プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2014年04月24日

舛添要一『憲法改正のオモテとウラ』―「政府解釈の変更による集団的自衛権の行使」は2005年に明言されていた、他


憲法改正のオモテとウラ (講談社現代新書)憲法改正のオモテとウラ (講談社現代新書)
舛添要一

講談社 2014-02-20

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 私が在学していた時の京都大学法学部は憲法が必須科目ではなく、法学部なのに憲法を全く勉強せず卒業することも可能であった。既に法律への関心を失ってしまい、ビジネスに傾倒しつつあった私は、憲法の単位を取らずに卒業することも考えた。だが、さすがにそれは法学部生としてまずいと思い直して、憲法を受講することにした。そんな不真面目な学生だったので、憲法に関する私の知識は一般の法学部生以下だ。だから、本書についてのまとまった感想を書くだけの力量がない。よって、本書に関しては雑感をつらつらと並べてみたいと思う。

 (1)本書は、2005年に結党50年を迎えた自民党が、50年前に掲げた結党の目的「憲法の自主的改正」に立ち返って、新しい憲法の草案を取りまとめた際のことを記録したものである。森元首相を委員長とする「新憲法起草委員会」が立ち上がり、天皇、安全保障、基本的人権など憲法の各分野について10の小委員会が設けられて、改正の方向性が検討された。

 本書の帯には「憲法改正とは政治そのものである」と書いてある。10の小委員会にこまめに出席していた舛添氏は、憲法改正が権力抗争の場と化すのを何度も目撃したようだ。一院制の議論が持ち上がれば、参議院自民党から圧力がかかり、地方財源をめぐっては総務省と財務省が対立したという。しかし、本書ではそのような政治的側面は最小限に抑えられている。各小委員会で検討された論点と決議された要綱が整然と並べられていて、最後に舛添氏が自身の主張をつけ加えるというスタイルをとっており、非常に読みやすい。

 率直な感想を言えば、細かい条文をめぐる権力抗争なんてのはみみっちいもので(そんなことを言ったら怒られるか)、2005年の「郵政解散」によって憲法改正の機運そのものが吹っ飛んでしまったことの方が、「憲法改正とは政治そのものである」という言葉にふさわしいのかもしれない。憲法の前文には、日本人の伝統的な精神を反映して「和を尊ぶ」という文言を入れる予定であった。だが、造反組をことごとく敵に回し、総選挙で次々と刺客を送り込むやり方のどこが「和を尊ぶ」なのか?と批判されたという。

 (2)自民党は、新憲法について一括で国民の判断を仰ぐ予定だったようだ。しかし、これにはさすがに無理があると思う。当時の公明党も、一括方式に反対したと書かれてある。新憲法は現在の憲法を踏襲している部分もありながら、大きく変わる部分も結構ある。一括方式にしてしまうと、ある条文の改正案については賛成であるが、別の条文の改正案には反対という場合に、国民投票によって意思を的確に表明することができない。

 ビジネスの世界でもそうだが、大がかりな改革は一発で成功させようと思わない方がよい。まずは小さな改革から始めて、成功体験を積んでから大きな改革に取りかかるのが定石である。憲法改正に関しても、まずはそれほど重要度が高くない分野から着手し(最高法規である憲法の中で、それほど重要でない部分とはどこなのか?という議論がありそうだが)、国民と政治家を憲法改正のプロセスに慣れさせる。その準備段階を踏んだ上で、おそらく憲法改正の本丸であろう9条の見直しへと進んでいくのが筋ではないかと考える。

 (3)今年に入ってから、安倍首相が集団的自衛権の行使について、「政府解釈を変更することで認められる」と発言をして非難を浴びた。ところが実は、2005年の議論で、政府解釈の変更により集団的自衛権の行使を可能にする方向で動いていたことが本書に書かれている。

 舛添氏の解説によると、「安全保障および非常事態に関する小委員会」がまとめた要綱のポイントは、(A)持つべき軍隊の名称を「自衛軍」とすること、(B)国際貢献を明記すること、(C)集団的自衛権の行使については、憲法に明記せず、政府解釈の変更で認めること、の3点であった。2005年の段階では、この点についてそれほど大きな批判はなかったと記憶しているが、今になって安倍首相がやり玉に上がるのはいささかおかしな話だと感じる。

 (続く)

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