓(第2回)】営業活動をしない社長」を参照)が前年度に稼ぎ出した利益のおかげで、何とか会社が持っているような状態であった。

 C社長が最初にやろうと言いだしたのは、当時民間企業の参入が相次いでいた介護分野であった。しかし、C社長には介護事業に関する知見も経験もなく、スタッフにも介護分野に詳しい人はいない。にもかかわらず、介護事業のHPを立ち上げて、「我々は介護事業のエキスパートです」などといった嘘八百を並べ立て、転職サイトに介護事業スタッフの募集広告を出していたことが解った時には、入社したばかりの私もさすがに驚いた。幸いなことに(?)、応募してくる人は誰もおらず、数か月もするとC社長の熱も冷めてしまったので、この話は立ち消えになった。

 次にC社長が目をつけたのは飲食業であった。C社長は社内のコンサルティングスタッフを集めて、業務時間の合間に事業計画を作らせていた。コンサルタントが作っただけのことはあって、資料だけは立派だった。精緻な市場動向分析から始まって、ポジショニングマップで競合他社をマッピングし、ブルーオーシャン戦略に登場する戦略キャンバスを使って自社が提供しようとしている顧客価値を定義していた。しかし、立地はどこにするのか?内装はどうするのか?材料はどこから調達するのか?店舗のオペレーションはどうするのか?店舗スタッフはどうやって採用し、教育するのか?見込み客にはどのようなプロモーションをかけるのか?などといった肝心の議論が抜けており、まさに文字通り画餅に終わってしまった。

 介護事業も飲食業も、非常に泥臭い労働集約型のビジネスであり、かつ利益も出しにくい。言い換えれば、苦労の多いビジネスである(他のビジネスは苦労が少ないというわけではないが・・・)。C社長にはおそらく、その苦労を自ら背負う覚悟はなかったのではないか?なぜならば、C社長は介護事業に対しても飲食業に対しても、「私が前職のコンサルファームで儲けたお金がある。そのお金を出すから、後は君たちでやってくれ」というスタンスを常に崩さなかったからである。大企業の新規事業であれば、経営陣が資金のバックアップを約束し、実行部分は部下に権限移譲する、ということも考えられるであろう。しかし、人手不足のベンチャーにあって、お金(と口)を出すだけの傍観者など全く不要なのである。

 その後もC社長はいろんな分野に手をつけようとした。サービスマネジメントがブームになると「サービスマネジメントのコンサルティングをやる」と言い出し、日本のメーカーはデザインが弱点だと言われ始めると「デザインのコンサルティングをやる」と言い出し、海外の優れた法人営業研修のコンテンツを見つけてくると「それを使って営業力強化のコンサルティング」をやると言い出し、ソーシャルメディアの登場で新しいWebマーケティングが出てくると「Webマーケティングのコンサルティングをやる」と言い出し、民間企業の農業への参入が話題になると「農業のコンサルティングをやる」と言い出すありさまだった。

 どのコンサルティングをとってみても、深い知見と確かなノウハウが必要なものばかりである。しかも、Z社のような無名のベンチャーがコンサルティングをやるからには、よっぽど優れたメソドロジー(方法論)を持っているか、その分野での実務経験が豊富なスタッフを抱えていなければ競合他社と勝負できない。しかし、そういう武器を持たないZ社は、結局のところ、

 C社長が「これをやる」と言ってお金を出す
⇒コンサルティングスタッフがメソドロジーを考える
⇒コンサルタントにとっても未知の分野なので、メソドロジーの確立に時間がかかる
⇒クライアントに提案してもメソドロジーの曖昧さゆえに相手にされない
⇒コンサルティング実績が積めないので、メソドロジーに磨きがかからない
⇒ますますクライアントからの受注が困難になる
⇒やがてC社長が出したお金が底をついて、C社長がその事業に飽きる

というサイクルを繰り返すばかりであった。

 C社長は、とりあえず見込みがありそうなものには何にでもお金を出しておき、どれかが当たってリターンが上がればそれでOKという考え方の持ち主であった。これはひとえに、C社長の経歴も影響していると考えられる。C社長は前職のコンサルティングファームで、コンサルタントとしてキャリアを踏んだ後、最後はファーム内の投資部門で働いていたそうだ。投資部門の役割は、有望な事業家を見つけ、ポートフォリオを組んで投資を行うことである。その時のクセが、Z社を立ち上げた後にも抜けきっていなかったのであろう。

 投資家であれば、リスク低減のために分散投資をするのは理に適っている。しかし、経営者、しかも中小企業の経営者の仕事は、大きなリスクを取って限られた経営資源を特定の事業に全集中させることでなければならない。この点をC社長は解っていなかったのだと思う。

 余談だが、X社、Y社、Z社の各社長は、お互いの会社の株式を持ち合っていた。私が入社してから4年ほど経った頃、ずっと業績低迷にあえいでいたY社がグループから離脱することになった。Y社の大株主であったC社長は、保有するY社の株式を全て、Y社の新しい社長に譲渡することで話がついていた。ところが、譲渡手続に入る直前になって、C社長が「やはり過半数は持っておきたい」などと言い出し、交渉が難航したことがある。どうしても株主として振る舞いたいC社長の一面が、ここでも垣間見えた格好となった。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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2013年02月08日

森繁和『勝ち続ける力』―落合氏と森氏に共通する7つの思考(2)


勝ち続ける力勝ち続ける力
森繁和

ビジネス社 2012-10-12

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 (前回の続き)

(4)孤独に負けない精神力をつけさせる
 (最近の若い選手は)自分の時間は1人で過ごしたいのに、グラウンド(仕事)では「どうすればいいですか」「指示を出してください」「これで間違っていませんか」という頼りなげな視線を向けてくる。

 それでは困る。自分1人で決めねばならないのだ。(中略)野球は9人対9人で戦うチームスポーツだが、実際は投手と打者による1対1の勝負である。しかも、投手の指先をボールが離れると、コンマ何秒で勝負がついてしまう。そんな一瞬の勝負に、長々とアドバイスしている時間はない。(『采配』)
 潰れない選手、伸びる選手には、共通点がある。特に投手の場合、この共通点は、大成するために絶対必要不可欠な条件だと感じる。それは、孤独な時間をきちんと過ごせることだ。(中略)

 相手を知る前に、孤独に慣れ、技術的にも精神的にも、自分をしっかりわかっておかないといけないのだ。そのためには孤独な時間をうまく過ごせるようになる必要があるのだ。山本昌や浅尾や吉見は、何だかんだ言ってもそれができる投手だった。ランニングを1人で黙々とやりながら、自分のことを考える。野球のことを考える。ピッチングのことを考える。そのひとときこそが大事だと私は思う。(『参謀』)
(5)30代で一人前になることを目指す
 現在のドラゴンズには、27歳の野本圭と岩崎達郎を筆頭に、26歳の堂上剛裕、大島洋平、24歳の松井佑介、23歳の平田良介、堂上直倫、福田永将ら、将来はレギュラーになってもおかしくない若手野手が何人もいる。彼らを私の一存でレギュラーに抜擢すれば、1年くらいはそこそこの成績を残してくれたかもしれない。

 しかし、基礎体力に加えて、長いペナントレースを戦い抜く体力をつけてくれないと、2年、3年と実績を残していくのは難しい。だからこそ、25歳から30歳くらいの間は、しっかりとした土台をつくる時期だととらえている。

 せっかく若くしてレギュラーになっても、30代半ばでユニフォームを脱ぐことになったら寂しい。ならば、20代で足場を固め、30歳でレギュラーの座を手に入れ、40代まで第一線でプレーできたほうが幸せなのではないだろうか。(『采配』)
 なにもあせる必要はない、選手の本格的な活躍は30代からでもいい、20代で一瞬活躍して、すぐケガや勘違いで活躍できなくなり、プロ野球界を去るケースを私もたくさん見てきたし、監督もそうだろう。だったら、じっくり下積みを経験して、練習を積み、森野(将彦)(筆者注:落合政権8年間の間に、野手でレギュラーをつかみとったのは森野だけである)のように、30代でレギュラーになり、欠かせない選手になったほうがよっぽど幸せだろう。

 ドラゴンズが誇る「アラ・イバ」コンビ、荒木雅博と井端弘和もレギュラーに定着したのは20代なかばである。選手のためを思えば、長い目で見て3年後、5年後にレギュラーになれるような育て方をすればよい。特にピッチャーは、体ができていないうちに無理をすると、短命で終わる危険が高くなる。1~2年ですぐ結果を求めるのは、選手のためと言うよりは、監督やコーチが実績をあせるからだろう。(『参謀』)
(6)「点をやらない野球」を徹底する
 監督になったつもりで考えてほしい。0対1の悔しい敗戦が3試合も続いた。ファンもメディアも「打てる選手がいない」と打線の低調ぶりを嘆いている。この状況から抜け出そうと、チームでミーティングをすることになった。監督であるあなたは、誰にどんなアドバイスをするか。(中略)

 私は投手陣を集め、こう言うだろう。「打線が援護できないのに、なぜ点を取られるんだ。おまえたちが0点に抑えてくれれば、打てなくても0対0の引き分けになる。勝てない時は負けない努力をするんだ」(『采配』)
 バッティングのように、すぐに結果が出ないものは仕方がない。それよりもやるべきこと、「守ること、走ること」をきちんとする。「やるべきこと」はミスをしないことだ。普通に捕れるボールを捕り、暴投しないようにすることだ。

 ヒットを打つことが「やるべきこと」ではない。3回に1回打てば、打率は十分なのだ。それより正面に来たボールを捕って確実にアウトにする。フライを捕る、走る、バックアップ、カバーリングをきちんと行っていれば、勝つことができても負けることもない。(『勝ち続ける力』)
(7)選手の中にリーダーを作らない
 最近の若い選手は、巷でチームリーダーと言われている選手に敬意を表し、「あの人についていけば」とか「あの人を中心に」といった発言をするが、それが勝負のかかった場面での依存心になってしまうケースが多い(筆者注:1点リードを許している展開で、1死2塁でチャンスが回ってきた時に、自分で決めてやろうとするのではなく、後に控えるチームリーダーに決めてもらおうと自分は進塁打に徹してしまうことを指す)。(中略)

 組織に必要なのはチームリーダーではなく、個々の自立心と競争心、そこから生まれる闘志ではないか。年齢、性別に関係なく、メンバーの一人ひとりが自立心を持ち、しっかりと行動できることが強固な組織力を築いていく。(『采配』)
 本来は、全員がリーダーシップをとる能力をもっているのが望ましい。自分はただついていくだけというのではなく、それぞれが考える集団がベストだ。そのうえで初めて、ひとつにまとまる意味がわかるのだ。

 結論としては、私は最初からリーダーを決めるべきではないと思っている。リーダーは育てるものではなく、自然に育つものだ。(『勝ち続ける力』)
 こうした2人の共通価値観に従って、長時間の厳しい練習を通してじっくりと育成された、タフで自立心のある選手たちが、投手も野手もそれぞれに考えながら能力を発揮し、鉄壁の「守りの野球」を実現させていったのだろう。中日の組織能力が一過性でなかったことは、2人がチームを去った2012年のペナントレースでも、勝敗自体は2011年と遜色ない成績を残したことに表れている(2011年が75勝59敗10分、2012年が75勝53敗16分)。問題はブランコ、ソト、ソーサという助っ人外国人が3人とも抜けた今年だ。落合―森文化が活きていれば、代わりの選手はすぐに出てくるに違いない。しかし、その文化が崩れ始めると、2002年から11年続くAクラスの座も危ういかもしれない。いや、個人的には中日の心配はどうでもいいのさ。問題は阪神よ、阪神!



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