プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2013年03月21日

青木国夫他『思い違いの科学史』―「花粉はブラウン運動で動く」は誤り


思い違いの科学史 (朝日文庫)思い違いの科学史 (朝日文庫)
青木 国夫 市場 泰男 立川 昭二 板倉 聖宣 鈴木 善次 中山 茂

朝日新聞社 2002-02

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 暖かくなって花粉症が気になる季節だが、今日は花粉に関するトリビアをこの本から1つ。皆さんの中には、中学校の理科で習った「ブラウン運動」を覚えている方もいらっしゃるだろう。花粉を水の中に入れると不規則な運動をするというもので、発見者のロバート・ブラウンにちなんで「ブラウン運動」と呼ばれる。しかし、花粉が水の中で動くというのは、実は誤りである。本書では、花粉研究の第一人者である岩波洋造氏の『植物のSEX―知られざる性の世界』の冒頭部分が紹介されている(孫引きになる点はご容赦ください)。

植物のSEX―知られざる性の世界 (1973年) (ブルーバックス)植物のSEX―知られざる性の世界 (1973年) (ブルーバックス)
岩波 洋造

講談社 1973

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 花粉は水の中でほんとうにブラウン運動をするであろうか。本文中にくわしくのべられているように、花粉の大きさは、ふつう30μ(ミクロン)から50μぐらいで、大きなものは100μから200μもある。こんな大きな粒子が水の分子運動によって起こるブラウン運動をするはずがない。事実、著者は20年近くも毎日、花粉を顕微鏡で見ているが、花粉が水の中でびくびく動いているところなど見たこともない。

 ブラウン運動の発見者のブラウンも、”花粉が動く”と聞かされたなら、さぞびっくりすることであろう。なぜなら、当時ブラウンが見たものは花粉そのものではなく、花粉の中に含まれているデン粉粒などの細粒子の動きであったからである。今日、多くの人が”花粉を水に入れると動く”と思い込んでいるのは、おそらく最初にブラウンの仕事を紹介した日本の偉い物理学の先生が、花粉粒の粒と花粉の中の細粒子の粒とを混同して訳してしまったためであろう。
 では、「最初にブラウンの仕事を紹介した日本の偉い物理学の先生」とは一体誰なのか?その”犯人”の中には、何と昭和の物理学界を代表する学者あり、現在の原子モデルの基礎を作った長岡半太郎が含まれているというのだ。
 その2年後の(1910年)5月、やはり東京帝大の物理学教授長岡半太郎(1865~1950)が、東京物理学校同窓会学術講演会で行った「ブラウン運動に就て」という講演の筆記(『東京物理学校雑誌』1910年7月号)は、次のように花粉のことから話が始まっている。

 「その起源を申せば、英国の植物学者Brownが1827年に植物の花粉を研究して、それがあたかも生きているように運動するのを見てはなはだ不思議千万だと思ったのが始まりです。その後の学者も同様な観察で微細な物体が顕微鏡下に液体内において活動するのを認めました。その当時は花粉が生きているのであると考えた人もあったでしょう。しかし、後に必ずしも花粉に限らず小さいものならばみなこういう運動をして小さくなればなるほど活動が盛んになることが確かめられました。かくのごとく微細なものの運動をブラウン運動と名づくることになりました」

 というのである。ここでは明らかに、花粉そのものがブラウン運動するものとして話がすすめられている。長岡半太郎といえば、カミナリ親父としておそれられた日本の物理学界の最大の権威であった。その長岡先生自身が1910年にブラウン運動を初めて紹介したときから、花粉そのものがブラウン運動をすると誤解していたのである。
 ブラウン運動に関する誤解はついに正されることがなく、著者が調べた限りでは、この後に出版された物理学者の本(ノーベル賞を受賞した湯川秀樹の本も含まれる)も、百科事典も、一般人向けの科学書も、児童向けの科学書も、そして当時の学校教科書も、ほとんど全てにおいて「花粉がブラウン運動をする」とされており、壊滅状態だったという。さらに興味深いことに、この誤りは日本だけのものではなく、ブラウンの論文を翻訳した海外の論文にも見られるそうだ。ここまで世界中の人が勘違いした科学的事実もそうそうないだろう。

 本書では他にも科学史上の様々な”思い違い”が紹介されており、それが後の研究の中でどのように克服されていったかのが、科学の専門知識がなくても理解できる平易な文章で解説されている。例えば、昔は「血を抜けば病気が治る」と信じられており、血管を物理的に切り開いて血液を取り除くことを「瀉血(しゃけつ)」と呼んだ。日本でも、江戸時代までは瀉血療法が行われていたそうだ。現在、理髪店の店頭に置かれている赤・青・白のサインポールは、赤=動脈、青=静脈を表しており、外科医を兼ねていた床屋が瀉血療法を行っていたことの名残だという。

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