プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2014年03月21日

『いい会社 悪い会社(『週刊ダイヤモンド』2014年3月8日号)』―本号の4項目で前職の会社を評価してみた


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 大手口コミサイト「Vorkers」の口コミ47万件を分析し、「風通しのよさ」、「評価の適正さ」、「人材の長期育成」、「社員の士気」という4つの視点で評価を行いランキングを作成している。1位はリクルートマーケティングパートナーズだった。

 ただ、この4項目の合計得点がいいからと言って、業績が優れているとは限らない。根本のビジョンや戦略が間違っていたら、どんなに風通しがよくても、顧客や競合他社について無益な情報しか上がってこないだろうし、市場からは全く評価されない人材ばかりが育ってしまうに違いない。ランキングには補足情報として、過去3年間の経常利益の伸び率が掲載されていたが、3年前が赤字のためにパーセンテージが計算できない企業が何社か見受けられた。

 「人材の長期育成」のみのランキングを作ると、日本企業がずらりと並ぶ。その中でも異色なのは、アジレント・テクノロジー・インターナショナル(電気機器)と日本ベーリンガーインゲルハイム(医薬品)という外資2社である。アジレント・テクノロジー・インターナショナルは、ヒューレット・パッカード(HP)が源流の会社である。HPは90年代ぐらいまでは終身雇用に近い形態をとっており、比較的人材を大切にする社風があった(最近は大規模なリストラを行っているが・・・)。それがアジレント・テクノロジー・インターナショナルにも受け継がれているようだ。

 日本ベーリンガーインゲルハイムは、実は数年前に営業部門の研修を取材したことがある。まずは全営業担当者が従うべき標準的な営業プロセスを定めて、プロセスごとの目標値(KPI)を設定する。そして、標準プロセスの中身とKPIの重要性・意義について、研修でみっちり教え込む。この研修は営業担当者だけでなく、マネジャーも対象である。研修受講後のKPIはきめ細かくモニタリングされており、KPIの改善が芳しくない場合には、研修部門から追加の支援が入る、という仕組みになっている。人材育成に対して非常に熱心であるという印象を受けた。

 「風通しのよさ」、「評価の適正さ」、「人材の長期育成」、「社員の士気」の4項目のスコアが高いからと言って、企業が好業績であるとは限らないと書いたが、この4項目が悪ければ企業に未来はないのは確実だろう。それは、私の前職の会社がはっきりと示している。「ベンチャー失敗の教訓」シリーズに書き切れなかったことをこの記事で補足してみたいと思う。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
(1)風通しのよさ
 X社には企業風土を評価し、課題を特定する組織診断ソリューションがあった。具体的には、個人の活力、組織の活力、組織のメカニズム(リーダーシップ、仕事内容、役割分担、コミュニケーション、多様性・柔軟性、育成、評価)という3つの視点で企業風土を把握し、組織のメカニズムを構成する7つの要素のうち、どれを改善すれば個人や組織の活力がどの程度向上するのかを明らかにする、というものであった。

 「【ベンチャー失敗の教訓(第38回)】分社化したがゆえに生じた組織の壁」や「【ベンチャー失敗の教訓(第42回)】いびつなオフィス構造もコミュニケーション不全を引き起こす原因に」でも述べたように、会社内・会社間のコミュニケーションは不活発で、オフィス全体の空気が沈滞しているのが肌でひしひしと解るような感じだった。そこでZ社のC社長が、組織風土を改善するために、この組織診断を使うことを提案した。C社長は診断結果を全社員に公開して課題を共有し、腹を割って解決策を議論するつもりでいた。C社長の意図は、社員にも伝えられていた。

 診断の分析レポートを作成したのは、Z社の若いコンサルタントであった。自由記述欄に書かれたコメントの中には、会社に対する辛辣な批判などもあったが、オープンに対話をしたいというC社長の意向を汲んで、全て包み隠さずレポートに反映させた。そして、レポートがまとまると、彼は少しでも早く情報を共有したいと思い、レポートを全社員にメールで配信した。

 ところが、これに怒り狂ったのがC社長であった。C社長は、「なぜ自分に事前に報告しなかったのか?」と彼に詰め寄った。確かに、C社長の主張にも一理ある。C社長の指示でやっている仕事なのだから、まずはC社長に報告すべきだというのは自然な流れだろう。だが、話をいろいろと聞いていると、どうやらC社長は事前にレポートを読んで、都合の悪い情報(特に、自分にとって都合の悪い情報)は消そうと考えていたらしい。これでは建設的な議論などできるはずもない。この一件があってから、C社長と社員との距離感がさらに広がってしまった。

(2)評価の適正さ、(3)人材の長期育成
 以下の記事を参照。
 【ベンチャー失敗の教訓(第34回)】スキルが狭すぎてお互いに助け合えない
 【ベンチャー失敗の教訓(第35回)】人材育成が事業テーマなのに自社には人材育成の仕組みがない

(4)社員の士気
 X社の組織診断ソリューションの中には、「女性社員の活用度」を測定するものもあった。ダイバーシティマネジメントの重要性が叫ばれるようになった時代背景に合わせて開発したものである。この組織診断では、女性社員の活用度を「ハード面(育休制度の活用度、女性社員の管理職への登用など)」、「ソフト面(男性社員による女性社員の受容、女性社員のキャリア意識など)」の両面から評価する。ある意味では、女性社員のモチベーションを測定できる診断だった。

 サービスの本格提供に先立ち、X社は社内トライアルと顧客企業数社による社外トライアルを実施した。X社は半分ぐらいが女性社員だったので、診断の妥当性を検証するには適格だった。また、社外トライアルについては、女性社員の活用が進んでいると思われる企業と、(失礼だが)そうでないと思われる企業を顧客企業の中から選んでトライアルをお願いし、診断結果にどのような差が出るのかを検証しようとした。

 この診断の分析は私がやったのだが、一番結果が悪かったのがX社であった。つまり、女性社員のモチベーションが一番低かった。女性活用が進んでいないと思われた企業でも、ハード面・ソフト面のスコアは中くらいであり、X社よりも高かった。一番ショックだったのは、X社と同じように女性社員が多いベンチャーの顧客企業の結果がずば抜けてよかったことである。ベンチャー企業だからハード面は得点が低くても仕方ない、という言い訳はきかないのである。私は協力してくださった顧客企業1社1社に対し、診断結果をフィードバックさせていただいたのだが、このベンチャー企業にフィードバックする時は忸怩たる思いであった。

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