プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2012年12月22日

曾野綾子『二十一世紀への手紙 私の実感的教育論』―相手に期待しすぎなければ、裏切られることも少ない


二十一世紀への手紙 私の実感的教育論 (集英社文庫)二十一世紀への手紙 私の実感的教育論 (集英社文庫)
曾野 綾子

集英社 1995-05-19

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 個人の存在は、大きいようでいて小さい。一人一人の生を大切に取り出し、それに深い思いを馳せ、限りなくいとおしむということ以外、小説家の仕事の基本的な姿勢もないものである。しかしそれは、自分の体験が、絶対であり、正しく、人はすべて自分の存在を大切に考えてくれるのが当然だ、と要求する幼児的な精神構造を許容することとは違う。

 自分の子供がかわいくてたまらない話など投書するな。ゴルフの話なら誰でも興味を持つと思うな。下手な歌をカラオケで聞かせることは罪悪に等しいと思え。自分史をやたら人に配るな。自分が閑だからと言って気楽に他人に手紙を書くな。アンケートには必ず返事が来るものと思うな。信仰の話など気楽に人にするな。自分のかわいがっている犬や猫なら客もかわいいと思ってくれるだろうと思うな。自分の苦労話を他人が感動すると思うな。
 引用文には厳しい例が並んでいるが、要するに「自分の中で勝手に相手に対する期待値を上げてはならない」ということだと解釈している。これは私が今年学んだ大きな教訓の1つである。私は仕事であれプライベートであれ、いろんなシチュエーションで、相手にこうしてほしい、あるいはこのレベルまではやってくれて当然だ、という絶対的な基準を設定することが多かった。しかし、相手が私の期待値を超えず怒りを感じる。だが、その発散方法が解らずに怒りを溜め込んでしまう。その繰り返しで随分と心身を痛めつけていたのだろう。

 だから、最近は些細なことは受け流すように努めている。マンションの住民から挨拶が返ってこなくても、近所で新築マンションの工事をしているために自宅が揺れても、勉強や仕事目的で入ったカフェに大声で話す先客がいても、バカみたいにでかいエンジン音で突っ走るバイクとすれ違っても、スーパーで商品を選ぶのに夢中なあまり狭い通路をふさいでいることに気づいていない人がいても、3,700円の買い物をしてこちらが4,200円を出したところ500円のおつりが100円玉5枚で返ってきたとしても、まぁいいかと思うようにしている。まだまだ不完全だが、怒りを受け流す技術が少しずつ身についてきている。

 怒りを受け流す技術に長けている人物の1人として、私は落合博満前中日監督を挙げたい。落合氏は3冠王を3度獲得した稀代の大打者であるから、普通であれば選手に教えたいことは山ほどあるだろうし、「何でこんなこともできないんだ」と怒りたくなるケースも多々あるに違いない。しかし、試合前の練習にはほとんど姿を見せず、試合になれば、選手交代でベンチを出る時以外は石のように動かない。参謀の森繁和前ヘッドコーチをして、あそこまで動じない人は見たことがないと言わしめたほど、感情を表に出さない不動の人である。

 落合氏はハナから選手にあまり期待していなかったのだと思う。監督退任後にテレビのインタビューをたくさん見たが、「オレの思い通りに選手が動いてくれれば8回とも優勝していた」とか、「8年間で成長した選手なんて1人もいない」などと柔和な笑顔で放言(?)してしまうあたりに、選手への期待値の低さが表れている。8年という長期にわたって、常に優勝争いの強いプレッシャーにさらされながら、それでも結果を出すことができた(リーグ優勝4回、日本一1回)秘訣の1つが、このどっしりとした心構えにあるような気がする。落合氏が選手に過剰な期待をかけて、思い通りにいかないたびに怒りをあらわにしていたら、チームは早い段階で崩壊していただろう。

 それでも、落合氏も人間であるから、自軍の攻撃が終わって監督室に戻ると、「バカヤロー、あいつあんな球振りやがって」と怒ることもあったというし、「選手はオレが相当怒っているのを感じていたと思う」とも述べている。長嶋一茂氏は落合氏とのインタビューを通じて、「おそらくサンドバック的な存在の人が誰かいたのではないか?」と推測している。それぐらい、怒りを完全にコントロールすることは難しい。最近になって落合氏が顔面麻痺に見舞われたのは、監督時代のストレスが少なからず影響していると思われる。

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