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2013年09月05日
創業補助金―申請書の書き方ポイント
創業補助金とは、若者・女性の地域での起業や、後継者の新分野への挑戦を応援する補助金であり、平成25年度は約200億円の予算がついている。第2次募集は6月末に終了してしまったが、既に中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)のHPでは第3回の募集が予告されており、9月中に詳細が発表されるとのことなので、HPを要チェックだ。
補助金の対象者、ならびに補助金の上限額は以下の通り。
《補助金対象事業の3タイプ》
(1)地域需要創造型起業・創業(補助上限額:200万円)
地域の需要や雇用を支える事業を興す起業・創業を行う者。
※単なる起業ではなく、地域貢献度の高い事業、地域密着型の事業でなければならない。
《例》肩凝りなど、自らが子育て中に感じた悩みを解決してくれた「抱っこひも」を、同じような悩みを抱える多くのママたちに教えてあげたい。将来は、日本人の体型に合わせ改良したオリジナルの抱っこ・おんぶひもを企画・販売したい。
(2)第二創業(補助上限額:500万円)
既に事業を営んでいる中小企業・小規模事業者において後継者が先代から事業を引き継いだ場合などに業態転換や新事業・新分野に進出するを行う者。
※単なる事業承継は対象外。必ず業態転換や新事業・新分野への進出を伴う必要がある。
《例》生家の金箔製造業の市場が縮小傾向にあるため、製造過程で不要となる和紙を再利用した化粧品雑貨の販売をしたい。また、ゆくゆくは、化粧品の企画・販売もやってみたい。
(3)海外需要獲得型創業・起業(補助上限額:700万円)
海外市場の獲得を念頭とした事業を興す起業・創業を行う者。
《例》現在アジアで最も活気があり、政治、経済両面からアジアのハブとして活況を極めているシンガポールに新たな日本食を展開したい。
募集要項、申請の手引き、ならびに応募申請書(事業計画書)は、創業補助金東京事務局のページからダウンロードできる(ただし、現在掲載されているものは第2回募集用であり、第3回募集には使えないため要注意)。審査基準は募集要項のp9で公開されているので、この基準をクリアするようにp14~18にある応募申請書を完成させることが、合否を決めるポイントとなる。
《審査基準(※募集要項より抜粋)》
(1)事業の独創性
技術やノウハウ、アイディアに基づき、ターゲットとする顧客や市場にとって新たな価値を生み出す商品、サービス、又はそれらの提供方法を有する事業を自ら編み出していること。
(2)事業の実現可能性
商品・サービスのコンセプト及びその具体化までの手法やプロセスがより明確となっていること。
事業実施に必要な人員の確保に目途が立っていること。販売先等の事業パートナーが明確になっていること。
(3)事業の収益性
ターゲットとする顧客や市場が明確で、商品、サービス、又はそれらの提供方法に対するニーズを的確に捉えており、事業全体の収益性の見通しについて、より妥当性と信頼性があること。
(4)事業の継続性
予定していた販売先が確保できないなど計画どおり進まない場合も事業が継続されるよう対応が考えられていること。
事業実施内容と実施スケジュールが明確になっていること。また、売上・利益計画が妥当性・信頼性があること。
(5)資金調達の見込み
金融機関等の外部資金による調達が十分見込めること。
では、これらの基準を満たすためには、どのようなことを応募申請書に書けばよいのだろうか?とりわけ重要なのがp16~17「事業計画説明書」にある1~8の項目になるわけだが、ここに書くべき内容を私なりに整理してみた(なお、以下は、3つの補助対象事業の中で最も申請数・採択数が多い「地域需要創造型起業・創業」を念頭に置いている)。
(1)事業の内容
・誰をターゲットとするのか?
・何を(Product)、いくらで(Price)、どのチャネルを使って(Place)、どんな販促を通じて(Promotion)売るのか?(=いわゆるマーケティング・ミックス)
(※ここは事業の要約にあたるので、ターゲットとマーケティング・ミックスを端的に述べる)
(2)製品・サービスの独創性
・競合他社はどこか?
・競合他社の製品・サービスに対する自社の優位性は何か?
・その優位性は自社のどのような活動・経営資源によって達成されるのか?
(※自社のポジショニングを明確にするとともに、優位性の源泉にも触れるとよい)
(3)市場の特性、市場規模
・ターゲット市場の顕在的・潜在的ニーズは何か?
・市場規模はどのくらいか?市場の成長スピードはどのくらいか?
(※定性・定量データを組み合わせると説得力が増す)
(4)創業する動機・きっかけ及び将来の展望
・きっかけとなった個人的な体験は何か?
(※単に市場が拡大しそうだから、という理由で参入するよりも、自分あるいは身近な人がこういうニーズを抱えていた、こういうことで困っていた、というストーリーを語る方が、審査員にとってインパクトがある)
・将来的にどのようにして地域に貢献していきたいのか?
(※「地域需要創造型起業・創業」という趣旨からして、将来的にどのような形で地域の発展に寄与していくのかをアピールするとよい)
(5)スケジュール(採択後3年間に取り組む事業内容と実施時期)
・事業を拡大し、初期投資を回収するためにどのような施策を打つか?(人員増、HP開設、展示会出展、製品の新バージョンリリース、新店舗出店、代理店拡大など)
(※(6)売上・利益等の計画の表の内容と整合性を取ること)
(6)売上・利益等の計画
・毎年、各製品・サービスはどれくらいの販売数を見込んでいるのか?
・販売増に伴ってコストはどのように変動するか?
(※応募申請書では収支計画のおおまかな表のみを書くことになっているが、売上、コストの細かい算出根拠を表の下に補足することを強くお勧めする。金融機関から融資を受ける際に提示する収支計画書レベルの内容を書くのが望ましい)
(7)創業する事業の知識、経験、人脈、熱意
・創業者はなぜ今回の事業に向いていると言えるのか?
(※熱意よりも知識、経験、人脈を強調した方がよい。いくらやる気があってもノウハウや人脈がなければ、審査基準にある「事業の実現可能性」に疑問符がついてしまう)
(8)価格設定、販売促進活動
・なぜその価格に設定したのか?その価格はターゲット顧客に受け入れられるか?
・どのような販促活動でターゲット顧客にリーチするのか?
(※マーケティング・ミックスのPriceとPromotionについて、もう少し掘り下げた記述を行う)
以上、応募申請書を書く上での論点を列挙してみた。ただ、これだけではなかなかイメージが湧かないと思われるので、次回の記事では事業計画のサンプルを提示したいと思う。