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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都豊島区を拠点に、東京23区で活動する中小企業診断士(コンサルタント・トレーナー)。ほとんど書評ブログ。たまにモノローグ。

 中長期的な研究分野は、
 ①日本の精神、歴史、伝統、文化に根差した戦略論を構築すること。
 ②高齢社会における新しいマネジメント(特に人材マネジメント)のあり方を確立すること。
 ③20世紀の日本企業の経営に大きな影響を与えたピーター・ドラッカーの著書を、21世紀という新しい時代の文脈の中で再解釈すること。
 ④日本人の精神の養分となっている中国古典を読み解き、21世紀の日本人が生きるための指針を導くこと。
 ⑤激動の多元的な国際社会の中で、日本のあるべき政治的ポジショニングを模索すること。

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
所属組織など
◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)


2012年12月10日

麻生太郎『とてつもない日本』―国民もソフト・パワーの担い手として政治力を発揮できる


とてつもない日本 (新潮新書)とてつもない日本 (新潮新書)
麻生 太郎

新潮社 2007-06-06

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 自民党・安倍総裁の『美しい国へ』に続いて、麻生太郎氏の『とてつもない日本』も読んでみた。麻生氏が総理になる前の2007年に出版されたものであり、それまで長らく外交に携わっていたことから、本書の半分ぐらいは外交、特にアジア外交に焦点が当てられている。

 今振り返ってみると、ここ20年ほどの総理大臣の中で、米政治学者ジョセフ・ナイが提唱した「ソフト・パワー」の有用性を最もよく理解していたのは、麻生氏だったのかもしれない。麻生氏の外交目的は極めて明確である。それは、「日米同盟の下に、民主主義、自由、人権、市場原理といった、米国と共有する『普遍的価値』を、アジアに広めていくこと」に尽きる。この目的を達成するために、一般的な外交で用いられる軍事力や経済援助(または制裁)というハードな有形手段だけでなく、例えば社会インフラを建設する日本の優れた「技術力」や、麻生氏が大好きなマンガに代表される日本の「文化」といった、ソフトな無形資源も活用したのである。

ソフト・パワー 21世紀国際政治を制する見えざる力ソフト・パワー 21世紀国際政治を制する見えざる力
ジョセフ・S・ナイ 山岡 洋一

日本経済新聞社 2004-09-14

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 麻生氏の志は、残念ながらわずか1年足らずで閉ざされてしまった。それ以降、民主党政権の下で日米関係は不安定となり、中国、韓国、さらにはロシアも公然と日本の領海・領土を脅かすようになり、日本に「ハード・パワー」を突きつけている。

 特に韓国との関係は複雑だ。麻生氏は本書の中で、韓国を日本と同じ民主主義の価値観を共有する重要なパートナーとみなしている。ところが、日本のマンガやJ-POP、ファッションは韓国で受け入れられているのに、領土問題となると、竹島の実効支配が韓国には通用しない。これは韓国の立場から見ても同じで、(電通のおかげで、特にフジテレビ相手に)韓国のドラマや音楽を輸出することに成功したにもかかわらず、大統領が独島を訪れれば、日本は黙ってはいない。つまり、ハード・パワーとソフト・パワーのねじれ現象が起きていると言える。そして、このねじれに対する最適解を持った政治家は今のところいなさそうだ。

 先ほど挙げたナイは、外交にはハード・パワーとソフト・パワーの両方が必要であるとし、両者を合わせて「スマート・パワー」と呼んでいる。そして今後の世界では、スマート・パワーを行使するリーダー、すなわち「スマート・リーダー」がますます重要になると説く。私は自民党からスマート・リーダーが登場することを多少は期待しているし、我々国民もまた、スマート・リーダーの一部を担う責務がある。なぜならば、技術や文化は国家が意図的に発信するというよりも、民間が市場原理を通じて外国市場へと広めていくのが自然な形だからである。

スマート・パワー―21世紀を支配する新しい力スマート・パワー―21世紀を支配する新しい力
ジョセフ・S・ナイ 山岡 洋一

日本経済新聞出版社 2011-07-21

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2012年12月08日

橋上秀樹戦略コーチの本まとめ読み―「巨人、日本一おめでとうございます」(棒)


野村の「監督ミーティング」 (日文新書)野村の「監督ミーティング」 (日文新書)
橋上 秀樹

日本文芸社 2010-05-28

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 名字をもじって「かみ(神)さん」と呼ばれ、巨人を3年ぶりの日本一に導いた影の立役者と言われる橋上秀樹戦略コーチの本。その橋上氏が、楽天ヘッドコーチ時代に実践した野村克也氏の教えをまとめた一冊である。今までの巨人も、それなりにスコアラーは充実していた。しかし、大物選手が多いチーム事情を反映してか、データの活用はそれぞれの選手任せにしていたように思える。それが今年になってからは、橋上戦略コーチがノムさんのID野球のノウハウを注入して、チーム全体でデータを重視する姿勢が徹底された。そりゃ、巨人以上に選手に対して放任主義をとっている阪神が巨人に敵うわけがないわ・・・。
 野村監督はとにかくデータを欲しがる。たとえば自軍の攻撃で、1死1、2塁という場面、打者のカウントが1-2(※本書は2010年に出されたものなので、ここでの1-2は1ストライク2ボールを意味する)になると、『ヒットエンドランのサインを出したいんだが、このカウントで相手バッテリーはこれまでに何回外してきている?』という質問が来るので、『これまで一度も外していません』とか、『今年は一度だけ外しています』というように、データを用意できなければならない。しかも1球ごとに質問が変わってくるので、即座に答えられるようでなければ、野村監督の参謀は務まらないのである。
 単純に考えれば、野球では1試合あたり両軍合わせて300球ぐらい投げるから、1球ごとに質問が飛んで来るとすると、試合中に300もの質問が浴びせられることになる。しかも、ボールカウント、アウトカウント、ランナー、イニング、点差、攻守の組合せを踏まえると、

(1)ボールカウント・・・0-0から3-2までの12パターン
(2)アウトカウント・・・無死、1死、2死の3パターン
(3)ランナー・・・ランナーなし、1塁、2塁、3塁、1・2塁、1・3塁、2・3塁、満塁の8パターン
(4)イニング・・・1回から9回までの9パターン(ひとまず延長戦は除く)
(5)点差・・・同点、1点リード、2点リード、3点リード、1点ビハインド、2点ビハインド、3点ビハインドの7パターン(ひとまずそれ以上のリード、ビハインドは除く)
(6)攻守・・・攻撃と守備の2パターン

より、理論的には、「12×3×8×9×7×2=36,288パターン」の状況が想定される(延長戦や、もっと点差が開いた展開も含めるならば、さらにパターンは増える)。野村監督の下で働くためには、この何万という状況において、どのような作戦で臨むかを判断するためのデータを準備しておく必要があるというのだ。ひゃー、これは大変だ。野球が最近流行の「ビッグデータ」に飛びつくのも頷ける(http://itpro.nikkeibp.co.jp/expo/2012/forum/view.html?c=P116)。

野村の授業 人生を変える「監督ミーティング」 (日文新書 59)野村の授業 人生を変える「監督ミーティング」 (日文新書 59)
橋上 秀樹

日本文芸社 2010-11-27

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 『野村の「監督ミーティング」』の続編。
 野村監督は、「人の悪口を言わないようなヤツは信用できない」と、実にユニークな視点で他人を見ているところがあった。つまり、悪口を言っているということは、自分なりのはっきりとした考えがある裏返しであり、その人間が何を考えているのか、本音の部分が見えてくるから信用できるというわけだ。

 逆に、誰にでも「いい人」と言われているような人は、結局のところ、相手に本音を話していないとも言い換えられる。つねに発言を聞いた人の気分を損なわない言い方をしているから、「いい人」でいられるのであり、「これだけは譲れない」という信念にも欠けている。だから、信用に値しないというのだ。
 ノムさんが言う「人の悪口」こそ、毎試合後に発せられた至極の「ボヤキ」の数々であろう。ノムさんは、「ボヤキとは理想があって、その理想をどうしても達成したいから出るのだ」とも言っていた。私が思うに、ノムさんの凄いところは、どこまでも我慢強いことである。ノムさんクラスになれば、1試合を終えただけで、おそらく何時間でも、それこそ半永久的にボヤキ続けることができるに違いない。しかし、ノムさんがマスコミに対して発するボヤキは、たいてい少数の課題に絞り込まれている。試合終了後のノムさんは、ベンチからロッカールームを通って記者が待っているブースへと向かう間に、その日のボヤキを考えていたそうだ。

 ノムさんは歩きながら、数多ある課題のうち、今日は特にこの課題についてボヤこうと決めていたのだろう。そこには、「まずはこの課題ができるようになればいい」、「この課題がクリアできたら、次はこの課題に注目しよう」という、課題の取捨選択と優先順位づけがある。そして、選手が理想の野球への階段を一段ずつ登っていくのを、どんなに時間がかかってもいいからじっと見守る、そんな厳粛かつ温かいパターナリズムをノムさんからは感じるのである。
2012年12月06日

リチャード・モリタ『これだっ!という「目標」を見つける本』―キャリアデザインと戦略立案のアナロジー


【ダイジェスト版マイ・ゴール】これだっ!という「目標」を見つける本【ダイジェスト版マイ・ゴール】これだっ!という「目標」を見つける本
リチャード・H・モリタ ケン・シェルトン

イーハトーヴフロンティア 2007-01-10

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 キャリア論が専門の神戸大学・金井壽宏教授は、社員にとって仕事の方向性を表す「キャリア」と、組織にとって事業の方向性を表す「戦略」とを同じ次元で捉えている。
 節目だけデザインすればいいものの代表格が、分析レベルが個人から組織にあがっていくが、会社全体としては、「経営戦略」である。どこを活動の舞台とし、どこに自社のコア・コンピタンス(中核となる独自の強み)を築き、そのためにどのように傾斜的な資源配分をおこなうかを決めることが、経営戦略を立てることだ。(中略)先の個人レベルのシャインの問い(※心理学者のエドガー・シャインは、(1)自分は何が得意か、(2)自分は一体何をやりたいのか、(3)どのようなことをやっている自分なら、意味を感じ、社会に役立っていると実感できるのか、という3つの問いを通じて、自己イメージのチェックを勧めている)を、組織レベルに翻案してみよう。

 (1)わが社は他のどこよりもうまくできることはないか。
 (2)わが社は、どこでどのような事業を営みたいのか。
 (3)その背後にある事業観や理念、そこで事業することの社会的な意味や価値はどこにあるのか。
(金井壽宏著『働くひとのためのキャリア・デザイン』)
働くひとのためのキャリア・デザイン (PHP新書)働くひとのためのキャリア・デザイン (PHP新書)
金井 壽宏

PHP研究所 2002-01

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 私もこの考え方に賛成である。実際、戦略構築のアプローチとキャリアデザインは、金井氏も指摘しているようによく似ている。端的に言えば、そのプロセスは、外部環境と内部環境の分析を通じて、組織や個人の進むべき道を導き出すというものである(キャリアデザインの場合、外部環境とは個人が所属する部署・会社、およびその会社が属する業界を、内部環境とはその人自身の経験や性格、価値観を指す)。

 リチャード・モリタ氏は『これだっ!という「目標」を見つける本』の中で、自分に合った目標を設定するためには、幼少期の記憶にまで遡って、実に深い自己認識=生活史を持たなければならないと主張している(昨日の記事「リチャード・モリタ『これだっ!という「目標」を見つける本』―成功者は昔のことを驚くほどよく覚えている」を参照)。つまり、キャリアデザインにおける内部環境分析の時間軸が非常に長いのが特徴である。

 キャリアと戦略が同じ次元で捉えられるとすれば、戦略立案における内部環境分析も、同じく長い時間軸を持つ必要があるだろう。言い換えれば、社史をじっくりと振り返るべきなのである。しかし、現実問題としては、せいぜいここ数年の財務体質や組織能力を分析するのが精一杯である。スピードを求める経営陣に対して、「御社の社史を見直しましょう」などと言おうものなら、「何を悠長なことを言っているのだ」と一喝されるに違いない。

 では、経営陣が求めるスピードで一気呵成に構築した戦略が、社員の腹落ちするものになっているかというと、やや疑問である。苦労して作り上げた生活史から導かれた目標が「これだ!」と思えるのは、もはや目標と自分が同化しているからである。だとすれば、社員が納得する戦略とは、企業が綿々と紡いできた社史というタペストリーの延長線上にあり、戦略と社員がもはや同化しているものでなければならないはずである。

 社史は組織の文化を表す。創業者の理念や武勇伝、成長期にあった輝かしいエピソードと、それとは反対に一時は会社を倒産寸前にまで追い込んだ辛い失敗の数々、それらの出来事に携わった歴代の社員の思いと、先輩社員たちが導き出した無数の教訓。こうした様々な要素を丹念に読み解いていくと、その企業がどういう文化を持っているのかが解る。この企業文化を、戦略構築の重要なファクターにすることはできないだろうか?

 実際のところ、戦略と文化の関係性に着目した研究は存在する。ヘンリー・ミンツバーグは著書『戦略サファリ』の中で、企業戦略に関する膨大な研究を類型化し、10のスクール(学派)の1つとして「カルチャー・スクール」を挙げている。ただし、残念なことに、カルチャー・スクールに属する研究者の大部分は、「文化は組織の足を引っ張るもの、変革の邪魔になるもの」という前提に立っている。文化が戦略に及ぼす肯定的な影響力を取り上げているのは、スウェーデンの研究者など少数派にとどまるようだ。企業文化と戦略の間にダイナミックな関係性を描くことができたならば、マイケル・ポーターなどとは異なる面白い戦略観が導き出せそうに思える。

戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック (Best solution)戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック (Best solution)
ヘンリー ミンツバーグ ジョセフ ランペル ブルース アルストランド Henry Mintzberg

東洋経済新報社 1999-10

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