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【ベンチャー失敗の教訓(第15回)】「手離れのいいビジネス」という幻想
【ドラッカー書評(再)】『乱気流時代の経営』―サステナビリティの観点から見た子育てと人事制度の関係
【ドラッカー書評(再)】『乱気流時代の経営』―ドラッカーとポーターの「企業の社会的責任」をめぐる考え方の違い

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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2013年04月28日

【ベンチャー失敗の教訓(第15回)】「手離れのいいビジネス」という幻想


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 X社のC社長はしばしば、「1,000社に研修を導入するという目標達成(※この目標に到達するシナリオがはなはだ不明確であったことは、以前の記事「【第12回】独り歩きした戦略的目標に全くついて行けなかった組織能力」を参照)のために、『手離れのいいサービス』を提供する」と口にしていた。手離れのいい研修サービスとは、手短に言えば、商談にそれほど時間をかけなくても受注することができ、顧客企業ごとに研修コンテンツをカスタマイズしなくてもよく、研修実施後のアフターフォローもあまり要求されないサービスのことを意味していた。

 自社の製品やサービスが競合他社に比べて圧倒的な優位性を持っていれば、手間暇をかけないビジネスを展開することも可能だろう。しかし、そこまで強力でイノベーティブな武器がある企業は、世の中に1割も存在しないのではないだろうか?

 大部分の企業は、100%完璧とは言えない製品やサービスを抱え、顧客の様々なニーズに合わせてカスタマイズや修正を施し、対価に見合った価値を顧客が享受できたかどうか顧客からフィードバックをもらいながら、製品やサービスの改善、さらには新製品・サービスの開発につなげている。日本電産の永守社長は、「君は死んだ猫を売れるか?」と営業担当者にハッパをかけるのが口癖だそうだ。自社に死んだ猫しか売れるものがないというのは極端な話だが、そういう厳しい状況の中でビジネスを展開するのが普通だろう。

 特に、名もないベンチャー企業が既存の大企業と同じ土俵で勝負しようと思ったら、大企業がやりたがらない、あるいは大企業ではできない仕事をやるしかない。必然的に、大企業だと採算割れしてしまうような、手間暇のかかる仕事が中心となる。好調な中小の製造業を見てみると、「他社がやりたがらない仕事」を積極的に引き受けることで成長してきた企業が多いことに気づかされる(試しに、googleで「他社がやりたくない仕事」というキーワードで検索してみるといい)。そういう仕事で成果を上げていくと、「あの会社ならば何とかしてくれる」という口コミが他の企業に伝わり、新しい仕事の受注へとつながっていく。

 1つ有名な例を挙げると、昭和9年の創業以来、一貫してばね製品を製作してきたばね専業メーカーである東海バネ工業という企業がある。同社は常に「単品でお困りのお客さまのお役に立つこと」を最優先課題としてきた。ばねはコモディティ製品であり、普通にビジネスをやっていては海外の低価格製品にとても太刀打ちできない。そこで同社は「他社が非効率と避けがちな仕事」である、数のまとまらない、不特定多数の顧客からの注文に真摯に対応することで、「完全受注・1本~5本の超微量生産」を実現している。

 業界は違うが、同社は5年間で1,000社もの新しい顧客を開拓したそうだ。手離れのいいビジネスを目指していたX社が、私の5年半の在籍期間中にわずか数十社しか顧客を開拓できなかったのに対し、手間暇を惜しまないことをモットーとしている東海バネ工業が1,000社も顧客を獲得できたというのは、何とも皮肉な話だ(※「ばね一筋70年:東海バネのモノづくり|バネ・ばね・スプリングの東海バネ工業株式会社」を参照)。

 そもそも、研修サービスはその性質からして、手間暇がかかるものである。企業は競合他社との差別化を図る戦略を立案し、その実行を担う高いスキルを持った人材の育成を目指して研修を実施する。したがって、研修コンテンツは、その企業の戦略を反映させたオリジナルのものとなる。汎用的な研修が通用する世界ではないのだ。

 営業担当者は人事担当者の下に何度も足を運び、顧客企業の事業戦略や人材戦略を理解しようとする。研修コンテンツの開発担当者と講師は、顧客企業の事情を汲み取った研修を作成し、狙い通りの教育効果が得られそうかどうか人事担当者と綿密にすり合わせる。そして、研修実施から一定期間が経過した後に、研修がビジネス上の成果につながったかどうかを営業担当者が人事担当者に確認する。決して、「研修当日だけ講師が頑張ればOK」という世界ではない。

 もちろん、手離れのいいサービスを持つこと自体は悪いことではない。なぜならば、手離れのいいビジネスは、安定的な収益基盤になるからだ。財務基盤が脆弱なベンチャー企業の場合、これは特に重要である。他社がやりたがらない仕事ばかりを引き受けた結果、いつまでも利益が上がらないようでは意味がない。しかし、全てのビジネスを手離れのいいサービスにしようとするのは、非常におこがましい話であり、顧客の存在を無視して自社の都合しか念頭に置いていない非倫理的な考え方である。

 明治の大実業家・渋沢栄一は次のような言葉を残している。「金は働きのカスだ。機械が運転しているとカスがたまるように、人間もよく働いていれば金がたまる。仁義道徳と金儲けの商売とが、その根本において異背するように思われるが、けっしてそうではない。論語を礎として商業を営み、算盤をとって士道を説くこそ非常の功である。」これに対してA社長は、どうやら楽してお金を儲けようとしてた気がする。これでは経営者として大成しない。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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2013年04月24日

【ドラッカー書評(再)】『乱気流時代の経営』―サステナビリティの観点から見た子育てと人事制度の関係


「新訳」乱気流時代の経営 (ドラッカー選書)「新訳」乱気流時代の経営 (ドラッカー選書)
P・F. ドラッカー Peter F. Drucker 上田 惇生

ダイヤモンド社 1996-06

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 (前回「【ドラッカー書評(再)】『乱気流時代の経営』―ドラッカーとポーターの「企業の社会的責任」をめぐる考え方の違い」の続き)

 日本という国家を維持するために、企業がもっと責任を持たなければならない時代がやってくると思う。というのも、日本企業は、意識的にか無意識のうちにか解らないが、少子化に少なからず拍車をかける存在になってしまっているからである。OECD加盟24カ国における女性労働力率と合計特殊出生率の関係を見ると、女性労働力率が高いほど出生率も高い傾向にある(アイスランド、アメリカ、ノルウェー、デンマーク、フィンランドなどは、女性労働力率と合計特殊出生率がともに高い)。こうした国の多くでは、女性の社会進出や、仕事と育児の両立を積極的に支援する政策が取られている(※2)。

 もちろん日本も、男女雇用機会均等法や男女共同参画社会基本法の制定によって女性の社会進出を後押ししてきたし、一昔前に比べれば育児休暇も取得しやすくなっている。しかし、日本企業にありがちな長時間労働の風土が、出産を諦めさせている点に着目しなければならない。日本の地域別の出生率を比較すると、夫が週60時間以上働いている割合が高い地域(具体的には東京、神奈川、大阪、兵庫)ほど出生率が低いという傾向が見られる。また、女性の社会進出の機会が多い南関東、近畿、東海などの地域では、男性同様に女性が長時間労働を強いられており、そうした地域では出生率が低くなっている(※3)。

 OECDの調査によると、5歳未満児のいる家庭の夫の育児・家事時間は、日本が断トツで低い。日本は育児時間、育児以外の無償労働時間がともに1日0.4時間であり、カナダ(育児時間:1.5時間/日、育児以外の無償労働時間:2.4時間/日)、イギリス(育児時間:1.5時間/日、育児以外の無償労働時間:1.6時間/日)、スウェーデン(育児時間:1.2時間/日、育児以外の無償労働時間:2.5時間/日)などに比べて圧倒的に短い(※2)。そして重要なことは、夫の家事・育児時間と出生率は相関関係にあるという事実である。当然のことながら、夫の家事・育児時間が短い日本は、他国に比べて出生率が低い(※2)。

 以上をまとめると、日本では男性が長時間労働をしているため、育児や家事を手伝うことが難しい。その結果、女性が出産を控える傾向にある。また、近年は女性の社会進出の道が開かれてきたものの、それは「女性も男性と同じように長時間働くこと」を意味し、結局は女性の産み控えにつながっている。

 日本企業には、長時間労働で成果を上げた社員が厚遇される傾向が未だに根強く残っている。管理職への昇進の際には、長時間労働に耐えうるかどうかが暗黙の基準になっていることさえある。これは男女問わずそうである。短期的・ミクロ的に見れば、長時間労働によって企業に貢献してくれる優良社員を選抜しているつもりかもしれないが(残業代を支払わなくても長時間働いてくれるのだから、企業にとってこれほど都合のいい社員はいない)、長期的・マクロ的に見れば、出産・子育てを阻害し、日本の消滅を後押ししてしまっているのである。

 日本企業は、家庭のために、そして日本国家の持続可能性を担保するために、長時間労働から社員を解放しなければならない。そして、長時間労働をする社員を高評価するという長年の悪癖を断ち切り、業務を見直し、生産性の高さを評価する風土を醸成しなければならない。だが、これだけでなく、企業は人事制度をもっと抜本的に変革する必要があるだろう。例えば消費者庁は、育児休暇を取得した職員をプラス査定すると発表した。
 森雅子少子化・消費者担当相は19日の閣議後記者会見で、「育児休暇を取ったら利益になる取り組みをする」と述べ、消費者庁職員が育児休暇を取得した場合にプラス評価するよう人事評価制度を改正したことを明らかにした。来年度から適用する。

 森氏は現行の評価制度について、「(育児休暇の取得は)不利益な取り扱いをしないというだけで不十分だ」と指摘。積極的に評価することで職員の育児参加を促す考えを示した。

 具体的には、年2回の業績評価において、職員が自ら設定する目標にワークライフバランス(仕事と生活の調和)を追加する。育児休暇などの取得状況に応じてプラス評価を行い、昇進や給与などに反映させるという。(時事ドットコム、2013年3月19日)
 この制度自体には賛否両論があるようだが、いずれにせよ、人事制度の改革は、組織としてどういう人材を肯定的に評価するのかを明確にする強力なメッセージ源となる。

 私は、結婚や出産を昇進の条件として定め、出産・子育てに前向きな社員を評価する企業が今後出てくるに違いないと予測している。具体的には、「結婚していれば主任クラスに昇進しやすくなる」、「1人目の子どもがいれば課長クラスに昇進しやすくなる」、「2人目の子どもがいれば部長クラスに昇進しやすくなる」といった人事制度を導入するわけだ(人によっては、結婚・出産しない自由、あるいは結婚・出産できない事情があるから、結婚・出産しないからといって昇進の道を完全に閉ざすことはさすがに現実的ではないだろう)。もちろん、昇進した社員が長時間労働をしないことが前提である。日本国家の持続可能性という観点からは、こういう人事制度が正当化されてもよいと思うのである。

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(※2)猪口邦子、勝間和代『猪口さん、なぜ少子化が問題なのですか?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2007年)

猪口さん、なぜ少子化が問題なのですか? (ディスカヴァー携書)猪口さん、なぜ少子化が問題なのですか? (ディスカヴァー携書)
猪口 邦子 勝間 和代

ディスカヴァー・トゥエンティワン 2007-04-20

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(※3)高橋伸彰『少子高齢化の死角―本当の危機とは何か』(ミネルヴァ書房、2005年)

少子高齢化の死角―本当の危機とは何か (シリーズ・現代経済学)少子高齢化の死角―本当の危機とは何か (シリーズ・現代経済学)
高橋 伸彰

ミネルヴァ書房 2005-10

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2013年04月23日

【ドラッカー書評(再)】『乱気流時代の経営』―ドラッカーとポーターの「企業の社会的責任」をめぐる考え方の違い


「新訳」乱気流時代の経営 (ドラッカー選書)「新訳」乱気流時代の経営 (ドラッカー選書)
P・F. ドラッカー Peter F. Drucker 上田 惇生

ダイヤモンド社 1996-06

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 ドラッカーは早い時期から「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)」の必要性を説いていたが、本書の最後でもCSRに触れられている箇所がある。だが、改めて読み返してみると、ドラッカーはCSRをかなり限定的にとらえていたように感じる。
 企業、病院、大学のいずれにせよ、単一の目的を持つ機関は、その目的とするもの以外の社会的ニーズを満足せよという要求を、不当なもの、自らの能力や使命や機能にそわないものとして拒絶し、本来の仕事に専念することによってのみ、結局は、社会にとって生産的な存在となりうる。したがって、あらゆる組織が、自らが有能ではない領域においては、何事も期待されるべきでないことを主張する必要がある。
 組織は、単一の目的に専念すべきものであるがゆえに、その狭い領域以外において有能であることはほとんどない。(中略)したがってあらゆる組織が、自らの卓越性について徹底的に検討しておかなければならない。能力のない分野においては、「ノー」という勇気が必要である。能力を欠くよき意図ほど、無責任なものはない。
 こうしたドラッカーの主張は、最近になって「社会的ニーズ」という言葉を多用するようになったマイケル・ポーターの立場と比べると、いささか消極的だ。ポーターは近年、社会的ニーズの充足と経済的価値の創造を積極的に結びつける「共通価値(Shared Value)の戦略」というコンセプトを提示している。『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2011年6月号の論文「経済的価値と社会的価値を同時実現する 共通価値の戦略」の中で、ポーターは次のように述べている。
 (※事業活動と社会問題を結びつける)解決策は、「共通価値(シェアード・バリュー)」の原則にある。これは、社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるというアプローチである。企業の成功と社会の進歩は、事業活動によって再び結びつくべきだろう。
 社会的ニーズの規模は計り知れない。たとえば健康、住宅整備、栄養改善、高齢化対策、金融の安定、環境負荷の軽減などは、間違いなくグローバル経済のなかでいまだ満たされていないニーズの最たるものである。(中略)先進国では、社会的ニーズに対応した製品やサービスの需要が急拡大している。

 (中略)貧困地区や開発途上国に貢献することでも、先進国と同等あるいはそれ以上のチャンスが生まれてくる。これらの地域では、社会的ニーズは喫緊の課題なのだが、これまで存続可能な市場として認識されてこなかった。
Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年 06月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年 06月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2011-05-10

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 「共通価値の戦略」については、旧ブログでも何度か取り上げたのでご参考までに。

 社会的ニーズの充足を通じて経済的価値を創造する(1)―『戦略と競争優位(DHBR2011年6月号)』
 社会的ニーズの充足を通じて経済的価値を創造する(2)―『戦略と競争優位(DHBR2011年6月号)』
 「社会的価値」はどうやって測定すればいいのだろう?―『戦略と競争優位(DHBR2011年6月号)』
 ポーターの「共通価値」の理解が深まるBOPビジネス事例集(1/2)―『マーケティングを問い直す時(DHBR2011年10月号)』
 ポーターの「共通価値」の理解が深まるBOPビジネス事例集(2/2)―『マーケティングを問い直す時(DHBR2011年10月号)』
 【論点】コカ・コーラは、工場を置く新興国の「水道事業」に参入するだろうか?―『リーダーの役割と使命(DHBR2011年12月号)』

 ドラッカーはミニマム+αぐらいのCSRを想定し、ポーターはCSRを事業につなげようとしている点で、両者は対極的に映る。実際にはその中間あたり、具体的には社会の多様なステークホルダーからの要求に応えながら経済的価値を追求する、というのが多くの企業の現実ではないだろうか?そして、企業が気にかけなければならない利害関係者は、年々数と種類が増えると同時に、地理的にも広がりを見せている。

 CSRの中でも最近特に重視されているのが、「サステナビリティ(持続可能性)」であろう。サプライチェーン全体の環境負荷を減らし、原材料の生産を行う途上国や製造加工を行う新興国の労働環境を改善することが、多くの企業の課題となっている。だが、このサステナビリティという言葉を持ち出す時、我々、特に日本は、足元の持続可能性を見過ごしてはいないだろうか?つまり、日本という国家そのものの持続可能性である。

 今さら言うまでもないが、日本は先進国でも類を見ないスピードで少子化が進み、2005年にはとうとう人口が減少に転じた。2003年の合計特殊出生率1.29で推計した日本の将来人口の予測を見ると、2050年が8856万人となり、その後は50年ごとに人口半減の法則が働く。すなわち、2100年には4080万人、2150年には1854万人、2200年には841万人、2400年には36万人、2500年には7.3万人、3000年には27人(決して27万人の誤りではない)となる(※1)。

 少子化がなぜ問題なのかは、すでに様々な識者が指摘している通りである。労働力人口が減少するため日本経済が停滞する、若い世代で高齢世代を支えることが前提になっている年金制度が破綻する、高齢者の増加による医療費増のしわ寄せが若い世代に行く、などである。だが、一番の問題は、何と言っても「日本という国が消滅する」ことではないだろうか?2000年以上、王朝が一度も交代せずに存続した稀有な国家であり、長い歴史が織りなす多様な文化と20世紀以降の圧倒的な経済力によって、世界に強いプラスの影響を及ぼしてきた日本が消えるのは、日本にとってはもちろん、世界にとっても大きな損失である(大げさかもしれないが)。

 (続く)

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(※1)国立社会保障・人口問題研究所編『人口の動向 日本と世界―人口統計資料集(2005)』(厚生統計協会、2005年)

人口の動向日本と世界―人口統計資料集 (2005)人口の動向日本と世界―人口統計資料集 (2005)
国立社会保障・人口問題研究所

厚生統計協会 2005-04

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