プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2013年12月19日

『理想の会社(DHBR2013年12月号)』―私が考える「よい会社」の条件(約150個)


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 12月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 12月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2013-11-09

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 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2013年12月号は、エバーノートのCEOフィル・リービンのインタビュー記事が刺激的で面白かった。
 どんな製品にも、その会社の姿が透けて見えるもので、オフィスの様子までわかってしまうほどです。それはごまかすことのできないことで、美しい製品は美しい会社からしか生まれてこない。製品と会社は同一のもので、製品には企業文化が直接に体現化されるのです。いや、100年経つと企業文化自体が製品になる。企業文化以上に大切なものはなく、それは最新の製品よりも重要なのです。
 この指摘は、グローバル競争の波にのまれ、ヒット製品を生み出せずに苦しんでいる日本企業にとって、デザイン力の欠如やイノベーション人材の不足といった、しばしば指摘される課題とは別の視点から、興味深い課題を提示しているように思える。

 本号の特集テーマは「理想の会社」である。ロブ・ゴフィーらの論文「社員に最高の仕事をさせる 『夢の職場』をつくる6つの原則」では、理想の会社を作るための6原則が示されている。

 (1)個人個人の様々な違いを尊重して活用する。
 (2)情報を抑制したり、操作したりしない。
 (3)社員から価値を搾り取るだけでなく、会社側も社員の価値を高める。
 (4)何か有意義なことを支持している。
 (5)業務自体が本質的にやりがいのあるものである。
 (6)愚かしいルールがない。

 私にとって「理想の会社」とは一体何だろうか?「ベンチャー失敗の教訓」シリーズの内容を裏返せば、”多少はましな”会社になるのだが、それ以外にもいろいろと考えるところがあるので、思いつくままに書き出してみたいと思う。ブレインストーミング的であるため、抜け漏れやダブりがあったり、論理的に整合性が取れていなかったりするかもしれないが、ご容赦いただきたい。

 経営陣が明確な企業理念(ミッション、ビジョン、行動規範)を示している。経営陣が企業理念の伝道師となっている。経営陣が行動規範を率先垂範している。経営陣にとって、自社の企業理念が自分の人生のミッションやビジョンの一部になっている。経営陣は企業理念について社員と頻繁に対話を行っている。経営陣は、金融機関や投資家とも企業理念について対話を繰り返し、企業理念に賛同する資本を引きつけている。経営陣にとって、企業理念を社内外に浸透させ、強固な企業文化を築くことが重要な仕事となっている。経営陣の報酬は短期的な業績だけでなく、中長期的な業績や企業文化の構築度合いも考慮される。

 成長しすぎない。売上高より営業利益(もしくは営業キャッシュフロー)を重視する。売上高の成長率より、社員1人あたり営業利益(もしくは営業CF)の成長率を重視する。社員1人あたり営業利益(営業CF)の成長率は、GDPの成長率を上回る水準を目指す。社員1人あたり営業利益(営業CF)に重要な影響を与えるKPI(Key Performance Indicator:重要業績指標)が特定されている。そのKPIの値は、経営陣から現場社員まで共有されている。

 買収の有効性を否定はしないが、買収頼みの成長はしない(経営は”企業のお買い物”ではない)。内的成長を中心として、社員1人あたり営業利益(営業CF)の成長を目指す。不要なコストは徹底的に削る。社会的使命を終えた衰退事業も削る。ただし、削った分は、社員1人あたり営業利益(営業CF)を伸ばせる分野に投資する。衰退事業を延命させるために、企業買収をして売上高を一時的に大きく見せるようなことはしない。

 経営陣が社内政治に明け暮れておらず、顧客の方を向いている。経営陣は、自社の重要顧客や将来的な潜在顧客と頻繁に接点を持ち、彼らの声に耳を傾けている。経営陣は、自社の製品を心から愛している。経営陣は、自社製品の最も優れたセールスパーソンである。もしくは、経営陣は、自社製品の最も優れたエンジニアである。顧客からのクレームは経営陣に届けられる。時には、経営陣が自らクレーム対応にあたる。経営陣は、クレームを受けても、製品改良のための貴重な意見を与えてくれたと感謝する。経営陣は、クレームを報告した部署や社員を罰しない。

 ターゲット顧客を定め、そこに経営資源を集中させている。非ターゲット顧客=嫌われてもいい顧客が明確である。顧客に対する提供価値が明確である。自社の提供価値は、競合他社の提供価値と比べて容易に識別可能である。製品はシンプルで利便性が高く、洗練されている。最先端の技術を使うことが顧客価値を高めることだと勘違いしないようにする。提供価値や製品構成はシンプルだが、それを実現するためのビジネスモデルは複雑で、競合他社に容易に真似されない。ビジネスモデルを機能させる圧倒的な強みを持っている。競合他社に対する直接的な嫌がらせをしない。顧客に対する提供価値の優劣で勝負する。

 社会的に意義のある製品を販売する。顧客に売りすぎない。顧客の効用を最大化する最適量を販売する。価格体系はシンプルで、顧客を混乱させていない。顧客から搾取する価格体系になっていない。プロモーションが伝えるメッセージに嘘偽りがない。顧客が想起するブランドイメージと具体的な製品価値との間に矛盾がない。ブランドイメージと一貫性の取れた製品が、ブランドイメージをさらに強固なものにするという好循環が生まれている。自社のマーケティング戦略、さらにその背景にある企業理念や企業文化のことを理解してくれる販売パートナーを探す。販売パートナーとは担当者レベルだけでなく、経営陣レベルでリレーションを構築する。

 未知の顧客、未知のニーズに対して敏感になる。また、常に代替品の脅威に備えている。既存事業を脅かす代替品を早い段階で自社に取り込み、ビジネスモデルの転換を図る。社員から広くイノベーションのアイデアを募る。部下のアイデアをたった1人の上司が握り潰すようなことはしない。アイデアは多くの社員に公開され、内容がブラッシュアップされていく。数多くの実験を素早く行い、成功しそうなイノベーションを見極める。たとえイノベーションが失敗しても、十分な注意を払った上での失敗ならば罰しない(逆に、不注意による失敗は罰する)。失敗プロジェクトの情報はデータベース化し、将来の実験に役立てる。

 イノベーションのための予算は既存事業の予算とは別に全社的に管理されており、実験を行いたい時にすぐに予算があてがわれるようになっている。イノベーションの推進にあたっては、エース級の人材を各部署からかき集める。エース級の人材を手放すことに反対する既存事業のマネジャーに対しては、降格処分も辞さない。経営陣もイノベーションの推進を強く支持する。経営陣は、推進しているイノベーションが企業理念や企業文化と合致していることを確認する。自分を育て上げてくれた既存事業がイノベーションによって縮小してしまうことを理由に、イノベーションを妨害しようとする経営陣についても、厳しい姿勢で臨む。

 イノベーションは短期的な業績だけで判断しない。早期に売上を立てる、つまり新規顧客を獲得することは要求するが、利益に関しては長い目で見る。イノベーションに携わる社員も業績給で評価しない。イノベーションに対する取り組み姿勢を評価する。既存事業部門は、イノベーション推進のために役立ちそうな経営資源(顧客基盤、販売チャネル、技術など)を提供する。イノベーションの推進に協力的な部門のマネジャーは高く評価し、イノベーションによって自らの事業が脅かされることを理由に協力を拒む部門のマネジャーは評価を下げる。ただし、あまり会社をイノベーション依存体質にしない。マーケティング:イノベーション=8:2ぐらいが理想である。

 顧客接点の中心である営業を重視する。営業担当者は自社製品のセールスではなく、顧客ニーズのヒアリングに徹する。受注ほしさに安易な値引きをしない。営業担当者が吸い上げた顧客ニーズは、マーケティング部門や製造部門を中心に、全社にフィードバックする。受注した時は成功分析を、失注した時は失敗分析を行い、分析結果を営業担当者間で共有する。営業担当者は、成功事例の横展開をいとわない。営業担当者は売上高だけで評価しない。営業利益や他の営業担当者への貢献度も評価する。全社員が営業担当者であるという意識を持つ。「自分がこの会社の顧客だったら、この営業担当者からこの製品を購入するだろうか?」と自問する。

 製造現場では5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)が徹底されている。7つのムダ(加工のムダ、在庫のムダ、作りすぎのムダ、手待ちのムダ、動作のムダ、運搬のムダ、不良を作るムダ)が徹底的に取り除かれている。工場の設備は手入れが行き届き、大切に扱われている。社員の安全対策が施されている。環境負荷の低い製造プロセスが確立されている。製造プロセスの絶え間ない改善が行われている。製造プロセスを安易にアウトソーシングしない(アウトソーシングは、新興国からライバル企業が現れるのを手助けするだけである)。仕入先をすぐに買い叩かない。仕入先もパートナーとみなし、自社の戦略や企業理念、企業文化について対話を継続する。

 製造現場以外の部門でも、5Sが徹底され、7つのムダが取り除かれている。社員との間で元気よく挨拶が交わされている。来客があった時にも、社員が大きな声で挨拶をしている。オフィスレイアウトは、工場と同様に生産性が考慮されている。社員間のコミュニケーションは、ITを使った非対面形式よりも対面形式が重視されている。ITを使った非対面コミュニケーションは、あくまでも対面コミュニケーションを補完するものとして位置づけられている。対面コミュニケーションを活性化させる仕組みがオフィスに取り入れられている(個室の廃止など)。

 組織やチームが必要以上に細分化されていない。子会社や事業部門をいたずらに増やさない。顧客視点ではなく、自社都合で組織改編を行わない。組織改編をやって経営改革を行った気分に浸ってはならない。組織は最低限の大まかなくくりにとどめる。大きな組織の中で社員を柔軟に再配置する。社員は複数の業務に従事できるよう、複数の能力を身につける。企業は社員の多能工化を支援する学習プログラムを提供し、人事考課で多能工化の度合いを見る。

 会議は必要最小限にとどめる。会議には、利害関係がある人(利害関係がある部門やチームを代表する人)を必ず全員出席させる。欠席者向けの議事録作成をしない。会議が予定時刻通りに始まり、予定時刻通りに終わる。会議では声の大きな人が主導権を握らないようにする。会議の主催者は、出席者全員が自分の意見を表明できるようファシリテートする。会議後のそれぞれの参加者が起こすべきアクションを明確にする。各アクションの期限と責任者を決める。各アクションの進捗を会議後にモニタリングする。アクションは期日までに必ず完了させる。

 人材育成に投資する。業績が一時的に悪化しても、人材育成への投資をすぐに削らない。戦略や事業計画とリンクする形で人材戦略(どういう能力を持った社員が何人必要なのか?)が立案されている。人材戦略に基づいて学習プログラムが体系化されている。学習プログラムは研修ベンダーが用意する固定的なものではなく、人材戦略の見直しに伴って常に入れ替えが行われている。研修の学習内容と現場の業務内容を一致させる。研修の学習内容を現場で実践した人が評価されるような人事考課制度になっている。

 社員の職務範囲を狭く定義しない。社員には多様な能力が必要で、セルフマネジメントが要求されるレベルの大きな仕事を任せる。新人・若手社員であっても、1つの完結した仕事を任せる(小口顧客の営業を担当させる、会社全体の売上高に占める割合が小さい製品の設計全体を任せる、など)。社員を同じ仕事に何年も固定しない。社員を金銭的報酬だけで動機づけるのではなく、やりがいのある仕事で動機づける。

 社員を褒め、叱る。社員へのフィードバックは迅速に行う。ただし、顧客の前で社員を叱らない(社員に恥をかかせるし、顧客にとっても不愉快)。半期に一度の評価面談で終わらせない。毎日が評価面談のつもりで部下に接する。社員の間に適度なライバル意識を醸成する。社員が企業理念を体現しているかどうかも評価する。企業理念に合致しない二流社員は、ハイパフォーマーであっても解雇する。企業理念に合致せず、成果も低い三流社員にも居場所を与えない。

 他にもあるが、これぐらいにしておこう。いろいろと書いたけれど、煎じ詰めれば「理想の会社」に必要なのは、(1)既存顧客を何とかして喜ばせようという熱意と、(2)どこかにまだ誰も見つけていない潜在顧客がいるのではないかという探求心ではないだろうか?前者はマーケティングであり、後者はイノベーションである。今日書いた内容は、全てこの2つにつながっている。

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