プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2013年07月21日

【ベンチャー失敗の教訓(第27回)】白昼堂々と、しかもだらだらと続けられる社内会議


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 X社は会議が多い割にその運営が下手な会社だった。私が一番信じられなかったのは、2011年の春から夏にかけて、新しい研修を開発するという目的で、講師&開発チームがほぼ毎日のように、日中にリミットを定めず3時間も4時間もかけて会議を行っていたことである。これでは他の研修サービスに時間を割くことができない。いや、講師の稼働率が低く、営業同行が必要な商談も少なかったがゆえに、会議を開いて仕事をしているフリをしていたと言った方が正しい。度重なる会議は、「私には仕事がありません。私は暇です」という告白に見えて仕方なかった。

 最近私が話をうかがったある中小企業では、新製品開発のために毎月第2土曜日を出勤日とし、その日に集中して製品開発を進めたそうだ。その結果、1年後には事業の新しい柱となる製品ができたという。既存の仕事を圧迫しないよう、既存の仕事とは別に、新製品のために新たに時間を捻出したわけだ。逆に、X社のように、新製品開発ばかりに時間をとられて、既存の製品の提供がおろそかになるようでは本末転倒としか言いようがない。

 私ならば、昼間の一番いい時間を社内会議にあてることは絶対にしないと思う。日中はやはり、目の前の稼ぎを作るための時間とするべきである。X社の業績が芳しくなかったことはこのシリーズで何度も触れているが、業績が悪ければなおさら昼間の時間を大切にしなければならない。それでもなお新サービスの開発が必要だというのならば、朝8時~9時もしくは夜19時~20時といった、ビジネスアワー外に会議を設定するべきだろう。もっと言えば、夜はエネルギーが消耗されて意志力が落ちるというから、意志力が一番充実している朝に会議をする方が望ましいのかもしれない(ケリー・マクゴニガル『スタンフォードの自分を変える教室』〔大和書房、2012年〕)。

スタンフォードの自分を変える教室スタンフォードの自分を変える教室
ケリー・マクゴニガル

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 私も講師&開発チームの一員であったため、会議に参加せざるを得なかったが、この会議には上記以外にも2つの大きな問題を抱えていた。1つは、会議でありながら、各回のゴールが設定されていなかったことである。そもそも、研修の開発スケジュールが曖昧であり、毎回の会議でどこまで決めなければならないのか明確にされていなかった。会議が始まると(たいていは誰かが遅れてきて、時間通りに始まらないのだが・・・)、「さて、今日は何について話し合おうか?」といった具合に、手探りで会議が進行する。

 会議とは意思決定の場である。よって、会議を始める際には、「今日の会議では何について意思決定を下すのか?」というゴールイメージを持っておかなければならない。その上で、議論の材料となる情報をあらかじめ用意しておく。ここで重要なことは、情報は必ず紙に落とし込んでメンバーに配布しなければならない、ということだ。口頭で議論をすると、どうしても会議が”空中戦”になりやすい。どういうことかと言うと、お互いの認識がだんだんずれていき、認識が異なったまま、めいめいが自分の言いたいことばかりを言うようになるわけだ。これに対して、紙に書かれた情報があれば、議論が脱線した時でも資料に戻って、メンバーの認識を揃え直すことができる。

 X社の会議では、各メンバー自分の作成した研修資料を一応持ち寄るものの、「今日の会議で何を議論したいのか?何を決めたいのか?」という論点が資料として整理されていなかった。よって、ここを変えた方がいい、こういう考え方もある、このページはいらない、この図よりあの図がいい、などといった具合に、レベル感の異なる話がいろいろと噴出して、議論がすぐに拡散してしまう傾向があった。メンバーからあれこれ指摘を受けた人は、全員の意見を消化し切れないため、次の会議で不十分な資料を持ってくる。そうすると、またメンバーからあれこれと意見を言われる。その悪循環に陥っていた。

 もう1つの大きな問題は、会議の主催者であるA社長が、会議の中でメンバー全員で議論をしながら研修コンテンツを作り上げればよい、というスタンスをとっていたことだ。つまり、形式上は会議だが、実質的には講師&開発メンバーによる共同作業の場にしようとしていたのである。一見すると民主主義的でいい方法のように思えるけれども、この方法には致命的な欠陥がある。それは、フリーライダーが生まれるということだ。メンバーは、「自分が完全に研修コンテンツを作らなくても、他のメンバーがいろいろとアイデアを出してくれるからいいや」と甘えるようになる。

 私は、一人である程度仕事を完結させるだけの力がない人は、組織人として失格だと思う。確かに、組織は一人だけではできないことを達成するための装置であり、チームワークは重要である。だが、組織やチーム内の他のメンバーは、自分の成果をインプットとして仕事をしているわけだ。そう考えると、他のメンバーに迷惑がかからないよう、自分が担当している領域については、最高のアウトプットを出さなければならない。X社にはこうした考え方が欠けており、民主主義の意味するところをはき違えていたように思える。

 スズキ自動車の鈴木修会長兼社長は、次のように述べている。「民主主義だからといって時間をかければよいというものではない。カネと時間がかかるものは大嫌い。会議はその最たるものだ」(鈴木修『俺は、中小企業のおやじ』〔日本経済新聞出版社、2009年〕)

俺は、中小企業のおやじ俺は、中小企業のおやじ
鈴木 修

日本経済新聞出版社 2009-02-24

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 組織文化研究の第一人者であるエドガー・シャインは、「企業文化を理解するには、その企業の会議に出席するのが一番だ」と語った。独立した現在、私は前職時代に比べて、様々な企業の会議に出席する機会が増えた。その際、私は会議の開催時間や、会議で配布される資料に注目している。会議の終了時間が定まっていなかったり、配布資料がなかったりすると、「この会議は何を決める会議なのかがはっきりしていないのだろう」、「この会議は長引く割に大きな成果が上がらないだろう」という勘が働く。そして今のところ、この勘は結構な確率で当たっている。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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