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中小企業診断士の試験&実務補習とコンサルティング現場の5つの違い(2/2)
中小企業診断士の試験&実務補習とコンサルティング現場の5つの違い(1/2)

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


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◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

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(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2015年03月27日

『北欧に学べ なぜ彼らは世界一が取れるのか/最新 買っていい株220 買ってはいけない株80/東日本大震災4年 復興よ、どこへ行く(『週刊ダイヤモンド』2015年3月14日号)』

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週刊ダイヤモンド2015年3/14号[雑誌]特集1 北欧に学べ/イケア 物流主役、デザイン脇役の意外/H&M 驚異の在庫管理 レゴ 世代超越で囲い込み/嵐、EXILE、K-POP…実は北欧音楽家が世界を席巻/「落ちこぼれ」は作らないフィンランド式教育メソッド/特集2 2万円目前! 最新 買っていい株 いけない株週刊ダイヤモンド2015年3/14号[雑誌]

ダイヤモンド社 2015-03-09

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 日本人が大好きな北欧(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド)の企業についての特集。そんな私もつられて読んでしまった。本号で「北欧成功の5か条」として挙げられていたことに対する私の考えを書いてみる。

(1)人口が少なく、最初から世界志向
 北欧4か国で人口は合計2500万人。企業は国内市場を当てにせず、すぐに海外に向かう。ドイツから欧州各国を経て、米国。近年の韓国企業も似た戦略だ。

 ⇔最近は、「日本の市場が将来的に縮小するから、海外に進出しなければならない」とよく言われる。政府も、今後5年間で新たに1万社の海外展開を目指すという目標を掲げている。ただ、個人的には、海外ばかりに目を向けるのもいかがなものかと思う部分がある。

 企業が海外市場を目指すのは、国内の供給能力が国内需要を超えたため、海外の需要を獲得して需給バランスを取ろうとするからである。だが、海外の需要というのは、本来はその国の企業がまかなうべきものである。海外展開する企業は、現地企業のビジネスチャンスを”横取り”したとも言える。その結果、グローバル企業は世界中の需要をかすめ取って富を蓄積する一方、各国では自国の産業が十分に育たず、経済発展が阻害される可能性がある。

(2)企業が絶えず新陳代謝する国策
 高負担・高福祉ばかり注目されるが、産業政策は市場原理的。雇用より個人を守るため、競争力の弱い企業は淘汰され、労働者は新しい産業に移動。フィンランドのノキア、スウェーデンのボルボ、サーブが典型。

 ⇔衰退した企業を救わず、労働力を新しい産業へと速やかに移行させる政策については私も賛成である。日本は、業績が悪化した企業を延命させる傾向がある。例えば、信用保証制度による保証承諾実績は、他国に比べて日本が突出している。比較的規模が大きいアメリカでさえ約1.58兆円であるのに対し、日本はその約7倍にあたる約11.6兆円に上る(数字はともに2011年)。しかも、代位弁済のために毎年1兆円もの税金が投入されている。

 また、リーマンショック後に制定された「中小企業金融円滑化法」では、「経営改善計画」を作成すれば、金融機関が貸付条件を変更してくれる、平たく言えば借入金の返済を猶予してもらえることになった。中小企業金融円滑化法は時限法であったが、何度か期間が延長され、2013年3月にようやく終了した。しかし、経営改善計画による貸付条件変更は現在でも行われている。この仕組みを使って延命を図っている企業は相当数あると予想される。

 代位弁済に巨額の税金を使ったり、金融機関の貸付条件変更に多大な労力を使ったりするよりは、ハローワークの予算と人材を充実させて、失業給付金を増額したり、職業訓練コースの数を増やしたり、訓練のクオリティを上げたりした方がよいと思う。

(3)北欧デザインで高い付加価値あり
 無駄を徹底的に省いたシンプルなデザインが特徴。北欧デザイン自体がブランドで、付加価値が高い。デザイン企業にとって北欧好きが多い日本は大市場。

 ⇔日本企業の製品は、欧米企業や中台韓企業と比べてデザインが弱いと言われる。しかし、日本人に美的センスが欠落しているわけではないはずだ。日本には茶道、華道、書道といった伝統があり、数多くの陶芸、絵画、工芸品などが蓄積されている。

 (4)とも関連するが、日本人はユニバーサルに通用する製品・サービスを創り出すことが得意ではない。逆に、特定の限られた市場をつぶさに観察し、一部の顧客に受け入れられる製品・サービスを開発する方が向いている。他の顧客が必要とする機能を排する代わりに、特定の顧客が要求する機能は徹底的に磨く。こうすることで、シンプルだが非常に使い勝手のよい製品・サービスが生まれる。ただし、その製品・サービスが受け入れられるのは、あくまでも日本企業がターゲットとした特定の顧客層だけであり、それ以外の人からは見向きもされない。

 ところが、日本企業にグローバル化の波が押し寄せ、アメリカ的な経営手法が流入すると、世界中で通用する製品・サービスを作らなければならなくなった。日本企業にとって世界市場は、様々なニーズを持つ様々な市場から構成されていると映る。したがって、様々な顧客の要望に応えるためという名目で、1つの製品・サービスにあれもこれもと機能を追加してしまう。その結果、機能過多に陥ってデザイン的に”イケていない”ものができ上がるわけだ。

(4)ローカライズはほとんどしない
 極めてシンプルなデザインや商品が多いためか、各国で同じ製品やサービスを投入。リソースの無駄を省き、利益率向上につながる。イケアが格好事例。同社は、中国の食卓に置いたら茶碗として使え、欧州の食卓ではサラダボウルとして使えるような製品デザインを目指している。

 ⇔(3)で述べたように、日本企業はこれを真似できないと思う。世界標準の単一製品・サービスを世界市場に投入するのは、一神教文化圏に生きる欧米企業(特にアメリカ企業)の得意技である。しかし、日本人は属するのは多神教文化であることを忘れてはならない。

 日本企業は、進出する市場の先々で、顧客をよく観察し、その顧客に合った製品・サービスを開発する。世界で戦う日本企業は、現地化された多様な製品・サービスを多数取り揃える必要がある(もっとも、(1)で述べたように、本当に世界で戦う必要があるのかについて、より突っ込んだ検討が求められる)。アメリカ企業は日本企業を見て、何と非効率な経営だと思うに違いない。それでも日本人は、自らの文化・精神的伝統に則った方法を採用しなければならない。

(5)カリスマ経営者は必要ない
 上下関係がなく、フラットな組織が特徴だ。アップルのスティーブ・ジョブズのような強烈な経営者はいない。若手には「経営者は力がないほどいい」との声も。

 ⇔経営者にカリスマ性が必要ないという点には賛成するが、フラットな組織にはあまり賛成しない。本ブログでも何度か書いたが、日本の組織は多層化している方が安定するし、日本人は上位者の権威を受けている方がむしろ自由を発揮できるという特性がある。

 日本の組織では、現場の社員が自由にアイデアを考えることができる。ただし、そのアイデアを実行していいかどうかは、上司に諮る必要がある。その上司も自分では判断できないので、さらに上司に諮る。その上司もまた、自分の上司に諮る。こういうエスカレーションを繰り返すのが日本の組織である。確かに、意思決定には時間がかかる。しかし私は、現場の創意工夫を引き出すことと、そのアイデアを多角的に検討することを両立させる優れた仕組みであると考える。

 ところが、最近は部下のアイデアをすぐに否定してしまう上司が増えているらしい。また、サントリーの「やってみなはれ」の精神が示すような、部下にどんどんアイデアを実行させて、失敗した時の責任だけは取るというタイプのマネジャーが減っているようで、大変残念である。

2015年03月24日

中小企業診断士の試験&実務補習とコンサルティング現場の5つの違い(2/2)

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 (前回の続き)

 (3)財務・会計の苦手を作ってはならない
 中小企業診断士の試験において、毎年多くの受験生を泣かせるのが「財務・会計」という科目である。受験生の得点をグラフ化すると、他の科目はだいたい正規分布を描くのに対し、財務・会計は2つの山ができると言われている。つまり、金融機関に勤めている人や公認会計士・税理士など財務・会計を非常に得意にする人と、財務・会計にアレルギー反応を起こすぐらい不得意な人の山ができて、平均点周辺の人数が少なくなるというわけだ。

 私自身、お世辞にも財務・会計が得意とは言えないので、他人のことをどうこう言う資格はないのだけれども、実務では財務・会計の苦手を作ってはいけないと思う。試験では足切りラインの40点が取れれば御の字でも、実際のコンサルティング現場においてはそれでは困る。

 もちろん、合併時の資産評価や、細かい税務処理などは、その道の専門家に任せておけばよい。しかし、過去3~5期分の貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を財務分析にかけて、経営課題を抽出することぐらいは絶対にできなければいけない。また、ある程度の粉飾決算を見破る目も不可欠である(中小企業の決算書は、意図的か意図的でないかは別として、99%粉飾していると言われる)。一見すると健全に見える貸借対照表、損益計算書でも、粉飾部分を正しく修正すると深刻な問題が現れるケースがある。

 実務の現場では、過去の分析だけでなく、将来に向けた試算の能力も必須である。生産、購買、物流、営業、IT、人事など、各部門の施策のコストと効果を見積もり、その結果を将来の貸借対照表、損益計算書に反映させる。そうすることで、社長が掲げる売上高や営業利益の目標が何年後に達成できそうなのかが明らかになる。また、貸借対照表と損益計算書から将来のキャッシュフロー計算書を作成すれば、借入金について毎年の返済可能額も解る。公認会計士・税理士は、過去の数字のことしか解らない。将来の数字を作れるのは、診断士だけである。

 (4)実務で頼れるのは自分一人だけ
 実務補習では5~6人で1チームとなり、各人が全体戦略、生産管理、営業、IT、人事労務、財務などのパートから1つを担当する。最初は自分の現業と関連する得意分野を担当すればよいが、2回目、3回目は自分が経験したことのない不得意分野を担当するよう推奨される。実務補習のチームは、多様なバックグラウンドを持つメンバーから構成されるように配慮されているため、仮に不得意分野を担当して行き詰ったとしても、誰かが助けてくれる。

 この仕組みはチーム内の助け合いを促すいい仕組みだと思う反面、実務とはかけ離れているとも感じている。まず、実務では5~6人などという大人数でチームを組むことはない。私が前職のベンチャー企業で、中堅・大企業向けにコンサルティングをやっていた頃は、2か月&5人チームで3,000万円などという案件もやっていた。しかし、診断士として独立してからは、そんな規模の話は皆無である。診断士の実務では、1人か2人で行動することがほとんどだ。つまり、他に頼れる人はおらず、全ての責任を引き受ける必要がある。

 中小企業の経営者からは、ありとあらゆる相談が持ち込まれる。仮に、自分が不得意とする相談が来た場合、大人数のチームであれば、その分野を得意とする人に話を振ればよいかもしれない。また、診断士の世界には広範なネットワークがあり、様々な専門性を持った人が集まっているので、ネットワークの中から適任者を探すのも一つの手である。しかし、相談が来るたびに誰か別の人に話を回しているようでは、やがて中小企業の経営者からの信頼を失うに違いない。顧客企業は、自分を飛ばしてその専門家と直接契約を結びたがるだろう。

 (3)とも関連するが、診断士は苦手をできるだけ減らす必要がある。あらゆる分野について、最高の解ではなくとも、最善の解は提示できなければならない。その上で、中小企業の経営者が最善の解以上のものを欲するならば、その道の専門家を紹介するとよいだろう。私も偉そうなことを言える身ではないが、表向きは人事評価制度・人材育成の専門家と言いながら、事業戦略の立案やWebマーケティング・提案営業の実施支援など、いろいろなことをやっている。一方で、社会保険の細かいルールや、製造・物流現場のこと、企業合併や事業再編についてはよく解っていないため、こうした弱みはこれから潰していかなければならない。

 (5)顧客企業のためならば、土壇場での「ちゃぶ台返し」もある
 実務補習では、5日間という限られた時間の中で、100ページぐらいの報告書をまとめる(個人的には、100ページも書く必要があるのか?という疑問が拭えないのだが、この点はひとまず脇に置いておく)。1日目に経営者インタビューを行い、2日目にインタビュー結果を踏まえて戦略を定め、戦略の実現に向けた各部門の課題と解決策の方向性を導出する。

 ここからしばらくは自主学習期間に入り、各メンバーは自分の担当部門の課題と解決策を具体化して報告書をまとめる。3日目は、メンバーの報告書を持ち寄って全体の論理的整合性を検証し、各パートの修正点を洗い出す。4日目は、修正後の報告書を再度持ち寄って、内容の最終確認を行い、報告書を印刷する。そして、最終日の5日目は、経営者向けに報告会を行う。これが実務補習の大まかなスケジュールである。

 3日目、4日目と議論が進むにつれて、当初考えていた課題や解決策よりも、もっと本質的な課題や、もっと効果的な解決策を思いつくこともある。すると、報告書の大幅な書き直しが必要となる。ただ、ここで「ちゃぶ台返し」を強要できない特殊な事情がある。というのも、実務補習のメンバーは、診断士の協会にお金(1回5万円)を払って参加している。逆に、診断先の顧客企業は実はコスト負担がゼロである。だから、我々指導員側から見ると、診断先はもちろん顧客だが、実務補習のメンバーも顧客であり、彼らの満足度を著しく下げる行為には出られないのである。

 過去の実務補習では、「終盤になって指導員から報告書の大幅な修正を指示された」というクレームが何度となく寄せられたという。論理的に正しい手直しならまだしも、指導員の単なる思いつきとしか思えないような修正を命じられたことに対して、厳しいクレームがつけられたらしい。こういう前例があるため、「ちゃぶ台返し」という禁じ手は使いづらい。

 ただ、忘れてほしくないのは、これは実務補習という特殊な環境だから成り立つ話だということである。実務では、顧客企業のことが最優先だ。途中でもっとよいアイデアが出てきて、そのために報告書の大幅な手直しが必要になったら、徹夜をしてでも、土日を潰してでも修正せよ、というのが実務の世界である。これをやると、絶対にチームメンバーの満足度は下がる。しかし、メンバーの顔色をうかがってちゃぶ台返しに踏み切れないリーダーも、自分の作業量が増えることばかりを考えてちゃぶ台返しに難色を示すメンバーも、プロフェッショナルとしては失格である。

2015年03月23日

中小企業診断士の試験&実務補習とコンサルティング現場の5つの違い(1/2)

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 中小企業診断士になるためには、2次試験(論述&口述試験)に合格した後、15日間の実務補習を受講することになっている。この実務補習では、実際の中小企業をチームで総合的に診断し、経営改善に向けた施策を提案する。1社あたりの診断期間は5日間であり、3社分の診断を実施すると、晴れて中小企業診断士として登録される。

 今年に入ってから、その実務補習の副指導員をやらせてもらう機会が増えた。私は診断士になってから何だかんだで8年近くが経過しており、大して診断士らしい活動もしていないのだが、診断士の世界では中堅の部類に入るみたいだ。そのためか、試験に合格した直後の人たちと触れ合う機会がほとんどない。今回の実務補習では、診断士に対するフレッシュな気持ちを持った人たちに触れて大いに刺激を受けた。一方で、試験勉強と実際の現場の違いを改めて認識する場ともなった。今回の記事では、その違いについて5点ほど述べてみたいと思う。

 (1)抽象的な提案よりも、具体的な「バカなる」提案を目指せ
 診断士の2次試験は、論述試験と口述試験に分かれている。論述試験では、中小企業の事例が出題され、その企業の経営課題や、課題を解決するための提案を、限られた文字数の中で文章化するよう求められる。診断士の予備校では、様々な論述試験対策が練られているようだが、共通しているのは、「できるだけキーワードを詰め込んで、部分点を狙え」ということらしい。日本語としてつじつまが合っているかどうかは二の次で、たくさんキーワードを書いておけば、どれかは解答例に引っかかるだろう、という発想である。

 しかし、コンサルティングの現場において、部分点というものは存在しない。経営者から120点の評価をいただけるか、0点だと突っぱねられるかのどちらかである。私が思う「よい提案」とは、最初は「えっ?」と思われるが、こちらがよく説明すると「確かにそうだな」と思い直してくれる提案である。こういうのを「バカな」+「なるほど」=「バカなる」と呼ぶらしい。「バカなる」提案は、観察された事実を地道に積み上げ、経営の原理原則を精緻に組み合わせて、ロジックの深さで勝負する。抽象的なキーワードをばらまいて、ロジックの浅さをごまかすのとは全く異なる。

「バカな」と「なるほど」「バカな」と「なるほど」
吉原 英樹

PHP研究所 2014-08-12

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 余談だが、極端なキーワード重視を貫いていたある予備校では、模擬試験の上位に常にランクインする人が、本番の試験で落っこちるという事態が相次いだ。そのため、方針を転換して、キーワードは少なめで、日本語としてちゃんと筋が通っているかを評価するようになったらしい。

 (2)「話す力」よりも「聞く力」の方が圧倒的に重要
 2次試験は論述試験と口述試験で構成されており、論述試験の合格者が口述試験を受験する。ただ、この口述試験はよほどのことがない限り不合格にならないと言われている(東京では2年連続で不合格になった人がいるらしく、伝説と化している)。口述試験は、論述試験で出題された事例を題材として、面接官からの質問に対し、経営課題や改善提案を述べる。ただし、論述試験の試験問題は持ち込むことができないので、事前に頭に入れておく必要がある。

 ほとんど不合格にならない口述試験で一体何が評価されているのか私も定かではないのだけれども、口述試験で要求されるのは、いわゆる「話す力」であろう。試験対策に詳しい人は、「まずは面接官の質問内容をオウム返しして、質問内容を確認するとともに、オウム返ししている間に自分の気持ちを落ち着けて、回答内容を整理する」という技を披露してくれた。予備校ではそんなテクニックまで出回っているのかと感心してしまった。

 コンサルティングの現場では話す力も大事だが、それ以上に重要なのが「聞く力」である。中小企業の経営者や社員の話をじっくりと聞く。誰が聞いても同じことを答えてくれるような表層的な話にとどまらず、「この人が相手だから敢えて話そう」という本音を引き出したいものだ。そのためには、良質な仮説を持っている必要がある。漫然と「御社の経営課題は何ですか?」と聞くのではなく、「○○というデータから、御社の経営課題は△△だと思うのですがいかがですか?」と聞かなければならない。だから、インタビューには事前の入念な準備が欠かせない。

 ところが、私が実務補習を受けた8、9年前は、初日に経営者にインタビューすることだけが知らされていて、診断先の企業情報は一切教えてもらえなかった。初日にメンバーが全員集まったところでようやく情報が開示されたかと思うと、準備もそこそこに、指導員から「さぁ、インタビューに行きましょう」と言われた。さすがにこれには参った。私の実力不足もあるのだが、表面的なインタビューしかできずに、その後の報告書は、単に社長の話をまとめただけになってしまった苦い記憶がある。実務補習を3回受けても、この点はなかなか改善できなかった。

 それに比べると、現在は随分と改善されているようで、診断先企業の情報を1週間前にメンバーに開示してもよいことになった。よって、メンバーは事前にインタビューの準備ができる。それでも、今年の実務補習では、初日の経営者インタビューまでの時間が足りないと感じてしまった。本来ならば、メンバーが事前に立てた仮説を持ち寄って、仮説の妥当性を協議し、インタビューで確認すべき仮説を取捨選択して、仮説の検証に必要な質問項目を整理する、という手順を踏みたいところだ。どうすればこの作業を効率的に行えるかが、私の中の今後の課題である。

 (続く)


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