プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2013年04月24日

【ドラッカー書評(再)】『乱気流時代の経営』―サステナビリティの観点から見た子育てと人事制度の関係


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 (前回「【ドラッカー書評(再)】『乱気流時代の経営』―ドラッカーとポーターの「企業の社会的責任」をめぐる考え方の違い」の続き)

 私は、日本という国家を維持するために、企業がもっと責任を持たなければならない時代がやってくると思う。というのも、日本企業は、意識的にか無意識のうちにか解らないが、少子化に少なからず拍車をかける存在になってしまっているからである。OECD加盟24カ国における女性労働力率と合計特殊出生率の関係を見ると、女性労働力率が高いほど出生率も高い傾向にある(アイスランド、アメリカ、ノルウェー、デンマーク、フィンランドなどは、女性労働力率と合計特殊出生率がともに高い)。こうした国の多くでは、女性の社会進出や、仕事と育児の両立を積極的に支援する政策が取られている(※2)。

 もちろん日本も、男女雇用機会均等法や男女共同参画社会基本法の制定によって女性の社会進出を後押ししてきたし、一昔前に比べれば育児休暇も取得しやすくなっている。しかし、日本企業にありがちな長時間労働の風土が、出産を諦めさせている点に着目しなければならない。日本の地域別の出生率を比較すると、夫が週60時間以上働いている割合が高い地域(具体的には東京、神奈川、大阪、兵庫)ほど出生率が低いという傾向が見られる。また、女性の社会進出の機会が多い南関東、近畿、東海などの地域では、男性同様に女性が長時間労働を強いられており、そうした地域では出生率が低くなっている(※3)。

 OECDの調査によると、5歳未満児のいる家庭の夫の育児・家事時間は、日本が断トツで低い。日本は育児時間、育児以外の無償労働時間がともに1日0.4時間であり、カナダ(育児時間:1.5時間/日、育児以外の無償労働時間:2.4時間/日)、イギリス(育児時間:1.5時間/日、育児以外の無償労働時間:1.6時間/日)、スウェーデン(育児時間:1.2時間/日、育児以外の無償労働時間:2.5時間/日)などに比べて圧倒的に短い(※2)。そして重要なことは、夫の家事・育児時間と出生率は相関関係にあるという事実である。当然のことながら、夫の家事・育児時間が短い日本は、他国に比べて出生率が低い(※2)。

 以上をまとめると、日本では男性が長時間労働をしているため、育児や家事を手伝うことが難しい。その結果、家事のしわ寄せが女性に行き、女性が出産を控える傾向にある。また、近年は女性の社会進出の道が開かれてきたものの、それは「女性も男性と同じように長時間働くこと」を意味し、家事と仕事に追われる女性の産み控えにつながっていると言えそうである。

 日本企業には、長時間労働で成果を上げた社員が厚遇される傾向が未だに根強く残っている。管理職への昇進の際には、長時間労働に耐えうるかどうかが暗黙の基準になっていることさえある。これは男女問わずそうである。短期的・ミクロ的に見れば、長時間労働によって企業に貢献してくれる優良社員を選抜しているつもりかもしれないが(残業代を支払わなくても長時間働いてくれるのだから、企業にとってこれほど都合のいい社員はいない)、長期的・マクロ的に見れば、出産・子育てを阻害し、日本の消滅を後押ししてしまっているのである。

 日本企業は、家庭のために、そして日本国家の持続可能性を担保するために、長時間労働から社員を解放しなければならない。そして、長時間労働をする社員を高評価するという長年の悪癖を断ち切り、業務を見直し、生産性の高さを評価する風土を醸成しなければならない。だが、これだけでなく、企業は人事制度をもっと抜本的に変革する必要があるだろう。例えば消費者庁は、育児休暇を取得した職員をプラス査定すると発表した。
 森雅子少子化・消費者担当相は19日の閣議後記者会見で、「育児休暇を取ったら利益になる取り組みをする」と述べ、消費者庁職員が育児休暇を取得した場合にプラス評価するよう人事評価制度を改正したことを明らかにした。来年度から適用する。

 森氏は現行の評価制度について、「(育児休暇の取得は)不利益な取り扱いをしないというだけで不十分だ」と指摘。積極的に評価することで職員の育児参加を促す考えを示した。

 具体的には、年2回の業績評価において、職員が自ら設定する目標にワークライフバランス(仕事と生活の調和)を追加する。育児休暇などの取得状況に応じてプラス評価を行い、昇進や給与などに反映させるという。(時事ドットコム、2013年3月19日)
 この制度自体には賛否両論があるようだが、いずれにせよ、人事制度の改革は、組織としてどういう人材を肯定的に評価するのかを明確にする強力なメッセージ源となる。

 私は、今後は結婚や出産を昇進の条件として定め、出産・子育てに前向きな社員を評価する企業が出てくると予測する。具体的には、「結婚していれば主任クラスに昇進しやすくなる」、「1人目の子どもがいれば課長クラスに昇進しやすくなる」、「2人目の子どもがいれば部長クラスに昇進しやすくなる」といった人事制度を導入する(人によっては、結婚・出産しない自由、あるいは結婚・出産できない事情があるから、結婚・出産しないからといって昇進の道を完全に閉ざすことはさすがに現実的ではない)。もちろん、昇進した社員が長時間労働をしないことが前提である。日本国家の持続可能性という観点からは、こういう人事制度が正当化されてもよいと思う。

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 (※2)猪口邦子、勝間和代『猪口さん、なぜ少子化が問題なのですか?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2007年)

猪口さん、なぜ少子化が問題なのですか? (ディスカヴァー携書)猪口さん、なぜ少子化が問題なのですか? (ディスカヴァー携書)
猪口 邦子 勝間 和代

ディスカヴァー・トゥエンティワン 2007-04-20

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 (※3)高橋伸彰『少子高齢化の死角―本当の危機とは何か』(ミネルヴァ書房、2005年)

少子高齢化の死角―本当の危機とは何か (シリーズ・現代経済学)少子高齢化の死角―本当の危機とは何か (シリーズ・現代経済学)
高橋 伸彰

ミネルヴァ書房 2005-10

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