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2013年02月24日
【ベンチャー失敗の教訓(第6回)】リスク管理が甘い経営者
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この連載で紹介しているエピソードはどれも笑うに笑えないものばかりだが、今回は本当に笑うに笑えない話を1つ紹介したい。組織のトップたる人物はパブリックな存在であるから、プライベートの失態で足を引っ張られないよう、細心の注意を払う必要がある。
昨年7月には、三重県伊賀市の内保(うちほ)博仁市長が、2009年9月に同市発注の工事を受注する土木工事会社社長ら取締役3人と石川県加賀市の温泉に1泊2日で私的に旅行し、女性コンパニオンらのもてなしを受けていたことがスクープされた。内保市長は「大変軽率な行為だった」と謝罪し、「業者の人が旅行に加わっているのを知った時点で引き返すべきだったと今思っている。もう少し真剣に考えるべきだった」と釈明した(※1)。しかし、地元の建設業界との癒着が疑われ、市民のイメージダウンは避けられないだろう。
また同じく7月には、日本維新の会の代表で大阪市長である橋下徹氏が、大阪府知事就任前の2006年、市内の高級クラブに勤務していた女性と知り合い、交際していたことが報じられた。記事では橋下氏が女性にスチュワーデス姿のコスプレをさせたことが暴露され、橋下氏は赤っ恥をかいた(※2)。橋下氏の件は、府知事時代より前の弁護士時代の話であるからまだ弁明の余地はあるものの、やはりプライベートでのつまらないミスによる失点は避けたいところだ。
Z社の取締役の1人は、リスク管理の甘さがたたってプライベートで大失態を犯した。ある飲み会で泥酔した取締役は、道路に落ちていたスケートボードにふざけて乗って転倒し、右腕を複雑骨折してしまった。結構な重傷だったようで、入院期間は1ヶ月にも及んだ。当時、Z社は「【ベンチャー失敗の教訓(第4回)】何にでも手を出して、結局何もモノにできない社長」で書いたように、C社長があれこれ新しいコンサルティングサービスを始めようとして迷走しており、業績が低迷していた。そんな中での取締役のぶざまな戦線離脱は、3社の社員の失笑を買った。
だが皮肉にも、取締役が1ヶ月間コンサルティングの現場を離れても、Z社の業務に大した支障は生じなかった。つまり、この取締役はZ社に対してさしたる貢献をしていなかったことが判明してしまったのである。以前から取締役の仕事ぶりに失望していたシニアマネジャーとコンサルタントは、1ヶ月の間に相次いで離職した。彼らの離脱の方がZ社にとって大きな痛手であった。
パナソニックの元社長である中村邦夫氏は、社長就任時に大好きなお酒を断ったそうだ。全世界に30万人、600社以上の子会社を抱えている大企業の社長は、大地震、自然災害や政変、テロなど、いつどこで何が起こるか解らないというリスクの中で、多大な責任を負いながら仕事をしている。酒など飲んでいられないということだろう(※3)。
経営者は酒を断つべきだとまでは言わないが、組織のトップに立つ人間として自覚ある行動を自らに課す必要がある。それができないのであれば、組織のトップを務めてはならない。
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X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
(※1)「伊賀市長:市の工事受注業者と温泉旅行 『軽率だった』」(毎日新聞、2012年7月22日)、「『軽率な行為だった』内保伊賀市長が謝罪会見 土木業者との旅行で」(伊賀タウン情報YOU、2012年7月22日)
(※2)『週刊文春』2012年7月26日号
(※3)青木仁志『戦略を超える理念経営』(アチーブメント出版、2008年)
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