プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2014年02月01日

【原文・現代語訳】島井宗室十七条の遺訓(第十四~十七条)


島井宗室 (人物叢書 新装版)島井宗室 (人物叢書 新装版)
田中 健夫

吉川弘文館 1986-07

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 一(十四)、朝ハ早々起候て、暮候へば則ふせり候へ。させらぬ仕事もなきに、あぶら(油)をついやし候事入ぬ事候。用もなきに夜あるき、人の所へ長居候事、夜ひるともに無用候。第一、さしたてたる用は、一刻ものばし候ハで調候へ。後に調候ずる、明日仕べしと存す候事、謂れざる事候。時刻移さず調べき事。
 朝は早起きして、日が暮れたらすぐに寝るようにせよ。大した仕事もないのに油を売ってはならない。用もないのに夜に外出してはならない。他人のところに長居するのは夜でも昼でもダメである。しかし、差し迫った重要な用事は、一刻も早く片付けるようにせよ。後でやろう、明日やろうと考えてはいけない。重要な仕事には即座に取りかかるようにせよ。
 一(十五)、生中、身もちいかにもかろく、物を取出など候ずるにも、人にかけず候て、我と立居候ずる事。旅などにてハ、かけ(懸)硯・ごた袋等われとかたげ候へ。馬にものらず、多分五里―三里かち(徒)にて、とかく商人もあよ(歩)ミならひ候て然るべき物候。

われら若き時、馬に乗たる事無候。道之のりいかほどとおぼえ、馬ちん(賃)いかほど、はたごせん(旅籠銭)・ひるめし之代・船ちん、そこそこの事書付、おぼえ候へバ、人を遣候時、せんちん(船賃)・駄ちん、つかいを知る用候。宿々の丁(亭)主の名までもおぼえ候ずる事。旅などに人の商物事伝(ことづて)候共、少も無用候。余儀無く知音・親類遁れざる事ならば、是非に及ばず候。事伝物は少も売へぎ(剥)・買へぎ仕まじき事。
 生きている間は、いつも身軽にして、何か物を取りに出る時も、人に任せず、自分ですること。旅などに出る時は、懸硯(商取引に必要な帳面、金銭、印鑑、筆、硯などを収納した箱)、ごた袋などを肌身離さず持ち歩くようにせよ。馬に乗らず、3里~5里の道のりなら徒歩で行くこと。商人は歩きながら様々なことを学ぶものである。

 我々が若かった頃は、馬に乗ったことはない。歩いて道のりを覚え、馬賃、旅籠銭(宿代)、昼飯代、船賃などを書いて覚えた。人を遣わす時は、船賃、駄賃の使い過ぎに注意しなければならない。宿の亭主の名前も覚えること。旅の最中に他人の商い物のことを伝え聞いても、取り合ってはならない。知人や親類の頼みでどうしても仕方ない時はやむを得ない。自分の目で確かめず、伝え聞いただけのものは、売ったり買ったりしてはならない。
 一(十六)、いづれにても、しぜん寄合時、いさかい・口論出来候者、初めよりやがて立退、早々帰り候へ。親類・兄弟ならば是非に及ばず候。けんくわ(喧嘩)など其外何たる事むつかしき所へ出まじく候。たとい人之無躰をゆいかけ、少々ちじよく(恥辱)ニ成候とも、しらぬ躰にて、少之返事にも及候ハで、とりあい候まじく候。ひとのひけうもの(卑怯者)・おくびやうもの(臆病者)と申候共、宗室遺言十七条之書物そむき候事、せいし(誓紙)之罰如何候由申べき候事。
 寄合の時、争いや口論になったら、その場からそっと退出して帰るようにせよ。親族や兄弟の喧嘩ならば仕方がない。喧嘩が起こるような厄介な場所に出かけてはならない。たとえ、人から批判され、少々恥ずかしい思いをしても、知らぬ顔をして返事もせず、取り合うことはない。人から卑怯者、臆病者と言われても、宗室十七条の遺訓に背けば、誓紙の罰を受けるであろう。
 一(十七)、生中、夫婦中いかにも能候て、両人おもいあい候て、同前所帯をなげき、商売に心がけ、つましく油断無き様に仕べき候。二人いさかい中悪候てハ、何たる事にも情ハ入まじく候。所帯はやがてもちくづれ候ずる事。又我々死候はば、則其方名字をあらため、神屋と名乗候へ。我々心得候ひて、島井ハ我々一世にて相果候。但、神や名乗らず候へば、前田と名乗候てくるしからず候。其方次第候事。

 付、何事ニ付ても、病者にてハ成まじく候。何時成共、年中五度―六度不断灸治・薬のミ候ずる事。
 生きている間は、夫婦で互いに思いやり、家庭のことを心配し、油断なく事業に邁進しなければならない。2人の仲が悪くては、何事にも気持ちが入らず、家庭はやがて崩壊するだろう。また、我々が死んだら、あなたは名字を改めて神屋と名乗るがよい。我々がよく考えた結果、島井家は我々一代限りとする。神屋と名乗らないのであれば、前田と名乗ってもよい。あなたに任せる。

<付記>何事につけても、病弱であっては物事が務まらない。いつ何時も、1年に5~6回は灸治療を欠かさず、病気になれば薬のみを飲むこと(祈祷などに頼るなという意味か?)。

《後記》
 一代で巨万の富を築いた島井宗室だが、その暮らしぶりは非常に質素であったとされ、遺訓の中でも養嗣子である徳左衛門(信吉)に倹約を強く勧めている。ただ、この遺訓は全体的に処世訓であり、社是≒行動規範とはやや性質が異なるような気もする。もっとビジネス寄りの内容―例えば、顧客とどうやってリレーションを構築するのか?取引先とはどのようにつき合うのか?競争優位を獲得するためにどんなビジネスモデルにするのか?組織内の様々な仕組みや制度をどんな方針に基づいて導入するのか?など―が入っていれば、行動規範らしくなるだろう。

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