プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
シャイン経営研究所HP
シャイン経営研究所
 (私の個人事務所)

※2019年にWordpressに移行しました。
>>>シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)

Next:
next 『人を動かす力(DHBR2014年1月号)』レビュー記事の補足
Prev:
prev 安岡正篤『活字活眼』―U理論では他者の存在がないがしろにされている気がする?
2014年01月16日

『人を動かす力(DHBR2014年1月号)』―動機づけ理論と影響力の研究が交錯することを望む


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 01月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 01月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2013-12-10

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 DHBR2014年1月号の特集は「影響力」。『影響力の武器』で知られるロバート・チャルディーニのインタビュー記事「どのように人は動かされるのか 【インタビュー】よい影響力、悪い影響力」や、リーダーシップ論の権威であるジョン・コッターの名論文「有能なマネジャーと無能なマネジャーは何が違うのか 権力と影響力」などが所収されている。

 特集タイトルからも解るように、影響力とは「人を動かす力」である。だが、同じように「人を動かす力」を意味する言葉には「動機づけ(モチベート)」がある。私の印象論だけかもしれないが、影響力は自らの権威や魅力を高めて、人々を自分の方に引き寄せることを意味するのに対し、動機づけはこちらから相手に積極的に働きかけることを要求する。つまり、両者は「人を動かす」という同じ目的を持っていながら、その手段は正反対なのである。そのせいか、両者の研究も今のところバラバラであり、お互いの研究結果をうまく活用できていない気がする。両者の研究がクロスして、研究により一層の深みが増すことを望んでいる。

 両者の研究を私なりにクロスさせてみたい(クロスというか、単純につないだだけだが・・・)。人を動かさなければならない局面というのは、「動かす相手が社内か社外か?」、「相手との関係は自分の方が上か、あるいは自分と対等か相手の方が上か?」という2軸でマトリクスを作ると、4つに分けられる。「動かす相手が社内」で「相手との関係は自分の方が上」という場面は、典型的な上司と部下の関係である。動機づけ理論の研究は、この場面を中心としている。

 上司と部下の関係においては、旧ブログの記事「《メモ書き》モチベーションと業績の関係モデル―『熱狂する社員』より」で書いた3つの原則、すなわち(1)公平感、(2)連帯感、(3)達成感に訴えることを基本とした方がよいだろう(こう書くと、1年ほど前の記事「『強い営業(DHBR2012年12月号』―「モチベーションのダイバーシティ」に基づく報酬体系の必要性」で書いた内容と矛盾してしまうのが悩みどころだが・・・)。上司には、もともと管理職という地位パワーが備わっており、その意味では部下を動かしやすい条件が整っている。この3原則は、上司という地位の正当性を高めるための条件である。

熱狂する社員 企業競争力を決定するモチベーションの3要素 (ウォートン経営戦略シリーズ)熱狂する社員 企業競争力を決定するモチベーションの3要素 (ウォートン経営戦略シリーズ)
デビッド・シロタ スカイライトコンサルティング

英治出版 2006-02-02

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 あるいは、ドラッカーがフレデリック・テイラーの「科学的管理法」を批判しながら述べたように、(1)要素作業が組み合わさった多様な仕事であり、(2)仕事のセルフコントロールが認められ(自律性)、(3)本人にとって挑戦的であること、つまりやりがいのある仕事を与えることが、最大の動機づけになるに違いない(以前の記事「【ドラッカー書評(再)】『現代の経営(下)』―フレデリック・テイラー「科学的管理法」に対するドラッカー評」を参照)。ある銀行幹部の方が、以前こう教えてくれた。「部下の給与を上げれば、1週間はモチベーションを上げられる。部下を褒めれば、それが1か月になる。やりがいのある仕事を与えれば、それが1年になる」

 「動かす相手が社内」で、「相手との関係は、自分と対等か相手の方が上」という場面は、組織の指揮命令系統を外れて、組織変革のために上層部を動かしたり、他部署の社員を巻き込んだりしなければならない場合が該当する。このケースは動機づけ理論ではなく、影響力の範疇に入る。このケースでは、上司と部下の関係のように地位パワーに頼ることができないため、先ほどの3原則とは異なる作戦を練らなければならない。

 地位パワーを持たない不利な状況にあって、唯一自分と相手が同じ土俵に立てるのは、組織の目的やビジョンをめぐってである。同じ組織に属する人間であるからこそ、自分が相手にお願いしようとしている行動が、組織の目的を達成する上で不可欠であり、組織のビジョンと合致することを訴求することができる。その要求が魅力的なストーリーに仕上がっていれば、相手はきっと心を突き動かされることであろう。上司が部下に対して使う命令の代わりとなるのが、このストーリーである。相手を動かす力の源泉は、「物語の構築力」にある(旧ブログの記事「地位パワーがなくてもリーダーシップは発揮できる(1)-『静かなる改革者』(2)」を参照)。

静かなる改革者―「しなやか」に「したたか」に組織を変える人々静かなる改革者―「しなやか」に「したたか」に組織を変える人々
デブラ・E・メイヤーソン 北川 知子

ダイヤモンド社 2009-07-03

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 「動かす相手が社外」で、「相手との関係は自分の方が上」という象限には、昔であればメーカーにとっての顧客が該当した。ところが、最近では顧客がめっきり力をつけてきており、力関係が逆転している。よって、このケースは、現実にはほとんど存在しないと思う。「動かす相手が社外」で、「相手との関係は、自分と同等か相手の方が上」という場面の方が圧倒的に多く、社外の様々なステークホルダーとの交渉ごとはほぼ全てここに当てはまる。そして言うまでもなく、このケースは影響力の研究範囲である。

 この場合は、組織が違う以上、もはや同じ土俵に立つことすら難しい。以前の記事「『リーダーは未来をつくる(DHBR2012年11月号)』―共有価値観で結ばれた利害関係者の生態系」などでしきりに私が使っている「価値観連鎖(Values Chain)」というコンセプトに従って、自社と関係を有する組織の目的や価値観が、自社のそれに近づくようにする(あるいは自社が相手の組織に合わせる)ことが一つの手段ではある。しかし、これは自社と社外組織がほぼ運命共同体のようなもので、お互いに相手が存在しなければ自社のビジネスが成立しない、というぐらい密接な関係にある場合に限定されるであろう。

 自社と社外組織は異なる目的やアイデンティティを持っている以上、利害も別物である。お互いにとって何が最大の利益なのかは全く違っており、その内容を近づけることは難しい。となると、残りはお互いに歩み寄りながら、「利害の最適化」を行うしかない。相手に何かを要求する代わりに、自社は何かを諦める。国家同士の交渉は、まさに条件という名のカードを出し合うゲームである。その繰り返しによって、双方が納得する最適化ポイントを見つけ出す(旧ブログの記事「合意形成の実践的手引書だね-『コンセンサス・ビルディング入門』」を参照)。

コンセンサス・ビルディング入門 -公共政策の交渉と合意形成の進め方コンセンサス・ビルディング入門 -公共政策の交渉と合意形成の進め方
ローレンス・E.サスカインド ジェフリー・L.クルックシャンク 城山 英明

有斐閣 2008-04-11

Amazonで詳しく見る by G-Tools


  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like