プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2013年01月17日

竹田恒泰『日本人はなぜ日本のことを知らないのか』―よくも悪くも「何となく、何とかしてしまう」のが日本人


日本人はなぜ日本のことを知らないのか (PHP新書)日本人はなぜ日本のことを知らないのか (PHP新書)
竹田 恒泰

PHP研究所 2011-09-16

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 グローバル化が進むにつれて、日本企業と海外企業の経営スタイルの違いが明らかになることが多くなった。その1つに、社員のキャリア開発が挙げられる。日本企業は中長期雇用を前提に、OJTを中心に長い時間をかけて社員を育てる。しかし、雇用契約が短期でなされ、その中でパフォーマンスを上げることを求める海外企業では、まず事業の方針や戦略を見える化し、3年、5年というスパンで社員それぞれの目標、やるべきことを決定する。その上で、Off-JTやマニュアルに重きを置いた育成を行うケースが多い。こうしたトレーニングに慣れている外国人からしてみれば、日本的人材育成は「3年後、自分がどのように成長して、何を任されているのかがわからない」ということになり、日本人管理職に対する不信感につながりやすい(※1)。

 ただ私はここで、敢えて前向きな見方をしてみたい。つまり、外国人は不確実性が高い環境に置かれると、自分がどこに向かうのかを明確に教えてもらわなければ不安で動けないのに対し、日本人は同じような環境でも、「何となく、何とかしてしまう」ような気がする。

 「何となく、何とかしてしまう」国民性によって行われる経営は、自ずと暗黙知に頼った経営になる。事態が上手くいっているとしても、どういう方法が功を奏しているのか、なぜその方法が有効なのかをはっきりと説明することが難しい。例えば、日本が世界に誇る経営手法の1つに「トヨタ経営方式」があるが、トヨタ経営方式は様々な経営手法とトヨタという企業の文化の複合体であり、トヨタ経営方式を的確に表現できる人は、トヨタの中にもいないと言われる。それでも何となく、何とかなってしまうのが日本企業なのである。

 だから、アメリカから最新の経営手法が入ってくると、実は日本企業で既に行われていたことにヒントを得たもの、あるいは日本企業の実践の焼き直しであることも少なくない。品質管理の分野ではこういう現象がよく見られる。例えば、「ベンチマーキング」という、業界内外のベスト・プラクティスを調査し、自社との違いを分析・学習する経営改善手法は、GEの元CEOであるジャック・ウェルチが採用したことで日本でも有名になった。GEの社員が他の企業を訪れると、「あのGEの社員が我が社に頭を下げてやってきた」と話題になったという。しかし、このベンチマーキングは、本来は日本で開発された品質改善ツールがアメリカに紹介されたものにすぎない。

 また、マイケル・ハマーが1993年に提唱した「リエンジニアリング」も、元をたどれば日本企業の業務・管理プロセスや製品開発システムの特質を手法化したという側面が強い。そのため、「リエンジニアリング」というタイトルがついた本を何冊も買い込んで勉強した複数のメーカーの企業人は、皆一様に「過いてあることは当たり前のことで、うちの会社でいつもやっているようなことが書いてある」という感想を持ったという(※2)。

 こうした、「何となく、何とかしてしまう」国民性の起源は一体どこにあるのだろうか?竹田恒泰『日本人はなぜ日本のことを知らないのか』を読むと、それは日本という国家の形成過程そのものに見出すことができるように思える。日本では紀元後3世紀に入ると、前方後円墳が急激に全国の広範囲にわたって作られるようになった。前方後円墳を作れるのは、一部の権力者に限られる。この事実をもって、大和朝廷による日本国家の統一とみなすことができるという。ただ、ユニークなのはその統一プロセスである。
 その時代(筆者注:大和朝廷が成立したと見られる3世紀後期から4世紀初頭)は古墳時代前期に該当し、考古学の成果によると、大規模な戦争の形跡は観察されないことから、日本列島は平和で安定した時代だったことが分かっている。また、日本列島は古墳時代を通じて、一定の方向性をもって文化的な発展を続けていて、文化的な断裂も観察されないため、王朝交代などを想定することもできない。ということは、日本では戦争のほとんどない平和で安定した時代に、統一王権が成立したことを意味する。

 ところが、世界史の常識によれば、統一国家が成立するためには、それなりの戦争を経るものである。たとえば秦の始皇帝、英国のウィリアム征服王、中国の毛沢東などの建国の英雄たちは、いずれも大規模な戦争に勝利を収めて統一国家を樹立した。アメリカも然りである。では、我が国はなぜ戦争のない時代に統一王権が成立したのか、これは日本史上の大きな謎の1つではなかろうか。

 それが可能だったのは、武力で一方的に併合するのではなく、あくまでも話し合いで、すなわち「ことむけ」により国々をまとめようとしたからだろう。天皇の下に各地の豪族が束ねられた連合政権として勢力を拡大させたことが窺える。そして、見事に大きな戦争を経ずに統一を果たしたのである。
 乱暴な表現だが、何と曖昧な国づくりだろうか!?大和朝廷は、諸外国のように血みどろの戦闘を一切行わず、「話し合い」という何とも柔らかい手段で諸国を抱きかかえていったのである。そして、その話し合いの内容は、わずかに『古事記』や『日本書紀』で知ることができるにすぎない(詳細に記されているのは、有名な「出雲の国譲り」ぐらいである)。

 では、この「何となく、何とかしてしまう」国民性のメリットとデメリットは何だろうか?メリットは、複雑な環境に置かれても、自分が当事者であれば知恵を振り絞ってその場を乗り切る強い底力を持っているということだろう。それが如実に表れたのが、東日本大震災の時に、途中のコンビニなどで略奪行為をせず、秩序正しく帰宅する人々の姿である。

 逆にデメリットは、当事者から外れてしまうと、権威主義にもたれかかって簡単に思考を放棄しやすいということだ。同じく東日本大震災の際には、原発の安全性の神話を国民がいかに安易に信じ込んでいたかを教えられることとなった。政治家や専門家に任せておけば、何となく大丈夫だと思い込んでしまう。これを機に国民は反省するのかと思いきや、昨年末の衆院総選挙では原発政策を進めてきた自民党にNoを突きつけるどころか、原発がある小選挙区では自民党の圧勝という結果になっているのである(※3)。

 日本は今後、成長社会から成熟社会へと移行し、先進国が経験したことのない少子高齢社会へと突入する。日本が解決しなければならない課題は山積みである。しかし、個人的には今回も、情勢が逼迫すれば、日本人は「何となく、何とかしてしまう」のではないかと淡い期待を抱いている。ただ、その淡い期待をもっと確信に近づけるために、またもっと前もって課題に備えるためには、私たち1人1人が成熟社会、少子高齢社会の当事者であることを認識する何か強いきっかけが必要だろう。そして、解決策を暗黙知にとどめるのではなく、形式知にまとめ上げなければならない。その上で、日本と同じく少子高齢社会へと突入する中国や韓国に対して、日本の形式知を提供できるようにすること、それが「課題先進国」としての日本の使命になると思う。


 (※1)リクルートワークス研究所『Works No.111 201X年、隣の席は外国人』(2012年4月~5月号)
 (※2)高橋伸夫『虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ』(日経BP社、2004年)

虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ
高橋 伸夫

日経BP社 2004-01

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 (※3)原発がある小選挙区の当選者は以下の通り。自民党の14勝2敗である。

 北海道泊(4区):中村裕之(自民)
 青森県東通(2区):江渡聡徳(自民)
 青森県大間(2区):  〃
 宮城県女川(5区)安住淳(民主)
 福島県浪江・小高(1区、5区):亀岡偉民(自民)、坂本剛二(自民)
 福島県第一(5区):坂本剛二(自民)
 福島県第二(5区):  〃
 茨城県東海(4区):梶山弘志(自民)
 茨城県東海第二(4区):  〃
 新潟県柏崎刈羽(2区):細田健一(自民)
 静岡県浜岡(3区):宮沢博行(自民)
 石川県志賀(3区):北村茂男(自民)
 福井県敦賀(3区):高木毅(自民)
 福井県美浜(3区):  〃
 福井県大飯(3区):  〃
 福井県もんじゅ(3区):  〃
 福井県ふげん(3区):  〃
 島根県島根(1区):細田博之(自民)
 山口県上関(2区):岸信夫(自民)
 愛媛県伊方(4区):山本公一(自民)
 佐賀県玄海(3区):保利耕輔(自民)
 鹿児島県川内(3区):野間健(国民)

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