プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2014年05月16日

『アナリティクス競争元年(DHBR2014年5月号)』―グーグルでも「社員満足度向上⇒利益増加」の説明は困難


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 (1)「コミュニケーション軽視の風土を改善する グーグルは組織をデータで変える」
 (デイビッド・A・ガービン)

 グーグルは設立当初からマネジメントの正当性について疑問を抱いていた。創業者のラリー・ペイジとサーゲイ・プリンも、「大学のように自由な職場環境が望ましい」と考え、エンジニア担当のマネジャーを廃止したことがある。ところが、この取り組みは失敗に終わる。マネジメントには何らかの価値がありそうだ。では、その価値とは一体何なのか?グーグルはこれを統計的な分析によって導こうとした。アナリティクスを重視するグーグルならではの発想である。

 その結果、マネジャーの資質がごくわずかでも上昇するごとに、劇的な効果が現れることが証明されたという。例えば、人事考課で高評価を得たマネジャーは、他のマネジャーより部下の離職率が低かった。また、社員の定着率は、その社員の職位や成果、在職年数、昇進の有無よりも、マネジャーの資質により強く相関していた。のみならず、マネジャーの資質と社員の幸福度の間に強い相関関係があることも示された。

 ただし、グーグルの解析力をもってしても、社員満足度と売上高や利益、生産性といった財務面の成果との関係は証明できなかったらしい。一般的には、社員満足度が向上すると顧客満足度が向上し、顧客満足度が向上すると売上・利益が増加すると言われる。グーグルの分析は、この一般論に疑問を投げかけるものである。

 そもそもこの論理は、社員満足度とモチベーション、顧客満足度と再購入意欲を混同している点に問題がある。社員満足度が高いからと言って、モチベーションが高いとは限らない。居心地がいい職場にいれば、現状に満足してしまい、モチベーションが上がらないことも考えうる。逆に、現状に多少不満があった方が、それを改善しようとしてモチベーションが上がることもあるだろう。そして、その方が売上・利益の拡大に貢献するのではないだろうか?

 顧客満足度と再購入意欲についても同じことが言える。顧客満足度が高いからと言って、顧客は次回も自社の製品・サービスを購入すると約束したわけではない。現に、自動車など購買サイクルが長い製品では、顧客満足度と業績との間に相関が見られないという研究もある(旧ブログの記事「「幸福感」と「モチベーション」の違いがよく解らない印象を受けた―『幸福の戦略(DHBR2012年5月号)』」を参照)。企業は、顧客の次の購買機会にも自社を選んでもらわなければ、売上や利益を維持・拡大することができない。顧客満足度を高める取り組みも大切だが、再購入を促す仕組みづくりもそれ以上に重視する必要がある。

 ちなみに、グーグルの組織構造は次の通りである。社員3万7,000人に対して、マネジャーは5,000人、ディレクターは1,000人、バイス・プレジデントは100人である。確かに階層は少ないが、マネジメント層が著しく少ないというわけでもなさそうだ。というのも、マネジャー、ディレクター、バイス・プレジデントの部下の平均数はそれぞれ7.4人、5人、10人であり、「コントロールできる部下の数は10人程度が限界である」という20世紀初頭の「統制範囲の原則(スパン・オブ・コントロールの原則)」を超えるものではないからだ(旧ブログの記事「マネジメントの究極の目的はマネジャー職をなくすことかもしれない―『絆の経営(DHBR2012年4月号)』」を参照)。

 もっとも、グーグルはほとんどの事業がわずか数名のチームによって運営されており、チームリーダーがマネジャーとしてカウントされている可能性がある。だが、彼らは事実上プレイング・マネジャーであるに違いない。そう考えると、純粋なマネジメント層はもっと少なくなるのかもしれない。

 (続く)

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