プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2013年09月06日

創業補助金―申請書(事業計画書)の書き方サンプル(記入例)


《2014年6月22日追記》
 私が所属する特定非営利活動法人NPOビジネスサポートが荒川区と共同で「創業支援事業」を実施し、その一環として無料の創業セミナーを開催することになったのでご参考までに。
 【無料・2014年7月5日(土)スタート】創業・起業セミナー(荒川区創業支援事業)


http://www.sogyo-tokyo.jp/ 前回の記事「創業補助金―申請書の書き方ポイント」の続き。創業補助金東京事務局のHPにある「申請の手引き」には記入例が一応載っているものの、実際の事業を想定した例にはなっていない。具体的な事業を書いてしまうと、国が特定の事業を推奨しているかのような誤解を与えてしまうため、そうなるのを避けているものと思われる。もしくは、国が提示したサンプルを上手に加工して、補助金をせしめようとする悪い輩が出てくるのを防ぐためなのかもしれない。

 ただ、やはり何らかの事業に沿ったサンプルがあった方が解りやすいだろうということで、昨日の記事で述べた論点に従って、記入例を作成してみた。あらかじめ断っておくが、以下に示すサンプルは、敢えてビジネスモデルとしては穴があるものにしてある。私としても、サンプルをそのまま使って補助金を受けようとする人が出てくるのはあまりうれしいことではない(苦笑)。あくまでも、前回の記事で示したポイントを、どのように「申請の手引き」p16~17の「事業計画説明書」に散りばめていけばよいのか、その参考にしていただくための事例とお考えいただきたい。

 以下のサンプルは、「地域需要創造型起業・創業」のケースで、「千葉県柏市を拠点とし、地域内の高齢者向けにスマートフォン、タブレット用のゲームアプリを提供する事業」を想定している(スマートフォン、タブレット向けアプリという時点で地域密着型のビジネスではないため、このサンプルをそのまま提出しても、政策目的に合致しないという理由で不採択になる可能性が高い)。

(1)事業の内容
 身体的・認知能力に課題を抱える高齢者をターゲットに(※誰をターゲットとするのか?)、「手足を動かす」、「考える」、「大勢で楽しむ」という要素を取り入れたスマートフォン、タブレット向け娯楽アプリ(※何を〔product〕)を開発・提供し、高齢者の身体的・認知能力の維持・向上を図る事業です。アプリの販売は、App Storeならびにgoogle play(※どのチャネルを使って〔place〕)を通じて行います。App Store、google playともに、アプリ販売のプラットフォームとしては高い知名度を誇るため、販促費用を安く抑えることが可能です。また、市内の診療所、介護福祉施設などにチラシを配布し、アプリの認知度アップを狙います(※どんな販促を通じて〔promotion〕)。アプリの価格は、他の類似アプリを参考に、315円(税込)(※いくらで〔price〕)とします。

(2)製品・サービスの独創性
 現時点では、高齢者向けに特化したアプリはほとんど存在しません(App Store、google playのアプリランキングを参照)。若年層に比べると、高齢者層はスマートフォン、タブレットの利用割合が低いことが、高齢者向けアプリの少なさの要因であると考えられます。ただし、利用率の伸びを見れば、高齢者層は他の年齢層よりも高い伸び率を示していることから、早期にこの市場に参入すれば、競合のアプリ開発会社を排してシェアを確保できると考えます。申請者は、高齢者の身体的・認知能力に関する研究に詳しい○○大学の△△教授と連携し(※競合優位性は自社のどのような活動・経営資源によって達成されるのか?)科学的に効果があると立証された動作をゲームに組み込む(※競合他社の製品・サービスに対する自社の優位性は何か?)ことで、競合他社であるアプリ開発会社(※競合他社はどこか?)との差別化を図ります。

(3)市場の特性、市場規模
 最近はゲームセンターに通う高齢者が増えており、シニア時間を設定しているところもあるなど、ゲームに対する高齢者の抵抗感がなくなってきています(※ターゲット市場の顕在的・潜在的ニーズは何か?〔定性的〕)。加えて、前述のように、高齢者のスマートフォン、タブレットの利用割合が将来的に伸びることを踏まえると、高齢者向けのゲームアプリの市場が広がると予測されます。柏市の65歳以上人口約8万人に、1人あたり教養娯楽支出23,787円/月(統計局による)をかけると、教養娯楽市場は約228億円となります。このうち、1%がアプリへの支出だと仮定すれば、アプリの市場は2.2億円と推測されます(※市場規模はどのくらいか?〔定量的〕)柏市の高齢化率は、2011年の20.0%から2015年には23.6%、さらに2025年には25.2%にまで上昇するため、それに伴ってアプリの市場も拡大する(※市場の成長スピードはどのくらいか?〔定量的〕)ものと思われます。

(4)創業する動機・きっかけ及び将来の展望
 申請者の家では数年前にWiiを購入していました。当初は申請者と申請者の子どもが一緒にゲームをしていましたが、申請者の家を時々訪れる申請者の両親(=高齢者)もWiiを楽しむようになりました(※きっかけとなった個人的な体験は何か?)。特に、頭を使うクイズ、パズルゲームや、簡単な手足の動作でスポーツを疑似体験できるゲームが好みのようでした。Wiiのような体感型ゲームが、最近ではスマートフォン、タブレットのアプリに取って代わられていることから、将来的に高齢者向けのゲームアプリ市場が登場する可能性を感じました。ゆくゆくは、市内の介護施設などで、入所者がスマートフォンやタブレットを囲んで脳内活性化などのゲームを行い、楽しみながら生きがいを感じてもらえるようになればと思います(※将来的にどのようにして地域に貢献していきたいのか?)

(5)スケジュール(採択後3年間に取り組む事業内容と実施時期)
(※事業を拡大し、初期投資を回収するためにどのような施策を打つか?〔人員増、HP開設、展示会出展、製品の新バージョンリリース、新店舗出店、代理店拡大など〕)
○1年目
 ・アプリ第1弾を導入(柏市を中心に千葉県全体にプロモーションを行い、年間3万ダウンロードを目指す。柏市のみで3万DLを達成した場合、シェアは3万DL÷8万人=37.5%。千葉県全体で3万DLを達成した場合、シェアは3万DL÷143万人〔千葉県の高齢者人口〕=約2.1%)。
 ・毎年新しいアプリを1つずつ発表することとし、次年度にリリースするアプリ第2弾の開発のために開発者を1名採用。
○2年目
 ・アプリ第2弾を導入(第1弾よりも速く普及すると仮定し、年間4万DLを目指す)。
 ・次年度にリリースするアプリ第3弾の開発のために開発者を1名採用。
 ・アプリ第1弾についても継続的に販促を行い、累計6万DL(2年目に3万DL上乗せ)を目指す。
○3年目
 ・アプリ第3弾を導入(第2弾よりも速く普及すると仮定し、年間年間5万DLを目指す)。
 ・アプリ第1弾、第2弾についても継続的に販促を行い、それぞれ累計9万(3年目に3万DL上乗せ)、8万DL(3年目に4万DL上乗せ)を目指す。

(6)売上・利益等の計画
創業補助金_損益計画サンプル

(※毎年、各製品・サービスはどれくらいの販売数を見込んでいるのか?販売増に伴ってコストはどのように変動するか?⇒数的根拠を書く欄はないが、表の下に計算式を書いておくとよい)
○1年目
 ・売上高=315円×3万DL=945万円
 ・売上原価=代表者・新規採用開発者の人件費+外部教授への委託費
       =700万円+500万円+105万円=1,305万円
 ・販売管理費=Apple、googleに支払う手数料(売上高の3割)+販促費+採用関連費
         =945万円×30%+105万円+105万円=493.5万円
○2年目
 ・売上高=アプリ第2弾の売上高+第1弾の売上高
      =315円×4万DL+315円×3万DL=2,205万円
 ・売上原価=代表者・既存開発者・新規採用開発者の人件費+外部教授への委託費
        =700万円+500万円+500万円+105万円=1,805万円
 ・販売管理費=Apple、googleに支払う手数料+販促費+採用関連費
         =2,205万円×30%+105万円+105万円=871.5万円
○3年目
 ・売上高=アプリ第3弾の売上高+第2弾の売上高+第1弾の売上高
      =315万円×5万DL+315円×4万DL+315円×3万DL=3,780万円
 ・売上原価=代表者・開発者2名の人件費+外部教授への委託費
        =700万円+500万円+500万円+105万円=1,805万円
 ・販売管理費=Apple、googleに支払う手数料+販促費
         =3,780万円×30%+105万円=1,239万円

(7)創業する事業の知識、経験、人脈、熱意
 申請者はゲーム業界での経験が長く、ヒット作「□□シリーズ」の開発に携わるなど、ユーザを飽きさせないゲーム、長期間楽しんでもらうゲームの開発に長けている(※創業者はなぜ今回の事業に向いていると言えるのか?〔知識・経験〕)。これに、申請者の大学時代の先輩にあたる○○大学の△△教授(※創業者はなぜ今回の事業に向いていると言えるのか?〔人脈〕)の知見を組み合わせれば、高齢者が楽しみながら身体的・認知能力を維持・向上できるゲームの開発が期待できる。また、申請者の親戚には介護施設の経営者がおり(※創業者はなぜ今回の事業に向いていると言えるのか?〔人脈〕)、入所者向けに今回のアプリを先行導入して、アプリの評価をしてもらうことも可能である。

(8)価格設定、販売促進活動
 価格は315円(税込)とする。類似アプリより若干高いが、○○大学の△△教授による研究をベースにしているという付加価値があるため(※なぜその価格に設定したのか?その価格はターゲット顧客に受け入れられるか?)、この価格でも高齢者には受け入れられると考える。販促活動に関しては、アプリ販売における典型であるWeb広告の他、市内の医療機関にチラシを配布することで、患者らへの認知を図る。Web広告は不特定多数への配信となるが、医療機関に配布するチラシは、今回のアプリのターゲット層にダイレクトにリーチすることが可能である(※どのような販促活動でターゲット顧客にリーチするのか?)

http://npo-bs.org/《追記》
 サンプルを書いてよく解りましたが、アプリビジネスは売り切り型では絶対に儲かりませんね・・・。アイテム課金システムがないとかなり厳しいです。あと、最後に宣伝になりますが(苦笑)、創業補助金の申請方法について何か解らないこと、相談したいことがありましたら、私が所属している認定支援機関「NPOビジネスサポート」(一般社団法人東京都中小企業診断士協会 城北支部の関連団体)までお気軽にご連絡ください。

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