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2013年12月10日
平成26年度経済産業省概算要求 中小企業関連政策のポイント
経済産業省のHPで、来年度予算の概算要求に関する資料が公開されている。平成26年度の中小企業・小規模事業者関係予算の要求額は、政府全体で2,394億円(平成25年度予算は1,811億円)、経産省分が1,351億円(同1,071億円)に上る。経産省は、「今後の中小企業・小規模事業者政策の柱」として、以下の7つを挙げている。
1.被災地の中小企業・小規模事業者対策に万全を期す1、6、7はやや特殊な政策であるため、2~5について、経産省が想定している具体的な重点事業を以下に列挙する。
2.小規模事業者に焦点を当てる
・中小企業の87%は小規模事業者。
・景気回復の実感を全国366万者の小規模事業者に行き渡らせる。
3.開業率10%台を目指す
・日本の開業率は4.5%(2011年度)。
・イギリスは11.2%(2011)、アメリカは9.3%(2010年)。
4.黒字の中小企業・小規模事業者の倍増を目指す
黒字の中小企業・小規模事業者(資本金1億円未満の法人)
・1991年度:109万社(黒字比率:50%、法人数:219万社)
・2011年度: 70万社(黒字比率:27%、法人数:254万社)
5.新たに1万社の海外展開の実現を目指す
・海外直接投資を行っている中小企業数 :5,630社(2009年)
・輸出を行っている中小企業数(製造業):5,920社(2010年)
6.消費税転嫁対策に万全を期す
7.経済活力を維持する
2.小規模事業者に焦点を当てる【要求額:232億円】
○小規模事業者の振興を図るための「基本法」の制定【次期通常国会への法案提出】
○中小企業庁に新たに「小規模企業支援課(仮称)」を設置
(1)安定的な事業継続を目指す小規模事業者を支援
①小規模事業者経営改善資金融資事業(マル経)【40億円(拡充)】
・経営指導員の指導を条件とした融資制度(無担保・無保証・低利)の貸付限度額を拡充(1,500万円→2,000万円)。
②小規模事業者等人材・支援人材育成事業【15億円(新規・特別枠)】
・得意分野に応じた経営指導員の支援能力の向上等を図る。
③小規模事業者の活力向上のための税制措置の創設【税制(新規)】
・小規模事業者の6割を占める個人事業主の経営の安定を図るため、純損失の繰越期間の延長等、所要の税制措置を講ずる。
(2)小規模事業者の新たな挑戦を支援
①小規模事業者等JAPANブランド育成・地域産業資源活用支援事業【29億円(新規・特別枠)】
・「中小企業地域資源法」を見直し、B級グルメを活用した事業やコミュニティビジネス等を支援。あわせて、小規模事業者の活用が期待される観光資源を活かした事業を重点的に支援。
②小規模事業者活性化事業【34億円(拡充)】
・新事業展開を目指す小規模事業者の事業計画策定を支援するとともに、計画に基づく新商品・サービスの開発等を支援。
③下請中小企業・小規模事業者自立化支援事業 【12億円(拡充)】
・下請構造から脱却するための新分野進出や販路開拓等を支援。
(3)経営支援を強化
○中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業【77.2億円(新規・特別枠)】
・小規模事業者等の相談にワンストップで対応する「よろず支援拠点」(「富士市産業支援センター」がモデル)を認定支援機関等のネットワークのコーディネータ役として全国47箇所に整備。
・支援ポータルサイト「ミラサポ」を通じて時間や場所にとらわれず経営相談を行える仕組みや専門家派遣を受けられる体制を構築。
3.開業率が廃業率を上回る状態にし、開業率が10%台になることを目指す【要求額:163億円】
(1)創業を増やす
①地域創業促進支援事業【20億円(新規)】
・全国300箇所の認定支援機関等において、女性・若者等を対象に、創業予備軍の発掘からビジネスプランの作成を支援。
・「産業競争力強化法(仮称)」で創設する市区町村が関与する創業支援スキームに基づく創業を促進。
②地域創業促進税制【税制(新規)】
・「産業競争力強化法(仮称)」に基づき計画を策定した市区町村の区域内では、認定支援機関の指導・助言を受けて会社を設立する場合に登録免許税を軽減。
③創業を金融面から支援
ⅰ)中小企業・小規模事業者経営力強化融資・保証事業【14.9億円(新規)】
・認定支援機関の支援を前提とした、創業・経営多角化事業に対する低利融資(基準金利-0.4%)等を整備することで、中小企業・小規模事業者の経営力強化を図る。
・女性・若者・シニアによる創業に対する金利を引き下げ(-0.65%)。
ⅱ)新創業融資制度【財投(拡充)】
・創業後2年以内の事業者に対する融資制度(無担保・無保証・低利)について、貸付限度額を拡充(1,500万円→3,000万円)するとともに、据置期間を延長(6ヶ月→1年(運転)、2年(設備))。
ⅲ)再挑戦支援資金【財投(拡充)】
・再挑戦する起業家に対する融資制度について、貸付限度額を拡充(2,000万円→7,200万円)するとともに、女性・若者・シニアに対して金利を引き下げ(基準金利-0.4%)。
④地域商業自立促進事業【60億円(新規・特別枠)】
・インキュベーション施設の整備や空き店舗への店舗誘致等を支援し、商店街の新陳代謝を進める。
・宅配等による「御用聞き」事業等の支援や、地域の消費活動のベースとなるコミュニティの形成に向けて、子育て支援施設の整備等を支援。
(2)事業承継を通じて第2創業を後押しする
○中小企業再生支援協議会事業【48億円(拡充)の内数】
・「事業引継ぎ支援センター」の全国展開(8→24箇所)を図るとともに、親族内承継に対する支援を強化。
(3)個人保証制度の見直しによる創業・事業承継の促進
①経営者保証に関するガイドラインの策定
・経営者本人による保証について、法人の事業資産と経営者個人の資産が明確に分離されている等、一定の条件を満たす場合には、保証を求めないこと等に関するガイドラインを策定。
②保証人特例制度【財投(新規・拡充)】
・経営責任者の個人保証を免除・猶予する特例制度について、公庫の中小事業に加えて、国民事業においても創設するとともに加算利率をリスク対応型に変更(+0.3%→+0.0%~+0.4%)。
③事業再建・事業承継支援資金【財投(拡充)】
・事業承継の円滑化に向け、保証人免除に応じる民間金融機関と協調して個人保証によらない融資を推進。(保証人特例制度の上乗せ金利を免除)
4.黒字企業を倍増【要求額:161億円】
(1)ものづくりを支援
○ものづくり中小企業・小規模事業者等連携事業創造促進事業【126億円(新規)】
・「中小ものづくり高度化法」の特定ものづくり基盤技術を見直し医療、環境分野などの成長分野にも対応したビジネス化を見据えた研究開発を支援し、数多くのグローバルニッチトップ企業の創出を図る。
(2)新事業展開・生産性向上を支援
①中小企業・小規模事業者連携促進支援事業【23億円(新規・特別枠)】
・農商工連携等による新事業活動を支援。その際、サービス分野への進出を重点的に支援するとともに、成長分野への進出の障壁となっている許認可等の取得も支援。
②中小企業投資促進税制【税制(上乗せ・延長)】
・ITの活用による生産性向上を促すため、ソフトウェアが組み込まれた設備等につき特別償却等の繰越期間の延長(1年→3年)を図るとともに、特別償却・税額控除割合の引上げを行う。
③IT活用促進資金【財投(拡充)】
・ITの活用による生産性向上を促進するため、製造ラインにおけるコンピューター化等、企業の基幹業務の効率化を図るための設備資金の金利を引き下げる(基準金利-0.65%→-0.9%)。
(3)認定支援機関の支援の「質」の向上
○認定支援機関等研修事業【2億円(拡充)】
・認定支援機関(1.6万機関)に対する経営改善・事業再生や海外展開に関する支援ノウハウ等の研修を強化。
5.1万社の海外展開を実現【要求額:32億円】
○中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業【31億円(新規)】
・展示会出展・F/S調査支援や情報提供事業に加え、決済機能付き外国語HPの作成支援、「中小企業海外現地支援プラットフォーム」の拡大(8ヶ国10箇所→新たに5箇所程度整備)や海外現地常設ショールームの設置等を行う。