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2013年11月19日
国立西洋美術館「ミケランジェロ展」に行ってきた


天井画には、聖書の冒頭にある『創世記』の9つの場面が、時系列に沿って描かれてる。各場面は、祭壇側から正面入口を望む方向に立って見上げた時に、正しく見えるようになっている。画題は祭壇側から順に、(1)光と闇の分離、(2)太陽、月、植物の創造、(3)大地と水の分離、(4)アダムの創造、(5)エヴァの創造、(6)原罪と楽園追放、(7)ノアの燔祭、(8)大洪水、(9)ノアの泥酔となっている。9つの画面のうち、5つの小画面の四隅には、20名の筋肉質の男性裸体像が描かれており、イニューディ(単数形イニュード)と呼ばれる。イニューディは聖書には登場しない人物であり、ミケランジェロがどのような意図でイニューディを描いたのは不明である。
「最後の審判」は、キリストの審判によって天国へ上る人と地獄へ落ちる人とを表現した作品である。「最後の審判」が公開された時に人々を驚かせたのは、裸体の多さであった。これは、「人間の裸体こそ神の最高の創造物である」というミケランジェロの信念の表れであった。ところが、それを快く思わない後の教皇は、別の画家に衣服を描かせた。そのため、一部の人物の下半身には、やや不自然な形で布が描かれている。
「最後の審判」でミケランジェロが披露した技法は、「マニエリスム」と呼ばれる(「洗練された手法(maniera)」に由来。)。様式が起こった当初は、ルネサンス後期の技巧的な様式と混同されたが、引き伸ばされた人体比率で描かれる人物や、写実性より内面や雰囲気を描き出す抽象的表現などが後になって再評価された。なお、そんなマニエリスムに従って描かれた人物の中に、実はミケランジェロ自身が描かれている。右側の地獄へ落ちる人の中に、皮だけをはぎ取られた人間がいる。これがミケランジェロだ。大作で精根尽き果てた自分を投影したのであろうか?
館内には大型の4Kテレビが設置されており、日本の4Kテレビが初めてシスティーナ大聖堂内部の撮影に成功した模様が放映されていた。確かに、画質は圧倒的に美しい。筆跡が鮮明に見えるし(マニエリスムは、筆跡が画面に残るほどの筆圧で描かれるのも特徴だ)、一筆ごとに微妙に異なる色合いが織りなすグラデーションまではっきりと解る。ただ、これを自宅に置きたいとまでは思わなかったなぁ(最後は展示の内容とは関係ない感想になってしまった・・・)。