プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
シャイン経営研究所HP
シャイン経営研究所
 (私の個人事務所)

※2019年にWordpressに移行しました。
>>>シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)

Next:
next 平成26年度経済産業省概算要求 中小企業関連政策のポイント
Prev:
prev 大東文化大学セミナー「アジア市場と日本企業の国際連携戦略」まとめ―(2)中国
2013年12月05日

大東文化大学セミナー「アジア市場と日本企業の国際連携戦略」まとめ―(3)韓国


 最後は韓国人研究者。来日当初の研究テーマは「日本企業の国際化」であり、日本の親会社から海外子会社への技術移転プロセスを研究していた。主に、自動車・電機産業のアジア進出が調査対象であった。現在の専門は、経営の国際比較。今までに海外の事業所を500ほど回ったそうで、これより多いのは東京大学の藤本隆宏ぐらいらしい。

 ・「段階的な技術移転」論とは、日系企業の技術能力を4段階(学習⇒定着⇒改善⇒イノベーション)に分け、段階を踏むごとに海外子会社の技術能力が高度化していくという仮説を定式化したものである。前者の2つの段階は「移転型」、後者の2つの段階は「創造型」と呼べる。移転型の特徴は、親会社から海外子会社に対して一方的に技術能力の移転が行われる点にある。これに対して創造型の特徴は、海外子会社がイニシアティブをとり、生産プロセスの改善やイノベーション、さらには製品自体のイノベーションを起こす点にある。

 ・90年代の日系企業は極めて優秀な「移転」能力を発揮し、経営成果も良好であった。しかし、現地の経営資源を取り入れて新しいものを「創造」するケースはあまり見当たらなかった。その理由として、(1)「移転」能力以上を求めない日本本社の技術戦略、(2)海外子会社の高い離職率、(3)技術インフラが劣悪な現地の環境条件などが考えられた。

 ・「継続的な技術移転」論とは、日系企業は現地の環境条件に合わせて保有技術の最適な配置・再配置を俊敏に行うことを指す。90年代には、日本⇒アジアNIES⇒ASEAN⇒中国と技術が移転されていった。アメリカ・モデルでは、新しい拠点を作る時には古い拠点を閉鎖するのが一般的だが、日本モデルでは、新しい拠点を作る時でも古い拠点を閉鎖せず、古い拠点から新しい拠点に技術を移転させるのが特徴である。

 ・「段階的な技術移転」論と「継続的な技術移転」論は、「日本本社が世界をリードする豊富な技術候補を持っており、現地子会社の環境変化に合わせて瞬時に技術の入れ替えが可能である」ことが前提である。しかし、90年代後半に入ると、この前提が崩れ始めた。シーズ面では、技術パラダイムのシフトが起こり、デジタル技術の進展や破壊的イノベーションなど、日本企業が直面したことのない変化が現れた。また、ニーズ面では、新興国固有のニーズが生じ(廉価版に対するニーズなど)、日本がこれまで従ってきたルールが通用しなくなった。

 ・2000年頃に再調査した結果、日系子会社の技術能力は進歩していなかった。前述の通り、前提が崩れ始めたにもかかわらず、依然として「移転型」が主流であり、「創造型」は見当たらなかった。子会社の数は非常に増えたが、能力の質的転換は行われなかった。海外でも「失われた20年」の状態であったと言える。

 ・海外への技術移転には2つの側面がある。(1)本社から海外子会社への移転と、(2)子会社から現地社会(ローカル環境)への移転である。後者の本質は「移転」ではなく、現地社会との「融合」であり、その融合から創造が生まれる。日系企業は(1)は得意だが(2)が不得手である。

 ・新興国ビジネスで成功するためには、R&Dチームや製品開発チームに現地のメンバーを入れ、彼らに大幅に権限移譲する必要がある。GEはインドで携帯型の超音波診断装置を開発した。CTスキャンやMRIが何百万円もするのに対し、GEの超音波診断装置は3万円と非常に廉価である。製品開発チームにはインド人や中国人が入り、彼らに大幅な権限が与えられた。インドで3万円の超音波診断装置が売れると、今度は先進国でも売れ始める。これをリバース・イノベーションと呼ぶ。現地人への権限移譲はイノベーションを起こす重要なカギであるが、何よりも「人に対する深い愛情」がなければ、イノベーションは生まれない。

 ・日本企業でも、新興国とうまくつき合っている企業はある。

 (1)ホンダ・・・ホンダまがいの二輪車を製造しているメーカーに対し、敵対的な態度でこれを排除しようとするのではなく、むしろ彼らをを買収し、ホンダの技術を導入して品質改良を行っている。ホンダ自身も、中国の技術から学ぶところがあるという。

 (2)デンソー・・・タタにワイパーを販売する企業。事業部ではなく、本社営業主導のテクニカルセンターを上海、タイ、サウスフィルドに置いている。また、現地の工場長は日本本社の常務クラスであり、強い発言力を盾に「現地市場に合った製品を作れ」と言える。さらに、中央研究所のエンジニアにはパスポートを持たせ、海外に駐在させている。

 逆に、トヨタはインド市場で苦戦している。インドの自動車人気ランキングを見ると、1位タタ(20万円)、2位スズキ(60万円)、3位現代(60万円)となっている。トヨタウェイでは20~60万円の自動車は作れない。トヨタウェイを捨てない限り、新興国では売れない。トヨタは有能な企業ではあるが、尊敬される企業ではない。トヨタなどを称賛する前に、「創造型」経営をしている企業をもっと探すべきである。「地球と一緒に成長していける企業」を見極める目を持つ必要がある。

 ・韓国企業と日本企業の違いは以下の5つであると考える。

 (1)大規模投資・・・サムスン、現代など。現代は中国で250万台/年の生産体制を構築している。これは、中国の年間生産台数2,000万台の1割強に相当する。

 (2)ずば抜けたマーケティング・・・「作るものを売る」のではなく「売れるものを作る」。「人を楽しく、うれしく、気持ちよくさせる製品」を作る。例えば、インドではカギつきの冷蔵庫、シルクが洗える洗濯機(インド人の普段着にはたいていシルクが使われている)、クリケットのスコアが常に表示されるテレビなどが求められる。そこにいかに早く気づけるか。日本はテレビのリモコンにたくさんボタンをつけている場合ではない。

 (3)R&D機能の早期進出・・・韓国企業は、現地企業や多国籍企業の現地法人を相手に、R&D機能を海外に積極的に出している。一方、日本では、R&Dが海外に出ていかない企業がダメになっている。企業側に「海外に出ると技術が盗まれる」という意識が強すぎるし、経済産業省も海外進出に縛りをかけている(経産省はどこかの国のスパイではないか?と疑いたくなる)。

 (4)高い自動化率と工場のグローバル標準化・・・日本の自動車メーカーと現代を比べると、現代の方が自動化率が高い。そのため、人材育成に時間をかける必要がない。1つの工場で年間20万台生産できるようになるまでのスピードが圧倒的に違う。

 (5)優秀な人材を海外に出す・・・本社のポストと現地のポストがリンクしており、かつ権限も大きい(日本企業では、50万円の決裁権限もない管理職が多すぎる)。その代わり、要求される成果も厳しく、常にチェンジマネジメントが求められる。1年間で何らかの”チェンジ”を達成することができなければ、現地トップは交代させられる。

  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like