この月の記事
トロンペナールス&ターナーによる「文化の基礎次元」の補足
採点審査に困る創業補助金の事業計画書(その6~10)
採点審査に困る創業補助金の事業計画書(その1~5)

お問い合わせ
お問い合わせ
アンケート
プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
所属組織など
◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

中小企業診断士の安い通信講座なら「資格スクエア」資格スクエア
(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
アクセスカウンター(PV)
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:


Top > 2014年02月 アーカイブ
2014年02月27日

トロンペナールス&ターナーによる「文化の基礎次元」の補足

このエントリーをはてなブックマークに追加
 (一社)東京都中小企業診断士協会・国際部が主催する交流会に参加してきた。テーマは「外国人のワークライフ・スタイルと価値観の理解」。基調講演では、フォンス・トロンペナールスとチャールズ・ハムデン・ターナーが開発した文化比較のモデルに基づいて、日本人と外国人の価値観の違いが紹介されたが、講師の体験談が非常に興味深かったのでまとめておく。講師は、日本在住を希望する外国人に対し、不動産を斡旋する事業に従事した経験を持つ。当然のことながら顧客は外国人であり、部下にも外国人が多い職場であった。

 なお、トロンペナールス&ターナーのモデルについては、過去ブログの記事「(メモ書き)人間の根源的な価値観に関する整理(2)―『異文化トレーニング』」を参照のこと。

(1)普遍主義―個別主義
 普遍主義は基準を守ることによって問題は解決すべきと考え、個別主義は規則の一律的な適用より状況や人間関係を考慮すべきという考え方である。日本人はどちらかというと個別主義的だが、講師は日本人よりももっと個人主義的な人の応対に苦労した経験を持つ。

 まずは中国人。3週間の商談を経て、ようやく契約までたどり着いた。双方が契約書へのサインを終えると、中国人の顧客は「家のカギを渡してほしい」と言い出した。まだ契約開始日よりも前である。日本のルールに従えば、もちろんカギなど渡せるわけがない。しかし、中国人はカギを渡せと言って聞かない。根負けした講師は、大家とも交渉をして、「今この場で契約金を払ってくれれば」という条件つきでカギを渡すことにした。

 ところが、中国人は「契約金を払うことはできない。まずはカギを渡してほしい」と驚きの要求をしてきた。中国人の言い分は、「あなた(=講師)と出会ってまだ3週間だから、あなたのことを全面的に信用することはできない」というものであった。結局のところ、中国人にとって契約書は紙切れ同然であり、それよりも今自分の目の前にいる人との関係の方が重要なのである(中国人にとって講師は出会ってからまだ3週間の信用するに足らない人間であるならば、逆もまたしかりなのだが、その辺は中国人は気にしないようである)。

 次にトルクメニスタン人の夫婦。夫がトルクメニスタンから講師の会社に電話をしてきて、日本で家を探したいという。しかし、妻は日本語も英語も話せないらしい。そんな人が商談に同席しても、いろいろと厄介なだけだと判断した担当者は、まずは夫が1人で来日することを提案した。ところが、夫はその提案をかたくなに拒否する。全く話がかみ合わずに困り果てた担当者は、講師に電話応対を代わった。講師が理由を聞くと、「妻1人を国に残して私1人だけ日本に行けば、私の家と妻の家の両方にとって、未来永劫消えない恥となるだろう」という回答が返ってきた。

(2)個人主義―共同体主義
 日本人は共同体主義であり、アメリカ人は個人主義である。こんなケースを想定してみよう。あなたはあるメーカーの工場責任者である。今日は仕入先の都合で、部品の納品が2時間遅れることになってしまった。作業を遅らせたくないあなたは、部下に今日だけ2時間の残業をお願いしたいと考えている。さて、どのようにして部下を説得するだろうか?

 日本人ならば、「残業代はちゃんと払うから、今日だけ会社のために残業をしてくれないか?」と説得するのが普通だろう。だが、この質問をアメリカ人にすると、「それ(=仕入先の都合で2時間残業しなければならないこと)は私の責任ですか?」と逆質問されてしまう。しまいには、「私の昇給や評価に影響するのではないですか?」とまで聞いてくる。徹底した個人主義である。ただ、同じ個人主義でも、フランスの場合は少し違う。「私だって残業をしたくないのだから、部下に残業をせよとはとても言えない」というのが彼らの言い分である。

(3)感情中立的―感情表出的
 日本人は感情中立的で、あまり感情を表に出さないことがよしとされる。これに対して、感情がすぐ表に出るのがラテン系やヨーロッパの大陸系の国である。東日本大震災で被災地の様子が世界に報道された時、悲しみをぐっとこらえて避難所で生活する日本人の姿に、欧米人はびっくりしたそうだ。講師の知り合いのアメリカ人は、「日本人は泣き叫んだりしないのが信じられない」と言ったという。イタリア人に至っては、「あの映像はマスコミによるねつ造ではないのか?あれはいいところだけを切り取っているのであって、本当は裏で皆泣いたり騒いだりしているのではないのか?」とマスコミ陰謀説を抱いていた。

(4)関与特定的―関与拡散的
 仕事とプライベートは完全に分離していると考えるのが関与特定型、仕事で関わりができるとプライベートな関係も必然的に生まれてくると考えるのが関与拡散型である。「上司が休日に家のペンキ塗りをするという。あなたは手伝いに行きますか?」という質問を世界中ですると、ヨーロッパの国は「行かない」という回答の割合が圧倒的に高くなる。つまり、関与特定型である。対照的に、「行く」という回答の割合が高いのが中国であり、関与拡散型である。

 日本はアメリカと同様、中位にランクインする。ただ、日本にはペンキ塗りの習慣がないため、回答に困ったのではないか?というのが講師の推測であり、仮に「上司の引っ越しを手伝いに行きますか?」という質問だったら、「行く」という回答がもっと多かっただろうと分析していた。

(5)達成型地位―属性型地位
 地位は何かを行って獲得するものなのか、あるいはその人の年齢や社会的階級、性別、学歴などに付随するものとして捉えられているか、という問題である。日本人は年功序列制に見られるように属性型地位を重視し、アメリカ人は結果主義に見られるように達成型地位を重視する。

 あるアメリカ系の金融機関では、達成型地位が徹底されている。廊下で社員同士がすれ違う時は、営業成績の悪い方がよい方に道を譲ることがルールとなっている。仮に、営業成績にほとんど差がない2人がすれ違った場合には、2人の顔がくっつくほどに接近するまで、お互いに道を譲らない。ギリギリまで駆け引きをして、「これは自分の負けだ」と認めた方が仕方なく道を譲る。

 講師は不動産業の他に、広告代理店でも働いていた経験がある。ある顧客企業が、優れた海外向け製品に贈られる賞を受賞し、海外のメディア関係者を招いて記者会見を行うことになった。会見の30分前になって、社長が読む予定だった原稿に目を通した講師は唖然とした。「高い壇からお話しさせていただくことをお許しください」という文言から始まって、「我が社の製品はいろいろな関係者のおかげで完成させることができた」と関係各位に対するお礼の言葉で埋め尽くされ、終始謙遜の態度に徹した原稿になっていた。

 講師は、「これでは海外メディアの関係者は、なぜ自分たちが呼ばれたのか解りませんよ。もっと製品のPRをしてください」と助言し、急遽原稿を書き直した。日本企業は、周りの人たちのおかげで受賞できたと考えていた。しかし、達成型地位の考え方に立つと、賞は自力で獲得したものであり、自分がどれだけ優れているかを積極的にアピールしなければ損だ、ということになる。

 ((6)順次的時間観―同期的時間観(7)内的コントロール志向―外的コントロール志向については、講演の中で言及がなかったため省略)

2014年02月25日

採点審査に困る創業補助金の事業計画書(その6~10)

このエントリーをはてなブックマークに追加
《関連記事(※創業補助金以外の記事も含まれます)》
 創業補助金―申請書の書き方ポイント
 創業補助金―申請書(事業計画書)の書き方サンプル(記入例)
 とある中小企業向け補助金の書面審査員をやってみて感じた3つのこと(申請企業に対して)
 とある中小企業向け補助金の書面審査員をやってみて感じた3つのこと(国に対して)
 「うさんくさい補助金申請書」を見極める7つの審査ポイント(その1~3)
 「うさんくさい補助金申請書」を見極める7つの審査ポイント(その4~7)
 ある経済産業省関連補助金の面接審査官をやってきた

 (前回の続き)

(6)3年経っても個人経営から抜け出せない
 (5)で、3か年計画では社員数の目標も書くことになっていると書いたが、3年後の社員数が2~3名という案件も考えものである。もちろん、どんな事業でもいきなり急成長するわけではないので、3年後でもまだ社員が少ないケースは十分にありうる。しかし、事業計画を読んでも、中長期的に規模を拡大する意図が明らかにない、という案件が散見される。

 補助金という国のお金を投資するからには、それなりに事業が拡大し、雇用が創出され、経済にインパクトを与える事業を支援したいものである。個人経営にとどまる事業ならば、補助金に頼らず自力で何とかしてほしい、というのが私の本音だ。だが、雇用創出がプラスに評価されることはあっても、雇用創出をしないことがマイナス評価になることはない。極端なことを言えば、ずっと申請者1人で事業を回すケースであっても、補助金を受けることができてしまうのである。

(7)謎の中間業者として暗躍(?)する
 これは説明しづらいのだが、申請者の会社の存在意義が解らないことがある。例を挙げると、あるメーカーが海外の工場に納入している装置の保守・運用サービスを受託する、という案件があった。しかし、申請書をよく読むと、そのメーカーは海外に販売拠点を持っている。そのメーカーは保守・運用サービスを徐々に申請者にアウトソーシングしていくのかと思いきや、申請者は特定の1つの工場とだけ運用・保守サービス契約を結ぶのだという。それならば、申請者の企業を介さずに、その工場がメーカーと直接契約を結べばよいだけの話である。このケースでは、申請者が謎の中間業者となっている。

 もう1つあったのは、日本の決済システムを新興国に展開するという案件である。申請者は、その決済システムを開発した企業と連携して、決済システムを新興国用にカスタマイズし、新興国で加盟店を募集するのだという。ところが、申請者の企業は3年後も社員が1名しかいない。決済システムを開発した企業の立場に立つと、新興国という大きな市場に参入するにあたって、そんな小さな企業に自社の大事なシステムを任せるだろうか?という疑問が湧いてくる。これも、申請者がどういう理由で間に入っているのかが解らない案件だった。

(8)前職で似たような事業を経営していた経験がある
 申請書には申請者の経歴を書く欄がある。その経歴を見ると、今回申請している事業と同じような事業を過去に経営していた、というケースがある。前職では一般社員・管理職で、その時の経験を活かして起業する、というのは何ら不自然ではない。これに対して、前職で経営者だったとなると、話は別である。「前の会社がうまく行かなくなったから、新しい会社を立ち上げようとしているのではないか?」、「前回うまくいかなかったのなら、今回補助金をもらってもうまくいかないのではないか?」という疑問が頭をよぎる。

 前の会社はどうなってしまったのか?仮にうまく行かなかった、清算・廃業したとして、その原因をどのようにとらえているのか?その教訓は、今回申請している事業でどのように活かすつもりなのか?こういったことを申請者に直接会って聞いてみたいところである。だが、残念ながら、そのような機会は書面審査員には与えられていない。なお、明らかに補助金が目当てで、前の会社をたたんで新しい会社を起こすのは法律違反なので注意されたい。

(9)前職の経験と創業予定の事業の内容が違いすぎる
 (8)では、前職での役職が経営者の場合、前職の業種=今回申請している業種だと疑わしいという話をした。これに対して、前職での役職が一般社員・管理職の場合は、前職の職種≠今回申請している業種だと疑わしい。私が見た案件では、前職が保険会社の外交員なのに、海外の食品工場のコンサルティング会社を立ち上げる、前職が旅館スタッフなのに、RFIDを用いた製品のメーカーを立ち上げる、といったものがあった。

 全く異なる分野での起業となるが、必要な組織能力をどのように獲得するつもりなのだろうか?これも本当は申請者に直接聞いてみたいところだ。それが解らないので、何となく裏があるような気がしてしまう。誰か黒幕がいて、申請者がいいように使われているのではないか?申請者に何か製品を買わせたいメーカーがいて、申請者に補助金を受けさせ、その補助金でそのメーカーの製品を買わせようとしているのではないか?などと、よからぬことを考えてしまう。

(10)事業の社会的意義をやたらと主張する
 「今回申請する事業を通じて、雇用を創出したい、日本の景気回復に貢献したい」と意気込んでいる申請書をたまに見かける。ところが、私のひねくれた性格のせいか、審査員に媚を売るための美辞麗句に見えて仕方がない。もちろん、中小企業が日本の雇用を支えているのは事実であるし、中小企業の景気回復なくして日本の景気回復はない。このことは『中小企業白書』にも書かれているし、私だって十二分に理解している。

 とはいえ、それを申請者が自分で言うのはちょっとおこがましいような気がする。そういう案件に限って、3年後の社員数が5人程度だったり、営業利益が300万円ぐらいにとどまっていたりする。将来的に社員を50人ぐらい雇用するとか、営業利益5,000万円を目指すとかであれば、なるほど雇用創出や景気回復に貢献するであろう。だが、そこまでの拡大計画もないままに、簡単に「雇用を創出したい、日本の景気回復に貢献したい」などと言ってほしくない。まずは、事業を軌道に乗せて、最低限の法人税を支払うことを必死で考えよと言いたい。

(番外編)3年間、1つのスマートフォンアプリだけで勝負する
 最後に特定業界のケースを1つだけ紹介する。スマートフォンの普及に伴って非常に増えているのが、アプリ開発会社の案件である。だが、私が見た案件がたまたまそうだったのかもしれないが、どの案件もなぜか3年間たった1つのアプリで勝負しようとしている。ファッション業界並みに流行り廃りが激しいアプリ業界において、1本のアプリで3年間乗り切ろうというのは、ちょっと虫がよすぎる話ではないだろうか?2本目、3本目のコンセプトも練っておき、その開発費用も見込んでおかないと、簡単に事業がとん挫すると思う。

2014年02月24日

採点審査に困る創業補助金の事業計画書(その1~5)

このエントリーをはてなブックマークに追加
《関連記事(※創業補助金以外の記事も含まれます)》
 創業補助金―申請書の書き方ポイント
 創業補助金―申請書(事業計画書)の書き方サンプル(記入例)
 とある中小企業向け補助金の書面審査員をやってみて感じた3つのこと(申請企業に対して)
 とある中小企業向け補助金の書面審査員をやってみて感じた3つのこと(国に対して)
 「うさんくさい補助金申請書」を見極める7つの審査ポイント(その1~3)
 「うさんくさい補助金申請書」を見極める7つの審査ポイント(その4~7)
 ある経済産業省関連補助金の面接審査官をやってきた

 創業補助金とは、新たな起業の創出を促進し、地域経済の発展と雇用の確保を図るため、新規創業を目指している起業家の方の創業に要する経費の一部を助成するものである。創業補助金には、①地域需要創造型(補助上限200万円)、②第二創業(同300万円)、③海外需要獲得型(同700万円)の3タイプがある。先日、その書面審査を経験させていただき、約80社の事業計画書を見る機会があったのだが、「これは採点に困った」という10のケースを紹介したいと思う。

(1)「あれもこれもやりたい」症候群に陥っている
 申請者のアイデアが先行して、事業の焦点が絞り込めていない場合である。一番多いのは、いろんな製品・サービスをいろんなターゲット顧客層に販売する、というものだ。申請書には3か年計画の表があって、向こう3年間の売上予測を記入しなければならないのだが、こういう”ごった煮案件”に限って、製品・サービス別の売上や、顧客セグメント別の売上が書かれていない。これでは、3か年計画の妥当性を評価することができない。

 「BtoCビジネスとBtoBビジネスを同時にやる」、「OEMと自社ブランドを同時展開する」というのも、これと同じ症候群に属する。BtoCとBtoBでは、求められる組織能力が異なる。一般的に、BtoCは受注型・カスタマイズ生産、BtoBは見込み型・大量生産である(あくまで一般論である)。必然的に、製造プロセスや在庫管理、購買管理の方法も変わってくる。また、OEMと自社ブランド展開では、マーケティングや営業の方法が全然違う。成熟企業ならともかく、経営資源に限りがあるスタートアップ企業に器用な両刀使いができるとは思えない。

(2)製品やサービスの具体像が見えてこない
 文章だけではどういう製品・サービスなのかが伝わってこないことがよくある。特に、BtoBの部品製造や高度な専門技術を用いた製品、ITサービスなどによく見られる傾向である。申請者はよかれと思って専門用語を多用し、製品・サービスの中身を一生懸命説明しようとしているのだけれども、審査員は技術のプロだとは限らない(私もその一人である)。申請書には10枚程度の補足資料をつけることが許されているので、ビジュアルで説明できる資料があるならば、絶対に添付した方がよい。もっと欲を言えば、審査員は時間の都合上、補足資料を読まない(!)こともあるため、申請書の本文中に図を入れるのが望ましい。

 意外と製品・サービスの中身が解らないのが飲食店である。原材料の仕入ルートを特別に開拓したとか、契約農家では無農薬農法を行っているとか、独自の調理法で仕上げているとか、差別化要因になりそうなことがあれこれと書かれているのだが、正直に言うと審査員には解らない(汗)。この場合も、でき上がりのイメージを写真などで伝える工夫をするとよい。

(3)「誰にでも効果がある」という製品やサービス
 エステティックサロン、ボディエクササイズ、化粧品、健康食品、ソーシャルゲームなどでよく見られるパターンである。確かに、幅広い年代層の人に効果があるエステや化粧品、幅広い年代層の人が楽しめるソーシャルゲームが存在するのは事実である。だが、事業をやった結果そうなったというのならともかく、事業を始める前から全方位的なマーケティングを展開するというのは、審査員の立場からすると的が絞り切れていない印象を受ける。まずは、メインターゲットをはっきりとさせることが肝要である。どうしてもそれ以外の顧客層もターゲットに含めたいのであれば、サブターゲットを設定するとよい。

(4)倫理的に賛否両論がありそうな業界で起業
 業界の名前を挙げると、その業界の関係者を敵に回すので名前は伏せるが、要するに世論の評価が分かれやすい業界のことである。製品・サービスの中身が解りにくい、価格体系が複雑といった理由で、国民生活センターに苦情が寄せられることが多い業界と言ってもいいだろう。

 正直、こういう案件は評価に困る。というのも、評価基準の中には、事業の倫理性・道義性を問う項目がないからだ。市場ニーズがあって、そのニーズに応える明確な製品・サービスを企図していれば高得点になる。私はお目にかかったことがないし、他の審査員からも聞いたことはないが、仮に「(すごく差別化された)アダルトサイトの立ち上げ」という案件があったら、どう評価すればよいのだろうか?(「公序良俗に反する事業」は応募要件を満たさないので失格となるものの、アダルトサイトならば即公序良俗違反となるわけではない)

(5)社員に支払う人件費が少なすぎる
 3か年計画は売上高だけでなく、営業利益まで計算することになっている。また、向こう3年間の社員数の目標も記入が求められる。私は、売上原価や販管費の金額と社員数から、1人あたりの給与を算出するようにしている。その金額があまりに低い場合は、評点を下げるようにした。

 1年目はまだ利益が出ないため、給与を低く抑えるというのは理解できる。だが、3年目になって、計画では黒字にもなっているのに、1人あたりの月給が20~30万円にしかならないようでは、あまりに夢がない。それだったら、起業せずに大企業に勤めていた方が得策である。安倍政権はしきりに賃上げを主張し、また世論は安い人件費で社員を使い倒すブラック企業に厳しい目を向けている。そんな状況下で、むざむざとブラック企業を増やすようなマネはしたくない。

 (続く)


  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like