プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2014年04月03日

長谷川幸洋『官僚との死闘700日』―抵抗勢力の常套手段10(その8~10)


官僚との死闘七〇〇日官僚との死闘七〇〇日
長谷川 幸洋

講談社 2008-07-31

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 (前回の続き)

(8)反対派による非公式のグループを作る
 表だって反対すると、改革チームにうまく説得されるかもしれない。ならば、こっそりと反対活動を続ければよい。改革チームが知らないところで徐々に反対派の勢力を伸ばしていき、改革チームが気づいた時にはチームが孤立していた、という状況を作り出す。改革チームからすれば、これは非常に厄介だ。誰が本当に反対しているのかが解らず、説得交渉が難航する。相手は表面的には賛成しているが、実は非公式の反対派に言いくるめられているかもしれない。

 前回の記事「長谷川幸洋『官僚との死闘700日』―抵抗勢力の常套手段10(その4~7)」で2度登場した坂篤郎官房副長官補は、安倍総理が掲げた「アジア・ゲートウェイ構想」を潰すためにも暗躍した。アジア・ゲートウェイ構想では、外資の空港参入が謳われていたが、空港関連会社に多数の財務省天下り先があることから、坂氏はこれに反対していた。坂氏は、財務省本流の若手を抱き込み、さらに内閣官房にいた元官僚の慶應義塾大学助教授まで引っ張り込んで、アジア・ゲートウェイ構想を骨抜きにしようとした。

 公務員制度改革についても、「霞が関応援議員団」が存在した。その中心は、ともに旧大蔵省出身議員の宮沢洋一氏(行政改革推進本部事務局長)と増原義剛氏(同事務局次長)の2人である。本当かどうか著者でも解らないらしいが、2人が中心になって作成したと言われる2枚紙がある。1枚は「根回しペーパー」、もう1枚は「戦術ペーパー」と呼ばれていた。2枚とも、「渡辺案は理想的すぎる。実際には機能しない。お払い箱にすべきだ」というプレゼン用のペーパーだった。この紙を持って、2人は文字通り根回しを行っていたのだろう。

(9)トラップを仕掛けて改革チームにダメージを与える
 財務省に2度のトラップを仕掛けられたのは、福田康夫政権であった。1度目は日銀総裁騒動である。2008年、日銀総裁と副総裁のポストをめぐって、福田総理と民主党との間では目まぐるしい攻防が繰り広げられた。最終的には白川方明総裁と西村清彦副総裁が実現したものの、残る副総裁1人と西村副総裁の後任の審議委員1人が空位となる異例の事態となった。

 一連のやり取りの中で、福田総理は財務省次官OBの採用にこだわった。その中でも、田波耕治国際協力銀行を総裁に推した時には誰もが驚いた。民主党は「日銀総裁を財務事務次官の天下り指定席にしない」と公言しており、田波案が民主党に蹴られるのは明白であった。財務省は、田波案ではまとまらないのを承知の上で、敢えて福田政権の弱体化を狙って田波氏を推したのではないか?とまで言われた。実はこの時、日銀総裁問題と並行して「内閣人事庁構想」が持ち上がっていた。自らの人事権が弱まることを恐れてこの構想に反対していた財務省は、日銀総裁問題で福田総理にダメージを与え、この構想も頓挫させようとしたのかもしれない。

 2度目はいわゆる埋蔵金問題の時である。埋蔵金の存在を認めると増税ができなくなるので、財務省としては埋蔵金を否定したい。ところが、高橋氏らの論文や民主党の調査によって、埋蔵金の存在を認めざるを得ない状況にまで追い込まれていた。しかし、増税派(したがって財務省支持派)の与謝野馨氏が会長を務める自民党財政改革研究会は、埋蔵金の存在を否定する報告書を2008年2月27日に提出した。

 問題はこの提出時期である。2月という時期に高橋氏はかみついた。「財務省にとって、最も重要な仕事は国会で予算を通すことだ。特に、今年はねじれ国会で年度末の3月がどうなるか見通しがつかない。それなのに、2月末の段階で激しい論争を呼ぶ可能性のある報告書を出すなんてことは普通、財務省は絶対にしないんだよ。展開次第では予算審議の火種になって、予算案の修正になるかもしれないだろ。そんなことになったら、政権の致命傷になるじゃないか」

 高橋氏は、これは財務省が「政権に傷を負わせてもいい」と考えているトラップだと示唆した。こちらが挑発に乗って真正面から反論すれば、民主党も参戦して政権が窮地に陥る。そこで福田政権は、この報告書を黙って見過ごすことにした。

(10)面従腹背でこっそりと抜け道を作る
 おそらく、官僚が最も得意とするのがこの方法かもしれない。政治は最終的には紙に書かれた文章で動く。その文章を巧みに操ることで、改革を骨抜きにしてしまうのである。表面上は総理や大臣の指示に従うようなふりをして、法律のプロでもなければ気づかないようなトリックを国会答弁や法案の中に埋め込んでいく。これを著者は「霞が関文法」と呼ぶ。

 菅直人民主党代表は、「2007年2月13日に官製談合や天下り問題に対する取り組みについて総理に質問する」と政府に事前通告していた。国土交通省が答弁案を作成したが、その文面に田中一穂氏が「官製談合があった場合には、その役職に対しても、再就職の紹介などについて厳しい規制を創設する」との一文を潜り込ませた。

 普通の人が読めば、この文面のどこに問題があるのか?と思うに違いない。実は、この文章には、厳しい天下り規制を「官製談合があった場合」だけに限定してしまう意図が潜んでいる。真の意図は全く逆で、「官製談合がない場合には、現状通りとする」という点にある。一見、まともに見えて、抜け道をこっそりと潜ませる。こういう文章のテクニックが官僚の真骨頂だった。

 渡辺行革相が土壇場で田中氏の罠に気づき、答弁は再修正された。その結果、安倍総理は「国の職員が入札談合に関与した場合、厳しい対応をする。同時に、予算や権限を背景とした押しつけ的な公務員の天下りがあってはならない」と答弁し、田中氏の修正案を拒否した。

 とはいえ、安倍総理の答弁にもまだ落とし穴は潜んでいる。それは「予算や権限を背景とした押しつけ的な公務員の天下り」という部分である。逆に言えば、「押しつけ的でなければ、天下りを認める」ということになってしまう。天下りの実態として、各省庁と天下り先との間で交わされる文書は、天下り先が各省庁に宛てたという形式になっており、その文書には「貴省庁からこういう人材を紹介してほしい」と書かれている。つまり、天下り先が主体的に官僚を求めているのであって、各省庁が天下り先に完了を押しつけているのではない、というのが建前なのである。安倍総理の答弁では、実は天下りを規制することができないのである。

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