この月の記事
【城北支部国際部セミナー】「ここがポイント!日本人が気づいていない外国人旅行者へのおもてなし」~インバウンド需要に対応する現場経営者からのメッセージ~
岡本隆司『中国の論理―歴史から解き明かす』―大国中国は昔から変わらず二項対立を抱えている
【賛否両論】中小企業診断士(コンサルタント)に必要なのは「ドキュメンテーション力」か「プレゼンテーション力」か?

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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


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(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

中小企業診断士の安い通信講座なら「資格スクエア」資格スクエア
(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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2016年09月28日

【城北支部国際部セミナー】「ここがポイント!日本人が気づいていない外国人旅行者へのおもてなし」~インバウンド需要に対応する現場経営者からのメッセージ~

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ホテル

 私が所属する(一社)東京都中小企業診断士協会・城北支部国際部では、9月24日(土)に「『ここがポイント!日本人が気づいていない外国人旅行者へのおもてなし』~インバウンド需要に対応する現場経営者からのメッセージ~」と題してセミナーを開催した。プログラムは以下の通り。今回の記事では、セミナーの内容を簡単にまとめておく。
講演①「オ・モ・テ・ナ・シは日本だけの文化じゃない、旅行者の気持ちになってみて」
講師:株式会社ファーストメモリー代表取締役 李 承妍(り しょうけん)氏

講演②「東京都北区赤羽に泊まる。その心とは。」
講師:株式会社TheBoundary代表 「HOTEL ICHINICHI」オーナー 吉柴 宏美氏
 (1)「おもてなし」が最も問われるのは、マニュアルに書いていないことが起きた時である。ある中国人旅行客が日本で約15万円の炊飯器を購入したが、帰国後に初期不良であることが判明した。炊飯器のメーカーに問い合わせると、「修理することは可能だが、海外に送ることができない」と言われた。そこで、そのメーカーの製品を取り扱っている中国の販売代理店に相談したところ、「日本で買ったものは修理できない」と断られてしまった。

 この場合、「マニュアルに書いていないことはできない」と考えるのではなく、「マニュアルに書いていないことは、別に禁止されていることではない。顧客にとって意味があるならば、積極的にやればよい」と発想を転換する必要があるだろう。そういう判断ができる人材を育成すること、また、そのような判断を許容する組織風土を醸成することが、おもてなしを提供する上で重要になる。もちろん、毎回アドホックに判断を下すわけにもいかないので、定期的に「例外事象」を検証しなければならない。例外が1回限りのことではなく、今後も頻繁に起きる可能性があるのであれば、マニュアルを改訂する。そうすることで、組織全体のサービス品質が底上げされる。

 (2)欧米の旅行客は、旅の上級者が多い。彼らは事前に日本で行きたい場所の情報を細かくリサーチしている。谷中や根津神社のことを知っている外国人もいる。また、オーストラリアやアメリカの旅行客の中には、四国・九州を自転車でツーリングする人もいる。四国・九州では東京ほど英語が通じないため、ツーリストは片言の日本語で現地の人に話しかけるのだが、それでも親切に接してくれる日本人にいたく感動するそうだ。すると、次に日本を訪れた際には、午前中は日本語教室に通い、午後は旅行を楽しみたい、といった要望が出てくる。

 欧米人に対しては、こちら側もきめ細かく情報を提供することが求められる。Airbnbを利用して訪日する欧米人には、空港からのアクセス地図、宿泊地の周辺マップ、部屋にある家電の取扱説明書を提供している。また、欧米人は、帰国後に何を体験したのかを周囲の人に語りたがる、あるいは自分が体験したことを母国で実践したがる傾向がある。とりわけ、欧米人はラーメン、寿司、卵焼きに食いつく。そこで、母国の食材で作れるようなレシピを渡すと、非常に喜ばれる。海外には「だしを取る」という風習がないため、だしの取り方もレシピに書いておく。

 (3)アジア人観光客は、事前にリサーチするものの、情報がありすぎて混乱しているケースが多い。そこで、「ガイドブックにはこう書いてあるが、現地の人(日本人)は実際にはどう思っているのか?」を教えると、彼らの旅行の助けになる。アジア人は写真をたくさん撮って、SNSで友人とシェアする傾向が強い。そのため、本来は写真撮影NGの場所であっても、交渉して特別に許可をもらうことがある(例えば、茶室の内部など)。また、彼らはSNSにアップする写真を少しでもきれいに見せいたいという欲求も持っている。「写真に写っている顔を小さくしたい」、「二の腕を細くしたい」といったニーズにも応えてあげると、旅行客の満足度が上がる。

 ところで、インバウンド需要をとらえるために、外国語に対応したHPを制作している企業は多いが、たいていは英語化で止まっている。2015年の訪日外国人を国別に見ると、1位中国(約499万人、25.3%)、2位韓国(約400万人、20.3%)、3位台湾(約368万人、18.6%)、4位香港(約152万人、7.7%)、5位アメリカ(約103万人、5.2%)である(ANA「外国人観光客数 年別・国別ランキング」より)。よって、英語対応だけでなく、中国語対応することが欠かせない。

 (4)外国人旅行客はマナーが悪いと言われることがある。しかし、多くの外国人旅行客は、日本のルールは守りたいと思っている。ただ、日本のルールをよく知らないだけである。電車の中で電話を使ったり、大声で話したりしてはいけない、レストランの予約をキャンセルする場合には事前に電話しなければならないといったルールを共有しておけば、トラブルはかなり減らせる。

 (5)吉柴宏美氏は赤羽で「ICHINICHI」というホテル・ホステルを経営している。赤羽と言えば飲み屋のイメージが強い(「せんべろ」=1,000円でベロベロに酔えるという言葉がある)。ホテルで起業するという話を周囲にしたところ、「赤羽などに人が集まるのか?」と何人にも言われたという。だが、吉柴氏は「それは赤羽が雑多な街という印象を持っている人の意見だ」と一蹴した。訪日外国人は、赤羽という街がどういうところなのかは気にしない。空港から近く、自分が行きたい場所へのアクセスがよいところに泊まりたいと考える(これは、日本人が海外旅行する時も同じはずだ)。そういう視点で赤羽を見ると、実に外国人旅行客に適した立地である。

 また、赤羽に飲み屋が多いというのもプラスに働く。宿泊客に「日本で面白かったところはどこか?」と聞くと、ラーメン屋、のんべえ横丁といった回答が返ってくる。銀座などは日本旅行の定番であるが、銀座のショップは母国にもたいてい存在するわけで、わざわざ銀座まで来る必要はない(これは私も銀座で外国人が増えるのを見ながら、薄々感じていたことである。また、ビックカメラなどで爆買いをする中国人は多いものの、そこで売っている家電の大半は中国製であり、日本で買う意味があるのかと思ってしまう)。それよりも、日本ならではの体験を外国人旅行客は求めている。飲み屋が多い赤羽は、底知れぬポテンシャルを秘めているかもしれない。

 (6)最初の顧客誘導として、最も効果的なのは海外のホテルブッキングサイトである。Expedia、Booking.com(欧州のユーザーが多い)、Agoda(アジア人のユーザーが多い)、Trip Adviserなどと契約している。ホテルブッキングサイトを活用する場合、価格は統一する必要がある。各サイトに支払うコミッションの割合が異なるからと言って、サイトごとに価格を変えると、サイト内の検索順位が下がるようなアルゴリズムになっている。

 (7)小さなホテルであるから、大手ホテルならば絶対にやらないことをするように心がけている。ある台湾人旅行客が、空気清浄機を家電量販店で買おうとしていたが、あいにく売り切れていた。どうしてもその空気清浄機がほしいのだけれども、後2日で台湾に帰らなければならない。他の家電量販店にその空気清浄機が置いてある保証はない。そこで、吉柴氏がAmazonで検索したところ、在庫があると解ったので、吉柴氏の個人アカウントで立て替え購入をした。翌日、製品が無事に届き、その台湾人旅行客は大喜びで帰国した。実は、彼らはそれまで部屋が狭いだの何だのと文句を言っていた。しかし、空気清浄機の一件があってからはがらりと態度が変わり、Agodaのレビューで星10をつけてくれたそうだ。この話は(1)に通じるところがある。

 ※勝手ながら、10月は1か月間ブログをお休みします。11月にまたお会いしましょう!
 (ブログ別館「こぼれ落ちたピース」は更新する予定です)


2016年09月25日

岡本隆司『中国の論理―歴史から解き明かす』―大国中国は昔から変わらず二項対立を抱えている

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中国の論理 - 歴史から解き明かす (中公新書)中国の論理 - 歴史から解き明かす (中公新書)
岡本 隆司

中央公論新社 2016-08-18

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 私が考える大国(ここで言う大国とは、アメリカ、ロシア、ドイツ、中国の4か国を指す)の「二項対立論」は、まだ著しく不十分なのだけれども、現時点で到達している地点を簡単に整理すると次のようになる。まず、大国同士はイデオロギーをめぐって対立する。例えば、アメリカの資本主義とソ連の社会主義の対立といった具合だ。もう少し一般化して、アメリカがAという思想・立場を、ロシアがBという思想・立場を掲げて対立していたとしよう。表面的にはA対Bなのだが、実はアメリカもロシアも国内は一枚岩ではない。アメリカ国内には少数だがB派が、ロシア国内には少数だがA派がいる。アメリカのA派は、ロシアのB派を攻撃すると同時に、ロシアのA派を支援する。ロシアのB派も、アメリカのA派を攻撃すると同時に、アメリカのB派を擁護する。

 アメリカもロシアも、実は本気で相手を倒そうとは思っていない。対立が深まるほど、軍事産業が発達し、軍事産業から生まれた技術やイノベーションが経済を活性化させることを知っているからである。しかし、何かの弾みで、アメリカのA派がロシアのB派を倒したとする。すると、アメリカはロシアがA化するべく支援に乗り出す。アメリカはここでもひと儲けできる。結局、アメリカにしてみれば、ロシアと対立していようがロシアを倒そうが自国の利益にかなうのである。

 ここで、日本のような小国には理解しがたいことなのだが、アメリカはロシアを完全にA化しない。二項対立は大国の本質であることをアメリカは理解している。アメリカは、ロシアのA派を強く支援しながら、実は、A派の対立軸として新たにB´派が生まれるのを待っている(アメリカが中東で自国の味方に過度に肩入れした結果、自国の敵が生まれていることは、以前の記事「『震災から5年「集中復興期間」の後で/日本にはなぜ死刑がありつづけるのか(『世界』2016年3月号)』―「主権者教育」は子どもをバカにしている、他」で述べた)。そして、今度はロシアのB´派がアメリカのA派と対立する。アメリカの真の狙いはそこにある。大国同士を二項対立の関係に置き、自国内部にも二項対立の状況を作り出す。これが大国の「二項対立論」である。

 アメリカはかつては共産主義と戦い、現在はテロと戦っているように、対外的には対立構造を好む。また、国内に目を向ければ、二大政党が激しく対立している。ドイツは多党制、ロシアは事実上統一ロシアの一党独裁に近いが、エリン・メイヤー『異文化理解力』によれば、ドイツ人もロシア人も文化的に見れば対立を扇動する傾向がある。ドイツ人やロシア人との会議で発言すると、必ず反対意見が返ってくる。しかも、日本人には耐えられないほどの痛烈な批判を浴びせてくる。しかし、彼らは決して、発言者を貶めようとしているわけではない。ある意見に対しては必ず反対意見をぶつけることで、より優れた意見に到達できることを期待している。

異文化理解力 ― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養異文化理解力 ― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養
エリン・メイヤー 田岡恵 樋口武志

英治出版 2015-08-22

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 ここで私の頭を悩ませたのが、中国の扱いである。以前の記事「『一生一事一貫(『致知』2016年2月号)』―日本人は垂直、水平、時間の3軸で他者とつながる、他」では、「中庸」という考え方を持つ中国は、「二項対立」と「二項混合」の両方ができ、思想的には最強なのではないかと書いた。また、以前の記事「ジョセフ・S・ナイ『アメリカの世紀は終わらない』―二項対立から二項混合へすり寄る米中?」では、米中の経済的つながりの深化に注目して、中国だけではなくアメリカまでもが二項混合になりつつあるかもしれないと書いた。

 ここでようやく本書の内容に入ることができるのだが、本書を読んで、やっぱり中国は二項対立を重視する大国であるという思いを強くした。
 「中国の論理」を貫く時間概念と事実の整序は、史書が表現する。そこに厳存したコンセプトは、「正統」と「偕偽」という二重構造になっていた。政治を組織した社会構成の論理でいえば、その基本にあったのは、「士」「庶」あるいは「官」「民」という階層の乖離で、やはり二元構造である。

 世界観の場合もやはり当然に、そうした二元的な構造論理が貫いている。(中略)「天下」という単一の人間世界は、「華」と「夷」から成る、というのが古来中国の空間認識・世界観であった。
 東洋史学では、唐と宋の間、つまり10世紀前後に、中国を中心とする東アジアで一大転換があったと見る。これを「唐宋変革」と呼ぶ(高校世界史では習わなかったキーワードだ)。

 本書によれば、宋の時代には、科挙に合格した官僚が庶民を支配するという、厳然たる二元構造が確立されたという。科挙自体は隋の時代から行われていたが、官僚が庶民の支配権を完全に掌握したのは宋に入ってからのようだ。隋・唐の時代には、科挙の合格者よりも、地元の豪族から成り上がった従来型の貴族の方が強い力を持っていたと見るべきである。

 中国の歴代王朝は常に、周辺民族からの侵攻に悩まされてきた。その中にあって、宋の時代だけは例外的に「華」と「夷」(もしくは「漢」と「胡」)が併存する体制が敷かれた。代表的なのが、1004年に契丹と結んだ「セン淵の盟」(※「セン」はさんずいに「亶」)である。両国の関係を兄弟の間柄とし、その関係は100年以上もの間続いた。宋はこれ以外にも、後に興った西夏や金ともこうした盟約を結んで類似の関係を構築した。そのため、研究者の中にはこれを「セン淵体制」と呼ぶ者もいるという。つまり、宋の時代は、上記の引用文にあるような国内外における二項対立的な世界観が最も整然と確立された時代だと言えそうだ。

 以前の記事「『死の商人国家になりたいか(『世界』2016年6月号)』―変わらない大国と変わり続ける小国、他」でも書いたが、大国は簡単には自らを変えることができない。西洋から押し寄せる近代化の波に対して中国(清)と日本がどのように対応したかを見れば、大国と小国の違いがよく解る。小国である日本は、「和魂洋才」というキーワードで表されるように、日本人の伝統的な精神は残しつつも、西洋の技術の中で実用的なものは、国を問わずどんどんと吸収していった。さらに、日本の文化や日本人の気質に合うように、西洋の技術をカスタマイズした。

 これに対して、清がとったのは「附会」という技法である。これは、西洋の優れた部分は清と異なっているわけではなく、中国の古典の中に既に存在したものだとこじつけることである。
 そのさい主としてこじつけられた中国の古典は、「諸子」であった。諸子百家である。利益や武力、科学技術を尊重しない儒教は、必ずしも西洋とは合致しない。しかしながら、たとえば富強を重んじる思想は、法家の『管子』にある。また科学・技術でも、化学の理論は『墨子』に載っているし、キリスト教も墨子・墨家の説く兼愛と同じ。西洋の事物はこのように、はるか古代の中国に存在したものであって、それを知らないのは、古典に通暁すべき中華の知識人エリートとして恥ずかしい、という主張がとなえられたのである。
 イデオロギー・体制は君主独裁制から立憲共和政、三民主義からマルクス主義、計画経済から市場経済へ移り変わっていった。しかしその前提に必ず存在していたのは、「士」「庶」が隔絶し、上下が乖離した社会構成である。
 中国は現代になっても、社会構造は古代と全く変わっていない。また、国内に二項対立を抱えるだけでなく、対外的には、香港・台湾に対し一国二制度を認め、内モンゴル、ウイグル、チベットなど周辺民族との対立関係を温存している(厳密に言えば、これらの領域は中国国内に取り込まれているため、対外的という言葉はふさわしくないのかもしれないが)。

 現在の共産党は、膨張政策や歴史外交を四方八方に展開することで、中国国民の心を引き留めることに必死である。また、圧倒的な経済力をバックに、香港や台湾を中国側に抱き込もうとする動きも見られる。さらに、これもまた圧倒的な軍事力を行使して、ウイグルやチベットなどを強引に制圧している。これらの動きを一言で言えば、中国は二項対立をなくして社会の一元化を図っているということになる。しかし、二項対立が一元化した時、そこに出現するのは全体主義である。そして、全体主義は国家を崩壊の危機にさらす(日本やドイツを見るとよい)。

 1930年代~40年代の中国は、対日総動員の一環として、「士」と「庶」の一元化を進めた。ところが、その結果、中国内には軍閥が乱立し、かえって内乱が拡大してしまった。中国は日中戦争に勝ったことになっているが、日本のポツダム宣言受諾がもっと遅く、内乱が長期化していれば、中国には国家を建国するほどの体力が残らなかったかもしれない。また、戦後の毛沢東は文化大革命によって「士」と「庶」の一元化を試みた。だが、その後に吹き荒れたのは粛清の嵐である。文化大革命の正確な犠牲者は解らない。公式発表では死者40万人となっているが、一説には4,000万人とも8,000万人とも言われる。いくら人口が10億人以上いるとしても、人口の1割弱を殺害するのは、自ら国家を死滅へと追いやるようなものである。

 現在の中国は文字通り、「1つの中国」を目指しているのかもしれない。しかしながら、その行為は大国の論理にそぐわない。むしろ、大国を破滅へと向かわせる危険性があることを歴史は示している。国内外で二項対立を抱えるというのは、政治としては何とも矛盾に満ちた非合理的なやり方であるが、大国が自らを保つにはそれが最も現実的なのである。

2016年09月23日

【賛否両論】中小企業診断士(コンサルタント)に必要なのは「ドキュメンテーション力」か「プレゼンテーション力」か?

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ドキュメンテーション

 今回は賛否両論があるであろう問題を取り上げる。私が所属する城北支部では、数年前から「城北プロコン塾」という、独立プロコンを養成するコースを運営している。城北プロコン塾では、毎回の講義・演習に加えて、それぞれの受講者が”自分の飯のタネ”になりそうなテーマを1つ設定し、1年間かけてレポートを作成する(このレポートは、受講者が将来的に自分の主催するセミナーなどで活用することを想定している)。城北支部の部長以上の役員は、受講者のレポートを評価し、トップ5を決定する(「レポート大賞」)。そして、その上位5人は、城北支部の先生が一堂に会する支部大会でプレゼンテーションのコンテストを行う(「プレゼン大会」)。

 先日、城北支部内で、この「レポート大賞」と「プレゼン大会」の位置づけ、運用方法をめぐってちょっとした議論になった。論点があちこち飛んでしまい(実は、診断士によくありがちである)、途中から私は議論について行けなくなってしまったのだが、本質的な問題は、「城北プロコン塾で養成するのはドキュメンテーション力なのか、プレゼンテーション力なのか?」ということであったと理解している。この問題は、言い換えれば、「診断士に必要なのはドキュメンテーション力なのか、プレゼンテーション力なのか?」という問題でもある。

 私は昔から一貫して、診断士に必要なのはドキュメンテーション力であるとの立場である。プレゼンテーションは、話し手の勢いや迫力、その場の雰囲気によって、何となく相手を解った気にさせられる。言葉は悪いが、口先でごまかすことができてしまう。診断士がプレゼンした改善提言に納得した中小企業の社長が、現場に戻っていざ改善に着手したとしよう。診断士の話の内容をもう一度思い出すために、プレゼンの際に渡されたドキュメントを読み返す。ところが、そのドキュメントに矛盾が含まれていたらどうであろうか?社長は困惑し、改善を断念するだろう。

 私は以前、東京協会が主催する「東京プロコン塾」に所属していたことがある。東京プロコン塾が始まって間もない頃、東京協会のある重鎮の先生が、「診断士は社長を騙くらかすぐらいの口達者になれ」と言ったのに私はひどく驚いた。私にはそんな不誠実なことはできないし、そういうプロコンを育成するのが東京プロコン塾の目的であるのならば、私の価値観とは全く相容れない。そのため、私は早い段階で東京プロコン塾を辞めることにした。

 (もう1つつけ加えると、その先生は、「飲食店の経験がない人が飲食店のコンサルティングをしたければ、数か月間でも飲食店でアルバイトをすればよい。そうすれば、飲食店の店長と対等に話ができる」とも言っていた。そんな中途半端な職務経験で店長と張り合えると考えるのは、かえって失礼である。そういう考え方を私は採ることができない。これも私が東京プロコン塾を辞めた一因である。私の経験上、ある業界でコンサルティングをする際に、その業界での業務経験は必須ではない。もちろん、業界経験があるに越したことはないが、業界経験がなくても、適切なコンサルティング技法があれば、コンサルティングは可能である)

 プレゼンテーションはごまかしがきくのに対し、ドキュメントはごまかしがきかない。内容に矛盾があれば、それを隠すことはできない。ドキュメントには非常に高い完成度が求められる。ところで、私はパワーポイントで納品することが多いが、コンサルティングの成果物としてのパワーポイントは、例えばスティーブ・ジョブズがアップルの新製品を発表する際に用いるものとは全く別物である。後者はインパクトが勝負であるのに対し、コンサルティングの成果物としてのパワーポイントは、それぞれのスライドで言いたいこと(キーメッセージ)が簡潔な文章で明確に打ち出されており、その内容をサポートする情報が図表などを用いて整然とまとめられているものである。そして、スライド間で内容に齟齬がなく、全体を通じて一本の筋が通っているものである。

 コンサルティングの成果物としてのパワーポイントは、見た目は重視されないのかと言うと、それは違う。全くの逆である。見た目も重要である。テキストボックスの大きさが揃っている、図の位置がずれていないといったことも、ドキュメントの価値を決める大きな要素である。私は様々な診断士のパワーポイントを見てきたが、見た目に無頓着な人が何と多いことか。スライドタイトルのテキストボックスの位置がページごとに違っていたり、フォントやサイズがバラバラだったりと、お粗末なスライドが多い。中小製造業は、毎日10ミクロン単位の公差で勝負をしている。その社長に、テキストボックスや図が何ミリもずれたドキュメントを出して笑い者にされたいか?

 1回ぽっきりの機会を何とか乗り切ればよいプレゼンテーションとは異なり、ドキュメントは社長が必要に応じて何度も読み返し、社長が社員に対して改善策を説明して回り、社員もまたその資料を何度も読み返すのに耐えうるレベルのものでなければならない。そのためには、ロジックを細部まで詰める必要があるし、そのロジックがすっと頭に入ってくるよう、ビジュアルにも細心の注意を払うべきである。ドキュメントは診断士の”作品”である。

 プレゼンテーション力重視派は、役所の無料窓口相談の担当者をしていたり、都や区の予算で商店街などの個店に派遣されて経営相談をやっていたりする人に多いように思える。確かに、こういう仕事ではドキュメントを作成する機会は少ないだろう。だが、はっきり言って、この手の仕事は診断士にとってほとんど儲けにならない。年金収入があるいわゆる”年金診断士”であればよいのだろうが、私のような年代の診断士にとっては全く魅力がない。それに、私の思い込みかもしれないが、企業が身銭を切らないコンサルティングは、企業側が本気にならない。本気でない企業を相手にコンサルティングをしても、コンサルティング能力は磨かれない。

 独立診断士が食えるようになるためには、1回あたりの仕事で数十万~数百万円になる案件をいくつも獲得する必要がある。この規模になると、口頭のアドバイスだけで済ますわけにはいかない。必ず、何かしらのドキュメントを成果物として残すことになる。よって、食えるプロコンになるには、ドキュメンテーション力が必須なのである。なお、売上高が数億円、数十億円あっても、当期純利益は数百万円程度しかない中小企業は非常に多い。そういう企業から、コンサルティングフィーとして数十万~数百万円をいただくわけだから、相手も必死である。必死な相手から何度もダメ出しされながらドキュメントを作成していくと、診断士としての力が磨かれる。

 しばしば、「人間は論理だけでは動くとは限らない。最後に人間を動かすのは情理だ」と言われる。この言葉を根拠に、診断士に必要なのはプレゼンテーション力だと述べる人もいる。しかし、この言葉をよく読めば、人間は論理だけで動くこともあることが解る。逆に言えば、情理だけで動くことはない。情理は論理を補完することはあっても、それ単独で相手を動かすことはできないのである。論理はドキュメンテーションによってこそ最も効果的に完結する。したがって、診断士に必要不可欠なのはプレゼンテーション力ではなく、ドキュメンテーション力の方である。

 私は、まだプロコンとしてはひよっこなので、他の診断士に仕事をお願いできるほどたくさんの案件を抱えているわけではない。だが、私が仕事を依頼する場合には、絶対に相手のドキュメンテーション力を重視すると決めている。プレゼンテーションが上手いかどうかは関係ない。むしろ、私の場合は、プレゼンテーションが上手ければ上手いほど、その人のコンサルティング能力を疑う。これは、前職のコンサルティング会社で、口だけのコンサルタントがクライアントや上司からボロカスにこき下ろされていたのを何度となく見てきたことも影響している。

 私は日頃から、どの診断士がどんなメールの文章を書くか、ワードやパワーポイントでどんな資料を作るかを注意深く見るようにしている。そして、どの診断士なら仕事を頼めそうか、それとなく当たりをつけている。ドキュメントが作れない診断士には、絶対に仕事を依頼しない

 《余談》
 ドキュメンテーション力重視派の中には、ここ数年中小企業向けの補助金が増えており、補助金の申請書類作成を支援するためにドキュメンテーション力が必要だと言う人もいる。私も本ブログで「【シリーズ】「ものづくり補助金」申請書の書き方(例)」のような記事を書いてきた手前、あまり大きな声では言えないのだが、実は補助金に群がる中小企業や診断士が嫌いだ。

 補助金は、市場の失敗をカバーするための例外処理にすぎない。言ってしまえば、生活保護のようなものである。生活保護を堂々ともらおうとする人はいない(はずである)。どうしても生活に困っているので、今回だけ生活保護に頼るという人が大半だ。補助金も同じで、どうしても経営に困っているので、今回だけ補助金に頼りたいという謙虚な姿勢を持たなければならない。それなのに、補助金が出ると嬉々としてそれに飛びつく中小企業を見ると、その経営姿勢を疑う。また、補助金を受けたことを自社のHPで堂々とアピールすることも、私には全く理解できない。

 補助金を積極的に中小企業に勧める診断士にも私は一言言いたい。補助金は返さなくてもいいお金だと言って補助金をどんどん受けさせるのは、経済原理に反した行為である。企業は、株主や金融機関から調達した資金を活用して、彼らが期待する以上のリターンを上げ、彼らにリターンを支払ってなお残る利益を将来のために投資し、持続的な成長を実現するものである。「株式会社」が、近代経済を大きく発展させた最大の発明品と言われるのはこのためだ。ところが、補助金を使いすぎると、株式会社としての機能が麻痺する。当の診断士はよかれと思って補助金を勧めているのかもしれないが、実際には経済の破壊につながると知るべきである。


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