プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2013年02月03日

【ベンチャー失敗の教訓(第3回)】製品開発・生産をしない社長


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 前回の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第2回)】営業活動をしない社長」では、中小企業やベンチャー企業の社長は、営業または製品開発・生産のいずれかを主導しなければならないと書いた。その上で、X社のA社長とZ社のC社長は、営業と製品開発・生産のどちらに軸足を置こうとしているのかが不明確であったことを指摘した。営業活動が中途半端なのであるから、当然のことながら製品開発・生産も中途半端なものになる。

 X社・Z社ともに製造業ではないから、ここで言う製品開発・生産とは、一般的な意味での製品開発・生産とはやや異なる点をお断りしておきたい。ここでの製品開発・生産とは、X社の研修サービスの場合、研修コンテンツ(テキストや演習題材)を作り込むことや、集合研修の講師を務めることを指す。また、X社やZ社のコンサルティングサービスの場合、プロジェクトメンバーの1人としてクライアントとのコミュニケーションや成果物(レポート)作成に関与することを意味する。

 A社長は、研修テキストを開発する時、必ずと言っていいほど研修の導入部分しか作成しなかった。やや業界固有の話になって恐縮だが、研修の導入部分はたいていは一般的な知識であり、その辺で売られている書籍の内容とほとんど差がない。研修が書籍とは異なる価値を持つのは演習の部分であり、ここでいかに受講者に有益な気づきを与えられるかが、研修の成否を握る。そして、この演習の構成の巧拙は、そのままサービスの競争力に直結する。

 ところが、サービスの核となる演習部分については、A社長はほとんどタッチしなかった。書籍の情報をかき集めれば作れるような導入部分だけを作って、競合との差別化要因となるはずの演習は部下に丸投げ状態であった。本来であれば、導入部分こそ部下、しかも若手の部下に任せるべき領域であり、社長がコアとなる演習の開発を主導すべきであろう。そうでなければ、社長が製品づくりをしているとは到底言えない。

 A社長は、会社のHP上では研修講師として名を連ねているものの、実際に講師を務めることも少なかった。私はX社の各講師の稼働日数を把握していたが、A社長が講師として稼働した日数は、私の5年半の在籍期間で10数日に満たなかったと記憶している。ひどい時は、A社長がたった1日(!)しか講師をしていない年もあった。ある時、X社と同規模で同じような研修サービスを提供している競合他社の社長の話を伺える機会があったのだが、その社長は年間100日、講師として受講者の前に立っているとのことだった。A社長との差は歴然であった。

 コンサルティングプロジェクトでのA社長はどうだったかと言うと、前職のコンサルティングファームで出世できたことを疑いたくなるようなことが多々あった。ある下請案件で、A社長が元請会社のプロジェクトチームの一員としてアサインされた時、A社長はクライアントとのディスカッションに何度出席しても全く発言せず、元請会社から「高いフィーを払っているんだから、もっと仕事をしてくれないと困る」と怒られたことがあった。

 また、A社長、私、シニアマネジャーの3人で別のコンサルティングプロジェクトを受注した時は、契約書に3人の名前を記載して3人分のフィーをいただいていたにもかかわらず、クライアントの定例会議に数回出席すると、「この程度の会議なら、私は参加しなくてもいいよね?」と言って、それ以降会議に参加しなくなった。もっとも、A社長をクライアント先に連れて行くと、私とシニアマネジャーの日々の苦労をよそに、「あー、眠い」とあくびをしながら会議の始まりを待っているようなありさまだったので、私もA社長を積極的に引っ張り出そうという気が失せてしまった。

20130125_MICGパワーポイントテンプレート Z社のC社長も、自分では成果物が全く作れない人だった。いくつか書きたいことはあるが、C社長が本当にコンサルタントとしてキャリアを踏んできたのか疑いたくなったエピソードを1つだけ紹介したい。ある時、C社長はX社、Y社、Z社のコーポレートイメージを統一するために、外部のデザイン会社に会社のロゴやパワーポイントのテンプレートのデザインを独断で依頼したことがあった。その時にでき上がったテンプレートが、このように左端に赤いリボンが配置されたものであった。

 このテンプレートは、コンサルティングの現場では全く使い物にならない。左端のリボンが邪魔で、左端まで広くスライドを使うことができないのだ。私はマッキンゼーやボストンコンサルティンググループ、アクセンチュア、アビームコンサルティングのパワーポイント資料を見たことがあるが、こんな風にデッドスペースがあるテンプレートを使っている企業など1社もなかった。

 当然、X社やZ社の現場でも非難轟々であり、このテンプレートは一度もクライアントに提出されることなくお蔵入りとなった。外部のデザイン会社に支払った数百万円は、丸々ムダになってしまった。この一件は、C社長がいかにコンサルティングの現場に関して無知であるかが露呈した出来事であった。百歩譲ってC社長が現場のことを知らなかったとしても、C社長が現場の人間に「このテンプレート案でどうか?」と一言聞いてくれれば防げるボーンヘッドであった。

 A社長、C社長ともに、営業もしなければ製品開発・生産もしないとなれば、果たして普段どんな仕事をしていたのか?これは5年半在籍しても結局最後までよく解らなかった。私が知る限り、C社長は個人的に顧問を務める大学の仕事を手伝ったり、特定の政治家を支援する活動をしたりしているようだった(その政治家を囲む勉強会が、Z社のオフィスで開催されたこともあった)。もちろん、Z社のコンサルティングは、産学連携を必要とするものでもなく、何かしらロビー活動をしなければならないものでもなかった。A社長に至っては、ある時経理担当者が資金繰りのことでA社長に相談に行ったところ、A社長が前職のコンサルティングファームで儲けたお金を使ってデイトレードをし、X社の資金を捻出しようとしていたというのだから、笑うに笑えない。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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