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【ベンチャー失敗の教訓(第37回)】最初に「バスに乗る人」を決めなかったがゆえの歪み
【ベンチャー失敗の教訓(第36回)】「この人とは馬が合いそうだ」という直観的な理由で採用⇒そして失敗
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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


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(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

中小企業診断士の安い通信講座なら「資格スクエア」資格スクエア
(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2013年09月29日

【ベンチャー失敗の教訓(第37回)】最初に「バスに乗る人」を決めなかったがゆえの歪み

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 前回の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第36回)】「この人とは馬が合いそうだ」という直観的な理由で採用⇒そして失敗」で紹介したような、Z社のC社長による場当たり的な採用は論外であるが、X社の採用もとても褒められたものではなかった。簡単に言うと、候補者が勤めていた企業のネームバリューに惑わされていた。

 X社が創業して間もない頃、キャリア研修の講師とコンテンツ開発ができる人を採用することになった。ヘッドハンティング会社を利用して候補者を探したところ、ある米国系の有名な研修会社で講師をやっている人が見つかった。話を聞くと、講師だけでなく営業に近いこともやっており、何千万円単位の予算が割り当てられた大手の顧客企業も何社か担当しているという。実績は申し分ないと判断したX社は、その人を新しいマネジャーとして迎え入れることにした。

 ところが、そのマネジャーにキャリア研修の開発を任せても、一向に研修が完成しない。前職の研修会社で講師をやっていたぐらいだから、研修のネタもある程度たくさん知っているだろうと見込んでいたのに、出てくる成果物は営業担当者が求める水準に達していなかった。営業担当者はあれこれと修正を依頼するものの、このマネジャーはどうもスピード感が足りなかった。

 また、部下の使い方も上手ではなく、「マネジャーが一貫性のない修正を締切間際になって指示してくるので困っている」という苦情が私に寄せられたこともあった。今振り返ってみると、このマネジャーが得意だったのは、「すでに完成したコンテンツに忠実に従って講師をすること」であり、「チームを活用して新しいコンテンツを短期間で生み出すこと」ではなかったように思える。

 似たようなことは他にもたくさんあった。営業力不足が課題だと感じたA社長は、世界的に有名なあるデータベースを開発・販売するIT企業から営業担当者を2人引き抜いてきた。2人とも前職では高業績を上げており、他の社員より多額のコミッションをもらっていたというので、A社長も大いに期待していた。ところが、いざX社の研修サービスを販売させると、自分で提案書を書くことも、サービスの中身をうまく説明することもできない。

 2人が前職で高い成果を上げられたのは、その人の指示に従って提案書を作成してくれる優秀な営業スタッフが周りにいたからであり、またサービス自体の性能も優れていて高い競争力を持っていたからであった。ブランド力が皆無の状況で、自力で難局を打開し、商談を推し進めるだけの力は持ち合わせていなかった。

 X社は人事制度構築のコンサルティングを提供していたが、実はコンサルタントの中には人事部門の経験者がいなかった。この事態を問題視したシニアマネジャーは、ある有名な玩具メーカーの人事部門から知り合いをX社に引っ張り込んできて、マネジャーの地位に就けた。

 確かにこのマネジャーは、人事の日常業務に関する知識に関しては誰よりも上であった。だが、人事コンサルティングに必要なのは、事業戦略に対する深い洞察であり、戦略とリンクした人事制度を組み立てる構想力である。つまり、日常業務よりも1つ上の視点が求められるわけだ。したがって、単に人事業務に詳しいというだけでは不十分であり、せめて人事制度の改革を企画・実行した経験のある人を採用するべきであった。

 採用にあたっては、自社が募集しようとしている職種・ポジションに、どのようなスキルや知識が求められるのかを丁寧に洗い出す必要がある。そして、そのような能力は、どのような業務経験を通じて体得されるものなのかをよく考えなければならない。その上で、応募者がそれらの能力を持ち合わせているかどうかを、面接を重ねながら明らかにしていく。

 重要なのは、応募者の成功体験を深く掘り下げることだ。なぜその応募者は成功することができたのか?応募者自身の能力のおかげなのか、それとも応募者を取り巻く環境が味方しただけなのか?応募者の所属企業の知名度や応募者の口車に騙されることなく、応募者自身の真の能力とは何なのかを慎重に見極めることが肝要である。それが自社の求める能力と合致すれば、採用へのステップを一歩前へ進めることができる。

 だが、採用にあたっては、能力の有無よりも、もっと重視すべきことがある。それは、「企業の価値観と応募者の価値観が合致しているかどうか?」である。価値観とは、事業や仕事を進める上で絶対に譲ることのできない基本ルールである。組織は、多様な利害を持つ人々を共通の目的に向かわせるための装置だ。そして、組織の価値観は、社員同士の調整の手間を減らし、経済学者ロナルド・コースが言うところの「取引コスト」を抑制する方向に作用する。組織の価値観に従う限り、社員は無用な対立を避けて、同じレールの上を前進することができる。

 能力より価値観が優先されるのは、能力は入社後に習得できる可能性があるのに対し(ただし、前述した通り、能力がないよりもあった方がはるかにマシだ)、価値観は組織や個人のアイデンティティと深く結びついており、変えることが難しいからだ。『ビジョナリー・カンパニー』の著者ジェームズ・コリンズは、最初に「バスに乗る人」を慎重に決めよ、それからバスが向かう方向を決めよ、と主張している。バスに乗せるべき人とは、組織の価値観を共有できる人のことである。

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 以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第9回)】額縁に飾られているだけの行動規範」でも述べたように、3社には「勇気を出して未知の領域に飛び込む」、「決意を持って独自の価値を創りだす」、「多様性の中で志を相互に尊重する」、「内外の知を結集して最高を目指す」、「体現主義を貫くことで深い信頼を築く」という5つの価値観が定められていた。そもそも3社の経営陣がこの価値観に従っていなかったこと自体が大問題だが、採用の段階で応募者がこの5か条と合致する価値観を持っていたかどうかを十分に確かめなかったことも問題であった。

 「多様性の中で志を相互に尊重する」という価値観は、たとえ真っ向から対立するような考えを持つ人に対してであっても敬意を払い、異なる意見から弁証法的に新しいアイデアを導くことを要請していた。ところが、一部の社員は自分の意見が絶対に正しいとでも言わんばかりに、相手を言いくるめようとする傾向があった。あるいは、自分とは違う意見を聞いている素振りは見せるものの、実際には聞き流しているだけの人もいた。こういう人がいると、会議などで大勢とは異なる意見を持っていても、それを表に出そうという意欲がなくなる。

 「内外の知を結集して最高を目指す」という価値観は、3社がシナジーを発揮してトータルソリューションを提供することを社員に求めていた。しかし、ある社員は他社のサービスが欠陥品であるかのように扱い、協力してサービスを提供しようとしなかった。一部の人がそういうことを言い出すと、周りの人もそのサービスがダメなサービスであるかのように思い始める。その結果、途中まで進んでいた共同提案の案件も、いつの間にかうやむやになってしまうことが増えた。

 中小企業の場合、1人でも不適切な人材が混じっていると致命傷になる。社員数が数千人~数万人という大企業であれば、その中に1人や2人不適切な人材が入っていたとしても、全体に占める割合は塵のようなものだ。これに対し、社員数50人の中小企業に1人でも不適切な人材が入っていると、その人の存在はかなり目立つ。1万個のリンゴが入った箱に1つだけ腐ったリンゴが入っていても、全体が腐るまでにはかなりの時間がかかるだろう。しかし、50個のリンゴが入った箱に1つでも腐ったリンゴが入っていれば、全部のリンゴが腐敗するのは時間の問題である。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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2013年09月22日

【ベンチャー失敗の教訓(第36回)】「この人とは馬が合いそうだ」という直観的な理由で採用⇒そして失敗

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 前回の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第35回)】人材育成がテーマの企業なのに人材育成の仕組みがない」では、人事考課や教育研修などの育成の仕組みが整っていないことに触れたが、3社は採用に関しても一貫した方針がなかった(その方針の下で採用された私がとやかく非難する資格はないのかもしれないが・・・)。そのため、「なぜこの人が採用されたのだろうか?」と社員が疑問に思うことも少なくなかった。特にZ社のC社長は、場当たり的な採用をする傾向が強く、直観的に人員を増やしている節があった。

 ある時、C社長が社員の親睦を深めるために、「日本酒同好会」を主催した。同好会には、社外の知り合いを連れてきてもよいことになっていた。その中に、Z社のシニアマネジャーの知り合いで、JRで雑誌『WEDGE』の編集に携わっていた人がいた。当時、Z社の本業とは別に、京都の町家を改装した旅館に個人的に出資していたC社長は、日本文化に造詣が深かったその彼と妙に馬が合ったようだ。C社長は「是非我が社に来てほしい」と彼を口説き落とし、十分な選考プロセスも踏まないままに、Z社に入社させてしまった。

 Z社は戦略コンサルティングの会社である。Z社に入社した彼が最初に任された案件は、ある情報通信業のM&Aに関するコンサルティングプロジェクトであった。しかし、JR出身の彼には、当然のことながらコンサルティングの経験などないし、雑誌の編集に求められるスキルとコンサルティングに求められるスキルには共通項も少ない。せいぜい、情報を収集する能力が共通する程度で、アウトプットを創出する思考プロセスも異なれば、アウトプットの表現方法も全く違う。プロジェクトマネジャー(その人はマッキンゼーの出身であった)は、彼の能力が十分でないと見るや、結局彼の仕事を全部巻き取って、自分でやるハメになってしまった。

 そのプロジェクトが終了してしばらく経った頃、C社長は副業で京都の町家風旅館に投資するだけでなく、Z社の本業のビジネスとして、日本の伝統文化をテーマとした新規事業を立ち上げようと考えた。そこで、日本文化に詳しいJR出身の彼に白羽の矢が立った。C社長はZ社の子会社という形で新会社を立ち上げ、資本金を提供した。ところが、事業経営と雑誌の編集は、コンサルティングと雑誌の編集以上に共通項がない。それに、日本文化に造詣が深いことと、日本文化をテーマとした事業をマネジメントできることは全くの別物である。

 事業経営の重責に耐えられなくなったのか、彼はいつの間にか会社に顔を出さなくなった。Z社では一応自宅勤務が認められていたため、しばらくはC社長も様子を見守っていた。しかし、いつまで経っても進捗の報告が上がってこないことにC社長も業を煮やし、一体今どうなっているのかと彼を問い詰めた。すると彼は、C社長の知らない間に転職活動をして、別の企業から内定をもらっていた。ポケットマネーで新会社の出資金を出していたC社長は怒り狂った。C社長は「あいつを詐欺罪で訴えてやる!」と息巻いていたが、詐欺罪の要件を満たさないし、元を正せば、1回会っただけで採用を決めてしまったC社長自身の軽率さに原因があった。

 C社長は他にも採用で失敗を繰り返している。ある時は、医学部出身で脳科学に詳しく、社会人になってからも時々脳科学の実験に携わっているという人を、「これは面白い人だ」ということで採用してしまった。彼に任せたのは、C社長がZ社の本業の傍らでやっていた投資ファンド事業であった。脳科学における科学的な研究方法と、投資ファンド事業に求められる数理処理能力の間には何らかの共通項があるのかもしれないが、少なくともC社長はそのような能力の関連性を検証することなしに、単に馬が合うという理由で彼を採用した。案の定、スキルの不適合が明らかになって、1年ほどしてから彼は退職に追い込まれた。

 またある時は、Z社で採用コンサルティングの事業を立ち上げることになり(自社の採用すらまともにできていない企業がコンサルティングを行うというのもおかしな話だが・・・)、外部から採用コンサルティングに詳しい人を探すことになった。候補者の中には、国会議員の秘書を務め、全国規模でボランティア事業を展開したこともあるという異色の経歴を持つ人がいた。C社長と彼の波長がたまたま合ったようで、またしても「これは面白い人だ」という理由で採用してしまった。

 ただし、この時は厳密は雇用契約を結ばず、個人事業主として独立していた彼の意向を尊重して、Z社と彼との間で業務委託契約を締結することになった。しかし、彼はC社長から事細かく指揮命令を受けていたため、事実上は雇用契約にあたると言っても過言ではなかった。彼の能力をよく調べずに契約を結んでしまったことが災いし、彼はC社長が求める水準の成果を上げることができなかった。さらに悪いことに、彼は秘書時代に公職選挙法違反で連座制を適用されていた、簡単に言えば前科持ちであることが後から解った。C社長は業務委託契約の破棄を言い渡したが、彼は今回の契約は事実上の雇用契約であり、契約の破棄は不当解雇にあたるとしてZ社を訴えた。その後、泥沼の裁判が続き、C社の業務が裁判対応で少なからぬ影響を受けた。

 ヒト、モノ、カネ、情報、知識という主たる5つの経営資源のうち、ヒトを除く4つの経営資源は、間違って調達してしまったとしても、使わなければ済む。機械装置や原材料を誤って買ってしまったならば売却すればよいし、最悪の場合全部廃棄すればよい。不要な情報を量産する情報システムを導入してしまったならば、社員にそのシステムを使わないよう告げればよい。知的財産のライセンスを購入したが使い道がなかった場合には、他社にそのライセンスを販売すればよい。カネを間違って調達したというのは、あまり問題にならない。カネは、ありすぎるとそれはそれで問題になるものの(以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第16回)】かえって逆効果だった「豊富な資金源」」を参照)、通常はないよりもあるに越したことはない。

 ただし、ヒトだけは間違って調達すると取り返しがつかない。仕事ができないからといって、簡単に首を切ることはできない。とはいえ何もさせずに放置しておくと、「なんであいつはろくに仕事もしていないのに給料をもらっているのだ?」と社員の間に不信感が広ガリ始める。そしてその間も、年間何百万というお金がコストとして出ていってしまう。だから、採用に関する意思決定は、慎重に慎重を重ねて下さなければならない。GEの元CEOであるジャック・ウェルチは、「経営には時に直観が必要だが、人事だけは直観で決めてはならない」と述べている(※清水勝彦『経営の神は細部に宿る』〔PHP研究所、2009年〕)。この言葉を3社の経営陣にも教えてやりたかった。

経営の神は細部に宿る経営の神は細部に宿る
清水 勝彦

PHP研究所 2009-05-21

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(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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2013年09月19日

城北プロコン塾 事前説明会のお知らせ

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■日時:9月24日(火)19時~20時
■場所:豊島区東部区民事務所 第一会議室


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■内容
 19:00-19:10 古川塾長ご挨拶
 19:10-19:25 概要説明
 19:25-19:45 質疑応答
 19:45-20:00 個別相談、申込受付

■お申込み方法
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