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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2013年11月03日

【ベンチャー失敗の教訓(第42回)】いびつなオフィス構造もコミュニケーション不全を引き起こす原因に


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 社内の風通しをよくするために、オフィスのレイアウトを改造して「大部屋方式」に変更するケースがしばしば見られる。特に、個室が当たり前となっている役員を1つの大部屋に集めることで、社内コミュニケーション活性化のシンボルとすることが多い。例えば、P&Gではアラン・ラフリーが役員の個室を廃止したし(アラン・ラフリー、ラム・チャラン『ゲームの変革者―イノベーションで収益を伸ばす』〔日本経済新聞出版社、2009年〕を参照)、日本ではJALや東京電力などが社内改革の一環として役員用の大部屋を設けている。

ゲームの変革者―イノベーションで収益を伸ばすゲームの変革者―イノベーションで収益を伸ばす
A.G.ラフリー ラム・チャラン 斎藤 聖美

日本経済新聞出版社 2009-05-23

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 大部屋に人を集めるだけですぐにコミュニケーションが活性化するのか?と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれない。だが、少なくとも、部屋を間仕切りだらけにすれば、コミュニケーションが著しく阻害されることを、私は前職の会社で身をもって体験した。以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第38回)】分社化したがゆえに生じた組織の壁」では、組織の壁が心理的な壁となっていたことを指摘したが、オフィスのいびつな構造によってもたらされた物理的な壁も、心理的な壁を助長する結果となっていた。

座席表

 3社が入っていたオフィスのレイアウトは上図の通りである。受付を左に曲がって細い廊下を抜けると、一番大きな「大部屋」がある。大部屋には社長室が2つあり、主にX社のA社長とZ社のC社長が使っていた。コピー機の横を通って奥に行くと、大部屋より一回り小さい「中央部屋」へと通じるドアがある。中央部屋は、周囲を壁と会議室に囲まれており、窓がなかった。さらに、受付を右に曲がったところには、離れ小島のように「小部屋」が存在した。

 私がX社に入社したばかりの頃は、3社全体で20人ちょっとしかおらず(私の社員番号は「10024」であり、私は24番目の社員だった)、広いスペースを持て余していた経営陣は、中央部屋を3社とは無関係な別の会社に貸していた。そして、X社とZ社が大部屋を、Y社が小部屋を使っていた。だが、大部屋から小部屋までは結構な距離があり、X社・Z社とY社の社員の間で十分なコミュニケーションが取れなかった。Y社はグループ会社という感じがしなかった。

 その後、中央部屋に入っていた企業が順調に成長して規模が大きくなったことと、3社の人数が増えたこともあって、大幅なレイアウト変更が行われた。中央部屋に入っていた会社は別のオフィスに引っ越し、中央部屋にはY社が移動した。そして、X社とZ社のシニアマネジャーたちが大部屋を使い、小部屋には両社の若手スタッフ(私を含む)が押し込められた。

 私は、小部屋に入れられていた時が最もコミュニケーション不全を起こしていたと思う。まず、若手スタッフとその上司であるシニアマネジャーとの間でコミュニケーションが取りにくくなった。シニアマネジャーは部下に何かを指示する時、小部屋を訪れたり、大部屋に部下を呼び出したりせずに、メールや内線で済ませることが多くなった。顔と顔とを突き合わせないコミュニケーションは、必要最小限の情報しか伝えない無味乾燥なものになりやすい。そういったコミュニケーションが積み重なると、両者の間には微妙な壁が生じる。

 また、若手スタッフが小部屋に”隔離”されたことで、仕事をさぼりやすい状況を作ってしまった。シニアマネジャーは若手スタッフの仕事ぶりを観察できないし、進捗確認のために小部屋にやって来るわけでもない。だから、仕事で手を抜こうと思えばいくらでも手を抜くことができた。ある若手スタッフは、白昼堂々とアダルトサイトをチェックしていたこともあった。もっとも、別の若手スタッフの話によれば、シニアマネジャーのところに仕事の相談に行ったら、シニアマネジャーもゲームをしたり株の売買をしたりしていたというのだから、五十歩百歩である。要するに、距離が離れてしまうと、お互いへのけん制効果がなくなる。これも一種のコミュニケーション不全であろう。

 中央部屋に移動したY社の社員は、相変わらず孤立した状態が続いていた。中央部屋は大部屋からも小部屋からも様子が全く見えない。Y社の社員がいつ出社して、いつ退社したのかさえも解らない。この状況で、Y社とのシナジーを目指せというのは無理な話であった。しかも、中央部屋に窓がないというのも、Y社の社員を窒息させる一因になっていたように思う。たかが窓ぐらいと思われるかもしれないが、やはり窓のない職場はどんよりと沈んだものになりやすい。Y社の雰囲気が重たくなればなるほど、X社やZ社の社員はますます中央部屋に近づかなくなった。

 その後、リストラなどの影響もあって、再び大幅なレイアウト変更が実施された。今度は、X社の社員ほぼ全員が大部屋に集められ、中央部屋で窒息しかかっていたY社も晴れて大部屋に移動することができた。Y社の社員が去った中央部屋は、Z社が使用することになった。そして、離れの小部屋には、3社の管理部門のスタッフが集められた。しかし、結果は同じであった。中央部屋に入ったZ社は、X社・Y社とのコミュニケーションが遮断されてしまったし、各社とも自社の管理部門との意思疎通が難しくなってしまった。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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