プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2014年01月12日

【ベンチャー失敗の教訓(第47回)】メンバーの善意頼みだった委員会制度


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 以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第38回)】分社化したがゆえに生じた組織の壁」や「【ベンチャー失敗の教訓(第39回)】「何をなすべきか」よりも「誰と働きたいか(働きたくないか)」で決まる組織構造」で述べたように、3社はやたらと組織を細分化、増殖させる傾向があった。グループ全体の社員数が最も多かった2008年、3社の経営陣は突如、委員会制度を作ると言い出した。本来ならば企業に備わっているべき機能だが、リソース不足のために担当者がいない機能について、委員会に補完させようというのが経営陣の狙いであった。そして、当時3社の間で重要視されながら、誰も手をつけていなかった6つのテーマについて、委員会が設置された。

 ・「宣伝・ブランド」・・・ホームページ改訂案の提案。フライヤー(チラシ)を含む露出媒体のイメージ統一化。
 ・「市場調査」・・・競合他社に関する調査と社内での情報共有。グループ各社のターゲット、ポジショニング、差別化に関する提案。
 ・「厚生・レク」・・・職場環境に関する問題の洗い出しと解決。職場環境を向上させるための企画提案と実行。
 ・「情報管理」・・・メールデータおよびクライアントデータのセキュリティ強化。各社員のPCのセキュリティ確保(ウィルス対策を含む)。個人情報管理に関するルール整備と意識強化。
 ・「図書・ニュース・情報共有」・・・社内の図書システムの策定と運用。全社会議、社内報、各種イベント案内などの社内コミュニケーションの促進。グループ内の情報共有レベル向上のための施策実行。
 ・「教育・ナレッジ」・・・社内研修、勉強会の企画・コーディネート。「タレントカタログ」(各社員の強み・得意分野を可視化したもの)の整備と運用。

 それぞれの委員会は、必ず3社の社員が混在するように構成されていた。経営陣は明言こそしなかったものの、3社間の組織の壁が厚くなっていたため、委員会制度を通じてグループ内の協業を活性化させようとしていたように思える。

 だが、もう皆さんも予測がついているように、この委員会制度は長く続かなかった。「宣伝・ブランド」委員会は、HPの改訂案をまとめることができなかった。露出媒体のイメージ統一化が中途半端に終わったのを受けて、Z社のC社長は、外部のデザイン会社にロゴの制作などを委託した。ところが、コンサルティングの現場を知らないC社長が1,000万円単位のお金をつぎ込んで作ったパワーポイントのフォーマットは、現場では全く使えない代物だった(以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第3回)】製品開発・生産をしない社長」を参照)。

 私は「市場調査」委員会に属していた。私は、競合の研修会社やコンサルティング会社がRSSで配信している最新情報をメールで一括受信できる仕組みを作ったのだが、この仕組みはほとんど活用されなかった。しまいには、「毎朝届くメールがうっとうしいから何とかしてくれないか?」と一部の社員から(その中には何と「市場調査」委員会のメンバーもいた!)言われてしまうありさまだった。各社のポジショニングや差別化の方法についても、結論が出ないままだった。

 「厚生・レク」委員会は、毎月1回飲み会を企画して、3社間の交流を深めようとしていた。飲み会には、会社からの補助が出ることも決まっていた。ところが、飲み会は1回だけしか開催されなかった。たまたまかもしれないが、3社の社員はお酒に弱い人が多く、普段から飲み会の習慣がなかった。だから、飲み会で親睦を深めるという発想自体に無理があった。委員会は他の手段を考えるべきだったが、そういう検討が行われないまま、委員会は立ち消えになってしまった。

 「図書・ニュース・情報共有」委員会は、社内の図書システムを構築できなかった。それどころか、オフィスに溜まっていた膨大な書籍を整理・整頓することすらできなかった。書籍はその後、X社の有志が集まって整理することになった(以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第41回)】自分の「時間単価」の高さを言い訳に雑用をしない」を参照)。

 「教育・ナレッジ」は、勉強会や社内研修を一度も開催しなかった。「タレントカタログ」なるものも、私は見たことがない。そもそも、3社とも人材育成に関するサービスを提供しているのに、自社社員の育成に関しては極めて後ろ向きであった(以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第35回)】人材育成が事業テーマなのに自社には人材育成の仕組みがない」を参照)。

 唯一成果があったと委員会と言えば「情報管理」委員会であり、プライバシーマークの取得に成功した。だが、これは委員会の力というよりも、委員会がプライバシーマーク取得のコンサルティングを依頼した会社の力のおかげと言った方が正しい。コンサルティング会社の”外圧”がなければ、プライバシーマークの取得は実現しなかっただろう。

 委員会制度はほとんどボランティアのようなもので、メンバーの善意に頼っていた。だが、部門横断的な組織をメンバーの善意で運営しようというのは無茶な話である。部門横断型組織の成功例として思いつくのは、カルロス・ゴーンが日産自動車の社長に就任した直後に設置した「クロス・ファンクショナル・チーム」(CFT)である。CFTも部門間の壁をなくし、コラボレーションを促進するための施策として導入された。しかし、組織の仕組みだけを整えても、CFTは絶対に成功しない。縦割り組織の弊害を打ち破るには、いろいろと工夫しなければならない点があると思う。

 第一に、それぞれのメンバーがCFTに割くべき時間をしっかりと決めることである。例えば、1週間の業務のうち、20%はCFTの業務に費やす、といった具合だ。こうして、CFTにつぎ込む時間を強制的にでも作る必要がある。そうしなければ、CFTで定例会議を開いても、「今日は本業の方が忙しいので・・・」という言い訳をつけて欠席するメンバーが出てくる。実際、委員会にどの程度のリソースを割くのかはっきりとしていなかった3社では、定例会議がすぐに形骸化した。

 第二に、1週間のうち20%はCFTの業務に費やすと決めたら、残り80%で本業がきちんと回るように、本業の業務を見直すことである。80%のリソースでCFT導入前と変わらない成果を上げるには、生産性を1.25倍に上げなければならない。あるいは、CFTのメンバーとそうでない社員との間で業務分担を見直して、CFTのメンバーの負担を軽くする必要がある。こういう対策を施さなければ、本業に忙殺されて、CFTの活動が後回しになる。3社の場合、本業の生産性を上げる努力が乏しかった(以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第46回)】上から下まで生産性を上げる努力をしない会社」を参照)。だから、委員会の業務をいくらでもサボることができた。

 第三に、CFTでの活動や成果を人事考課の中で適切に評価することである。結局のところ、人間は評価されないことはやらないものである。評価されなくても自主的に活動をするというお人好しは希少種である。会社の運営をお人よしに頼ってはいけない。人間は基本的に利己的な動物である。だから、利己心に応える評価制度を構築しなければならない。3社の場合、本業の成果を評価する仕組みもほとんど整備されていなかったから、委員会制度の活動など評価されるはずもなかった(以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第35回)】人材育成が事業テーマなのに自社には人材育成の仕組みがない」を参照)。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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