プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2014年03月07日

『意思決定を極める(DHBR2014年3月号)』―敢えて言おう、不確実性が高い環境でこそ「歴史に固執せよ」と


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 03月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 03月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2014-02-10

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 『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2014年3月号のレビュー記事は、ヒュー・コートニーらの論文「問題の性質を見極め、精緻に選ぶ どの意思決定にどのツールを使うべきか」の内容を再構築するところからスタートしたい。意思決定の研究が進むにつれて様々なツールが登場しているが、多くのマネジャーは意思決定のタイプに応じてツールを上手に使い分けることができていないと、この論文は問題提起する。その上で著者は、意思決定のタイプとツールの適切な組合せを5つ提示している。
(1)因果関係を理解し、決断がもたらす結果をある程度の確実性で予測できる場合
 《例》マクドナルドがアメリカ国内で新規出店を検討している場合。
 《ツール》従来型の資本予算ツール。割引キャッシュフロー・モデル、期待収益率など。

(2)因果関係を理解し、起こりうる結果の範囲と各々の結果が起こる確率を予測できる場合
 《例》マクドナルドがアメリカ国内市場に向けてハンバーガーの新メニューを投入すべきか検討している場合。
 《ツール》モンテカルロ・シミュレーション法などの定量的多重シナリオ・ツール、決定分析、リアル・オプション分析。

(3)因果関係は理解しているが、結果の予測はできない場合
 《例》マクドナルドがある新興国市場への初出店を検討している場合。
 《ツール》事例ベースの決定分析で補完された定性的シナリオ分析。

(4)因果関係は把握していないが、結果の範囲の予測はできる場合
 《例》マクドナルドが新しいビジネスモデルによる新規事業、例えば食品サービス業界のプロセス改善を手がけるコンサルティング事業への進出を検討している場合。
 《ツール》事例ベースの決定分析。

(5)因果関係が不明で、結果の範囲も予測不可能な場合
 《例》マクドナルドが、肥満を助長しているというファスト・フード業界への批判に対応する場合。
 《ツール》事例ベースの決定分析。
 ここからは私見。まず、「因果関係は理解しているが、結果の予測はできない場合」というのがよく理解できない。因果関係が解っているならば、結果はおのずと予測できそうなものである。また、「因果関係は把握していないが、結果の範囲の予測はできる場合」というのも解らない。事例としてマクドナルドが多角化によってコンサルティング事業に乗り出すケースが挙げられているけれども、ここで言う「結果の範囲」とはいったい何を指しているのかが不明である。そもそも、5つに場合分けしたにもかかわらず、(3)~(5)のツールが「事例ベースの決定分析」で共通しており、5つに分けた意味があまりないように感じられる。

 私が思うに、意思決定とは関数であり、式と変数から構成される。よって、「式が解っているか」と「変数の値が解っているか」という2軸でマトリクスを作れば、次の4パターンに分けられる。

 (A)式も変数の値も解っている場合
 これは前述の(1)に該当する。マクドナルドには新規出店のノウハウが蓄積されているから、アメリカ国内で新規出店をすればどのくらいの売上高・利益が見込めるか、おおよその予測ができる。商圏の人口構成、1世帯あたりの消費支出、競合他社の顧客数などの値を、マクドナルドが持っている独自のモデルに投入すれば、予想売上高・利益が導かれる。

 (B)式は解っているが、変数の値が解らない場合
 モデルは明らかになっているが、モデルに導入する値が不明なケースである。この場合は、値の取りうる範囲とそれぞれの値の確率を定めてモデルに投入し、結果の値とその値になる確率を導くことになる。一言で言えば確率分析ということになるだろう。

 (C)変数の値は解っているが、式が解らない場合
 例えば、あるキャンペーンを行う際に、テレビCM、新聞・雑誌広告、街頭広告、facebook、twitter、LINE、ブログなど、自社がカバーするチャネルのリーチ数は把握しているものの、キャンペーンの効果が解らないというケースがこれに該当する。この場合は多変量解析によって式を導き、結果を予測することになるだろう。

 (D)式も変数の値も解らない場合
 これは最も不確実性が高い場合であり、有力なツールとしてシナリオ・プランニングがある。シナリオ・プランニングについては、2013年9月号の「『見たい現実しか見ない』症候群への処方箋 異質の知が新たな事業をつくる」(太田直樹)という論文で取り上げられているのでそちらを参照していただきたいが、簡単に述べるとこうである。

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 09月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2013年 09月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2013-08-10

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 まず、政治、経済、技術、資本市場、労働市場、社会、文化、環境など、マクロ的な変化に関する情報を幅広く集める。次に、それらの情報の中から、自社の事業に最もインパクトを与えそうな変数を2つ特定する。そして、その2つの変数で2軸のマトリクスを作り、4パターンのシナリオを描く。最後に、それぞれのシナリオにおいてどのような戦略が考えられるのかを検討する。

 シナリオ・プランニングは非常に未来志向が強い手法だが、本号で紹介されている手法はどちらかというと過去志向である。まず、引用文中にある「事例ベースの決定分析」とは、類似する複数の経験や事例から情報を引き出して意思決定に役立てる手法を指す。これは間違いなく過去に学ぶ方法である。ただ、欧米人の発想はここで止まっているのに対し、日本人経営者は歴史に学ぶべきだとはっきり断言している。ライフネット生命の代表取締役会長兼CEOである出口治明氏は「質を高める『3つの鏡』 意思決定は結果である」の中で、「帝王学の教科書」と言われる『貞観政要』の文章を引いて、次のように述べている。
「夫れ銅を以て鏡と為せば、以て衣冠を正すべし。
古を以て鏡と為せば、以て興替を知るべし。
人を以て鏡と為せば、以て得失を明らかにすべし。
朕常に此の三鏡を保ち、以て己が過ちを防ぐ。」
 多くのケースを知ろうと思えば、歴史を勉強するしかない。いま生まれた人がアリストテレスから始めてニュートン力学を考え、アインシュタインの相対性理論にたどり着く頃には、とっくに寿命を終えている。現在の文明がここまで進化してきた理由は、アインシュタインから出発できたからである。つまり、巨人の肩に乗ることができるからだ。人間がやることは、極論すれば過去に起こったことのバリエーションにすぎない。
 日本には2000年以上受け継がれてきた歴史があり、この点で欧米に対し圧倒的なアドバンテージを持っている。しかも、欧米諸国がこの先どんなに頑張っても、このアドバンテージをひっくり返すことはできない。ならば、日本企業はもっと歴史に学ぶことで競争優位性を築くことができるのではないだろうか?もちろん、過去の偏狭な成功体験にしがみついて意思決定を誤るのはよくない。しかし、もっと大局的な視点に立って、過去2000年以上もの間に何億人もの人が下してきた意思決定のパターンに学ぶことは決して無意味ではないはずだ。

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