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【ベンチャー失敗の教訓(第49回)】大幅な債務超過なのに減資もDES(デット・エクイティ・スワップ)もできない
『いい会社 悪い会社(『週刊ダイヤモンド』2014年3月8日号)』―本号の4項目で前職の会社を評価してみた
『塾&予備校 徹底比較(『週刊ダイヤモンド』2014年3月1日号)』―詰め込み教育こそ考える力の源泉

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2014年03月25日

【ベンチャー失敗の教訓(第49回)】大幅な債務超過なのに減資もDES(デット・エクイティ・スワップ)もできない


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 X社、Y社、Z社の3社とも慢性的な赤字体質で、資金繰りに苦しんでいた。毎月末になると、経理担当者が「今月は資金が○百万円足りません」と各社の社長に報告し、比較的潤沢な個人資産を持っていたA社長とC社長が、そのたびに3社に貸付をを行う、ということを繰り返していた。決算をすると毎期のように債務超過になるため、A社長とC社長の資金でさらに増資を行い、債務超過を解消しようとしていた。だが、債務超過は完全には解消されなかった。

 そんな状況だったので、3社とも会社規模の割には、資本金と役員からの借入金が異常に膨れ上がっていた。各社の資本金は、X社が約7,000万円、Y社が約5,000万円、Z社が約9,900万円であった。3社とも大規模な設備投資を必要としない労働集約的な事業を行っており、かつ3社の売上高合計が約2~3億円、社員数合計が最大で約50人であったことを考えると、あまりにも不自然な金額だった。3社は毎期の累積赤字で資本金が食いつぶされており、さらに足が出ていたのが実態だ。これに加えて、A社長とC社長による個人的な貸付金があり、経理担当者ではない私には正確な額は解らないが、噂では億単位に上っていたと言われている。

 Z社の資本金が約9,900万円という中途半端な金額だったのには理由がある。資本金が1億円未満の企業は、税務署の管轄下に置かれるのに対し、資本金が1億円以上になると、原則として国税局の管轄となり、チェックが厳しくなる。また、資本金が1億円未満の企業は、法人税の計算に際して軽減税率が適用される、600万円までの交際費は90%損金算入できる、留保金の課税対象外となる、地方税(事業税)の計算時に外形標準課税の対象外となるなど、様々なメリットを受けられる。そのため、Z社はどんなに増資を行っても、資本金は1億円未満に抑えていた。

 増資を繰り返してなお債務超過に陥っている企業に対する処方箋としては、(1)債務免除、(2)減資、(3)DES(デット・エクイティ・スワップ)が考えられる。(1)の債務免除については、A社長とC社長が何度か債権放棄を行うことで実現した。ところが、債務免除を行うと債務免除益が生じ、思わぬ税金が発生する可能性があるため、あまり大胆な債務免除に踏み切ることができなかった。毎年の決算時期に、2人の社長からの債務を数千万円ずつ免除するのが限度であった。

 貸借対照表の見栄えをよくするには、(2)減資が最も効果的な方法であった。(1)債務免除と後述の(3)DESでは、累積赤字が利益剰余金の部分に残ってしまう。これに対して減資は、資本金で累積赤字を相殺するため、B/Sが非常にきれいになる。3社は債務超過に陥っていたから、100%減資を行って、再度新株発行(増資)を行う、というのが筋であった。

 しかし、ドラスティックな方法である上に手続きも煩雑であることから、減資が検討されることはなかった。それ以上に、3人の社長がB/Sの見栄えに関心がなかったという事情もある。B/Sをきれいにするのは、主に金融機関からの借入を容易にするためだ。だが、A社長とC社長が潤沢な資金を持っており、金融機関に頼る必要がなかった。とはいえ、取引先からの信用を高めるためにも、減資を行ってB/Sを整理することには意味があったと私は思う。取引先が帝国データバンクなどで3社の財務状況を調べたら、その惨状を見て取引を停止したかもしれない。

 (3)DESとは、企業のDebt(=債務)とEquity(=資本)をSwap(=交換)することで、債務を株式化することを意味する。原則として株主総会の特別決議が必要とされる減資に比べると、DESの方が手続きは簡単である。かつては、債権の額面が500万円以下など一定の場合を除き、検査役の調査または弁護士・公認会計士・税理士のいずれかにより、財産額が相当であることを証明してもらう必要があった。ところが、会社法の施行によって、500万円を超える金銭債権であっても、総勘定元帳など当該金銭債権の金額・債権者名が記載してある会計帳簿を登記申請書に添付するだけでよくなり、検査役や弁護士などの証明が不要となった(会社法207条9項5号)。

 とはいえ、DESも結局は行われなかった。A社長とC社長は、貸付金のままならば、将来的にそれを回収できる可能性があるものの、株式にしてしまうと配当収入のみになってしまい、かつその配当収入に税金がかかるため、DESを嫌ったそうである。また、DESを実施すると、Z社の資本金は確実に1億円以上になる点も、DESを回避した理由であっただろう。ただ、3社の業績が将来的に好転するかどうかは全く不透明であったし、貸付金に対する利息収入にも配当収入と同じように税金がかかるのだから、2人の社長の理由はやや不可解であった。

 ただし、例外的にY社だけはDESを行って債務超過を一時的に解消したことがある。人材紹介業(職業紹介事業)を営んでいるY社は、債務超過のままだと職業紹介事業許可の更新ができなくなるためである。職業紹介事業の許可条件として、(A)資産(繰延資産および営業権を除く)の総額から負債の総額を控除した額が、500万円に申請者が有料職業紹介事業を行おうとする事業所の数を乗じて得た額以上であること、(B)事業資金として自己名義の現金・預貯金の額が、150万円に申請者が有料職業紹介事業を行おうとする事業所の数から1を減じた数に60万円を乗じた額を加えて得た額以上となること、という2つが定められている。

 ちなみに、C社長は自分が3社に対して合計でいくら貸しており、毎年の利息収入がどれくらいあるのか全く把握していなかったそうだ。自分のお金のことも解っていないのだから、会社のお金のことがルーズになるのは仕方がなかったのかもしれない。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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2014年03月21日

『いい会社 悪い会社(『週刊ダイヤモンド』2014年3月8日号)』―本号の4項目で前職の会社を評価してみた


週刊 ダイヤモンド 2014年 3/8号 [雑誌]週刊 ダイヤモンド 2014年 3/8号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2014-03-03

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 大手口コミサイト「Vorkers」の口コミ47万件を分析し、「風通しのよさ」、「評価の適正さ」、「人材の長期育成」、「社員の士気」という4つの視点で評価を行いランキングを作成している。1位はリクルートマーケティングパートナーズだった。

 ただ、この4項目の合計得点がいいからと言って、業績が優れているとは限らない。根本のビジョンや戦略が間違っていたら、どんなに風通しがよくても、顧客や競合他社について無益な情報しか上がってこないだろうし、市場からは全く評価されない人材ばかりが育ってしまうに違いない。ランキングには補足情報として、過去3年間の経常利益の伸び率が掲載されていたが、3年前が赤字のためにパーセンテージが計算できない企業が何社か見受けられた。

 「人材の長期育成」のみのランキングを作ると、日本企業がずらりと並ぶ。その中でも異色なのは、アジレント・テクノロジー・インターナショナル(電気機器)と日本ベーリンガーインゲルハイム(医薬品)という外資2社である。アジレント・テクノロジー・インターナショナルは、ヒューレット・パッカード(HP)が源流の会社である。HPは90年代ぐらいまでは終身雇用に近い形態をとっており、比較的人材を大切にする社風があった(最近は大規模なリストラを行っているが・・・)。それがアジレント・テクノロジー・インターナショナルにも受け継がれているようだ。

 日本ベーリンガーインゲルハイムは、実は数年前に営業部門の研修を取材したことがある。まずは全営業担当者が従うべき標準的な営業プロセスを定めて、プロセスごとの目標値(KPI)を設定する。そして、標準プロセスの中身とKPIの重要性・意義について、研修でみっちり教え込む。この研修は営業担当者だけでなく、マネジャーも対象である。研修受講後のKPIはきめ細かくモニタリングされており、KPIの改善が芳しくない場合には、研修部門から追加の支援が入る、という仕組みになっている。人材育成に対して非常に熱心であるという印象を受けた。

 「風通しのよさ」、「評価の適正さ」、「人材の長期育成」、「社員の士気」の4項目のスコアが高いからと言って、企業が好業績であるとは限らないと書いたが、この4項目が悪ければ企業に未来はないのは確実だろう。それは、私の前職の会社がはっきりと示している。「ベンチャー失敗の教訓」シリーズに書き切れなかったことをこの記事で補足してみたいと思う。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
(1)風通しのよさ
 X社には企業風土を評価し、課題を特定する組織診断ソリューションがあった。具体的には、個人の活力、組織の活力、組織のメカニズム(リーダーシップ、仕事内容、役割分担、コミュニケーション、多様性・柔軟性、育成、評価)という3つの視点で企業風土を把握し、組織のメカニズムを構成する7つの要素のうち、どれを改善すれば個人や組織の活力がどの程度向上するのかを明らかにする、というものであった。

 「【ベンチャー失敗の教訓(第38回)】分社化したがゆえに生じた組織の壁」や「【ベンチャー失敗の教訓(第42回)】いびつなオフィス構造もコミュニケーション不全を引き起こす原因に」でも述べたように、会社内・会社間のコミュニケーションは不活発で、オフィス全体の空気が沈滞しているのが肌でひしひしと解るような感じだった。そこでZ社のC社長が、組織風土を改善するために、この組織診断を使うことを提案した。C社長は診断結果を全社員に公開して課題を共有し、腹を割って解決策を議論するつもりでいた。C社長の意図は、社員にも伝えられていた。

 診断の分析レポートを作成したのは、Z社の若いコンサルタントであった。自由記述欄に書かれたコメントの中には、会社に対する辛辣な批判などもあったが、オープンに対話をしたいというC社長の意向を汲んで、全て包み隠さずレポートに反映させた。そして、レポートがまとまると、彼は少しでも早く情報を共有したいと思い、レポートを全社員にメールで配信した。

 ところが、これに怒り狂ったのがC社長であった。C社長は、「なぜ自分に事前に報告しなかったのか?」と彼に詰め寄った。確かに、C社長の主張にも一理ある。C社長の指示でやっている仕事なのだから、まずはC社長に報告すべきだというのは自然な流れだろう。だが、話をいろいろと聞いていると、どうやらC社長は事前にレポートを読んで、都合の悪い情報(特に、自分にとって都合の悪い情報)は消そうと考えていたらしい。これでは建設的な議論などできるはずもない。この一件があってから、C社長と社員との距離感がさらに広がってしまった。

(2)評価の適正さ、(3)人材の長期育成
 以下の記事を参照。
 【ベンチャー失敗の教訓(第34回)】スキルが狭すぎてお互いに助け合えない
 【ベンチャー失敗の教訓(第35回)】人材育成が事業テーマなのに自社には人材育成の仕組みがない

(4)社員の士気
 X社の組織診断ソリューションの中には、「女性社員の活用度」を測定するものもあった。ダイバーシティマネジメントの重要性が叫ばれるようになった時代背景に合わせて開発したものである。この組織診断では、女性社員の活用度を「ハード面(育休制度の活用度、女性社員の管理職への登用など)」、「ソフト面(男性社員による女性社員の受容、女性社員のキャリア意識など)」の両面から評価する。ある意味では、女性社員のモチベーションを測定できる診断だった。

 サービスの本格提供に先立ち、X社は社内トライアルと顧客企業数社による社外トライアルを実施した。X社は半分ぐらいが女性社員だったので、診断の妥当性を検証するには適格だった。また、社外トライアルについては、女性社員の活用が進んでいると思われる企業と、(失礼だが)そうでないと思われる企業を顧客企業の中から選んでトライアルをお願いし、診断結果にどのような差が出るのかを検証しようとした。

 この診断の分析は私がやったのだが、一番結果が悪かったのがX社であった。つまり、女性社員のモチベーションが一番低かった。女性活用が進んでいないと思われた企業でも、ハード面・ソフト面のスコアは中くらいであり、X社よりも高かった。一番ショックだったのは、X社と同じように女性社員が多いベンチャーの顧客企業の結果がずば抜けてよかったことである。ベンチャー企業だからハード面は得点が低くても仕方ない、という言い訳はきかないのである。私は協力してくださった顧客企業1社1社に対し、診断結果をフィードバックさせていただいたのだが、このベンチャー企業にフィードバックする時は忸怩たる思いであった。

2014年03月19日

『塾&予備校 徹底比較(『週刊ダイヤモンド』2014年3月1日号)』―詰め込み教育こそ考える力の源泉


週刊 ダイヤモンド 2014年 3/1号 [雑誌]週刊 ダイヤモンド 2014年 3/1号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2014-02-24

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 今年から『週刊ダイヤモンド』の定期購読も始めた。興味深い号は本ブログでも時々取り上げるつもりだ。今回は初めての記事ということで、あまりまとまっていない点はご容赦いただきたい。

 (1)個別指導塾のTOMASを展開する「リソー教育」は、東証一部上場企業なのに人事部がないという事実に驚いた。同社およびそのグループ会社の人事は、創業者の伊佐実次会長を頂点とする幹部によって行われているらしい。同社は不正会計も行っており、第三者委員会による調査の結果、2007年度からの6年半の間に約83億円の売上を過大計上していたことが判明した。具体的には、退会した生徒に対して返還義務のある授業料を返還せず、「ご祝儀」と称して売上計上していたという。不正会計の背景には、売上至上主義の人事制度があるようだ。

 先日飯田橋に行ったら、TOMAS飯田橋校が入っているビルに「消費生活総合センター」が入っているのを見かけた。「TOMASから退塾したのに授業料を返還してもらえない」という苦情が、きっと同センターにも寄せられていたのだろうなと思いながら、私はそのビルを眺めていた。

 (2)学生時代に塾講師をしたことがある自分がこんなことを言うのもおこがましいが、塾や予備校に対する私の本来的な拒絶感・アレルギーのせいか、塾・予備校がどんなに「我が校では考える力を育てます」と主張したところで、「はい、そうですか」とせせら笑うしかない。そういう塾・予備校に限って、カリキュラムががちがちに固まっていて、入試問題の入念な分析から導かれたオリジナルテキストが用意されていたりする。

 考える力が、「何を学ぶか?」という学習の対象、「どうやって学ぶか?」という学習の手段を主体的に設定し、選択する力であるとすれば、学校という制度があり、学習指導要領が整っている時点で、考える力の半分ぐらいは奪われている。そこにさらに塾・予備校が乗っかると、考える力の4分の3ぐらいは、事実上無効化されているといってよい。

 ただ、本当に考える力を育てるためであれば、これは致し方ないことである。最初にある程度の知識を大量に詰め込まなければ、解らない知識の詳細を知ろうとか、新しい知識を追求しようといった欲求は生まれてこない。結局のところ、考えるとは知っている知識同士をいろいろと組み合わせてインスピレーションを得ることである。だから、考える力の根底には、分厚い知識の層が備わっていなければならない(もちろん、知識が豊富だからといって、必ずしも考える力が強くなるとは限らないことは私も認める)。塾・予備校は「考える力を育てます」などという自己欺瞞を演じるのではなく、知識偏重を堂々と謳ってよいと思う。

 そういう意味では、数学オリンピックで正答率が0%の問題を最後まで解かせる「さんすうLAB.」や、オーウェル、デカルト、ラッセルなどの哲学書の英文を丸暗記させる「平岡塾」のように、受験の枠を超えてぶっ飛んだ(?)知識を教え込む塾の方に、私なんかは強く共感する。

 数学オリンピックの問題は、難関校の入試問題でも出題され、中には正答率0%の問題もあるという。ただし、そういう問題は、浜学園などトップクラスの進学校でも”捨て問題”に分類され、手をつけないように指導される。しかし、さんすうLAB.ではそういう問題でもきっちりと教える。また、平岡塾には「お帰り問題」という名物があり、英語の重要構文がぎっしり載ったB4版のプリントを暗唱できた者から帰宅できる決まりとなっている。このおかえり問題の中に、オーウェルなどの文章が含まれる。平岡塾の狙いは、「折り目正しい英語」を身につけさせることにある。




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