プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2014年04月10日

『ビジネスモデル 儲かる仕組み(DHBR2014年4月号)』―悲しいかな中小企業診断士に破壊的イノベーションは訪れない、他


Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 04月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 04月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2014-03-10

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 ビジネスモデルと戦略の違いについて整理したジョアン・マグレッタの論文「コンセプトのあいまいさが失敗を招く ビジネスモデルの正しい定義」は12年前の論文の再掲だが、一読の価値がある。サム・ウォルトンが描いたのは戦略であり、マイケル・デルが描いたのはビジネスモデルであるという説明は非常に解りやすい。
 ビジネスモデルとは、事業というパズルの各片がどのように組み合わさるのかを一つの体系として説明するものである。

 しかしここには、売上げを左右するきわめて重要な要素の一つが織り込まれていない。その要素とは『競争』である。遅かれ早かれ(今日では早いことが多いが)、どんな企業も必ず競争に巻き込まれる。このような現実に対処するのが『戦略』の役割だ。競争戦略とは、どうしたらライバルよりも優位に立てるかを説明するものである。
 本号からはあと2つほど論文を取り上げたいと思う。

○グローバル・ファームも淘汰の時代 コンサルティング業界は変われるか(クレイトン・クリステンセン、ディナ・ワン、デレク・バン・ビーバー)
 破壊的イノベーションで有名なクリステンセンの最新論文。著者は、今までブラックボックスであったコンサルティング業界にも、破壊的イノベーションが訪れる兆しが見られると指摘している。事実、マッキンゼーは、「マッキンゼー・ソリューションズ」という、ソフトウェアとテクノロジーを土台としたサービスを提供し始めており、破壊的イノベーションの脅威に備えているらしい。

 従来、コンサルティングというと、優秀だが単価の高いコンサルタントを何人かファームから顧客企業に送り込み、ファームに蓄積されたマル秘の事例集と独自のノウハウに基づいて質の高い包括的なアウトプット(報告書)を出す、というのが一般的だった。ところが、マッキンゼー・ソリューションを使うと、特定の経営課題にフォーカスして、これまでよりもはるかに安いコストでソリューションを導き出すことが可能となる。

 また、著者によると、別の形でコンサルティング業務の分業化が進んでいるという。競合他社をはるかに下回る価格で、顧客企業にフリーランス・コンサルタントからなるプロジェクトチームを派遣するプロフェッショナル派遣企業が登場している。彼らの大多数は、一流コンサルティング・ファームの中・上流ポストの経験者である。彼らの頭の中には、前職で培ったノウハウが蓄積されている。だから、人材育成への投資がそれほど必要ではなく、それが低価格につながっている。マッキンゼーなどは、自社から優秀な人材が世の中に巣立っていくことをよしとしてきた。ところが、世の中に輩出した人材が増えてきて、彼らが自社にとっての脅威となり始めた、というわけだ。

 では、中小企業診断士にも破壊的イノベーションは襲いかかるのだろうか?結論から言うと、非常に悲しい理由から、中小企業診断士の業界に破壊的イノベーションは当分訪れないだろう。破壊的イノベーションが成立する条件は、(1)業界全体が非常に成熟していること、(2)製品・サービスの品質が、一部の顧客の期待水準を上回っていること、の2つだと私は考える。このうち、(1)に関して、中小企業診断士の業界はまだまだ未熟であると感じる。

 業界の成熟度を測るモデルとしては、マイケル・ポーターの「ダイヤモンド・モデル」が役に立つ。本来は産業集積の魅力を測るのを目的としたモデルだが、産業集積が魅力的である≒業界が成熟していると捉えることができるだろう。

(1)需要条件
 顧客のニーズが洗練されているかどうかが需要条件である。もともと日本は自前主義が強い国民性であり、外部のコンサルタントから助言を受けようという気質が弱い。大企業や中堅企業ではようやくコンサルティングを受け入れる文化が整ってきたが、中小企業では未だに「コンサルティングって何?」と言われてしまう。また、コンサルティングに対して適切なフィーを支払うという感覚も薄い。公的機関が無料で提供しているコンサルティングなら受けてもいいが、自社が身銭を切ることには抵抗を覚える企業が少なくない。サービスに関して相応の金額のやり取りがなければ、企業側もコンサルタント側も本気になれないのではないかと思う。

(2)要素条件
 製品・サービスに投入する要素の品質や専門性の度合いが要素条件である。だが、投入要素=中小企業診断士自身の品質はかなりブラックボックスであり、おそらく非常にばらつきがある。中小企業診断士は会合などで頻繁に集まる機会があるにもかかわらず、お互いがどのような専門性・能力を持っているのか、驚くほど知らない。先ほど紹介したプロフェッショナル派遣企業では、顧客企業の経営課題に合ったフリーランス・コンサルタントをアサインするために、コンサルタントのデータベースが完備されていると推測される。中小企業診断士も、そのようなデータベースを構築しようという動きがもう何年も前からあるが、未だに完成を見ない。

(3)関連産業・支援産業
 有能な供給業者の存在や、競争力のある関連産業の存在が、業界を成熟させる。中小企業診断士の関連業界には、同じ士業である税理士や弁護士、信用組合や信用金庫などの金融機関、中小企業基盤整備機構や商工会議所などの公的機関がある。中小企業庁は、中小企業診断士がだらしないものだから、中小企業にコンサルティングサービスを提供する際に、関連業界のプレイヤーが多数関わるスキームを考える。だが、彼らは必ずしもコンサルティングが専門ではないため、チームの方向性がぶれやすい。しかも、(1)で見たように報酬は限られているから、プレイヤー同士が少ないパイをめぐって醜い奪い合いをする。これでは顧客志向とは言えない。

(4)競争環境
 中小企業診断士は投入要素であると同時に、お互いがライバルの関係にある。また、最近は中小企業庁が税理士や金融機関にもコンサルティング能力を要求しているから、関連産業のプレイヤーもまたライバルである。ところが、中小企業に対するコンサルティングはどう進めるべきで、そのためにはどのような能力・知識が求められるのかという標準が業界として確立されていないため、プレイヤー同士が同じ土俵の上に立って競争できない。中小企業診断士の中には、「中小企業にはいろんな課題があって、コンサルティングのやり方も様々だ」とおっしゃる方がいるのだが、自分の能力を客観的に評価されたくないという逃げの口実でしかないように思える。

○経済合理性だけでは、苦しい時に粘れない 【インタビュー】ビジネスモデルとは『やりたいこと』の確信である(スマイルズ代表取締役社長・遠山正道)
 主語はビジネスではなく、『やりたいこと』なのです。(中略)どんなに苦しくても撤退はしませんでした。なぜなら、私たちには『やりたいことをやりたい気持ち』、そして『やりたいことをやるべき意義』があったからです。
 前職の会社で、皆が「やりたいこと」をやった結果、皆沈んでいったという苦い経験を持つ私からすると、どこかきれいごとのような気がしてならない。どんなに「やりたいこと」であっても、それを顧客が求めていなければ意味がない。もっとも、スマイルズ社の場合、単に「やりたいこと」を追求するのではなく、それを社会的な使命にまで昇華させる段階で、市場の試練を受けていると解釈できるのかもしれない。

 「やりたいこと」を軸に戦略やビジネスモデルを構築するというのは、実は戦略論にほとんど見られない考え方である。戦略論にあるのは、「できること」を軸としたアプローチである。ゲイリー・ハメルらが提唱したコア・コンピタンスや、ジョージ・ストークらが提唱したケイパビリティといった概念は、このアプローチから生まれた。「やりたいこと」から戦略を構想するというアプローチを、少なくとも私は知らない。20世紀の戦略論を体系的に整理したヘンリー・ミンツバーグの著書『戦略サファリ』にも、そのようなカテゴリはなかったと記憶している。

戦略サファリ 第2版 -戦略マネジメント・コンプリート・ガイドブック戦略サファリ 第2版 -戦略マネジメント・コンプリート・ガイドブック
ヘンリー ミンツバーグ ブルース アルストランド ジョセフ ランペル 齋藤 嘉則

東洋経済新報社 2012-12-21

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 《10学派一覧(旧ブログにジャンプします)》
 第1学派:デザイン・スクール
 第2学派:プランニング・スクール
 第3学派:ポジショニング・スクール
 第4学派:アントレプレナー・スクール
 第5学派:コグニティブ・スクール
 第6学派:ラーニング・スクール
 第7学派:パワー・スクール
 第8学派:カルチャー・スクール
 第9学派:エンバイロメント・スクール
 第10学派:コンフィギュレーション・スクール

 「やりたいこと」が市場に受け入れられるかどうかは、一種の賭けである。「やりたい」と思っている自分が熱くなっているだけで、市場はそんなものを全く求めていない可能性もある。「やりたいこと」に共感してくれる顧客がどこにどれだけいるのか、時間をかけてその答えを見つけ出さなければならない。よって、結果が出るまで体力勝負となる。事実、スマイルズ社の事業の中には、収益化までに8年を要したものもいくつかあるそうだ。結果的に顧客が見つかり、一定の成功を収めているからよいものの、もっと上手に戦略を構築すれば、もっと早く黒字化することができたのではないか?とも思う。

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