プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2012年12月18日

佐々木玲仁『結局、どうして面白いのか─「水曜どうでしょう」のしくみ』―「嬉野Dのカメラ=視聴者の目線」という構図


結局、どうして面白いのか ──「水曜どうでしょう」のしくみ結局、どうして面白いのか ──「水曜どうでしょう」のしくみ
佐々木玲仁

フィルムアート社 2012-09-13

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 昨日の記事「佐々木玲仁『結局、どうして面白いのか─「水曜どうでしょう」のしくみ』―物語の二重構造」の続き。昨日は、「メタ物語」として展開される水曜どうでしょう固有の「型」が、「人生は偶然に左右されやいものであり、偶然はしばしば計画よりも好ましい状態を生む」という人生の法則に合致しており、それゆえに視聴者が共感しやすいと書いた。だが、視聴者が”何度も見たくなるほど”強く共感してしまうのはなぜだろうか?

 それはひとえに嬉野Dのカメラワークにあると私は思う。本書でも嬉野Dのカメラワークが分析されているが、ここでは私論を述べてみたい。結論から言えば、嬉野Dのカメラワークには、あたかも視聴者がどうでしょう班と一緒に旅をしているかのような気持ちにさせる作用がある。

 水曜どうでしょうでは、移動する車中を撮影するシーンが非常に多い。この時、嬉野Dはどこに座っているかというと、たいては助手席である。藤村Dか大泉さんが運転する時には、嬉野Dは助手席に座る。カブの企画でも、嬉野Dは助手席に座っている。助手席は、車で言えば下座にあたる(稀に、藤村Dが複雑な道を運転し、ミスターが助手席に座って地図を見ながらナビをする場合には、大泉さんがミスター〔助手席〕の後ろ、嬉野Dが藤村D〔運転席〕の後ろに座るが、これは珍しく嬉野Dが優遇されている特殊形である)。

 ここで嬉野Dは、出演者の2人を撮ったり、外の景色を撮ったりと、かなり自由に撮影を行っている。藤村Dが嬉野Dのカメラワークに口出ししたことはないと本書にも書かれているから、嬉野Dが何を撮るかは完全に嬉野Dの裁量に委ねられている。そして、嬉野Dがあの座席で撮っているのは、「何となく旅について来てしまった人が見る風景」なのだ。

 「何となく旅について来てしまった人」だから、上座には座れない。下座にちょこんと座って、成り行きを見守る。3人の会話で大事なポイントが来ればそちらを見るものの、それ以外の時は外の車窓の外に目をやり耳だけを会話に傾けている。そして、時々退屈になって寝てしまう(実際、嬉野Dが撮影中に居眠りをして、道がガバッと横になった映像になってしまったり[ヨーロッパ・リベンジ]、重たいデジカムを大泉さんにぶつけたり[四国八十八か所Ⅱ]したことがある)。

 車以外のシーンでの撮影はどうかというと、やはり嬉野Dは遠慮がちな立ち位置でカメラを回している。マレーシアのジャングルや洞窟を探検する時も(「マレーシア ジャングル探検」、「ジャングル・リベンジ」)、東京で大泉さんが行きたいスポットを歩いて回る時も(「東京ウォーカー」)、嬉野Dはタレントの後ろについて行ってバックショットを撮っている。タレントを正面で受けることはほとんどない。せいぜい横に並んで大泉さんの横顔のアップを押さえるぐらいである。

 こうした嬉野Dの一連の行動は、仮にどうでしょう班の旅に視聴者が同伴していたら、視聴者が取るであろう行動そのものなのである。2011年の「原付日本列島制覇」では、大泉さんに「彼(嬉野D)はもはや作り手でも何でもない。どうでしょうの旅に選ばれて参加した素人みたいなもの」と揶揄されているけれども、この発言こそ嬉野Dの立ち位置を最もよく表現している。

 嬉野Dのカメラワークは、視聴者にどうでしょう班の旅を仮想体験させる効果がある。さらに、ほどよい”手振れ加減”が、旅の臨場感を増幅させる(2011年に放送された4年ぶりの最新作「原付日本列島制覇」では、嬉野Dがカメラを回さず、撮影がプロのスタッフに任せられた結果、嬉野D特有の手振れが減ってしまいちょっと残念だった)。よって、どうでしょうのメタ物語は、旅の記憶として視聴者の頭にインプットされる。そして、私たちが旅の思い出を写真で時々振り返りたくなるのと同じような感覚で、番組を何度も観てしまうのではないだろうか?

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