プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
シャイン経営研究所HP
シャイン経営研究所
 (私の個人事務所)

※2019年にWordpressに移行しました。
>>>シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)

Next:
next 『競争優位は持続するか(DHBR2013年11月号)』―戦略構想の7ポイント
Prev:
prev 【数学B(数列)】漸化式の特性方程式はなぜあの形なのか?
2013年12月16日

『競争優位は持続するか(DHBR2013年11月号)』―戦略構想の7ポイント(に入る前の前書き)


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 11月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 11月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2013-10-10

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 競争環境が激化する中で、企業は競争優位を持続させることができるのか?というのが本号の大きな問いである。この問いに対し、「競争優位を持続することは不可能に近い。その都度競争優位を構築する必要がある」という立場をとっているのが、リタ・ギュンター・マグレイス「事業運営の手法を変える8つのポイント 一時的競争優位こそ新たな常識」という論文である。一時的な競争優位を獲得するためのポイントとして著者が挙げているのが、

 (1)業界という既存の枠組みにとらわれない発想をする
 (2)大きなテーマを設定して実験を促す
 (3)起業家精神の成長を促す評価基準を採用する
 (4)顧客のエクスペリエンスと顧客へのソリューションを重視する
 (5)顧客や社員と強固な関係性とネットワークを構築する
 (6)非情な業務再編を避け、健全な撤退策を学ぶ
 (7)初期段階のイノベーションに組織的に対応する
 (8)実験し、反復し、学習する

の8つである。要するに、顧客の潜在ニーズを素早く見極め、どのような製品・サービスが受け入れられるのか実験を繰り返し、競合他社よりも早くソリューションを導出しならない、ということである。そして、顧客ニーズに少しでも変化が見られたら、過去のソリューションはさっさと捨て去り、再び実験のプロセスに突入する。この繰り返しである。

 これに対し、「持続する競争優位性を構築することは今でも可能である」という立場に立っているのが、トッド・センガー「成功する起業セオリーが持つ3つの"sight" 戦略は価値観に従う」と、佐藤克宏「戦略の賞味期限が短くなった時代 ケイパビリティこそ競争優位の源泉である」だ。

 「戦略は価値観に従う」という点については、旧ブログの記事

 戦略による競争優位からビジョンによる競争優位へ?―『「チェンジ・ザ・ワールド」の経営論(DHBR2012年3月号)』
 競争優位が戦略からビジョンへ移行しつつあることの再発見―『絆の経営(DHBR2012年4月号)』

でも書いたが、ディズニーを題材としたこの論文は、ディズニーの価値観というよりは、「戦略ストーリー」が競争優位になっていることを論じたものである(「戦略ストーリー」については、旧ブログの記事「(※注)以降の記述で作品に関する核心部分が明かされています―『ストーリーとしての競争戦略』」を参照)。この論文を読むと、ディズニーの戦略は、ウォルト・ディズニーが描いた戦略ストーリーに忠実である、逆に言えば、ウォルト・ディズニーが創業時に設計した戦略ストーリーは非常に緻密であり、今でも十分に威力を発揮していることがうかがえる。

 後者の論文では、「成人学習(アダルト・ラーニング)」の原則に従って、社内にケイパビリティ(組織能力)を蓄積することの重要性が説かれている。ちなみに、ケイパビリティとコア・コンピタンスはしばしば混同されることがあるので、その違いを私なりに簡単に述べておきたいと思う。コア・コンピタンスとは基本技術のことであり、その技術から競争力が高い多数の製品・サービスを生み出せるような技術を指す。コア・コンピタンスの提唱者であるゲイリー・ハメルとC・K・プラハラードは、その一例として、ホンダにおけるエンジン技術を挙げた。ホンダはエンジン技術を核として、芝刈り機や除雪機から自動車まで、幅広く製品を展開している。

 これに対して、ケイパビリティとはもっと広い概念であり、マイケル・ポーターの言う「価値連鎖(バリュー・チェーン)」におけるそれぞれの活動の中で、価値を飛躍的に増加させる社員の行動の集合を意味する。例えば、P&Gのケイパビリティはマーケティングであり、トヨタのケイパビリティは生産を中心としたトヨタ生産システムである。

 この論文については、企業が自社のケイパビリティを特定する方法が曖昧な印象を受けた。戦略の定石としては、まずは外部環境を分析して市場機会を特定し、そのチャンスをものにするための具体的な製品を構想する。そして、その製品をスムーズに製造・販売すべくケイパビリティを強化する、というステップを踏むものである。だが、本論文はこのようなプロセスに触れていない果たして、外部環境の分析なしに、ケイパビリティを突き止めることは可能なのだろうか?ややもすると、外部環境を無視した、内向きで独りよがりの能力アップになりはしないだろうか?

 (続く)

  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like