プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2013年01月29日

【ドラッカー書評(再)】『現代の経営(上)』―戦略立案の客観的アプローチと主観的アプローチ(1)


ドラッカー名著集2 現代の経営[上]ドラッカー名著集2 現代の経営[上]
P.F.ドラッカー

ダイヤモンド社 2006-11-10

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 昨年5月以来の【ドラッカー書評(再)】シリーズ。決して忘れてしまっていたわけではない。今月からまた再開します!今月は、ドラッカーの3大古典の1つにして最大の傑作である『現代の経営』の上巻。目標管理制度(MBO:Management by Objects)の原典とも言われ、「事業は目標によってマネジメントしなければならない」というのが上巻の主たる内容である。マネジメントのための目標は、(1)マーケティング、(2)イノベーション、(3)生産性と、(4)資源と資金、(5)利益、(6)経営管理者の仕事ぶりと育成、(7)働く人たちの仕事ぶりと活動、(8)社会的責任と全部で8つあり、それぞれ具体的にどのような目標を設定すればよいかが例示されている。

 ただし、目標管理の前提として、そもそも目標管理によってマネジメントされる「事業」とは何か?を明らかにしなければならない。この点は前著『創造する経営者』で提唱された戦略立案と共通の部分であり、本書でも事業の定義に3分の1ほどのページが費やされている。今回は、その事業の定義の仕方について、私なりの見解を述べてみたいと思う。

 ドラッカーは事業の定義にあたっていくつかの問いを用意しているが、未来の視点から事業を定義するための問いとして、「われわれの事業は将来何になるか?」、「われわれの事業は何でなければならないか?」という2つの問いを投げかけている。ここで問題になるのは、この2つの問いの違いである。

 ドラッカーは、「われわれの事業は将来何になるか?」という問いに答えるためには、次のことを明らかにするべきだと述べている。
 第一に、市場の潜在的な可能性と趨勢である。市場や技術に大きな変化がない場合、5年後、10年後には、われわれの事業はどこまで大きくなることを期待できるか。そして、それを決定する要因は何か。

 第二に、経済の発展、流通や好みの変化、競争の変動による市場の変化である。ここにいう競争とは、製品やサービスについての顧客の定義に基づく競争であって、直接的な競争だけでなく、間接的な競争を含む。

 第三に、顧客の欲求を変化させ、新しい欲求を創造し、古い欲求を消滅させる技術的イノベーションの可能性である。さらには、顧客の欲求を満足させる新しい方法を生み出し、価値の概念を変え、より大きな満足を可能とする技術的イノベーションの可能性である。(中略)

 そして第四に、今日のサービスや製品によって満足させられていない顧客の欲求である。
 一方、「われわれの事業は何でなければならないか?」という問いに関しては、次のような事例を挙げている。
 アメリカ中西部のある保険会社は、顧客のニーズを分析した結果、それまでの生命保険は、受取保険金の購買力維持という顧客のニーズを満足させていないという結論を得た。換言すれば、株式投資によってそれまでの標準的な保険や年金を補完する必要があった。

 そこで、この保険会社は、そのような顧客のニーズを満足させるために、中小ではあるが堅実経営で知られた投資信託会社を買収し、新規契約者だけでなく、既契約者に対しても投資信託の購入を可能にした。
 ある雑誌社は、最近、雑誌販売から情報サービスへと事業の重点を変えた。(中略)(利益低下の原因の)分析の結果、原因は既存購読者の契約更新率の低さにあることがわかった。営業部門では、発行部数を維持するために新規購読者の獲得に力を入れていたが、経費がかかるため利益が伸びていなかった。

 必要とされていたことは、新規購読者の獲得から既存購読者の維持への戦略の移行であって、事業の概念そのものの転換だった。目標の変更が必要だった。そこで、新規購読者の獲得から既存購読者の契約更新に目標を変えた。活動の重点を新規購読者の獲得から、既存購読者へのサービスに移行した。
 両者を見比べると、「われわれの事業は将来何になるか?」と「われわれの事業は何でなければならないか?」という2つの問いは、市場の確実な変化をとらえてそれに対応するという点では同じであるように思える。私の理解不足なのか、この2つを区別する意味がいまいち解らない。

 ここでドラッカーの主張を離れて、敢えてこの2つに違いを設けるならば、前者は戦略立案の客観的アプローチであり、後者は主観的アプローチである、と言えるのではないだろうか?「われわれの事業は将来何に『なる』か?」の「なる」という部分に、客観的に予想される市場の変化に適応するという意味合いを込めている。また、「われわれの事業は何で『なければならない』か?」の「なければならない」の部分に、将来の事業に関する主観的な意図を込めている。

 客観的アプローチとは、とどのつまり伝統的な戦略立案アプローチである。マイケル・ポーターの競争戦略論に従って外部環境を重視する立場であれ、J・B・バーニーの資源ベース理論に従って内部環境を重視する立場であれ、データを用いて事業環境を分析し、そこから戦略を導くアプローチである。これに対して主観的アプローチとは、「環境は人間が主体的に創造できる」という前提に立って、戦略立案者が「こういう世界を実現したい」、「こういう価値が人々に喜ばれるはずだ」という意思や願望を表明するものである。

 (続く)

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