プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2013年04月09日

田口理穂他『「お手本の国」のウソ』―「フィンランド・メソッドは存在しない」など、各国在住者が語る実像


「お手本の国」のウソ (新潮新書)「お手本の国」のウソ (新潮新書)
田口 理穂ほか

新潮社 2011-12-15

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 日本がベンチマーキングしている海外諸国の実態を、それぞれの国の在住者が語るというもの。「『ドイツは戦争責任にカタをつけた』・・・日本人が理想視する「お手本の国」には、知られざる別の顔があった。もてはやされる制度や手法がその副作用ゆえに『嫌われモノ』というのは序の口、実は存在していないなんてことも!」という紹介文を読んで、ドイツは侵略の過去を全く清算していないなどといった、結構辛辣な内容を期待していたのだが、意外とやんわりした感じの本だった。各国の生活者の目線から、等身大の実像が見えてくる1冊である。今回の記事では、その一部をまとめてみたいと思う。

 「少子化対策」という蜃気楼―フランス
 ・少子高齢化が心配されなかったとは言わないが、日本のように「少子化」が大々的に心配されたという印象は、1987年からフランスにいる私は、少なくとも持っていない。第一、「少子化対策」という特別な言葉がない。上に挙げたような(出産・育児を支援する国の)施策はみな、「家族政策」という、第二次世界大戦以前からある古い言葉でまとめられている。

 ・「子ども手当」のモデルとなったと思われる「児童手当」が導入されたのは、第二次大戦以前の1936年のことだ。フランス独自の政策と云われる「家族指数」(経費その他を差し引いた課税対象額を家族指数で割った数値によって税額が決まるという仕組み)を導入したのは終戦の年、1945年。家族指数は現在でも、税金のみならず、保育園の保育料や学校の給食費などの算出に必ず使われて、子どもの多い家庭を優遇している。フランスで出産費用が全額保険還付になったのも第二次世界大戦直後のことだったし、子どもを育てる住環境の改善を謳って、経済力の弱い家庭を対象に住宅取得援助、住宅賃貸援助が設けられたのも1948年である。

 ”世界の教育大国”に「フィンランド・メソッド」はありません
 ・フィンランド・メソッドという概念には、実は大きな矛盾がある。フィンランドでは統一指導要綱を捨て、教え方は現場の先生の裁量に任せている。したがって、”国を挙げて”全国レベルで普及させる「メソッド」などあり得ないのだ。

 ・フィンランド・メソッドの1つとしてしばしば紹介されるマインドマップについても、話を聞いた8人の先生全員がマインドマップをとてもよいメソッドだと述べたものの、そのうち3人が「授業ではほとんど使わない」あるいは「全然使わない」と回答した。マインドマップは国語、自然環境、宗教、地理、地域研究に歴史と多くの授業で使われているが、万能ではないという指摘もある。

 ・フィンランドの保健センターの順番待ちは有名だ。歯の治療でも4ヶ月、風邪を引いて診てもらいに行けば半日は待たされる。保健センターのみならず、老人ホームも空きがない。私立のサービスを探しても金額が法外であったり、なかなか見つからなかったりする。

 ・フィンランドの自殺率は1965年から1990年の間に3倍にも膨れ上がり、1990年には世界第3位の「自殺大国」であった。2011年現在では世界で14位(日本は8位)と随分下がったものの、20歳から34歳の男性における死亡原因の最上位だ。自殺は最後の最後の手段であるというのに、これだけの人数が死ぬのは何故なのか。それは、高緯度に位置する国ならではの、季節の移り変わりの激しさ、冬の暗さ、寒さと、50%と高い離婚率や老齢化による孤独感からくるアルコール依存症が大きな原因と言われている。

 ・自殺に次いで、精神病の発症率も高い。どちらかというと真面目で、己に厳しい国民性もあり、人口のおよそ1割に何らかの治療薬が処方されている。この国は一生暮らしていきたいほど、暮らしやすい国なのか―と聞かれればNOと言うフィンランド人も実はたくさんいる。

 私なら絶対に選ばない陪審裁判―アメリカ
 ・カリフォルニアでは、人口が増えたのになんで毎年陪審員に呼ばれるのか、と苦々しく文句をいう人が後を絶たないが、「市民の義務」であるから仕方がない、としか答えようがない。人口が増えたといっても違法移民や永住権(グリーンカード)や就労ビザはあるけれど非市民、という人口が増えただけである。彼らも陪審裁判を受けられるので、市民の義務が相対的に増していくのは間違いない。ただ、これは憲法が定めた矛盾である。

 ・陪審員の日当はたったの15ドル。交通費としてガソリン代も出るが、1マイルにつき数セントしか出ないため、ほとんど足しにならない。ちなみに日本の裁判員は日当8000円から1万円だそうだ。法廷内で陪審員に用意されている椅子は、座り心地が最低というしかない古い椅子というのがお決まりだ。1970年代から交換されておらず、シートが潰れて下のコイルが浮き出てしまっているようなものか、木の椅子の場合さえある。これに8時間座って、「自分にとっては関係のない他人の争いごと」について、双方の弁護士が口から泡を飛ばしながら主張し合うのを聞く。いくら義務でも、「責め苦」としか表現のしようがない。

 ・これは著者の夫が陪審員に選ばれたときの表現だが、陪審室で中年の白人女性が「メキシコ人の言うことなんてあてにならない。あの証言は信じない」と言い切ったという。本当にこれがアメリカの憲法が定めた裁判と言えるのだろうか(※日本の裁判員制度では、裁判員に守秘義務があり、裁判の内容などを国民が知ることはできないため、アメリカでのこうした生のやり取りは読み手の私にとって新鮮だった)。

 「ヒトラー展」に27万人、ドイツと戦争責任―ドイツ
 ・全国にアウトバーンを作り、庶民にも手の届くフォルクスワーゲン(大衆車)を開発したのはヒトラー政権である(フォルクスワーゲン社は党の組織が会社を設立したもので、国営企業のようなものだった)。手ごろな値段のラジオを普及させ、失業対策を実施したのもそうだ。

 ・ユダヤ人差別という大きな罪を悔いているにもかかわらず、現在のドイツでは、イスラム教徒を槍玉に上げて攻撃しているように見える。「ドイツになじもうとしない」、「人権を無視している」、「ドイツ社会に寄生して、負担をかけている」などもっともらしい理由がつけられている。政治家がそのような発言をしても辞職に追い込まれることはなく、むしろ賛成派もいるくらいだ。

 財政破綻、それでも食べていける観光立国―ギリシャ
 (※ギリシャだけは、日本が「お手本とすべきではない国」と考えているが、実際にはお手本とすべきところがある、という観点で書かれている)

 ・緊縮法案に対して大規模なデモやストが起こった2011年は、オンシーズンにギリシャにやってきた観光客数が2007年の記録を塗りかえ、過去最大となったことも事実である。なぜお客が戻ってきたのか?まずは年頭から不安定化している中東・アフリカ情勢を受け、エジプトやチュニジアなどに旅行予定だった客層の受け皿になったことがある。

 ・現地最大手の旅行社の欧州セクションのスタッフは、国別入国の観光客数が毎年1位のドイツ(2009年度・236万人)と2位のイギリス(同年・211万人)について「この2カ国からは半数以上がリピーターではないか」と推察する。ギリシャに限らず、一度も訪れたことのない人は財政危機、スト、デモと聞けば、その国自体を選択肢から外してしまうが、リピーターは少々不便な思いをしても来てくれる。ギリシャのよさに価値を見出して、お金を落としてくれる(※「ギリシャ観光を“欧州一美しい大臣”がPR 「安心して来て」」[産経新聞、2013年3月14日]によると、2011年の観光客数は1,600万人に上り、2012年も同規模になる見込みだという)。

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