プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2013年10月17日

『顧客を読むマーケティング(DHBR2013年10月号)』―GEの強みは(1)標準化(2)マネジャーの大量動員(3)研修(4)評価システム


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 10月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 10月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2013-09-10

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 DHBR2013年10月号からは、GEのCMO(最高マーケティング責任者)であるベス・コムストックらの論文「最高水準のマーケティングを全社で実行する GE流マーケティング徹底術」を取り上げたいと思う。この論文は、「わずか10年前には、GEはこれといったマーケティング組織を持っていなかった」という告白から始まる。世界中の企業がこぞってベンチマーキングの対象としてきたGEだが、実際には技術力や財務力ばかりが重視され、マーケティングに関しては手本となるものがなかった、というのだからちょっと意外だ。

 ただ、これには若干の謙遜も含まれていると感じる。商用・軍用航空機向けのエンジンを開発・製造するGEアビエーションについては、こんな記述が見られる。
 商用航空機向けのジェット・エンジン業界は、片手で数えられるほどの航空機メーカー、GEの競合2社(ロールスロイスとプラット・アンド・ホイットニー)のほか、およそ300の航空会社が関わるだけの比較的シンプルな構造である。

 「要人を一人残らず集めても、1つの会議室に収まります。それくらいこじんまりした業界なのですよ」と語るのは、GEアビエーションのエンジン・サービス担当バイス・プレジデント、トーマス・ジェンタイルである。GEキャピタルのCMOも経験したジェンタイルは、こう言葉を続けた。「このため私どもにとっては、市場調査がいったいどう役に立つのか疑問でした。文字通り受話器を取って業界のキーパーソン全員に電話をかけ、意見を聞けばそれで済みましたから」
 マーケティングの基本が「顧客の声をよく聞くこと」であるならば、GEアビエーションは実に基本に忠実だったと言える。マーケティングと言うと、大規模な市場調査を行い、回答内容を統計的手法を駆使して分析し、もっともらしいデータとして可視化しなければならない、という誤解(?)がこのような発言を生んだのかもしれない。しかし、市場調査は、ややもするとアナリストによる分析の過程で顧客のニーズの機微をそぎ落としてしまうリスクがあることを考えれば、顧客に直接電話をして聞くという素朴な方法も、決して市場調査に劣るマーケティング手法ではないだろう。

 前CEOのジャック・ウェルチが、シックスシグマとワークアウトによってGEを変革させたとすれば、現CEOのジェフリー・イメルトは、マーケティングを全社に浸透させることで変革を図ろうとしているようだ。だが、この論文を読んでみると、その改革手法には共通点が多いことに気づかされる。そして、その改革手法こそ、GEを世界最強たらしめている真の強みであるように思えた。

 ジャック・ウェルチがモトローラに倣ってシックス・シグマをGEに導入した時、まずはシックスシグマによる管理方法を標準化し、ミドルマネジャーを1万人単位で動員してシックスシグマ専任とした。彼らには有名なクロトンビル研究所で徹底的なトレーニングを施し、現場でシックスシグマの実践にあたらせた。それぞれの現場におけるシックスシグマのレベルは可視化され、どの現場でシックスシグマが進んでおり、逆にどの現場でシックスシグマが遅れているのかが一目で解る状態にされた。また、シックスシグマ専任となったミドルマネジャーの能力も評価され、能力レベルに応じてブラックベルト、グリーンベルトという資格が与えられた。

 この(1)標準化⇒(2)マネジャーの大量動員⇒(3)研修⇒(4)評価システムという一連の流れこそ、GEが得意とする改革手法である。ウェルチからバトンを受け継いだイメルトも、マーケティングを全社展開するにあたって、同じ改革手法を踏襲している。この4つのステップによって、GEは「一度やると決めたことは徹底的にやり抜く」のである。

(1)標準化
 GEは、財務や人事といった職能については、かなり以前に標準的な業務手順や一元的な専門性供給源を設けたが、マーケティングの業務慣行は製品ライン、事業ユニット、地域ごとにまちまちだった。そこで2008年末から2009年半ばにかけて、社内の精鋭マーケター30人に集まってもらい、マーケティングの新しい業務基準を作成した。(中略)

 優れたマーケターは以下で示すように4つの役割を果たすことがわかった。なかにはマーケティングの世界では異例な役割もある。変革の火付け役は現状に挑み、結果を出すための新しい、よりよい方法を探す。イノベーターは市場についての洞察を基に、未知の可能性を秘めた製品、サービス、ソリューションを考察する。橋渡し役は縦割り組織と機能別組織、会社と市場の間を取り持つ。実行役はアイデアを形にする。
(2)マネジャーの大量動員
 GEのマーケティング分野のリーダーは野心的な課題を掲げたが、どれほど野心があっても資質ある人材が不足していてはどうにもならない。そこで、2003年には2500人だったこの分野の人員を5000人へと倍増させた。全事業部と本社にCMOのポストを設け、生え抜きの人材のほか、消費者向け、法人向けの事業を手がける多数の他企業出身の人材を充てた。
(3)研修
 マーケターの果たすべき役割や責任については、規定を設けた。外部登用者には当社のマーケティング力を引き上げること、内部登用者には社外からの人材を当社の社風に馴染ませることを期待した。我々は、いずれ全員に確実に基本原則を習得してもらうために、研修プログラムを企画した。
(4)評価システム
 2010年の春、GEの全事業のCMOが配下のマーケティング・チームすべてを集めて自己評価を実施した。毎年恒例となったこの自己評価では、8つの主なケイパビリティ分野(※戦略&イノベーション、ブランディング&コミュニケーション、セールス部隊の手腕、新時代に必要とされる技能、市場知識、セグメンテーション&ターゲティング、価値創造&価格設定、販売促進の8つ)の成果を測定する。

 各ケイパビリティはいくつもの具体的な技能で構成され、個々の技能は詳しく定義されている。また各ケイパビリティについて、何をもって成果とするか、それをどう測定するかも定めてある。合計で35の技能と140の定義を用意するなど、きわめて精緻な評価法であるため、上辺を取りつくろうのは不可能である。
《追記》
 余談になるが、GEがマーケターに求める4つの基本的な役割は、以前の記事「フィリップ・コトラー他『コトラーのイノベーション・マーケティング』―マーケティングの4Pに代わる「イノベーションの6I」」で紹介したフィリップ・コトラーの「A-Fモデル」に酷似していると感じた。変革の火付け役はActivator、イノベーターはBrowser+Creator+Developer、橋渡し役はFacilitator、実行役はExecutorに該当する。GEが自社のマーケティングのあるべき姿を定義するにあたって、フィリップ・コトラーにアドバイスを仰いだかどうかは全く定かではないが・・・。

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