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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2013年07月03日

利害関係者は自分の想定の”2倍”いると覚悟しておいた方がよさそう


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 07月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 07月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2013-06-10

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 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2013年7月号のテーマは「広告」だが、書くことが思いつかなかったため(汗)、レビューは省略させていただく。LINE株式会社で執行役員広告事業グループ長を務める田端信太郎氏の論文「メディアの主導権は消費者へ 広告の新しい現実」などが収録されているので、興味のある方はご一読を。

 特集とは関係のない「取引は小規模な交渉の集大成である 交渉は広い視野で進めよ」という論文を読んでいて、自分の仕事について思うことがあったので、今回はそれを書くことにしよう。この論文の主旨は次の通りである。企業の買収、大型商談の契約、労使交渉など大きな案件進める過程では、様々な利害関係者との小さな交渉が行われる。したがって、まずは多様な利害関係者の存在を明らかにし、それぞれの利害関係者のニーズを特定した上で、お互いが納得する結論を積み重ねてく必要がある(論文では「キャンペーン」だの「フロント」だの「ポジション」だの横文字が多用されているけれども、私なりに内容を咀嚼すれば以上のようになる)。

 最近仕事をしていてつくづく感じるのは、「利害関係者は自分が思っているよりもずっと多い」ということだ。たいてい、当初想定していたよりも倍の数の利害関係者が存在する(単に私の見通しが甘いと言ってしまえばそれまでなのだが・・・)。私が初めて、重要な利害関係者に気づかず痛い目にあってしまったのは、5年ほど前、あるSIerの人材開発部に対して小規模のコンサルティングを提供した時のことである。

 当初のオーダーは、現場で各社員のスキルレベルをモニタリングし、上司と部下の間で定期的にキャリア面談を行って、適切な教育研修を受講させる仕組みを作ってほしいというものであった。この時の利害関係者は、人材育成部門の部長クラスの方数名と、スキルチェックや面談を行う現場だと思っていた。私は現場の負荷を考慮して、現場の管理職が簡単にスキルを評価できるアセスメントを開発し、キャリア面談で使用する書類の雛形や、スキルレベルに応じた教育研修体系を整備した。部長たちはこれらの成果物に満足したようであった。

 ところが、部長たちが人材開発部を統括する統括部長にこのプロジェクトの件を報告したところ、「もっと上層部にも話を通すべきだろう」ということになり、統括部を取りまとめる本部長に話が上がり、さらには役員にまで話がエスカレーションしてしまった。報告を受けた役員のうち、営業担当の役員は、「こんなスキル体系ではダメだ!わが社のあるべき姿をちゃんととらえているのか?」と部長たちを一喝した。私はその場におらず、人材開発部の部長たちに報告を任せていたので、その話を後から聞いた時は本当に悪いことをしてしまったと反省した。

 このSIerは組織構造が非常に複雑で、規模の割に管理職の階層が多かった。私は事前に、社内の稟議プロセスをもっとしっかり把握しておくべきだった。また、このSIerは営業部門の力が非常に強く、営業部門を動かすためには営業担当役員の協力が不可欠であった。案件の規模が小さいということに甘えて、「フィーをいただいている人材開発部の方々に満足していただければ十分だろう」と、利害関係者の見極めをおろそかにしてしまったがゆえの失敗であった。

 最近、ある企業の製品販売部門に対し、営業担当者を対象とした研修を提案しているのだが、研修内容を擦り合わせる会議には、製品販売部門の責任者だけでなく、必ずアフターマーケット製品部門の責任者も出席している。しかも、製品販売部門よりもアフターマーケット製品部門の方が力が強いようで、本来ならば製品販売部門が決めるべき研修日程や予算についても、アフターマーケット製品部門が主導で決定している。当然のことながら、研修の中身についても、アフターマーケット製品部門からの注文の方が圧倒的に多い。

 なぜこのような力関係の逆転が生じているのか考えてみたところ、まず第一には、アフターマーケット製品部門では既に類似の研修が実施されており、アフターマーケット製品部門は両部門の研修内容に大幅な差があってはならないと思っているためである。そして第二に、こちらの方が重要なのだが、これまで製品販売部門とアフターマーケット製品部門の営業担当者がバラバラに営業活動を行っていた慣習を改め、両部門の営業担当者がチームセリングを行うことが会社の方針となったため、両部門の緊密な連携が求められるようになった、という背景が挙げられる。

 通常ならば、この研修の利害関係者は製品販売部門だけである。しかし、上記のような事情があることを踏まえて、今回はアフターマーケット製品部門も重要な利害関係者としてとらえなければならない。私としては、単に製品販売部門の営業力強化につながるだけでなく、製品販売部門とアフターマーケット製品部が共通言語で活動をし、両部門のチームセリングが促進されるような研修コンテンツの開発を心がけているところである。

 また最近では、私が所属する東京都中小企業診断士協会のとある支部で、中小企業診断士のコンサルティング能力を強化するための”塾”を企画している。ここでも想定外の多様な利害関係者を引き入れることの重要性を痛感させられている。支部にはもともと能力開発推進部といって、診断士向けの研修を企画・運営する部署がある。今回の塾も能力開発推進部が企画の中心となっており、私もメンバーの一員に入れてもらっていた。

 しかし、話をよくよく聞いてみると、同じような塾を総務部が既に企画していることが解った。また、座学に加えて、実際に中小企業診断を行う実践の場を塾のコンテンツに取り込もうとしたところ、そのような実務従事の窓口となっている支部付のNPO法人との調整も必要であることが判明した。結局、あれこれ議論していくうちに、「支部全体としてこの塾を全面的に盛り上げていく必要がある」という話になり、支部の主要部長クラス10数名を巻き込むことになった。

 先月、キックオフミーティングがあったが、能力開発推進部だけで小規模でやろうとしていたところ、支部のそうそうたるメンバーが顔を揃える大人数の会議になった。今回の塾に期待する内容や診断士に期待する力量をめぐっては、部長によって意見が実に様々であるため、私を含む企画メンバーは部長たちのニーズをうまくくみ取りながら、できるだけ多くの部長が満足できる塾を目指さなければならない(もちろん、塾の参加者である診断士の満足が第一だが)。

 想定外の利害関係者を早い段階で発見するためには、利害関係者に接触した際に、「この案件によって影響を受ける人(部門)は誰(どこ)か?」、「この案件のことを知っておくべき人(部門)は誰(どこ)か?」と率直に聞くしかないだろう。そして、利害関係者の見当がついた時点で、全ての利害関係者を一か所に集めて議論するべきだ。確かに、ニーズが異なる利害関係者を一緒くたにしてしまうと、議論が進みにくくなるというデメリットは否定できない。だが、影の利害関係者を外したまま話を進めた結果、終盤になって「俺(うちの部門)は聞いていない」などと騒ぎが起きた場合は、その火消しの方がよっぽど労力がかかると思う。

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