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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
所属組織など
◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

中小企業診断士の安い通信講座なら「資格スクエア」資格スクエア
(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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最新記事

2017年07月21日

【日本アセアンセンター】ASEANにおける人事/労務/ビザ最新情報(セミナーメモ書き)

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パスポート

 日本アセアンセンターのセミナーに参加してきた。セミナーで勉強になったことのメモ書き。

 【Ⅰ.タイ】
 ・タイの一般就業数は約3,858万人(2012年)であり、そのうち38.9%が農業従事者である。タイでは2018年より生産年齢人口が減少すると予想されており、第2次・第3次産業の成長スピードを緩めないためには、農業従事者を第2次・第3次産業に移行させる必要がある。ただ、2018年後半に予定されている国民総選挙では、農業従事者の支持が強いタクシン派が反タクシン派に勝利すると予想されており、就業者の産業間の移行がどこまで進むか不透明である。

 ・タイに進出している日本企業数は約8,000社であるが、そのうち経営活動の実態を伴っているものは約4,000~5,000社と推定される。在留邦人数は67,424人(2015年10月時点)であると公表されているものの、近年は若干日本人が減少する傾向にある。それが顕著に表れているのが、日本人学校の生徒数の減少である。バンコクの日本人学校では、以前は1学年のクラスが16ほどあったのが、最近は13~14クラスに減少している。

 ・最近の大きな法改正としては2点ある。まず、①2016年11月、Provident Fund(退職金積立制度)の強制加入の草案が決定した。対象は、社員数100人以上の企業、上場企業、国営企業、公的機関、BOI企業である。財務省は本草案を2018年に法制化、発効させる意向である。タイでは日本以上のスピードで高齢化が進んでおり、それに備えるためのものである。次に、②タイではこれまで定年が定められておらず、一般的に55歳を定年とする企業が多かったのに対し、今後は60歳が定年とされ、定年時の解雇補償金の支払いが義務化される。

 ・タイには公的医療保険があるが、被保険者が受診する医療機関をあらかじめ指定し(指定外の医療機関では受診不可)、指定された医療機関には保険金が前払いされる仕組みとなっている。そのため、医療従事者にとっては、治療のインセンティブが低いという問題がある。そこで、ローカル社員からは、民間の医療保険に加入してほしいとの要望が強い。タイの日系企業のうち、約4割は民間の医療保険に加入していると言われる。

 ・他のASEAN諸国にも共通するが、タイでもジョブホッピングが盛んである。タイ人の転職活動の特徴としては、以下の点が挙げられる。①勤務地へのこだわりが強く、自宅からより近い企業が見つかるとすぐに転職する。②年収やボーナスは見ておらず、月収を重視している。ボーナスを含めた年収ベースではほぼ同額であっても、月収が高い方を選択する。これは、月々のローンが支払えるかどうかで判断するためである。③内定までの期間が短い企業を好む。面接は1~2回で、2週間程度で内定を出してくれる企業が選ばれやすい。④日本以上に高学歴志向である。新卒採用者の6~7割は、2~3年ぐらい社会経験を積んでから大学院に進学したいと言う。大学院を出ても、元の企業に戻ってくる人は非常に少ない。

 ・今までは経済が右肩上がりで成長していたため、多少仕事ができない人が混じっていても他の社員から不満はあまり出なかった。ところが、近年、タイ経済の成長が鈍化しているせいか、ローカル社員がお互いに給与額を見せ合うと(ASEAN諸国ではこうしたことが普通に行われる)、「なぜあの人は大した能力もないのに自分よりも高い給与をもらっているのか?」と不満が出るようになった。早急に公正な評価制度を整備しないと、優秀な人から順番に退職し、優秀でない人ばかりが残ってしまうというリスクがある

 【Ⅱ.シンガポール】
 ・シンガポールでは、景気に左右されず、毎年3.5~4.0%の割合で昇給するのが一般的である。昇給がない場合、暗に退職を促していると思われかねない。シンガポールでもタイと同じく、年収よりも月収を気にする。賞与としては、AWS(Annual Wage Supplement)に加え、月収の平均1.5~2か月分を支給する。AWSとは、所得税を補助する役割を持つ年間給与補助である。12月に1か月分給与に相当する額を固定ボーナスとして支給する。法律に定められた義務ではないものの、政府が推奨しており、多くの企業が導入している。

 ・若いローカル社員は上昇志向が強く、ジョブホッピングを頻繁に行う。一方で、現地企業の立ち上げ期から在籍している勤続20~30年のベテラン社員も増加傾向にあり、社内で人材層の二極化が進んでいる。定年退職が近いベテラン社員の後任に対するニーズが増加している。

 ・日系企業の中には、現地化を推進するため、日本人駐在員の後任として、現地採用日本人およびローカル社員の採用による補充を行うところが出てきている。しかし、依然として、日本人駐在員数名+各部門の現地採用スタッフという人員構成が多く、思うように現地化が進んでいない。また、シンガポールには地域統括企業が設置されることも多いが、地域統括企業においては、コーポレート機能強化(特に、内部統制やリスクマネジメント)のために日本人駐在員を配置しており、その右腕となるローカル社員のニーズが増加傾向にある。

 ・シンガポールの人口約561万人(2016年6月)のうち、外国人は30%の約167万人である。近年、外国人雇用に対するシンガポール市民の目が厳しく、就労ビザ(EP)の取得も厳格化されている(後述)。そこで、シンガポール市民、永住権保持者(PR)、配偶者ビザ(DP〔EP保持者の配偶者は就労が可能である〕)、マレーシア人(EP)の採用ニーズが上昇している。

 ・EP(Employment Pass)を取得するための給与条件は、月収3,300シンガポールドル以上であったが、2017年1月より3,600シンガポールドル以上に引き上げられた。しかし、現実的には3,600シンガポールドルでEPが取得できることは稀である。MOM(労働省)のサイトhttp://www.mom.gov.sg/eservices/services/employment-s-pass-self-assessment-tool では、国籍、年齢、大学、職種などを入力すると、EP取得に必要な月収をチェックすることができる(金額はあくまでも目安であり、EP取得を確約するものではない)。上記サイトによると、なぜかマレーシア人は3,600シンガポールドル以下でもEPが取得可能という結果が出る。

 EPが取得できない場合は、S-passを取得するという手もある。従来は熟練労働者向けのビザであったが、現在はそれ以外の職種でも取得することができる。給与条件は月収2,200シンガポールドル以上である。ただし、S-pass保有者を1名採用するごとにシンガポール市民を5~6名採用しなければならないという採用枠制限がある。

 ・シンガポール市民の雇用に協力的でない企業は、MOMのWatch Listに掲載される2017年3月には、250社をWatch Listに掲載したとMOMが発表した。Watch Listに掲載された企業は、雇用環境の改善に向けた取り組みに関する報告書を提出しなければならない。また、Watch Listに掲載されている期間中は、就労ビザが下りないという問題が生じる。

 【Ⅲ.マレーシア】
 ・マレーシアの労働者人口は約1,440万人であるのに対し、外国人労働者は約580万人(合法労働者約230万人、不法労働者約350万人)である。マレーシア政府は、外国人労働者依存の労働集約的な産業構造から脱却し、産業の高度化を急いでおり、外国人労働者規制に関する政策を矢継ぎ早に打ち出している。ただし、新経済モデルを目指す政府と、景気後退を警戒する経済界の間のやり取りで方針が二転三転している。例えばこんな具合である。

 ○2016年2月・・・バングラデシュ人労働者150万人の受入を発表するも、労働組合などの反対を受け曖昧にされた。
 ○2016年3月・・・全ての外国人労働者の新規受け入れを凍結すると発表。
 ○2016年4月・・・アーマド・ザヒト・ハミディ副首相は、マレーシア小売チェーン協会の会議において、一部のセクターにおいて雇用が不足していることを政府が認識しているとし、新規受け入れに向けて動きがあることを明かす。
 ○2016年5月・・・外国人労働者の受入凍結を解除する場合は、①マレーシア人を雇用しようとしたことを証明する書類、②従事させる仕事内容を明記した書類の提出を条件とすると指摘。

 ・マレーシア人求人の内訳を見ると、営業、事務、エンジニア、財務・経理、ITいずれの職種においても、マネジャー、エグゼクティブクラスの求人が高い割合を占めている。日本人の求人に関しては、ビザの発給条件がやや厳しくなっているものの、特に20~30代の若手層の求人割合が高く、現地で採用された日本人が急増している。

 ○営業・・・設備投資より営業力強化のニーズが強い。若手の営業担当者は常に枯渇気味。
 ○事務・・・秘書が多い。日本人の細かいフォロー、丁寧さを求めている。
 ○カスタマーサポート・・・在マレーシア邦人数が増加しており、彼らへのサポート業が多い。
 ○エンジニア・・・製造管理、品質管理、工場長など、シニア層がメイン。
 ○接客・飲食・・・日本食飲食店が激増しており、店長、シェフの求人が増加。
 ○財務・経理・・・事務の中でも割合が高いものの、英語力とのバランスが難しく苦戦。
 <参考>
 ○翻訳・通訳・・・基本的にビジネスは英語で行われるため、日本人の求人は少ない。
 ○IT・・・ここ数年で進出が増加しているが、基本的には本社からの派遣が多い段階。

 ・マレーシア人は、マレー系65%、中華系25%、インド系10%という構成である。同じマレーシア人でも、見た目、性格、得意職種が全く異なる。

 ○マレー系・・・温厚な性格で人柄はよい。家族・お祈りが最優先であり、仕事の優先度は低いことが多い。家族重視のため、家族向けの福利厚生を充実させると満足度が上がる。営業職は敬遠され、事務全般、エンジニア職が好まれる。
 ○中華系・・・ハングリー精神が強い。お金を稼ぐことに執着心があるので、仕事へのモチベーションは高い。数字を達成するなどの意識は高いが給与アップを目的とした転職も多く、安定しない。管理職、経理、営業に多い。営業職はコミッション制度が必須である。
 ○インド系・・・医者、弁護士などの専門職で特出した才能を示す人も多い一方、タクシードライバーにおけるインド系比率も多く、インド系の中でもステータスの格差が大きい。全体的に頭のよい人が多い一方、中にはよからぬ方法でお金を稼ぐことに頭のよさを使う人もいる。

 ・金正男殺害事件により、北朝鮮との国交断絶も疑われたが、北朝鮮との間で”何かの”合意を交わし、容疑者を北朝鮮に変換するとともに、頑なに拒んでいた遺体の引き渡しも実行した。ナジブ首相は、「我々は駐平壌大使館を閉鎖もしなければ、北朝鮮との断交もしない。マレーシア国内における北朝鮮労働者らの外貨獲得活動も引き続き認める」と発言し、引き続き良好な関係を築こうとしている。現地では何事もなかったかのような状況である

 【Ⅳ.ベトナム】
 ・日本企業の採用手法を見ると、大卒新卒者はカレッジリクルーティング、スタッフレベルの経験者は求人サイト、マネジメントレベルの経験者は人材紹介、ワーカーは自社募集が中心である。自社募集ではSNSが活用される。日本ではFacebookはどちらかと言うと年齢が上の人たちが使うものであるが、ベトナムでは20代のFacebookユーザが多い

 ・上位校出身者は昇進、昇給に対しての意識が強く離職率も高いため、中堅校のポテンシャル人材を採用し、教育を通じて会社に対するロイヤリティを高めるのも1つの手である。福利厚生を充実させることも重要である。ベトナムでは特に社員食堂の充実が求められ(「食事をおいしくしてほしい」という理由でストライキが起きる)、運動会、誕生日会、社員旅行が喜ばれる。

 ・ベトナムに関してはセミナーで得られた情報が少なかったので、代わりに私が今までに聞いたことのある情報を書いておく。

 ○ベトナム企業は、労働組合に対して、賃金総額の2%を毎年拠出しなければならない(日本では不当労働行為にあたり、法律で禁止されている)。
 ○ベトナムでは、テト(正月休み)前にストライキが起きやすい。在庫が少ないと、仕事が減っていると思われ、解雇されるのではと不安になって社員がストライキを起こす。よって、テトの前には在庫を積み増しするなど、工夫が必要である。また、ストライキの際には、トイレの落書きが決起のサインになっていることがあるため、日頃からトイレは入念にチェックする。
 ○採用時には診断書を提出させる。これは、麻薬などをやっていないかどうかを確認するためである。なお、診断書の偽物が流通しているとも言われており、診断書が本物かどうか注意すべきである(ちなみに、日本では採用段階で診断書を提出させることは違法である)。
 ○ベトナムの労働法では、有期雇用契約について、1回目の更新は有期雇用契約でも構わないが、2回目の更新からは無期雇用契約になると定められている。
 ○ベトナム人には、捨てたものは皆のものという意識がある。そのため、工場から出る廃材などを個人で勝手に売却してお金を得、仲間と分け合っていることがある。廃材を売却して得たお金は会社のものであることを教え、そのお金は福利厚生に使うとよい。
 ○ベトナムの歴史は外国からの支配の歴史であることから、表面的には穏やかであっても、内面には反抗心を持っている。したがって、上から目線で「指導」をすると反発を食らう。どの国に進出する場合でもそうだが、自社がその国のために仕事をしてやっているという感覚でいると失敗する。そうではなく、進出先国のローカル社員をパートナーと見なし、その国のおかげで事業をさせてもらっているという気持ちを持つことが大切である。

 最後に、以前私がASEAN諸国の労働事情を比較調査した際に作成したファイルをDropboxにアップしておいた。シンガポールとブルネイを除く8か国の情報をまとめてある。様々な書籍などの情報の寄せ集めであるため、抜け漏れ、誤りがあればご指摘いただきたい。
 https://www.dropbox.com/s/kgn7n6ijekmwvvq/20170721_ASEAN_employment.pdf
2017年07月19日

【フェアコンサルティング】~GST導入直前~インド税務・会計・法務の最新動向と進出のポイント(セミナーメモ書き)

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インド国旗

 主催者のご厚意で「株式会社フェアコンサルティング」の無料セミナーに参加させていただいた。セミナーで勉強になったことのメモ書き。

 Ⅰ.インド会計・税務の最新動向
 ・インドでは7月1日から「GST(Goods and Service Tax)」と呼ばれる新しい税制が導入される。これにより、中央税のうち中央物品税、医療・トイレ整備にかかる物品税、特別重要品にかかる追加物品税、追加関税・相殺関税、特別追加関税、サービス税、物品・サービスに課されていた中央サーチャージおよび目的税、州税のうち州ごとの税、中央売上税、贅沢税、購入税、入境税、遊興税、広告・宝くじ・賭博・ギャンブルにかかる税、物品・サービスに課されていた州サーチャージおよび目的税など、多くの間接税が廃止される予定である。

 ・GSTとは、原材料の製造から最終消費者に届くまでの全ての段階において課される付加価値税である(消費税と基本的な仕組みは同じ)。州内の取引については、中央税であるGSTと州税であるGSTの双方が課され、それぞれ「CGST(Central GST)」、「SGST(State GST)」と呼ばれる。インド国内において州をまたぐ取引については、CGSTと対象州のSGSTが融合され、「IGST(Integrated GST)」と呼ばれる(IGSTはCGSTとSGSTの和にほぼ等しい)。

 ・簡単な仕訳の実例で見てみよう。
 ①A社は原材料をINR150,000で州外から購入した。
 ②A社は製品をINR150,000で州内で販売した。
 ③A社は製品をINR100,000で州外で販売した。
 ④A社はコンサルティングサービス料としてINR20,000を州内で支払った。
 ⑤A社は製品を生産するための資本財をINR50,000で州内で購入した。
 CGST=6%、SGST=6%、IGST=12%と仮定する。金額は全て税抜き。

 《ケース①》
借方 金額 貸方 金額
仕入
仮払IGST・・・①-1
150,000
18,000
買掛金 168,000
 《ケース②》
借方 金額 貸方 金額
売掛金 168,000 売上
仮受CGST・・・②-1
仮受SGST・・・②-2
150,000
9,000
9,000
 《ケース③》
借方 金額 貸方 金額
売掛金 112,000 売上
仮受IGST・・・③-1
100,000
12,000
 《ケース④》
借方 金額 貸方 金額
支払報酬
仮払CGST・・・④-1
仮払SGST・・・④-2
20,000
1,200
1,200
未払金 22,400
 《ケース⑤》
借方 金額 貸方 金額
備品
仮払CGST・・・⑤-1
仮払SGST・・・⑤-2
50,000
3,000
3,000
未払金 56,000

 ○CGSTの相殺後金額=仮受CGST-仮払CGST
 =「②-1」-(「④-1」+「⑤-1」)
 =9,000-(1,200+3,000)=4,800
 ○SGSTの相殺後金額=仮受SGST-仮払SGST
 =「②-2」-(「④-2」+「⑤-2」)
 =9,000-(1,200+3,000)=4,800
 ○IGSTの相殺後金額=仮受IGST-仮払IGST
 =「③-1」-「①-1」
 =12,000-18,000=▲6,000
 ○納税額=CGSTの相殺後金額+SGSTの相殺後金額+IGSTの相殺後金額
 =4,800+4,800-6,000=3,600

 ・GSTの導入によって、自動車産業には様々な影響が出る見込みである。
 (+)現在、ディーラーはVAT以外の全ての税について仕入税額控除が認められていない。また、製造業も、原材料の仕入れに際して支払う中央売上税、入境税など、他州にかかる税額については仕入税額控除が認められていない。これらのコストは製造原価に転嫁されてきた。だが、GSTは部品メーカーから最終消費者までの州をまたぐサプライチェーン全体で仕入税額控除を認めている。その結果、製品の費用低減効果が見込まれ、需要の増加が期待できる

 (+)現在の間接税制度の下では、自動車メーカーやディーラーの広告サービスやビジネスプロモーションなどビジネス諸経費に関して支払われる間接税については、仕入税額控除が認められていない。しかし、GSTにおいては、「ビジネス上またはビジネスの促進において利用される・利用する意図において」行われるものであれば、これらの費用にかかる税額は仕入税額控除が可能となる。これは、自動車メーカーやディーラにとって管理コスト減につながる。

 (+)通常、自動車産業のTier1、Tier2は、VAT控除のために自動車メーカーの近くに工場を設立している。しかし、GSTにおいては、IGSTとSGSTの仕入税額控除を求めるのに自動車メーカーに近い場所に工場を整備する必要がなくなる。これは、自動車部品メーカーの設備投資額を減らし、運転資金増加をもたらす効果がある。

 (-)GSTでは供給行為が課税対象であるため、本支店間で車両を移動すると課税対象となり、車両が移動された日がGSTの仕入基準日となる。ビジネス上は仕入税額控除を受けられるが、納税期限の差異により、車両移動日と販売日の間で資金繰りが悪化する恐れがある。

 (-)現在は、ディーラーが顧客から受領した前受金には課税されない。しかし、GSTにおいては前受金にもGSTが課税される。これは、ディーラーの資金繰りを悪化させる。

 (-)通常、車両販売時に無料サービス券が顧客に交付されるが、GSTではサービス券発行のタイミングでGSTの納税が求められる。将来的には、無料サービスに付帯する有料サービスの提供を通じてGSTを回収することが可能であるものの、ディーラーにとっては資金繰りを大幅に悪化させることになるゆゆしき事態である。

 (-)製造業者は年末セールなど特別な機会に、ディーラーに対して値引き販売をしている。一般的に、GSTにおいては値引きは供給として位置づけられ、この値引きが特定の請求書に基づく場合のおいてのみ、値引き額が取引額からの控除として認められる(※)。

 (※)GSTにおいては、物品・サービスの「評価額」が課税対象額となる。仮に、ある企業が100万INRの製品を正当な理由なく値下げして50万INRで販売すると、政府および州にとっては税収減となってしまう。したがって、この場合は100万INRに対して課税することとなる。取引評価額には、価格に含まれない助成金、無償部品の価値、供給条件としてのロイヤルティーとライセンス料、立替費用、コミッション、発送時の梱包などの雑費、SGST・CGST・IGST以外の税や値引き、供給後のインセンティブなどが含まれる。

 Ⅱ.インド進出企業が直面する法律上の問題点
 ・インドでは賄賂を要求されることが日常茶飯事である。コンプライアンス違反を指摘されると、違反を見逃してやる代わりに賄賂をよこせと要求される。また、インドは法制度が非常に複雑であるせいもあって、何をするにも非常に時間のかかる国である。例えば、輸出入のライセンスを取得するには、通常3か月ほどかかる。また、債権回収がしばしば刑事事件に発展することがあるが、インドは警察官のレベルが総じて低く、遅々として手続きが進まない。そこで、賄賂をくれれば手続きを早くしてやる(ファーストトラック)と担当者が要求してくることがある。

 手続きを早く進めたい企業は、一度だけならと賄賂を支払いたくなるが、一旦賄賂を支払うと、インドの仲間内で「あの企業は格好のターゲットだ」という情報が回り、方々から次々と賄賂を要求されるようになる。もっと深刻な問題は、アメリカのFCPA(Foreign Corrupt Practices Act)など、域外適用がある汚職防止法に引っ掛かり、巨額の賠償金を支払わなければならなくなることである。最近の事例で言うと、丸紅がインドネシアで支払った賄賂がFCPAに抵触し、丸紅は2014年に約8,800万ドルの罰金を科されている。

 ・インドはまだ外資規制が残っている業種が多く、インドに参入する場合にはJV形式をとるのが普通である。この場合、合弁契約書の内容を附属定款に漏れなく反映させておくことが非常に重要である。インドの弁護士の中には、合弁契約書を附属定款に添付すれば十分であると言う人もいるが、やはり文言として附属定款に盛り込むべきである。これを怠ったがために、ある日本企業とインド企業のJVでは、パートナーであるインド企業が日本企業の了解を得ないまま勝手に株式を自社に発行し、日本企業の持ち株比率を下げてマジョリティからマイノリティにしてしまったという事例がある(合弁契約書上では、株式の発行に関する取り決めが明記されていたが、それが附属定款に反映されていなかったのが問題であった)。

 ・インドでは社員、特にワークマン(いわゆる工場労働者)を解雇するのが非常に難しい。「会社は自分をクビにできない」と言い張って全く仕事をしない社員もいるぐらいである。他の新興国であれば警告書を何度か出し、それでも勤務態度に改善が見られない場合は解雇できることもあるが、インドではこの手法が通用しない。

 こういう社員を辞めさせるためには、まずはどうにかして「自主退職(辞職)」に追い込むのが一番である。自主退職であれば、紛争による蒸し返しのリスクが少ない。労働者寄りと言われるインドの労働裁判所も、任意の退職まで違法とは言わない(ただし、社員が「強制的に退職させられた」と主張すると紛争になる)。とはいえ、任意で会社を辞めてもらうことになるため、退職金を上乗せするなど、通常よりもよい条件にする必要がある。次に考えられる手段が「普通解雇」である。これは会社都合による解雇であり、以下の条件を全て満たす場合に認められる。

 ①解雇の1か月以上前に予告通知するか、予告期間に相当する給与を支払うこと。
 ②勤続年数に15日分平均給与をかけた補償金を解雇時に支払うこと。
 ③政府に対して①の通知を送付すること。
 ④一番最後に雇用した者から解雇すること。
 ⑤退職金を支払うこと。
 ※大規模工場の場合は、予告期間が3か月かとなり、かつ政府の承認が必要。

 上記の手続を遵守すれば、労働裁判所は解雇を違法とすることはない。ただ、③を忘れがちであるため注意が必要である。インドの弁護士によると、③を守っているインド企業は30%ぐらいしかないそうだ。③が抜けていると、企業は裁判で100%負ける(なお、個人的な感想だが、④の条件があるので、辞めさせたい社員が一番最後に雇用された者でない場合は、解雇が難しくなるのではないかと感じた)。最後の手段が「懲戒解雇」である。懲戒解雇は、100人以上を雇用する工場に適用される産業雇用(就業規則)法に規定されている。しかし、判例はそれ以外の企業にも適用されるとしている。要件は下記の通りだが、「非行事実」の立証責任が企業側にあるため、企業側が勝つことは非常に難しいと言われている。

 【手続要件】
 ①非行事実の書面による通知
 ②聴聞の機会の付与
 ③社内調査とその結果の通知
 【実体要件】
 ①非違行為の事実
 ②処分の相当性(重大さ、過去の事例、その他軽減ないし加重要因を考慮)
 
 ・インドの裁判は判決確定までに4~5年かかるのが普通であった。しかし、ここ数年で歓迎すべき法制定・改正が相次いで実施された。
 ①商事裁判制度・・・係争額1,000万ルピーに限定されるものの、原則約1年半で終結する。ただし、仲裁合意がある場合には利用することができない。実務上は、損害賠償額を上乗せして1,000万ルピー以上にし、本制度を利用するという方法がある。
 ②インド仲裁法の改正・・・従来は仲裁期間に制限がなく、いくらでも仲裁を引き延ばすことが可能であった。これが、法改正により原則1年以内に終結することとなった。また、インド国外仲裁における暫定措置(保全処分)の利用も可能となった。
 ③インド倒産法の制定・・・10万ルピー以上のデフォルトにより申立が可能であり、原則180日以内に終結する。日本では実質的な破綻が要件となっているのに対し、インドではデフォルトで申立可能という点が異なる。よって、債務者に対して催告書を送り、○○日以内に返事がなければ裁判に持ち込むと脅しをかけることができる。なお、これまでのインドでは倒産手続きに非常に時間がかかっており、現時点で20年以上手続中である案件が1,600件ほどあると言う。
2017年07月17日

『韓国新政権と東アジアの未来/住宅保障 貧困の拡大をくいとめるために(『世界』2017年7月号)』―びっくりするほど呑気なリベラル、他

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世界 2017年 07 月号 [雑誌]世界 2017年 07 月号 [雑誌]

岩波書店 2017-06-08

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 以前の記事「『トランプ大統領/進まぬ憲法改正/「生前退位」でいいのか/「死刑廃止」宣言(『正論』2017年1月号)』―朴槿恵問題は一歩間違えば朝鮮半島の”革命”を引き起こしていた、他」でも書いたが、アメリカにとっては、朝鮮半島が南北に分裂したままの方が都合がよい。アメリカと中国・ロシアという大国が直接対立せず、代理戦争を朝鮮半島という狭い領域に閉じ込めておくことができるからだ。だが、最近は、アメリカがどう動いても(あるいは動かなくても)、朝鮮半島が社会主義国家として統一されることは避けられないような気がしてきた。そして、アメリカもこのことに気がついているはずである。

 まず、アメリカが動かない場合であるが、北朝鮮は国際社会の警告を無視して核兵器の開発を進める。以前の記事「『愚神礼讃ワイドショー/DEAD or ALIVE/中曽根康弘 憲法改正へ白寿の確信(『正論』2017年7月号)』―日本は冷戦の遺産と対峙できるか?」でも書いたように、北朝鮮がアメリカ本土にまで届く核兵器を開発する目的は、北朝鮮が韓国を侵略して韓国を奪取する際に、アメリカに邪魔されないようにするためである。これにより朝鮮半島が北朝鮮主導で統一された場合、韓国の財閥が握っている大量の資金が北朝鮮の核兵器に流れ、日本の隣に巨大な核兵器保有国家が誕生する恐れがある。ただ、北朝鮮としても、この作戦で犠牲になる人々があまりにも多すぎるので、実行には慎重にならざるを得ない。

 現在、アメリカは中国と協力して北朝鮮に圧力をかけている。この場合に起こりうるシナリオを以前の記事「『愚神礼讃ワイドショー/DEAD or ALIVE/中曽根康弘 憲法改正へ白寿の確信(『正論』2017年7月号)』―日本は冷戦の遺産と対峙できるか?」で書いたが、最も可能性が高いのは、金正恩政権が倒れ、親中政権が誕生するというものである。中国のおかげで北朝鮮の核武装は解除されるであろう。しかし、北朝鮮に誕生するのは中国の傀儡政権である。そして、これで喜ぶのは韓国である。文在寅大統領は生粋の親北・親中派であり、現在の韓国の世論も親北に傾いている。韓国はいきなり南北統一とはいかなくとも、連邦制など統一の道を模索するに違いない。現に、文在寅は南北の文化交流から始めることを検討しており、早速、平昌オリンピックの一部を北朝鮮で開催するとか、南北合同チームを送るなどと言っている。

 では、トランプ大統領が金正恩党委員長と交渉する場合はどうであろうか?まず、トランプは北朝鮮に対し、アメリカの方を向いている核兵器の縮小を迫る。金正恩は、その条件を呑む代わりに、アメリカ国内で北朝鮮の方を向いている核兵器の縮小を求める。ただ、米朝間交渉では、北朝鮮の方がアメリカよりもパワーを持っているため、交渉はこれだけにとどまらない。金正恩はトランプに対し、金正恩体制の承認を要求する。これに対しアメリカは、金正恩体制を承認する代わりに、北朝鮮がアメリカの同盟国である韓国に手出しをしないことを約束させる。さらに金正恩は、在韓米軍の縮小もトランプに求めるだろう。トランプはその要求を受け入れる代わりに、現在北朝鮮国境付近でソウルの方を向いている何千もの大砲を削減することを要求する。

 これによって、北朝鮮は、アメリカから核兵器で攻撃されることを心配せず、韓国の在韓米軍を恐れることなく、南北統一に向かうに違いない。「北朝鮮は韓国に手出しをしない」という約束を金正恩が破り、さらに韓国もアメリカを裏切ったことになるが、アメリカは韓国の大統領が文在寅になった時点で、ある程度覚悟を決めたのではないかと思われる。ただ、この場合も、一気に南北統一が実現するというよりは、まずは連邦制から始まると予想される。というのも、統一後の国家において、北朝鮮と韓国の政権のどちらを正統とするかという問題があるからだ。

 社会主義政権としては金正恩に分があるが、韓国民が金一族による支配をどれだけ受け入れるかは未知数である。一方の韓国政権については、韓国憲法の前文に「大韓国民は3・1運動で成立した大韓民国臨時政府の法統」を継承するとあるものの、「大韓民国臨時政府」とは1919年の3・1運動後、海外で朝鮮の独立運動を進めていた活動家によって、上海で結成された亡命組織であり、実は国際的に正統性が認められた政権ではない。内紛が絶えなかったことから国際的な評価を下げ、枢軸国・連合国双方からいかなる地位も認められず、国際的承認は得られなかったのである。その亡命政権の理念を受け継いでいるという韓国憲法の前文には無理がある。となると、現存の南北政権とは異なる第三の政権を新たに創造するしかない。

 「韓国新政権と東アジアの未来」という特集タイトルから、今後の東アジアの動静について、リアリスティックな分析を期待していたのだが、左派は拍子抜けするほど呑気であるというのが正直な印象であった。自国の北部に猛スピードで核兵器開発をする国がある中で行われた韓国大統領選挙について、「変化への熱望を集中できる革新的議題がない」(李南周「新政権が時代転換に貢献する道」)と述べられていたのには驚いてしまった。

 朝鮮半島がこのような状況にある時、日本には何ができるであろうか?私の個人的な見解は「何もしない」ということに尽きる。大国同士の対立にどっぷりと巻き込まれている小国同士の対立に、日本のような小国が安易に近づくのは危険である。というのに、左派はアメリカがキューバと国交を回復したのに倣って、日本も北朝鮮と国交を回復せよと進言する。
 現状を基本的に維持したままということは、日本は経済制裁を維持したまま、北朝鮮は核兵器を保有したまま、拉致問題の従来の回答を維持したままで、国交を樹立して、その新しい基盤の上で、一切を国交のある国同士の交渉で前進をはかるということである。
(和田春樹「北朝鮮危機と平和国家日本の平和外交」)
 自国民を拉致して殺害したかもしれず、凶悪な核兵器を持つ国とまずは国交を樹立せよと言うわけだ。例えるなら、自分の家族を誘拐して殺害した疑いがあり、現在もなお凶器を振り回す隣人とまずは仲良くせよと言っているようなものであり、無茶苦茶である。よしんば南北統一が実現して、中国寄りの国家になったとしても、その新国家が日本のような二項混合的な発想によって国創りをする、あるいはしようとしているのであれば、日本は新国家に支援の手を差し伸べる準備がある。そうではなく、中国にべったりで反米・反日を掲げ、現状と変わらないなら、古田博司氏が唱える「助けない、教えない、関わらない」という非韓三原則に従うのが賢明である。

 本号では、NHKスペシャル『憲法70年 ”平和国家”はこうして生まれた』への言及もあった。憲法9条の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」という文言はGHQ案にはなく、日本人が独自に入れた文言である。よって、平和憲法は日本人によって作られたものだ、というのが番組の趣旨であった。しかし、これは重大な事実誤認を含んでいる。

 終戦後、憲法改正に着手した日本政府は大日本帝国憲法の一部条項を修正し、陸海軍をまとめて「軍」とする、軍事行動には議会の賛成を必要とする、という規定のみを盛り込んで済ませるつもりであった。1946年(昭和21年)2月8日に憲法問題調査委員会(松本烝治委員長)がGHQに提出した「憲法改正要綱」(松本案)では、次のような条文となっている。
 憲法改正要綱
 五
  第十一条中ニ「陸海軍」トアルヲ「軍」ト改メ且第十二条ノ規定ヲ改メ軍ノ編制及常備兵額ハ法律ヲ以テ之ヲ定ムルモノトスルコト(要綱二十参照)
 六
  第十三条ノ規定ヲ改メ戦ヲ宣シ和ヲ講シ又ハ法律ヲ以テ定ムルヲ要スル事項ニ関ル条約若ハ国ニ重大ナル義務ヲ負ハシムル条約ヲ締結スルニハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要スルモノトスルコト但シ内外ノ情形ニ因リ帝国議会ノ召集ヲ待ツコト能ハサル緊急ノ必要アルトキハ帝国議会常置委員ノ諮詢ヲ経ルヲ以テ足ルモノトシ此ノ場合ニ於テハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ報告シ其ノ承諾ヲ求ムヘキモノトスルコト
 この草案には、平和主義の要素など全くない。これに対して、GHQでは戦争と軍備の放棄の継続が画策されていた。その意思は、憲法草案を起草するに際して守るべき三原則として、最高司令官ダグラス・マッカーサーがホイットニー民政局長(憲法草案起草の責任者)に示した「マッカーサー・ノート」に表れている。その第二原則には次のようにある。
 国権の発動たる戦争は、廃止する。日本は、紛争解決のための手段としての戦争、さらに自己の安全を保持するための手段としての戦争をも、放棄する。日本はその防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理想に委ねる。日本が陸海空軍を持つ権能は、将来も与えられることはなく、交戦権が日本軍に与えられることもない。
 9条の制定過程の紆余曲折はここでは省くが、9条の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」という文言は、第90回帝国議会の衆議院帝国憲法改正小委員会での審議過程において、芦田均によって第9条に加えられた修正(いわゆる芦田修正)であり、マッカーサー・ノートにおける「日本はその防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理想に委ねる」が復活したものである。だから、9条は日本人の手によるものとは到底言い難い。
 小西豊治『憲法「押しつけ」論の幻』(講談社現代新書)のように、日本国憲法の「国民主権」の概念が、日本人憲法学者鈴木安蔵の発案であることを以て、日本国憲法は日本人によって作り上げた憲法だ、などと主張する向きもある。だが、これは、「憲法制定権力」の問題を無視した暴論であり、自身の主張そのものが「幻」である。日本国民から「憲法制定権力」が奪われ、全く日本国民の与り知らぬ間に憲法が強制されていた。これが歴史の真実であり、だからこそ、戦後一貫して保守派は、憲法の改正、あるいは自主憲法の制定を訴えてきたのである。
(岩田温「どうしてそうなるの?左曲がりの憲法改正論」)
月刊正論 2016年 10月号 [雑誌]月刊正論 2016年 10月号 [雑誌]
正論編集部

日本工業新聞社 2016-09-01
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 上記引用文にあるように、日本国憲法は自主憲法とはとても呼べない。右派は国防をアメリカに依存しつつ、憲法はアメリカからの押しつけだと批判する。右派は基本的に現実的でいいところ取りのスタンスであるから、こうした矛盾、アメリカに対するあべこべな態度が成立する。ところが、左派は論理的に筋が通っていないと許せないタイプなのだろう。平和主義をうたった憲法は是が非でも守りたい。しかし、それがアメリカからの押しつけであるというのでは具合が悪い。そこで、どうにかして日本人の手によるものであると言おうとしているように見える。

 NHKは以前にも重大な誤報をしている。2016年8月6日に放送された『決断なき原爆投下』がそれである。詳細は『正論』2017年2月号の有馬哲夫「驚くべきNHK特番はここにも・・・ トルーマンは原爆投下を決断していない?」をご参照いただきたいが、NHKはトルーマン大統領が原爆投下の意思決定をしていないと放送した。だが、実際には、

 ①アメリカ、イギリス、カナダの間ではケベック協定が結ばれており、原爆の開発と使用について3か国が同意していた。
 ②原爆の使用について討議し、大統領に諮問する「暫定員会」が設置されていた。
 ③トルーマンの日記には「私ほど原爆の使用に心を痛めている人間はいません」とあるが、トルーマンの日記には偽善的・自己弁護的な言葉が多く、現に「けだものと接するときはそれをけだものとして扱わなければなりません」という記述もある。
 ④皇室維持条項の入ったポツダム宣言を出せば日本が降伏すると知っていたにもかかわらず、トルーマンは敢えて皇室維持条項を削除した。

というのが事実である。

正論2017年2月号正論2017年2月号

日本工業新聞社 2016-12-28

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 衆議院においては結果において429人のうち421人でありましたが、とにかく殆ど全員に近きものをもって可決せられ、まして貴族院においてももとより深い議論はありましたが、結局において300人のうち2人を除いて298人によって可決させられたのであります。
(桐山桂一「「文一道」でゆく 憲法大臣・金森徳次郎の議会答弁(中)」)
 本号の別の箇所では、憲法大臣として連日国会の答弁に立った金森徳次郎の日記への言及もあった。帝国議会では、衆議院、貴族院のいずれにおいても、圧倒的多数の賛成によって憲法が成立したことが記されている。この事実をもって、日本国憲法は、国民が選挙で選んだ代表者によって制定された国民の手による憲法であると言いたいのだろう。しかし、実際にはこの選挙はGHQによって操作されていたことを指摘しておかなければならない。
 国会で議論されたことが重要なことであるかのように池上氏は主張しているが、これも重要な事実を隠蔽したうえでの主張に過ぎない。確かに、国会で憲法について議論がなされたのは事実だが、この国会議員の選び方にもGHQは関与していた。すなわち「公職追放」という形で、自分たちに都合の悪い政治家の立候補を不可能にしたうえでの選挙であったことを指摘しておかねば、「真実」とは言えないであろう。
(岩田温「シリーズ第10回 日本虚人列伝「池上彰」 中立を装った左翼 底の浅さが目に余る」)
正論2017年7月号正論2017年7月号

日本工業新聞社 2017-06-01

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