プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2013年04月23日

【ドラッカー書評(再)】『乱気流時代の経営』―ドラッカーとポーターの「企業の社会的責任」をめぐる考え方の違い


「新訳」乱気流時代の経営 (ドラッカー選書)「新訳」乱気流時代の経営 (ドラッカー選書)
P・F. ドラッカー Peter F. Drucker 上田 惇生

ダイヤモンド社 1996-06

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 ドラッカーは早い時期から「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)」の必要性を説いていたが、本書の最後でもCSRに触れられている箇所がある。だが、改めて読み返してみると、ドラッカーはCSRをかなり限定的にとらえていたように感じる。
 企業、病院、大学のいずれにせよ、単一の目的を持つ機関は、その目的とするもの以外の社会的ニーズを満足せよという要求を、不当なもの、自らの能力や使命や機能にそわないものとして拒絶し、本来の仕事に専念することによってのみ、結局は、社会にとって生産的な存在となりうる。したがって、あらゆる組織が、自らが有能ではない領域においては、何事も期待されるべきでないことを主張する必要がある。
 組織は、単一の目的に専念すべきものであるがゆえに、その狭い領域以外において有能であることはほとんどない。(中略)したがってあらゆる組織が、自らの卓越性について徹底的に検討しておかなければならない。能力のない分野においては、「ノー」という勇気が必要である。能力を欠くよき意図ほど、無責任なものはない。
 こうしたドラッカーの主張は、最近になって「社会的ニーズ」という言葉を多用するようになったマイケル・ポーターの立場と比べると、いささか消極的だ。ポーターは近年、社会的ニーズの充足と経済的価値の創造を積極的に結びつける「共通価値(Shared Value)の戦略」という概念を提示している。『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2011年6月号の論文「経済的価値と社会的価値を同時実現する 共通価値の戦略」の中で、ポーターはこう述べている。
 (※事業活動と社会問題を結びつける)解決策は、「共通価値(シェアード・バリュー)」の原則にある。これは、社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるというアプローチである。企業の成功と社会の進歩は、事業活動によって再び結びつくべきだろう。
 社会的ニーズの規模は計り知れない。たとえば健康、住宅整備、栄養改善、高齢化対策、金融の安定、環境負荷の軽減などは、間違いなくグローバル経済のなかでいまだ満たされていないニーズの最たるものである。(中略)先進国では、社会的ニーズに対応した製品やサービスの需要が急拡大している。

 (中略)貧困地区や開発途上国に貢献することでも、先進国と同等あるいはそれ以上のチャンスが生まれてくる。これらの地域では、社会的ニーズは喫緊の課題なのだが、これまで存続可能な市場として認識されてこなかった。
Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年 06月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年 06月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2011-05-10

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 「共通価値の戦略」については、旧ブログでも何度か取り上げたのでご参考までに。

 社会的ニーズの充足を通じて経済的価値を創造する(1)―『戦略と競争優位(DHBR2011年6月号)』
 社会的ニーズの充足を通じて経済的価値を創造する(2)―『戦略と競争優位(DHBR2011年6月号)』
 「社会的価値」はどうやって測定すればいいのだろう?―『戦略と競争優位(DHBR2011年6月号)』
 ポーターの「共通価値」の理解が深まるBOPビジネス事例集(1/2)―『マーケティングを問い直す時(DHBR2011年10月号)』
 ポーターの「共通価値」の理解が深まるBOPビジネス事例集(2/2)―『マーケティングを問い直す時(DHBR2011年10月号)』
 【論点】コカ・コーラは、工場を置く新興国の「水道事業」に参入するだろうか?―『リーダーの役割と使命(DHBR2011年12月号)』

 ドラッカーはミニマム+αぐらいのCSRを想定し、ポーターはCSRを事業につなげようとしている点で、両者は対極的に映る。実際にはその中間あたり、具体的には社会の多様なステークホルダーからの要求に応えながら経済的価値を追求する、というのが多くの企業の現実ではないだろうか?そして、企業が気にかけなければならない利害関係者は、年々数と種類が増えると同時に、地理的にも広がりを見せている。

 CSRの中でも最近特に重視されているのが、「サステナビリティ(持続可能性)」であろう。サプライチェーン全体の環境負荷を減らし、原材料の生産を行う途上国や製造加工を行う新興国の労働環境を改善することが、多くの企業の課題となっている。だが、このサステナビリティという言葉を持ち出す時、我々、特に日本は、足元の持続可能性を見過ごしてはいないだろうか?つまり、日本という国家そのものの持続可能性である。

 今さら言うまでもないが、日本は先進国でも類を見ないスピードで少子化が進み、2005年にはとうとう人口が減少に転じた。2003年の合計特殊出生率1.29で推計した日本の将来人口の予測を見ると、2050年が8856万人となり、その後は50年ごとに人口半減の法則が働く。すなわち、2100年には4080万人、2150年には1854万人、2200年には841万人、2400年には36万人、2500年には7.3万人、3000年には27人(決して27万人の誤りではない)となる(※1)。

 少子化がなぜ問題なのかは、すでに様々な識者が指摘している通りである。労働力人口が減少するため日本経済が停滞する、若い世代で高齢世代を支えることが前提になっている年金制度が破綻する、高齢者の増加による医療費増のしわ寄せが若い世代に行く、などである。だが、一番の問題は、何と言っても「日本という国が消滅する」ことではないだろうか?2000年以上、王朝が一度も交代せずに存続した稀有な国家であり、長い歴史が織りなす多様な文化と20世紀以降の圧倒的な経済力によって、世界に強いプラスの影響を及ぼしてきた日本が消えるのは、日本にとってはもちろん、世界にとっても大きな損失である(大げさかもしれないが)。

 (続く)

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 (※1)国立社会保障・人口問題研究所編『人口の動向 日本と世界―人口統計資料集(2005)』(厚生統計協会、2005年)

人口の動向日本と世界―人口統計資料集 (2005)人口の動向日本と世界―人口統計資料集 (2005)
国立社会保障・人口問題研究所

厚生統計協会 2005-04

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