プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
シャイン経営研究所HP
シャイン経営研究所
 (私の個人事務所)

※2019年にWordpressに移行しました。
>>>シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)

Next:
next 【ベンチャー失敗の教訓(第26回)】管理職の肩書と実態の乖離(名ばかり管理職の増殖)
Prev:
prev この場を借りて中小企業診断士が作った「ダメ診断(アセスメント)」を糾弾する!(2/2)
2013年07月12日

『コツさえわかればすぐ使える 粉飾決算の見分け方』―中小企業の粉飾決算の手口まとめ


コツさえわかればすぐ使える 粉飾決算の見分け方コツさえわかればすぐ使える 粉飾決算の見分け方
都井 清史

金融財政事情研究会 2011-10

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 約6年前に中小企業診断士になった時から、先輩の先生からは、「中小企業の決算書は(意図せざるものも含めて)ほとんど粉飾だよ」と言われ続けてきた。診断士の試験には財務会計という科目が含まれているのだが、そこで学習する財務分析の手法などは、実際にはほとんど役に立たないと断言されてしまった。それ以来、粉飾決算のことを勉強しなければならないと思いつつ、今日まで先延ばしになっていた。そしてようやくこの本を読了。

 著者は、「売上高が微増で、利益(営業利益、経常利益)が少しだけ」という企業は、粉飾している可能性が高いと指摘する。売上高が少しでもいいから伸びており、利益が少しでもいいから出ていれば、一応金融機関向けに体面を保つことができ、借入も可能である。したがって、「売上微増、利益微小」という粉飾をしたくなるのだという。売上高と利益だけでも粉飾の可能性を感じ取ることができるが、より高い確度で粉飾を見抜く基準として、著者は以下の2つを挙げている。

 (A)支払利息÷営業利益≧70%
 (B)雑収入÷経常利益≧70%

 (A)の式は、営業利益の大半が支払利息によって消えていることを示す。著者によると、日本企業全体のうち7~8割は赤字なのだが、営業利益ベースではむしろ黒字の企業の方が多いそうだ。利息を支払うから赤字になってしまう。ところが、赤字のままでは銀行がお金を貸してくれない。そこでどうするかというと、「営業外収益」の欄で「雑収入」という費目を計上し、無理やり利益をひねり出すのである。(B)の式が意味するのは、経常利益の大半が本業とは無関係な雑収入によって作られたものである、ということだ。

 では、実際にどのような粉飾の手口が使われているのか、本書の内容をもとにまとめてみた。

<売上を大きく見せる>
 ・関係会社向けの売上を作る。損益計算書の注記に、関係会社向けの売上がある場合は要注意である。関係会社向けの売上は、全体の売上高から差し引いて考えるべきである。
 ・固定資産を商品にして売上を作る。この場合、売上原価の中に「固定資産よりの振り替え高」という項目が現れる。この取引自体は旧商法違反、旧証券取引法違反である。本来は固定資産売却益として、特別利益に計上しなければならない。
 ・買戻条件付売上(一定期間後に商品を買い戻すことを条件に、商品を売ること)で売上を作る。宝石業、不動産業、水産業でしばしば見られる。だが、買戻条件付売上は、実質的には商品を担保とした借入であり、売上ではない(民法で言うところの「譲渡担保」に近い)。
 ・期末になって翌期の売上を先取りする。この場合、先取りした分だけ翌期首の売上が少なくなるので、そこで見抜く。ただし、期末に「今月の売上は先月に比べて2倍になっていますね」などとストレートに指摘すると、中小企業の経営者に嫌われてしまう。代わりに、「翌期首月の売上はどうなっていますか?」と尋ねると効果的である。
 ・循環取引。循環取引をすると、売上債権の回収の遅延や、買戻しによる棚卸資産の急増により、各種回転期間が不自然に動く。また、売上が架空である場合は売上原価を増加させることが難しく、売上原価はそのままで売上だけが急増するため、売上高総利益率が急上昇する。

<売上原価を少なく見積もる>
 ・在庫を水増しする。在庫を水増しすると、貸借対照表の流動資産が増え、損益計算書の売上原価が減少する。在庫回転期間が長くなり、原価率が減少している場合は、在庫水増しの可能性が高い。「粉飾の第一歩は在庫の水増しから始まる」と言われるほど、在庫の水増しはよく使われる手法である。

<販管費を少なく見積もる>
 ・会社法が「これぐらいは減価償却『しなければならない』」と定めている最低レベルの償却を行わない。注意が必要なのは、会社法とは別に、税法では「これぐらいまでは減価償却『してよい』」という最高レベルが定められており、会社法の最低レベル=税法の最高レベルとなっている点である。仮に税法の最高レベルまで減価償却しなくても、利益増により税金が増えるため、税務署は何も指摘しない。しかし、会社法の最低レベルを満たしていないことから、やはり粉飾である。
 ・減価償却には定率法と定額法の2種類があるが、定率法から定額法へ変えることで償却費を少なくする、という手法もある。これは、中小企業に限らず大企業でも頻繁に見られる。
 ・前払費用の中に、当期に発生した費用を紛れ込ませる。前払費用は費用計上されず、貸借対照表の「その他の流動資産」に組み込まれる。こうすることで当期の費用が少なくなり、利益が大きくなる。「その他の流動資産」は「粉飾上の”ごみだめ”」と呼ばれており、その名称とは裏腹に流動性に乏しいとされる。この金額が大きい場合は要注意である。
 ・未払費用をわざと計上しない。特に計上漏れが多いのは、賞与引当金、未払賞与、税金である。また、貸倒引当金を計上しない。これも、費用を少なくして、利益を大きく見せる常套手段だ。
 ・製品開発などに要した費用を費用計上せず、「開発費」として貸借対照表の「繰延資産」に計上する。「繰延資産」も「その他の流動資産」と同様、資産性が乏しいと言われる。

<経常利益を大きく見せる>
 ・支払利息を計上しない。支払利息÷借入金の割合が金融機関の一般的な利率よりも著しく低い場合は、支払利息の計上漏れか、勝手にリスケしている可能性がある。逆に、支払利息÷借入金の割合が著しく高い場合は、簿外債務の存在が疑われる。
 ・「営業外利益」を使って益出し操作を行う。
  (1)「特別利益」として計上すべものを「雑収入」として計上する(固定資産売却益、引当金戻入益など)。
  (2)有価証券を売却して益出しを行う。含み益がある有価証券を市場で売ってすぐに買い戻すことにより、簡単に売却益を作り出すことができる。有価証券売却益が大きい場合は要注意である(中小企業の場合は、「有価証券売却益」という項目で切り出されておらず、「雑収入」の中に紛れ込んでいるため、さらに注意が必要だ)。

<当期純利益を大きく見せる>
 ・有価証券、ゴルフ会員権、固定資産の含み損をマイナスしない。有価証券の評価法には、原価法、低価法、時価法の3つがある。取得時の価格のまま計上して構わない原価法であっても、時価が半分を下回れば評価損計上をしなければならないが、それをやらない企業がある。また、低価法を採用している企業でも、業績が悪くなると評価損を計上しなくなることがある。
 ・法人税を勝手に低くする。あるいは法人税を全く引かない。法人税を全く引かずに剰余金処分で積み立てることは認められていない。例外的に、法人税法上の減算によって、税率が低く調整されることはあるものの、中小企業が該当することはめったになく、利益の約半分近くが税金で持っていかれると考えた方がよい。

<流動比率を高く見積もる>
 ・実地棚卸をしない。中小企業の場合、帳簿上には在庫が残っているが、現物がいつの間にかなくなっている、ということが実に多い。これは架空在庫になる。
 ・在庫の含み損を計上していない。著者に言わせると、中小企業で在庫の評価損を費用計上したら一人前の企業だそうだ。著者が今まで見てきた企業は、含み損を全く計上していないという。
 ・売掛金と買掛金を相殺する。売掛金が増えると、金融機関から「回転日数が延びた」と指摘されてしまうため、それを避けるために買掛金と相殺するケースである。ただ、決算書ではつじつま合わせができても、資金繰り表は嘘をつかない。資金繰り表を手掛かりに相殺を見抜くとよい。
 ・「その他流動資産」を膨れ上がらせる。前述のように、「その他流動資産」は資産性に乏しいため、流動資産からは除外して考える必要がある。
  (1)前払費用を計上する(前述)。
  (2)短期貸付金を計上する。中小企業の場合、社長が例えば自分の友人にお金を貸して短期貸付金を計上している、というケースがあるが、1年で返済されることはほとんどない。それどころか、返ってくる見込みすらない。社長の個人的な貸付金には注意が必要である。

  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like