この月の記事
【城北支部国際部】「ここがポイント!”地方のインバウンド誘致”と”越境EC”」 ~現場での支援事例に基づく現状、課題、未来~(セミナーメモ書き)
【JETRO】タイ投資シンポジウム―アジアの次世代ハブを目指して(シンポジウムメモ書き)
【感想】Mr.Children新曲「himawari」(映画『君の膵臓をたべたい』主題歌)の歌詞を解剖する

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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2017年07月30日

【城北支部国際部】「ここがポイント!”地方のインバウンド誘致”と”越境EC”」 ~現場での支援事例に基づく現状、課題、未来~(セミナーメモ書き)


クレジットカード

 私が所属する(一社)東京都中小企業診断士協会国際部で、診断士向けにセミナーを開催した。主催者側の私が言うのもおこがましいが、正直に言って、東京協会の理論政策更新研修よりも面白かったと思う(先日受講した理論政策更新研修のひどさは「東京都の中小企業向け補助金・助成金など一覧【平成29年度】」で書いた)。セミナーで勉強になったことのメモ書き。

 【講演①】非観光地域におけるインバウンド誘致の取り組み
 (東京都中小企業診断士協会 城北支部国際部 小沢智樹会員)
 ・人口に対する外国人観光客数の比率は、フランスが134.5%で群を抜いているが、先進国の多くは大体40~50%となっている。2016年の訪日外国人旅行者数は2,403万9,000人であり、人口に対する比率は18.9%である。ドイツの人口に対する外国人観光客数の割合は42%であり、仮に日本がドイツの比率を目標にすると、訪日外国人旅行者数は5,300万人となる。現在、政府は2020年までに訪日外国人旅行者数を4,000万人に増やすという計画を立てているが、必ずしも非現実的な数字とも言えないようである。

 旅行収支の対GDP比を見ると、アメリカやドイツが1.1%となっている。2016年の日本の旅行収支は1兆3,391億円であり、GDP約537兆円に対する割合はわずか0.2%である。これを、アメリカやドイツ並みに引き上げるとすると、旅行収支は約5兆4,466億円となる。政府の目標は2020年時点で8兆円であるから、こちらはかなりストレッチした目標であると言える。

 ・政府は2014年度から「地方創生関係交付金」を設けており、2016年度は「地方創生推進交付金」(1,000億円、事業費ベース2,000億円)を実施した。本交付金の目的は、①しごと創生、②地方への人の流れ、③働き方改革、④まちづくりの4つであり、①の一環として観光に注力することとなっている。いわゆるゴールデンルートと呼ばれる東京、京都、大阪(+富士山)に加えて、地方への観光を促進するのが目的である。具体的には、地域の「稼ぐ力」向上のため、様々な連携を図りながら地域経済全体の活性化につながる観光戦略を実施する専門組織として、日本版DMO(Destination Marketing/Management Organization)を確立し、これを核とした観光地域づくりを行う。また、地場産品を戦略的に束ね、安定的な販路開拓・拡大に取り組む地域商社を核に、地場産品市場の拡大、地域経済の活性化を目指している。

 交付金の額が大きい都道府県は、上位から順番に、北海道(65億円)、長野県(37億円)、熊本県(29億円)、茨城県(28億円)である。北海道の交付金が高いのは、市町村の数が多いためだ。熊本県、茨城県の交付金が多いのは、震災復興の意味合いがあるのかもしれない(ただし、東北地方の交付金はそれほど大きくないので、震災復興という観点のみで交付金の多寡を判断することは難しい)。都道府県民1人あたりの所得に対する都道府県民1人あたりの交付金の割合を見てみると、上位から順番に、高知県(20%)、鳥取県(18%)、東京都(16%)、富山県(13%)となっている。意外なことに、地方創生と言いながら、東京都の交付金も多い。

 ・現在、観光庁には「日本版DMO候補法人登録制度」というものがある。これは観光庁を登録主体として、日本版DMOの候補となり得る法人を「登録」し、登録を行った法人、およびこれと連携して事業を行う関係団体に対して、関係省庁が連携して支援を行うことで、各地における日本版DMOの形成・確立を強力に支援する制度である。登録を目指す法人は、日本版DMO形成・確立計画(形成計画)を作成し、地方公共団体と連名で観光庁に提出する。形成計画は、科学的アプローチによる観光地域づくりを重視している。すなわち、戦略に基づいてマーケティング/マネジメントを実施し、効果をKPI(Key Performance Indicator:重要業績指標)を用いて測定するということである。観光庁の審査を通ると、日本版DMOとして登録される。現時点で、広域連携DMO6件、地域連携DMO67件、地域DMO72件の計145件が登録されている。

 ・本講演のテーマは”非観光地”におけるインバウンド誘致である。観光地の定義は難しいが、Wikipediaの「日本の観光地一覧」によると、384市区町村が観光地に該当するそうだ。日本の市区町村は全部で1,741であるから、残りの1,357市区町村が非観光地ということになる。近年はニューツーリズムがブームになっており、エコツーリズム、スポーツツーリズム、グリーンツーリズム、メディカルツーリズムなど、様々な旅行形態が存在する。言い換えれば、地域の資源は何でも観光資源になり得る可能性を秘めている。

 講師はある自治体において、田園、大きな橋、サッカー、モニュメント、特攻機という資源に注目した。ところが、インバウンダーの約8割はアジア人(その大半は中国人)である。田園風景はアジア人にとって珍しいものではない。大きな橋に関しては、中国の方がよっぽど長けている。サッカーはアジアではあまり人気がない。モニュメントを見ても、観光客はそれに特別な価値を感じない。特攻機は、アジアでは歴史のタブーに触れてしまう。逆に、インバウンダーにとって受けがよかったのは、神社、嫁入り船、海岸線、お祭りだったそうだ。

 ・講師が非観光地でインバウンダーのニーズ調査を行った結果解ったのは、彼らは実は純粋なインバウンダーではないということであった。調査対象者の中には、もちろん欧米人もいたが、日本に住んでいる留学生や研修生が多かった。そして、彼らが本国から家族や親戚を呼び寄せているケースもあった。初めて日本を訪れる外国人を、いきなり非観光地に向かわせるのは非常にハードルが高い。そうではなく、日本に住んでいてある程度日本のことを解ってる人をまずはターゲットにする。そして、彼らの家族や親戚と一緒に来てもらうことで、徐々に観光客を増やすのが有効ではないかというのが講師の見解であった。

 なお、講師はその非観光地をPRするのに、「日本政府観光局(JNTO)」のHPを利用した。合わせて、観光案内所にチラシを配布した。HPに関して言うと、外国人向けのHPは観光地の特徴を解りやすく伝えようとシンプルにしがちであるが、外国人旅行客は事前にディープな情報を研究して訪日するケースが多いため、情報は惜しみなく出した方がよいとのことであった。

 【講演②】越境ECの現状と今後の課題について
 (越境EC総研合同会社 代表 中川泰氏)
 ・講師は越境ECのコンサルティングで数多くの企業を支援してきた方である。越境ECは今ブームになっているが、越境ECで儲かっている企業は実はほとんどないという。儲かっているのは、モールを運営するAmazon.comと、商品を運ぶ日本郵便だけだそうだ。だから、越境ECを始めようと思う方は、もう少し慎重に戦略を練った方がよい。

 講師のところに相談に来る方は、「中国で商品を売りたい。売れれば何でもよい」、「とにかくAmazon.comに出店したい」と言うケースがあまりに多いらしい。国・地域やチャネルを決める前に、何を売るか=商品を決めるのが先である。時折、「日本で売れないから海外で売りたい」という方もいるのだが、日本で売れないものは海外でも売れない。日本で売れるものがやはり海外でも売れる。だから、日本で自信を持って販売しているものを、越境ECでも扱うべきである。越境ECで売れる商品には3つの特徴がある。①差別化ポイントが解りやすい、②商品のメンテナンスがしやすい、③商品名の発音がしやすい、の3つである。

 ①については、国によって顧客が何を重視するかが異なる。「商品のスペックが全く同じだとしたら何を重視するか?」というアンケートを取ると、アメリカ人は「安い価格」、ヨーロッパ人は「エコへの配慮」、アジア人は「ブランド」(中国人にとっては「その商品を持っていると周囲に自慢できる」ことが重要)と答える。よって、ターゲット顧客ごとに訴求ポイントを上手く変えることが大切である。なお、アメリカ人について補足すると、彼らは低価格の商品ばかりをほしがっているわけではない。低価格も重要だが、スペックの高さも重要である。つまり、コストパフォーマンスを評価している。アメリカ人は、「その商品を持っていると作業が楽になる」といった利便性を重視する。③については、日本語の商品名をそのまま海外で使用すると、その国の隠語に近い発音になることがあるので要注意である。その場合は、日本と海外で商品名を使い分けるとよい。

 ・越境ECを行う場合には、SNSとの導線を意識する必要がある。マーケティング理論にはAIDMAモデルに代わるAISASモデルというものがあるが、今時の外国人(特に若者)は、欲しい商品がある時にgoogleで検索しない。SNSで友達がある商品を使っている写真を見て、それがほしいと思うと、すぐにAmazonで検索する。アメリカ人の約50%は、気になった商品は直接Amazonで検索するという調査結果もあるという。よって、例えばアメリカに越境ECで商品を売りたい場合には、まず在米日本人に商品を使ってもらって、写真をInstagramに英語でアップしてもらい、アメリカ人のフォロワーに浸透するような仕掛けを行うとよい。

 ・商品を選んだ後に、販売先の国を決める。まずは、①その商品を使う文化がある国を選ぶ必要がある。ある企業は、和包丁を越境ECで販売しようとしたが上手くいかなかった。というのも、和包丁は定期的に砥石で研ぐ必要があるが、外国人にはその研ぎ方が解らないためである。それから、②大きなモールがあって、インターネットで商品を買う文化がある国でなければならない。さらに、③郵便事情のいい国を選択するべきである。商品の運送状況を配達先までトレースしている国は、日本を含めて世界で8か国しかない(実はアメリカは入っていない)。

 インドネシアは人口が多く、ECが急成長しており、クレジットカードも普及しつつあるので、インドネシアで越境ECをしたいという人が多い。しかし、この手のマクロ指標は全くあてにならない。インドネシアは島国であり、物流事情が非常に悪いため、商品が届かないリスクが高い。よって、こういう国は除外するべきである。越境ECサイトで顧客の住所を入力させる際に、国名だけは、配達可能な国をプルダウン形式で選ばせるようにするとよい。

 ・商品、国、ターゲット顧客を決めたら、最後は販売サイトをどうするか決めなければならない。自社サイトで販売するという方法もあるが、自社サイトで成功している企業はほとんどないという。となると、モールに出店する方が成功確率が高い。ただし、テンセント(京東全球購〔JD Worldwide〕)やアリババ(天猫国際)は保証料や年会費で何百万円もかかる。これは、両社が出店企業からお金を取るモデルで成り立っているビジネスであるからだ。講師は、中国に越境ECで商品を売りたいと相談に来られる方に「予算はいくらですか?」と聞くのだが、大体500万円ぐらいという答えが返ってくる。その場合は、中国に進出するのは止めた方がよいとアドバイスするそうだ。これに対して、Amazon.comは、Amazonプライム会員(アメリカに約6,500万人)を収益源とするモデルであるため、出店企業はコストを抑えることができる。

 ・越境ECで頭を悩ますのが運賃の設定方法である。アメリカ人の約78%は、サイトに運賃が表示された瞬間に購入を諦めるというデータがある。運賃には、①送料込、②従量制、③定額制、④従価制という4つがある。①送料込は日本人には良心的に見えるものの、海外では送料が非常に安いか、商品が非常に安いかのどちらかだと思われる。よってお勧めできない。②従量制も顧客からは敬遠される傾向がある。よって、③定額制か④従価制にする。③定額制は、購買層が若い場合に有効である。④従価制は、購買層の所得が高い場合に有効である


2017年07月28日

【JETRO】タイ投資シンポジウム―アジアの次世代ハブを目指して(シンポジウムメモ書き)


タイシンポジウム

 JETROが主催する「タイ投資シンポジウム―アジアの次世代ハブを目指して」に参加してきた。以下、シンポジウムの内容のメモ書き。

 タイ政府は長期的な国家計画として、6つの領域、6つの主要戦略、そして4つの補強戦略から構成される「国家戦略20年計画(6-6-4 計画)」を打ち出している。「6つの領域」とは、

 ①安全保障
 ②国の競争力強化
 ③人材育成
 ④社会的平等
 ⑤グリーン成長
 ⑥不均衡是正および公共セクターの開発

 「6つの主要戦略」とは、

 ①人的資源の能力の向上と開発
 ②公正の保証と社会的格差の縮小
 ③経済強化と持続可能な手段による競争力強化
 ④持続可能な開発に向けたグリーン成長の促進
 ⑤発展と持続可能性を目指す国家開発に向けた国の安定化
 ⑥公共部門管理の効率化及び良好なガバナンスの推進

 「4つの補強戦略」とは、

 ①インフラ整備と物流システム
 ②科学技術、研究、イノベーション
 ③都市、地方、経済区域の開発
 ④国際的開発協力

である。タイでは2017年4月6日に新憲法が発布され、この国家戦略の内容も盛り込まれている。今後、8か月かけて関連法律を整備し、2018年末までに総選挙を行う予定である。タイは現在軍事政権であるが、徐々に民主主義に戻りつつある。

 そのタイが現在打ち出しているコンセプトが「タイランド4.0」というものである。国家経済社会開発庁(NESDB)によれば、これまでの発展は次の3段階に区分される。第1段階(1.0)は農村社会であり、家内工業が中心となった時代で、いわば工業化以前のタイである。第2段階(2.0)は、戦後の天然資源や安価な労働力を活用した軽工業をテコに成長した時代である。そして第3段階(3.0)は外資企業の進出をテコにした重化学工業が中心となった1980年代後半から現在までの期間を指す。そして、第4段階(4.0)が「タイランド4.0」で、「イノベーション」、「生産性」、「サービス貿易」をキーワードとして持続的な付加価値を創造できる経済社会と定義された。

 2017年2月15日、バンコクで「オポチュニティ・タイランド」と名付けた大規模な投資セミナーが開催された。セミナーの冒頭で、プラユット首相は「タイランド4.0」を説明すると同時に、その実現に資する外国企業の投資に過去最大の優遇措置を付与する新投資戦略を明らかにした。バンコク東部に位置するチョンブリ県、ラヨン県、チャチュンサオ県の3県を「東部経済回廊(EEC)」として、大規模な投資優遇策を伴いながら、積極的に開発を進める方針を打ち出した。







 これらタイ湾東部地域は約30年前から開発が進み、現在では石油化学、自動車産業が集積している。自動車産業が集積した、チョンブリー県のレムチャバン港を中心とした地域は「東洋のデトロイト」と呼ばれる。タイ政府は今後5年間で、同地域に1兆5,000億バーツ(約430億ドル、約4兆8,000億円、1バーツ=約3.2円)の投資を官民で行い、地域のさらなる発展を図る。

 <空港や港湾整備など5プロジェクトを優先>
 ウタマ・サバナヤナ工業相は、先に触れた2月15日開催のセミナー「オポチュニティ・タイランド」で、現在EEC地域で開発が計画されている15プロジェクトのうち、2017年に開始する優先順位の高い、以下の5プロジェクトを発表した。

 ①ウタパオ空港・・・投資額は2,000億バーツ(約57億ドル)。現在の滑走路の東側に新たな滑走路を整備する。さらに、旅客ターミナル、商業施設、自由貿易区域、メンテナンス・修理施設、航空産業向け研修施設を新設する。

 ②レムチャバン港開発(第3期)・・・投資額は880億バーツ(約25億ドル)。PPP方式で開発し、世界でトップ10に入る港を目指す。コンテナ取扱量を現在の年間700万TEU(20フィートコンテナ換算)から1,800万TEUに、自動車輸出能力を年間100万台から300万台に増強する。

 ③高速鉄道の敷設、既存鉄道の複線化・・・投資額は1,580億バーツ(約45億ドル)。PPP方式を採用する。ドンムアン空港~スワンナプーム空港~ウタパオ空港間に高速鉄道を敷設する。これにより、ドンムアン空港とウタパオ空港を1時間以内、スワンナプーム空港とウタパオ空港を45分で移動することが可能になる。また、レムチャバン港~マープタプット港間の既存の鉄道を複線化する。レムチャバン港~ラヨーン間、マープタプット港~タラット間までの新線を整備する。

 ④EEC内への特定産業の誘致・・・投資額は5,000億バーツ(約143億ドル)。最先端食料生産・加工技術、自動車・同部品、電子、ロボット、航空機・航空機メンテナンス関連、医療産業(メディカル・ハブ)などをEEC内で発展させる。

 ⑤都市開発・・・投資額は4,000億バーツ(約114億ドル)。チャチュンサオ、チョンブリーに国際教育機関などの集積を目指す。パタヤ、サタヒップは観光都市として開発する。

 <EEC地域への投資促進に向け恩典>
 投資委員会(BOI)は、EEC地域をさらに発展させることを目的に、次世代自動車、スマートエレクトロニクス、高所得層向け観光および健康観光、食品加工、自動機械およびロボット、航空、バイオ化学・環境配慮型石油化学、デジタル、医療の中核拠点、公共インフラ・物流システム開発、観光資源開発、技術面の研究開発・支援サービスへの投資を重点的に誘致する。対象企業に付与される4種類の恩典は以下の通りである。

 ①既に法人所得税を免除されたグループA(法人税を3~8年間免除)の企業に対する恩典として、EEC地区に立地している場合は、さらに5年間の法人税50%減税の権利が付与される。ただし、2017年中に投資申請書を提出する必要がある。

 ②EECの特別促進地区で実施する戦略的プロジェクトの場合、特定産業競争力強化法により、最長15年の法人税免除と、補助金を付与する。

 ③重要性の高い投資プロジェクト実現のため、各組織の支援を統合するとともに、障壁となる規制を緩和する。地域内の利便性向上のためのワンストップサービスも提供する。

 ④財務省の恩典として、EEC内に本社と施設を有する対象業種の企業の経営者、投資家、専門家に対して、個人所得税を17%に軽減する可能性がある。

 本シンポジウム当日の6月7日には、シンポジウムに先立って、世耕弘成経済産業大臣とウタマ・サバナヤナ工業相が、ソムキット副首相の立会いの下、「東部経済回廊および産業構造高度化に向けた協力に関する覚書」に署名した。覚書は、経済産業省とタイ工業省との間で、EECを中心としたタイ産業の高度化に向け、日本産業界の声を伝えるための日タイ対話の実施、インフラを含めたEECに係る情報共有等の協力を表明するものである。

 足下のタイ経済は決して好調とは言えない。GDP成長率は2014年に0.92%にまで落ち込み、その後2015年に2.94%、2016年に3.23%にまで回復した。一方、1人あたりGDPは、2012年の5,850.30ドルから2013年には6,157.36ドルへと増加したが、2014年には5,921.09ドル、2015年には5,799.39ドルと減少している。タイは典型的な「中所得国の罠」に陥っていると言えよう。

 そのため、今回のシンポジウムでも、タイがいかに価値ベースの経済に転換することができるかが焦点となった。ポイントは2つある。1つ目は、これまでは外資を呼び込むために投資額のみに着目していたが、今後は技術力や付加価値の向上、人材育成を重視するということである。もう1つは、タイ1国の経済を考えるのではなく、CLMVを含めた「CLMVT」全体の経済を成長させるというものである。CLMVTには20の大都市、70~80の小都市が存在する。これらの都市間の連結性を高めていくことがタイにとっての大きな課題となっている。そのための施策の1つとして、越境経済特区を10か所に設ける予定である。

 個人的には、タイに進出している日系企業のパネルディスカッションを楽しみにしていたのだが、タイ政府関係者のプレゼンテーションが思いの外熱を帯びてしまい、パネルディスカッションの時間が短縮されてしまった。最後に、パネルディスカッションの内容を記しておく。

 <日立>
 日立はIoT時代のイノベーションパートナーとなるべく、IoTのプラットフォームとして"Lumada(ルマーダ)"を開発した。イギリスでは2017年に高速鉄道が開通し、その車両を日立が提供しているが、そのメンテナンスなどはこのLumadaを活用して行われている。日立はタイをエレベーター/エスカレーター事業の拠点としており、製造からメンテナンス、トレーニングまでを行っている。現在、タイから周辺のASEAN諸国、中東への供給体制を整えている最中である。

 タイでも鉄道はPPP方式が採用される予定だが、ライダーシップリスク(どれだけ乗客が乗ってくれるのかについてのリスク)を誰が取るのかが大きな問題である。PPP方式で鉄道を導入したイギリスでは、イギリス政府がリスクを負ってくれた。タイにおいても、政府の強いコミットメントがないと、当社としても金融機関から資金を調達するのが難しくなると思われる。

 <ヤマトホールディングス>
 国際事業はBotBのフォワーディングから始まり、ロジスティクス、デリバリーへと展開してきた歴史がある。海外で宅急便を開始したのは2010年であり、タイでは2011年に開始した。シンガポール、マレーシアに進出した際には、ドライバーの訓練に苦労し、離職率の高さに悩まされたという経験があるため、タイではSCGと合弁会社を作って宅急便を展開することとした。2016年には南北経済回廊、南部経済回廊で存在感のあるOTLを買収し、宅急便とのシナジーを期待している。具体的には、タイの農作物をマレーシアの店舗や個人へ届ける、中国から越境ECの商品をタイの個人に届けるといったことが可能になる。当社はDHLやUPSに比べると後発であるため、「小口で多頻度」を差別化要因としていきたい。

 タイ政府に対しては、①物流業で外資がマジョリティを取ることができない現在の外資規制の緩和、②輸入通関の透明化・迅速化、③食品輸送の規制緩和(特に食肉)を希望している。

 <トヨタ>
 トヨタがタイに進出した歴史は古く、1962年にまでさかのぼる。現在では年間55万台を生産し、31万台を輸出できる体制になった。当社では「環境チャレンジ2050年」として「二酸化炭素排出量90%減」という目標を掲げている。しかし、当面は内燃機関に頼らざるを得ず、HV、PHVが必要となるため、引き続きタイはアジアにおける重要な生産・輸出拠点となる。

 当社は、バンコクの渋滞解決プロジェクトでリーダーを務めている。大がかりな社会実験のように思われるが、やっていることは小さなことの積み重ねである。例えば、バンコクの信号機は警察官が手動でコントロールしている。そこで、当社が交通量のデータを活用して信号の切り替えのタイミングを最適化するシステムを導入した。また、ビルから出てくる車の交通整理をしたり、学校の送り迎えのためのピックアップを信号付近で行うことを禁止したり、車が混雑しやすい場所にあるバス停を移動させたりなどした。このプロジェクトには多くの省庁が関与している。省庁単独で見ると投資とメリットが見合わない案件でも、省庁横断的に見ると大きな効果が期待できるプロジェクトは多い。今後は官官の連携がもっと進むことを期待している。


2017年07月26日

【感想】Mr.Children新曲「himawari」(映画『君の膵臓をたべたい』主題歌)の歌詞を解剖する


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 映画「君の膵臓をたべたい」の主題歌で、Mr.Childrenの今年2枚目のシングルとなる「himawari」の歌詞を私なりに解剖してみた。以下、「キミスイ」のネタバレを一部含んでいるので注意してください。また、私は普段は小説を滅多に読まない人間であり、まして小説のレビューなど書いたことがないから、ぎこちない文章になっている点はご容赦いただきたい。
 優しさの死に化粧で
 笑ってるように見せてる
 君の覚悟が分かりすぎるから
 僕はそっと手を振るだけ
 いきなり「死に化粧」という言葉が登場する衝撃的な始まりである。【秘密を知っているクラスメイト】くんこと志賀春樹は、クラスメイトの山内桜良が膵臓の病気であり、あと数年の命であることを偶然知ってしまった、桜良の家族以外の唯一の人間である。実は、桜良の葬儀には、春樹は出席していない。だから、桜良の死に化粧も、春樹は直接見ていない。いつもケラケラと声を立てる闊達な桜良は、死に化粧をしても笑っているように見えるというのは、春樹の想像であろう。

 桜良の覚悟とは何だろうか?残り少ない余命を悔いのないように生きるという覚悟ではない。確かに、桜良に残された時間は少ない。しかし、桜良よりも春樹の方が、不慮の事故などで先に命を落とす可能性もある。よって、死が予定されているからと言って1日の価値が上がるわけではなく、どんな人にとっても1日は等価である。そのことを覚悟しているという意味である。
 「ありがとう」も「さよなら」も僕らにはもういらない
 「全部嘘だよ」そう言って笑う君を
 まだ期待してるから
 実は、桜良が病気とは別の理由で突然命を落とす結果となったため、春樹も桜良も、桜良が生きている間にはお互いに「ありがとう」と素直に言う機会がなかった。そして、桜良が死ぬ時も、お互いに「さよなら」を言えなかった。ところが、桜良が膵臓の病気を知ってからつけ始めた『共病文庫』という日記の最後に、桜良があらかじめ用意しておいた春樹向けの遺書で、春樹が桜良の本当の想いを知った時、2人は完全に心を通わせることができた。桜良はもうこの世にいないけれども、桜良は春樹の心の中でこれからも生き続ける。だから、敢えて「ありがとう」と言う機会を探る必要はないし、まして「さよなら」と言う必要もない。

 ただ1つだけ、桜良には「全部嘘だよ」と言ってほしかった。無論、実は病気ではありませんでしたなどという安物の嘘ではない。いつも明るく周りにはたくさんの友人が集まってくる桜良は、病気が判明してからも変わらない様子で振る舞っており、春樹はそれが桜良の天性によるものだと思っていたが、本当は桜良も死が怖かったのではないかということ。1日の価値は等価だと覚悟を決めていたが、本当は寿命が1日、また1日と削られていくことに深い悲しみを抱いていたこと。そうでなければ、桜良は『共病文庫』を作ったり、「死ぬまでにしたいこと」を書き出してそれを実行したりしなかったはずだ。春樹は桜良の矛盾を見抜いていた。
 いつも
 透き通るほど真っ直ぐに
 明日へ漕ぎだす君がいる
 眩しくて 綺麗で 苦しくなる
 桜良は、傍目にはもうすぐ死ぬ人間にはとても見えない。いつも通り学校に来て、いつも通り友人と騒いで、いつも通り試験を受けて、いつも通り透き通った笑い声をこの世に響かせている。桜良には明日がないかもしれないのに、明日もまた今日と同じように生きようとしている。それが春樹には「眩しくて綺麗」に見える。しかし、春樹は桜良が心の奥底から垣間見せていた闇を知っていたから、桜良が「眩しくて綺麗」であるほど、春樹の心は「苦しくなる」のである。
 暗がりで咲いてるひまわり
 嵐が去ったあとの陽だまり
 そんな君に僕は恋してた
 「キミスイ」の作者である住野よる氏は、Mr.Childrenの「himawari」を聞いて、「楽曲のタイトルが『himawari』、桜良をヒロインとしたこのお話の主題歌に夏の花のタイトルがついていたことに想像を悠々と超えられた感覚があった」とコメントしている。

 おそらく、桜良の寿命は(普通に生きていれば)高校3年の春頃までだったと思われる。他の高校生とは違い、春に大学入試の合格発表を見ることができない。いや、たとえ合格発表を見て吉報を得たとしても、桜が散る4月上旬には寿命が尽きて、大学の入学式に出席できなかったに違いない。そういう切なさを込めて、主人公の名前を桜良にしたのだと思う。しかし、桜良は春樹の心の中に存在し続ける。春を終え、夏を迎える。そこには大きな、とても大きな一歩がある。だから桜井和寿さんは、主題歌のタイトルとして、敢えて夏の花であるひまわりを選択したのだと思う。さらに言えば、「嵐が去ったあとの陽だまり」とは、台風の後の太陽が水たまりを照らす様子を指している。つまり、春から夏へとだけでははなく、夏から秋へとも時間は進んでいく。

 「そんな君に恋してた」とあるが、春樹と桜良は恋人関係にあったわけではない。このことは桜良が『共病文庫』の中で明確に否定している。2人は、友達とも恋人とも違う特異な関係にあった。桜良は、もし相手が親友や恋人であったら、病気のことを絶対に知られたくなかったと言う。病気を知ってしまった親友や恋人は、病気に過剰反応して、普段通りに桜良に接してくれなくなる。桜良の病気を知った家族が、高校生には似つかわしくない豪華なテレビやテーブルなどを自分の部屋に用意してくれるのを見て、桜良はおよそ自分の病気を知ってしまった人間というのは、そういう行動をとるものだと悟った。病気という真実を伝えると、日常が崩れてしまう。その点、春樹は人間関係というものに無関心であり、桜良の病気を知っても興味を持ちこそすれ、動揺はしなかった。春樹ならば、真実と日常を両立できると桜良は思ったわけだ。
 想い出の角砂糖を
 涙が溶かしちゃわぬように
 僕の命と共に尽きるように
 ちょっとずつ舐めて生きるから
 春樹と桜良が時間をともにしたのは、わずか4か月である。その4か月に濃密な思い出が凝縮されているのだが、所詮、高校生という未熟な時期の思い出である。だから、角砂糖のように小さくてもろい。今悲しみでたくさん泣いてしまえば、かえって心の重荷が吹き飛んで、思い出が消えてしまうかもしれない。春樹が桜良と心の中で少しでも長く一緒にいるために、悲しみを道連れにすることを覚悟の上で、思い出をかみしめていくことを春樹は選択した。
 だけど
 何故だろう 怖いもの見たさで
 愛に彷徨う僕もいる
 君のいない世界って
 どんな色してたろう?

 違う誰かの肌触り
 格好つけたり はにかんだり
 そんな僕が果たしているんだろうか?
 前述の通り、春樹と桜良は恋人だったわけではない。だから、春樹が今後、別の女性と恋に落ちることは十分あり得る。違う誰かの肌触りを感じ、桜良には見せなかったような恰好つけた態度やはにかんだ態度をとるかもしれない。だからと言って、それが直ちに桜良に対する春樹の不義理を意味するわけではないだろう。心の中に桜良という特別な存在を抱きながら、別の女性を愛するということが一体どういうことなのか、まだこの時の春樹には想像がついていない。そして、実際に春樹に愛する人ができた時にも、この葛藤に苦しむに違いない。桜良という人物を春樹の人生の中でどのように意味づけするのかは、春樹の人生に課された大きな宿題である。
 諦めること
 妥協すること
 誰かにあわせて生きること
 考えてる風でいて
 実はそんなに深く考えていやしないこと
 思いを飲み込む美学と
 自分を言いくるめて
 実際は面倒臭いことから逃げるようにして
 邪にただ生きてる
 これは春樹のことを指している。小学生の頃から友達というものを持ったことがない春樹。当然、恋人がいたこともない。春樹は人間関係を煩わしいものと考えていた。自分の世界に浸り、何事も自己完結させることを好んだ。他人には何も主張しない。友達がいないのだから、そもそも主張する相手がいない。とはいえ、ある時突然誰かが春樹の世界に侵入してきたら、その人の意見には従う。春樹はそんな生き方を「草船」的だと表現して自己正当化してきた。

 一方の桜良は、春樹とは全く正反対の性格である。友達にも恵まれ、これまでに3人の恋人がいたという。食事の好みも、趣味の方向性もまるで真逆だ。もし、桜良の性格を知りたければ、春樹を鏡に映せばいい。逆に、春樹の性格を知りたければ、桜良を鏡に映せばいい。そのぐらい2人の性格は違っていた。いや、あまりにも違っていたからこそ、ジグソーパズルのピースがかみ合うように、2人はお互いをすんなりと受け入れることができた。仮に友達や恋人の関係であったら、2人の間に共通点を見出そうとしただろう。そして、最初はその共通点を喜んでいたのに、次第に相違点に目が行くようになり、それがいざこざの原因となる。しかし、春樹と桜良は全く重なり合う部分がなかったので、友達や恋人とは違う特殊な関係を構築することができた。

 春樹は桜良からたくさんのことを学んだ。春樹は草船のように流されながら生きてきたと思ってきたが、実は人生とは主体的な選択の連続であること。桜良との出会いも、偶然ではなく、春樹が選んだことであること。そして、生きるとは、誰かを心を通わせることであること。誰かを認める、誰かを好きになる、誰かを嫌いになる、誰かと一緒にいて楽しい、誰かと一緒にいたら鬱陶しい、誰かと手をつなぐ、誰かとハグをする、誰かとすれ違う、それが生きるということである。

 逆に、桜良も春樹からたくさんのことを学んでいた。桜良の人生は、周りにいつも誰かがいることが前提だった。桜良の魅力は、桜良の周りに誰かがいないと成立しなかった。誰かと比べられて、自分を比べて、初めて自分を見つけられる。だが、春樹はいつも自分自身だった。春樹は自分のためだけに、自分だけの魅力を持って、自分の責任で生きていた。そんな春樹に桜良は憧れていた。2人の性格がまるっきり違うからこそ、お互いの違いを尊重することができた。そして、いつしか2人はお互いを心の底から必要とするようになった。

 だから、春樹は桜良が死ぬ直前に送ったメールで、そして、桜良は『共病文庫』で春樹に宛てた遺書の最後で、全く同じ言葉を書いたのである。「君の膵臓を食べたい」。春樹は「僕は君になりたかった」と言っている。おそらく、桜良も「私は君になりたい」と思っていたのだろう。ただ、相手のよさを自分に取り入れることで、別の言い方をすればお互いの膵臓を食べることで、本当に自分を変えようとしたわけではないように思う。人間はそれほど簡単には変われない。お互いに、自分には全くないものを持っている人をずっと身近に置いて手放したくなかった。それが「君の膵臓を食べたい」という言葉となって吐露されたと言える。春樹にとって、人生には今まで自分が考えていたものとは違う可能性があることを示してくれた桜良。「だから」、桜良が死んでもなお明日へと放つ眩しさに見とれ、同時に桜良の存在のあまりの大きさに胸が苦しくなる。
 だから
 透き通るほど真っ直ぐに
 明日へ漕ぎだす君をみて
 眩しくて 綺麗で 苦しくなる

 暗がりで咲いてるひまわり
 嵐が去ったあとの陽だまり
 そんな君に僕は恋してた
 そんな君を僕は ずっと
 高校時代のたった4か月間であったが、特別な関係をつむぎ、今まで経験したことのない思い出をくれ、人生の色々なことを教わった「そんな君を僕はずっと」心に留めてこれから生きていくのだろう。たとえ、春樹にいわゆる恋人という人ができたとしても。だが、1人苦悩する春樹を尻目に、桜良は生きていた時と同じようにぶはははと笑い飛ばすのかもしれない。



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