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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2013年11月10日

【ベンチャー失敗の教訓(第43回)】じりじりと生産性を阻害するオフィスレイアウト


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 前回の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第42回)】いびつなオフィス構造もコミュニケーション不全を引き起こす原因に」の続きになるが、3社が入っていたオフィスはとにかく使い勝手が悪かった。オフィスレイアウトの図を再掲する。

座席表

 大部屋には4人の島がいくつか配置されていたが、上図からもお解かりいただけるように、この4人の島の間が非常に狭く、移動がしづらかった。その割にデッドスペースが多いので、大部屋にはあまり多くの社員を入れることができなかった。一般的なオフィスのように、2列対面式のデスクを3組配置すれば、36人は収容できたはずだ(1組が6人×2列=12人、それが3組なので12人×3組=36人)。これは、当時大部屋に入っていた人数=26人よりも10人多い。だが、デスクが床に完全に密着している構造であったため、レイアウトの変更はほぼ不可能だった。

 キャビネットには文房具などの備品が入っていた。ところが、キャビネットは大部屋、小部屋、中央部屋に分散しており、しかも、各部屋のキャビネットの中身が異なっていた。はさみを1つ探すだけでも、それぞれの部屋のキャビネットを探し回る必要があったぐらいだ。加えて、誰かが自分のよく使う備品を、自分の部屋のキャビネットに勝手に移動させてしまうので、どの備品がどこのキャビネットに入っているのかすぐに解らなくなってしまった。社員がよく使う備品に関しては、多少余計な買い物になったとしても全員分を購入して、各自のデスクの引き出しに保管してもらうべきだったと思う。そうすれば、備品をわざわざキャビネットまで取りに行く手間が省ける。

 コピー機は、大部屋と中央部屋の間にある小さなスペースに設置されていた。大部屋や中央部屋からまっすぐコピー機のところには行けず、壁をぐるりと回り込まなければコピー機のもとにたどり着けなかった。小部屋の社員に至っては、中央部屋を通り抜けていかなければコピー機のところに行けなかった。また、コピー機のスペースは周囲から完全に死角になっていたため、しばしば社員のたまり場になっていた。

 会議室も、会議に向いていないレイアウトであった。前職の会社では、PCとプロジェクタを使いながら議論をすることが多かった。ところが、なぜかコンセントが床に埋め込まれているという変な構造で、しかも、机の脚がコンセントを邪魔していることがあった。そのため、いちいち机をずらしてコンセントを床から露出さなければ、PCをコンセントにつなぐことができなかった。

 プロジェクタは会議室4つに対して2台しか用意されていなかった。プロジェクタは中央部屋のキャビネットにしまってあったので、会議のたびに中央部屋にプロジェクタを取りに行かなければならなかった。さらに悪いことに、プロジェクタの電源ケーブルが短すぎて、いつも延長コードを使う必要があった。ところが、その延長コードがいつも違うキャビネットに入っていたため、延長コードを探す時間の分だけ会議のスタートが遅れることがよくあった。それぞれの会議室にプロジェクタと延長コードを1セット置いておけば、こういう細かい無駄は防げたのにと今さらながら思う。

 工場であれば、少しでも生産性を上げるために、レイアウトを慎重に決定するはずだ。レイアウトの検討に先立って、まずは「工程分析」を行い、生産プロセスの流れを明らかにする。JISの定義によると、工程分析とは、「生産対象物が製品になる過程、作業者の作業活動、運搬過程を系統的に、適合した図記号で表して調査・分析する手法」となっている。工程分析では、原材料が投入されて製品になるまでの変化の過程を「加工」、「運搬」、「停滞」、「検査」に区分して「工程図記号」で表し、方法・時間・距離などを付記した工程図を作成して、工程の改善や標準化を行う。

 工程分析を行った後、レイアウト図に工程図記号を記入し、加工対象物が工場内を流れて行く経路や、作業者が工場内を移動する経路を線図で表す。この分析を「流れ分析」と呼び、流れ分析によってでき上がる図のことを「流れ線図」と言う。流れ線図を用いて、人や物の動きを視覚的に把握し、運搬の分析を行う。また、線の交差の程度や頻度、あるいは逆送の具合などから、人や物の流れの錯綜具合を確認して、レイアウトの改善につなげていく。

 工場のレイアウト分析に比べると、ホワイトカラーの職場のレイアウト分析は不十分である。3社が入っていたオフィスは、レイアウト分析が極度に遅れていたと言わざるを得ない。そのせいで、社員1人1人の生産性が少しずつ阻害されていた。積もり積もれば、膨大なムダになっていたことだろう。先日、たまたまX社の元顧客企業の方と話をさせていただく機会があったのだが、その方はオフィスを訪れた際に、「こんなオフィスでやっていけるのか?」と思ったそうだ。やはり、解る人には解るのだろう。そういうことを、入社面接の時に見抜けなかった私が悪い。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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