プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2013年12月17日

『競争優位は持続するか(DHBR2013年11月号)』―戦略構想の7ポイント


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 11月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 11月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2013-10-10

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 (前回の続き)

 DHBR2013年11月号に関して書きたかったのは前回の記事のような内容ではなくて(汗)、これから書く内容である。思いがけず前置きが長くなってしまったため、記事を分割した。

 戦略とは、簡単に言えば「誰をターゲットに、どのような顧客価値を提供するのか?競合他社と差別化を図るためにどうするのか?」ということである。だが、様々なセグメントの顧客を相手に、様々な製品・サービスを取り扱う企業の経営者は、もう一歩踏み込んで戦略を構想しなければならない。そのための7つのポイントを、まだまだ不十分ながら図にまとめてみた(この7つのポイントをもっと上手にまとめられる図があったら教えてください)。

アンゾフの成長ベクトルを基にした「戦略構想の7ポイント」

 この図のベースとなっているのは、イゴール・アンゾフの「成長ベクトル」である。製品、顧客の両軸ともに、自社にとって既知か未知か、競合他社にとって既知か未知か、という区分を設けており、やや複雑な図になっている。以下、7つのポイントを簡単に見ていきたいと思う。

(1)リピート購入
 自社・競合他社の双方にとって既知の顧客に対し、自社・競合他社の双方にとって既知の製品を提供する場合である。要するに、どうすれば自社の製品をリピート購入してもらえるか?ということだ。CRM(顧客維持管理)の分野でよく知られた研究であるが、既存顧客を維持するためのコストは、新規顧客を獲得するためのコストの5分の1ですむ。既存顧客の再購入を動機づけ、競合他社が自社の顧客に手をつけられないような防壁を築くことがポイントとなる。

(2)顧客の奪取
 競合他社にとっては既知の顧客だが、自社にとっては未知の顧客に対し、自社・競合他社の双方にとって既知の製品を提供する場合である。言い換えれば、市場の中で自社が手つかずの顧客を競合他社から奪い、市場シェアの拡大を目指すケースである。(1)で既存顧客のリテンション(維持)の重要性について述べたが、そうはいっても一定割合の既存顧客は離反していくものであり、穴埋めのために新規顧客を獲得しなければならない。

(3)製品の新用途
 自社・競合他社の双方にとって未知の顧客に対し、自社・競合他社の双方にとって既知の製品を提供する場合である。入念なマーケティングを行っても、自社や競合他社が全く想定していなかった顧客層が出現して、製品を利用することがある。

 一例を挙げると、最近はゲームセンターに通う高齢者が増えている。これは、若者をターゲットに長年ビジネスを行ってきたゲームセンターにとっては想定外である。だが、高齢者は、老化防止のためにゲームセンターに通い、同じくゲームセンターに通う他の高齢者と交流を図っている。こういうケースがありうるので、経営者は次の問いを検討しなければならない。「自社の製品を重宝している意外な顧客はいないか?」

(4)顧客単価向上
 自社・競合他社の双方にとって既知の顧客に対し、自社にとっては未知だが競合他社にとっては既知の製品を提供する場合である。その目的は、自社の既存顧客に対し、自社ではそれまで取り扱っていなかった製品を販売することで、顧客単価を上げることにある。

 (2)顧客の奪取との違いは、ソフトバンクとドコモの違いを考えると解りやすい。ソフトバンクは、印象的な広告と基地局の増強によって、ドコモの顧客を奪うことに必死である。一方、ソフトバンクにシェアを食われているドコモは、らでぃっしゅぼーやを買収したり、dマーケットを充実させたりと、ECサイトの充実に注力している。ドコモは通信料収入以外の収入を増やそうとしており、明らかにアマゾンや楽天を意識している。

(5)多角化
 自社にとっては未知であるが競合他社にとっては既知の顧客に対し、自社にとっては未知だが競合他社にとっては既知の製品を提供する場合である。簡単に言えば、異業種への参入である。既存事業の成長スピードよりももっと早く成長を達成したい場合、あるいは既存事業が衰退に向かっており新たな成長源を見つけなければならない場合は、多角化が選択される。

 前者の例としては、DeNAが挙げられる。もともとオークションサイトの運営会社としてスタートした同社は、携帯電話向けのゲーム市場が急速に広がると、ゲーム事業の拡大を重視するようになった。後者の例としては、富士フィルムがある。デジカメの台頭によってフィルム事業が縮小した同社は、フィルム事業で培った技術を活かして化粧品事業へと参入した。

(6)代替品
 自社・競合他社の双方にとって既知の顧客に対し、自社・競合他社の双方にとって未知の製品を提供する場合である。これは、既存の製品によって満たされていたニーズが、全く新しい別の代替品によって満たされるケースである。代替品は自社のビジネスを侵食するため、(1)リピート購入などと同時並行で検討するのは非常に難しい。しかし、代替品の検討を放置すれば、いずれは他社が代替品を引っ提げて市場をかく乱するであろう。

 最近の例で言うと、デジタルカメラ業界は、スマートフォンのカメラ機能の高度化によって苦境に陥っている。そのスマートフォンが浸食した意外な市場としては、成人向けのマンガ雑誌市場がある。マンガを読む大人は、マンガを求めていたわけではなく、通勤電車の中での暇つぶしを求めていた。スマートフォンは、暇つぶしのための格好のアイテムになったわけだ。

(7)新市場の創造
 顧客が自社・競合他社の双方にとって未知である、または製品が自社・競合他社の双方にとって未知である場合である。7つの戦略の中では、最も難易度が高い。これが上手なのは言うまでもなくアップルである。これに成功すると、飛躍的に企業を成長させることができる。

 ただし、同時に劇薬でもあることを忘れてはならない。新市場の創造に成功した企業は、あまりにも急速に、そして鮮やかに成長するので、株価が急上昇する。だが、すぐに競合他社が追随してくるものだ。市場はこれまでと同様の成長を期待するものの、新市場の創造はそうそう簡単に起こせるものではない。市場の期待が失望に変わると、あっという間に株価は下落する。アップルがこれから何で食っていくのかは注目が集まるところだ。

 私は、「顕在化しているマーケットのシェアを奪い合う」のがマーケティング、「新しい市場を出現させる」のがイノベーションと定義している。この定義に従えば、(1)リピート購入、(2)競合からの奪取、(4)顧客単価向上、(5)多角化はマーケティングであり、(3)製品の新用途、(6)代替品、(7)新市場の創造はイノベーションに該当する。

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