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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2013年06月04日

シーナ・アイエンガー『選択の科学』―選択をめぐる4つの矛盾(前半)


選択の科学選択の科学
シーナ・アイエンガー 櫻井 祐子

文藝春秋 2010-11-12

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 人間のみならず、動物の選択(意思決定)についても豊富な実証研究を紹介しており、非常に興味深い1冊である。ただ、Aという事実を示した後で、それとは正反対のBという事実を示しているような箇所が結構あるため、全体像を理解するのにやや苦労した。結局のところ、人間の選択には矛盾がつきものであると解釈することで、自分の中で決着をつけることにした。今回と次回の記事では、その矛盾を4つにまとめてみたいと思う。

 (1)人間のみならず、動物にとっても選択は「本能」である。本能的な選択ができるかどうかは、満足度と健康に大きく影響する。一般に、裁量権が大きい社長は、一般社員よりも寿命が長い。社長は社長特有のストレスによって寿命を縮めているにもかかわらず、選択の自由がそのマイナスを補って余りあるほどのプラスをもたらす。逆に、動物園の動物は、人間から快適な住環境を与えられているがゆえに選択の余地が少なく、野生の動物よりも寿命が短い。

 では、本能的な選択が制限されたら、人間は不幸になるのかというと、必ずしもそうではない。世界には自由恋愛による結婚ではなく、結婚相手を親族が決める「取り決め婚」がまだ広く残っている。著者の両親も取り決め婚によって結婚したそうだ(著者の出身国であるインドでは、90%以上が取り決め婚)。研究によれば、恋愛婚と取り決め婚の夫婦の満足度には有意な差が見られない。結婚は、人生において最も重要な選択の1つであるにもかかわらず、である。

 もう1つ、本書では、人生において重要な意思決定を下さなければならない場面として、我が子の延命措置を中止するか否かというケースが取り上げられている。意外なようだが、親が自ら判断を下すよりも、医師に判断を委ねた方が、実は親の後悔は少ないことが解っている。自ら延命措置を中止した親は、「本当に自分の判断は正しかったのだろうか?」、「他にも選択肢があったのではないか?」と後悔の念にさいなまれた。

 人生の重要な場面だけでなく、日常的な場面においても、選択を制限されている人たちの方が満足度が高く、健康的であることを示す研究もある。原理主義者は、日常生活のあらゆるルールを宗教によって決められているが、うつ病の割合は少ない(逆に、無神論者の方がうつ病の割合は高い)。また、労働や消費に関する選択を全て中央政府に委ねる共産主義の下で育った東欧の人々は、ソ連の崩壊により資本主義化が進み、それらの選択を自らの責任において行わなければならなくなると、かえって共産主義の時代を懐かしむ傾向が見られたという。

 (2)選択したいという欲求は自然な心の動きであり、人間も動物も自ら選択肢を増やそうとする。ある実験では、ラットを迷路に入れて、まっすぐな経路と枝分かれした経路のどちらを選ぶかを観察した。どちらを選んでも、最終的にたどり着くエサの量は同じであったため、一方が他方より有利ということはなかった。しかし、ほとんど全てのラットが枝分かれした経路を選択した。

 同様に、ボタンを押すとエサが得られることを学習したハトやサルも、ボタンが1つの装置とボタンが複数ついている装置を見せると、後者を選択した(どちらを選んでも得られるエサの量は同じ)。人間を対象とした実験では、カジノのチップを与えられた被験者は、ルーレットが1つあるテーブルよりも、全く同じ2つのルーレットがあるテーブルでチップを賭ける傾向があった。

 しかし、選択肢が多いことは必ずしも望ましいことではない。著者を研究者の間で有名にした「ジャムの研究」では、ジャムの選択肢が増えると、ジャムの売上高が下がるという結果が出ている。著者はスーパーの中に、24種類のジャムをそろえた試食コーナーと、6種類のジャムをそろえた試食コーナーを設けた。後者のコーナーには、買い物客の40%しか訪れなかったが、そのうち30%が実際にジャムを購入した。これに対し、前者のコーナーには、買い物客の60%が立ち寄ったが、実際にジャムを購入したのは試食客のわずか3%であった。

 アメリカでは1978年に401kという新しい退職金積立制度が導入された。ところが、401kへの加入率は低下の一途をたどっており、70%にまで下がっていた。他方で、それと期を同じくして、各プランで選択できるファンドの数は着実に増加していた。そこで、各プランで選択できるファンドの数別に加入率を調べてみると、ファンドの数が増えれば増えるほど、加入率が下がっていることが判明した。選択肢の多さは、加入率に著しい悪影響を与えていたのである。

 (続く)

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