プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2013年08月01日

販売チャネルの的確性判断(前半)―『市場開拓、開発テーマ発掘のための マーケティングの具体的手法と経験事例集』


 100名超(!)の著者による共著ですが、7月31日(水)に株式会社技術情報協会より私の処女作が出版されました。出版社の担当者から許可をいただいて、私が執筆した部分をブログにて公開いたします。

bookc_1725市場開拓、開発テーマ発掘のための
マーケティングの具体的手法と経験事例集
~『隠れたニーズ』を見つけ出し、『売れる仕組み』を作るには~

(発刊:2013年7月31日、体裁:A4判 約720頁、定価:99,750円(税込))

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1. 販売チャネルの的確性判断
 販売チャネルは、メーカーに代わって販売活動を行う組織である。新製品を大量に販売したいメーカーは、できるだけ多くの販売チャネルを活用したいと考えるが、販売チャネルを構成するメンバーが多くなればなるほど、メーカーが意図する製品のベネフィットが顧客企業や消費者に正確に伝わらなかったり、販売チャネルが安易な低価格競争を広げてメーカーの利益を損なったりすることがある。逆に、販売チャネルのメンバーを絞れば、メーカーによるコントロールは容易になるものの、潜在的な販売チャンスを逃す可能性があるし、また特定の販売チャネルの業績が急激に悪化すると、メーカーもその影響を強く受けることになる。以上の点から、メーカーは自社のマーケティング戦略に合致した販売チャネルのメンバーを適切に選定する必要がある。

1.1 的確性を判断する指標
 メーカーにとってよい販売チャネルとは、「ポテンシャルの高い市場に対して、中長期的に自社製品を積極的に販売し続けてくれるチャネル」である。ここでは、「(A)販売チャネルがポテンシャルの高い市場を持っているか?」、「(B)販売チャネルが自社製品を積極的に販売してくれているか?」、「(C)販売チャネルと中長期的なリレーションが構築できているか?」という3つの観点から、自社の各販売チャネルが前述の要件を満たすかどうかを判断する指標の例を示す。メーカーはこれらの指標を用いて、各販売チャネルの的確性を継続的にモニタリングするとよい。なお、販売チャネルのメンバーの数が多い場合は、業態や地域などが類似する販売チャネルをグルーピングして分析する。

1.1.1 (A)販売チャネルがポテンシャルの高い市場を持っているか?
 (1)メーカーのターゲット市場と販売チャネルのターゲット市場の適合度合い
 当然のことながら、メーカーが出す新製品のターゲット市場は、販売チャネルのターゲット市場に含まれていなければならない。例えば、メーカーが「20代独身世帯向け家電」を出す場合は、20代独身世帯をターゲット市場に含む販売チャネルを選定すべきである。

 (2)販売チャネルのターゲット市場の規模
 先ほどの「20代独身世帯向け家電」の例で言えば、販売チャネルの商圏における「20代独身世帯向け家電」の市場規模を算出する。必ずしも正確な金額を求める必要はなく、商圏の世帯構成や家計支出に関するデータなどから大まかに推測すればよい。市場規模が大きければ、当該販売チャネルはメーカーにとって魅力的である。

 (3)販売チャネルのターゲット市場における販売チャネルのシェア
 (2)で求めた市場規模に対する販売チャネルのシェアを算出する。これも概算でよく、販売チャネルから販売実績データなどを提供してもらい、大まかに推計する。シェアが大きければ、当該販売チャネルはメーカーにとって魅力が高い。

 (4)販売チャネルのターゲット市場規模やシェアの成長率
 (2)(3)は現時点の瞬間風速的な数値であるが、加えて過去の推移や将来の見込みも算出できると望ましい。販売チャネルのターゲット市場の規模が将来的に伸びそうな場合、あるいは、過去数年のうちに販売チャネルが市場シェアを急速に伸ばしている場合、メーカーは当該チャネルを押さえておくべきだろう。

1.1.2 (B)販売チャネルが自社製品を積極的に販売してくれているか?
 (5)販売チャネル別売上高に占める当該販売チャネルの割合
 メーカーの売上を販売チャネル別に分析し、販売チャネルの割合を算出する。この値は、会計システムや販売管理システムなどの社内情報システムを活用すれば、正確に求められる。売上高に対する貢献度が高い販売チャネルは、メーカーにとって魅力的である。

 (6)販売チャネル別利益に占める当該販売チャネルの割合
 メーカーの売上だけでなく、利益も販売チャネル別に分析する。(5)と同様、社内情報システムを用いて算出することになるが、その際にはメーカーの販促費を各販売チャネルにどのように割り振るのか、社内ルールを決めておく。分析の結果、売上高に占める割合は高いが、メーカーからのプロモーションの支援や人的サポートなどのコストがかかり、利益を圧迫している販売チャネルの存在が判明するかもしれない。逆に、売上高に占める割合は低いものの、メーカーからの手厚い支援を受けなくても効率的に販売してくれる結果、利益貢献度は高い販売チャネルの存在も分かる。

 (7)販売チャネル別売上高・利益に占める当該販売チャネルの割合の成長率
 (5)(6)は現時点の瞬間風速的な数値であるが、加えて過去の推移や将来の見込みも算出できると望ましい。将来の見込みを推計するにあたっては、各販売チャネルの中期経営計画や販売計画を、メーカーと販売チャネルの間で共有する必要がある。

 (8)販売チャネルからのフィードバックの密度
 販売チャネルはメーカーに代わって販売活動を行う組織であると同時に、顧客企業や最終消費者に代わって購買活動を行う組織でもある。したがって、顧客企業や最終消費者の要望や潜在ニーズについて、メーカーが知らない情報を販売チャネルが把握していることもある。そのような情報を頻繁にメーカーにフィードバックしてくれる販売チャネルは、メーカーにとって魅力的である。メーカーは、こうしたフィードバックに基づいて既存製品を改良したり、新製品開発のヒントを得たりすることができる。

 (続く)

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