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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2013年03月10日

【ベンチャー失敗の教訓(第8回)】常識知らずで社員を唖然とさせる社長


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 今回は、経営とは一見すると直接関係のない人間性に関わることだが、実は経営にとって大事だと思うことを書きたいと思う。X社のA社長とZ社のC社長は、時々非常識な行動を取ることがあり、社員を呆れさせた。その一部を紹介したい。

 まずA社長だが、クライアント先に向かう電車の中で堂々とネクタイを締めるクセがあった。電車の中で女性が化粧をするのはマナー違反だが、それと同じ理屈で言えば、男性が電車の中でネクタイを締めるのはマナー違反である。また、X社の社員は毎年仕事始めの日に、オフィスの近くにある神社に初詣に行くことになっていたのだが、A社長は神社での二礼二拍手一礼の作法を知らないのか、一礼してちょっと手を合わせるとすぐにお参りを終えてしまうのが常だった。

 C社長は、Z社の取締役が不注意によるケガで長期入院した際(以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第6回)】リスク管理が甘い経営者」)、「お見舞いに何を持っていきましょうか?」と尋ねた秘書に対して、「鉢植えの花でも持っていけばいいんじゃない?」と真顔で答えていた。これは決して、「リスク管理が甘いお前はずっと病床で寝ていろ!」というC社長の皮肉ではなく、お見舞いに鉢植えはNGであることをC社長が知らなかったのである。

 ちなみに、A社長は40代半ば、C社長は50代であり、2人とも十分に「いい大人」である。常識がないまま年を重ねると恐ろしいことになると教えてくれたよいサンプルであった。

 社長が常識知らずだと、経営に赤信号がともる。まず第一に、常識知らずを注意してくれる人が周りにいないということは、日常業務でも社長のミスや意思決定の誤りを指摘してくれる人がいないということであり、社長が裸の王様になっている可能性が高いからだ。社長の失策は、社長が知らないところで社員の失笑の対象となり、社長と社員の間に距離を作っていく。

 第二に、常識知らずは観察眼のなさの表れである。仮に常識知らずだとしても、常識は周囲の人を観察しながら学習することができる。A社長の神社での行動を取り上げると、A社長は自分よりも前に参拝する人たちを観察していれば、二礼二拍手一礼の手順が解るはずだ。また、最近ではたいていどの神社にも、二礼二拍手一礼の仕方を書いた紙が賽銭箱の近くに貼られているものであり、周囲をよく見ていればその紙に気づいてしかるべきである。

 観察眼のなさは様々な場面で障害となる。例えば、優れた営業担当者は、クライアントと話をしている時、その表情や仕草、語り口などを手掛かりに、その人が何を考えているのか?その人が本当にほしがっているものは何か?を探っていくものだ。しかし、観察眼のない人にはそれができない。また、優れたマネジャーは、部下たちの仕事のやり方を見ながらオペレーション上の問題を発見したり、部下たちの顔色や雰囲気を見てモチベーションの度合いを察したりすることができる。だが、観察眼のない人には、やはりそういうことができない。

 余談だが、昔「マネーの虎」というTV番組で、輸入車販売会社社長の南原竜樹氏と、ラーメンチェーン店「なんでんかんでん」社長の川原ひろし氏が、熊本県の位置を知っていることは常識かどうかで対立したことがあった。「知っている必要はない」と主張する南原氏に対し、「知っていて当然だ」と噛みつく川原氏。どちらも小売業を営んでおり、全国展開を視野に入れているならば、熊本県の位置はもちろんのこと、熊本県の主要都市やその人口も知っているべきだろう。

 何が常識なのかを明確にすることは難しい。一般的な常識もあれば、業界に固有の常識もある。ただ共通するのは、常識は誰かが体系的に教えてくれるわけではなく、自ら進んで学ぶしかない、ということだ。そのような主体的な学習能力は、人生をよりよく生きる上でも、企業を適切にマネジメントする上でも非常に重要だと思う。逆に、主体的な学習能力を欠く経営者は、知らないうちに赤っ恥をかきながら、事業を傾けてしまう。しかも困ったことに、学習能力のなさを自分で自覚していないため、失敗の原因が自分自身にあることを認識できないのである。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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